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SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」課題と企業の取り組み事例

「世界でも指折りの安全な都市である東京は、実は災害リスクの高い都市だった」

英インテリジェンス社が発表した「The Safe Cities Index 2021」(世界の都市安全指数ランキング)によると、東京は「医療・健康環境の安全性」において1位、総合で5位にランクインしています。

一方、国土交通省の資料によると、2015年の時点で洪水・土砂災害・地震・津波のいずれかの災害リスクがあるエリアに住む人の割合は、総人口の67.8%。うち、東京都に限ると93.8%に上ります[1]

安全な都市であるはずの東京にも、実はさまざまな災害のリスクがあるのです。首都圏は海抜ゼロメートル地帯が多いため、洪水や津波によって長時間浸水する可能性があります。また、地盤が弱い地域に人口が密集しており、地震によって地面の液状化や地盤沈下が起これば、スムーズに復旧・支援の手が届かないことも考えられるでしょう。

今後も都市で暮らす多くの命や生活を守るには、都市そのものの作りやあり方を見直すことが求められています。

そしてこれは、世界の各都市も同じです。

SDGs目標11では、こうした自然災害への対応をはじめ、スラムの改善や廃棄物の管理など、誰もが長く安全に暮らせるまちづくりを目指します。

本稿では、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の課題や企業の取り組み事例をご紹介します。

ぜひ参考にしてください。

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1. SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」企業がまず知っておくべきこと

国連で採択され、2030年までに世界全体で達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)は、環境や社会、経済などに関する17の目標で構成されています。

その11番目に掲げられている目標が「住み続けられるまちづくりを」です。まずは目標の内容や意義を正しく理解しましょう。

1-1. SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の正式な目標とは

SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」は、正式には「都市や人間の居住地をだれも排除せず安全かつレジリエントで持続可能にする」と定められています。

弱い立場の人々も含め、都市部に住むすべての人が長く安全に暮らせるよう、災害に強く、環境に優しいまちを作ろうという目標です。

1-2. SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲット内容

目標11「住み続けられるまちづくりを」をさらに深く理解するために、具体的な目標が示されている「ターゲット」(11.111.c)を見てみましょう。

11.1
2030 年までに、すべての人々が、適切で安全・安価な住宅と基本的サービスを確実に利用できるようにし、スラムを改善する。

 

11.2
2030 年までに、弱い立場にある人々、女性、子ども、障害者、高齢者のニーズに特に配慮しながら、とりわけ公共交通機関の拡大によって交通の安全性を改善して、すべての人々が、安全で、手頃な価格の、使いやすく持続可能な輸送システムを利用できるようにする。

 

11.3
2030 年までに、すべての国々で、だれも排除しない持続可能な都市化を進め、参加型で差別のない持続可能な人間居住を計画・管理する能力を強化する。

 

11.4
世界の文化遺産・自然遺産を保護・保全する取り組みを強化する。

 

11.5
2030 年までに、貧困層や弱い立場にある人々の保護に焦点を当てながら、水関連災害を含め、災害による死者や被災者の数を大きく減らし、世界の GDP 比における直接的経済損失を大幅に縮小する。

 

11.6
2030 年までに、大気環境や、自治体などによる廃棄物の管理に特に注意することで、都市の一人あたりの環境上の悪影響を小さくする。

 

11.7
2030 年までに、すべての人々、特に女性、子ども、高齢者、障害者などが、安全でだれもが使いやすい緑地や公共スペースを利用できるようにする。

 

11.a
各国・各地域の開発計画を強化することにより、経済・社会・環境面における都市部、都市周辺部、農村部の間の良好なつながりをサポートする。

 

11.b
2020 年までに、すべての人々を含むことを目指し、資源効率、気候変動の緩和と適応、災害に対するレジリエンスを目的とした総合的政策・計画を導入・実施する都市や集落の数を大幅に増やし、「仙台防災枠組 2015-2030」に沿って、あらゆるレベルで総合的な災害リスク管理を策定し実施する。

 

11.c
財政・技術支援などを通じ、現地の資材を用いた持続可能でレジリエントな建物の建築について、後発開発途上国を支援する[2]

以上が、目標11のターゲットです。

簡単にまとめると、治安悪化や環境汚染の原因となるスラム問題の改善、公共交通機関の整備、文化・自然遺産の保全、防災対策、大気汚染の防止、廃棄物の管理、緑地や公共スペースの拡充といった内容が盛り込まれています。

1-3. SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」の意義

都市には、世界の人口の半分以上の人が暮らしています。たくさんの住居や会社、商業施設、公共施設が集まり、学校や交通、金融などの生活に欠かせない基盤もそろっています。

しかし、急速に都市化が進み人口が一気に集中すると、さまざまな問題も生じてきます。それが、不平等や環境汚染、自然災害です。

働き口がない、住める価格の家がない、使える移動手段がなく病院に行けない、といった不平等は、人々の不安をあおり治安の悪化をもたらします。環境汚染は人々の健康に悪影響を及ぼし、仕事の生産性を低下させます。自然災害は一瞬にして人々の生活や命を奪います

今後も都市開発を続け安全で豊かな生活を送っていくには、都市の作り方や在り方を見直し、適切に管理していくことが必要です。不平等を改善し、環境汚染を防ぎ、自然災害に備えることは、多くの人類の未来を守ることにつながります。

こうした理由から、目標11「住み続けられるまちづくりを」は存在します。

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2. 「住み続けられるまちづくりを」に関する国内外の課題

次に、「住み続けられるまちづくりを」に関する課題を国内外に分けて見てみましょう。

2-1. 世界では「スラムの改善」、「大気汚染」、「公共交通機関の整備」、「廃棄物管理」「公共スペースの拡充」「自然災害への対応」が課題

「住み続けられるまちづくりを」に関する世界的な課題としては、主に以下の六つがあります。[3]

・スラムの改善
・大気汚染
・公共交通機関の整備
・廃棄物管理
・公共スペースの拡充
・自然災害への対応

スラムの改善

まずは、スラムの改善です。不適切に計画・管理された都市では、急に増えた人口に対して働き口や生活基盤などのインフラの整備が間に合わず、スラムが形成されます。形成されたスラムは、犯罪や違法薬物の温床となるなど治安を悪化させたり、非衛生的な環境から伝染病のまん延の原因となったりします。

実証分析によると、都市人口が1%増加すると、アフリカでは2.3%、アジアでは5.3%スラムの発生率が高まります。2020年時点で、世界では既に約10億人、都市部に暮らす人々の約4人に1人がスラムで生活をしています。

誰もが都市で安全・安心して生活ができるよう、計画的に都市を開発したり、貧しい人々も住居を確保できるよう住宅政策を整備したりすることが求められます。

大気汚染

二つ目は大気汚染です。都市部では、車の排気ガスや工場の煙、PM2.5といった汚染物質が日々排出されています。そしてこれらは、脳卒中や心臓病、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、下気道感染症のリスクが高めるなど、人々の健康にさまざまな悪影響を及ぼしています。WHOは、屋外の大気汚染によって、2019年に世界中で420万人の早期死亡を引き起こしたと推計しています[4]

以下の図は、都市部における粒子状物質(PM2.5)への年間暴露量、2017年から2019年までの3年間の平均(1立方メートルあたりのマイクログラム)を示したものです。

引用元)国連「MAKE CITIES AND HUMAN SETTLEMENTS INCLUSIVESAFERESILIENT AND SUSTAINABLE」を元に作成
https://unstats.un.org/sdgs/report/2022/goal-11/(閲覧日:2023年1月25日)

人口の多いアジアやアフリカ地域ではWHOの基準をはるかに超えた量のPM2.5の暴露も報告されており、いかに環境に配慮しながら都市での生活を送れるかが課題となっています。

公共交通機関の整備

三つ目は、公共交通機関の整備です。2015年から2030年までで、世界の年間旅客数は 50%増え、道路を走る車の数は2になると言われています。車が増えれば、その分渋滞や事故が多くなったり、排出される二酸化炭素が増えて地球温暖化につながったりします。これを防ぐには、車の代わりとなる交通手段を整えることが重要です。

しかし、世界1510都市の2020年のデータによると、バスや電車、フェリーといった公共交通機関が利用できるのは都市部のうち約37%のエリアだけです。それ以外のエリアでは公共交通機関が十分に整備されているとは言えない状況となっています。

廃棄物管理

四つ目は、廃棄物管理です。廃棄物は適切に回収・管理がされないと、感染症の温床となったり、プラスチック汚染温室効果ガス排出の原因となったりする可能性があります。

2022年時点で、世界では固形廃棄物の82%が回収、55%が施設で適切に管理されています。しかし、低・中所得国では、依然として回収率が低かったり、回収してもその後露天のごみ捨て場にごみを積み上げるだけなど、適切な管理ができていなかったりする地域も多くあります。廃棄物が適切に回収・管理されるよう、政策の改善や環境法の施行徹底が求められています。

公共スペースの拡充

五つ目は、公共スペースの拡充です。大通りや公園、広場といった公共スペースには、人々の交流を促す、生活の質を高める、経済を活性化させるといった役割があります。

しかし、世界962都市を調べた2020年のデータによれば、都市部において公共スペースが不足していることが明らかになっています。都市部の住宅地のうち、家から400メートル以内に公共スペースがあるのは全体の約38%しかありません。

今後の都市開発では、緑地に加えて公共スペースの分布も考慮する必要があります。

自然災害への対応

最後は、自然災害への対応です。近年、干ばつや砂漠化、スーパー台風、豪雨といった災害によって、住み慣れた土地を離れざるをえなかったり、食糧危機にさらされたりする人が増えています。

自治体の中には既に災害リスク軽減に向けて取り組みを行っているところもありますが、今後より大きな災害が起こっても耐えられるよう、対策が求められています。

以上が、「住み続けられるまちづくりを」に関する世界的な課題です。

2-2. 日本では「食料アクセス問題」、「自然災害への対応」が課題

次に、「住み続けられるまちづくりを」に関する日本の課題を見てみましょう。日本の課題としては主に以下の二つがあります。[5]

・食料アクセス問題
・自然災害への対応

食料アクセス問題

一つ目は食料アクセス問題です。近年、高齢者や単身世帯の増加、地元小売業の廃業、既存商店街の衰退などが原因で、いわゆる「買い物難民」と呼ばれる買い物に不便や苦労をきたす人々が増えています。

特に高齢者に多く、スーパー、コンビニエンスストアといった店舗まで500メートル以上かつ車での移動も難しい65歳以上の人口は、東京、名古屋、大阪の三大都市圏だけでも370万人以上と推計されています。[6]

自然災害への対応

二つ目は災害への対応です。日本は、その位置や地形、気象などの自然条件から台風や豪雨、地震といった災害が起こりやすい国と言われています。

特に近年では、2016年の熊本地震以降、20187月の豪雨、2019年の東日本台風、20207月の豪雨など、ほぼ毎年のように異常気象による大規模な自然災害が発生しています。[7]水害や土砂災害をはじめとする災害から暮らしを守り被害を最小限にとどめるため、堤防やダム、下水道の整備や雨水の流出を抑えるための貯留・浸透施設の設置といった対応が求められます。

以上が、「住み続けられるまちづくりを」に関する日本の課題です。


3. SDGs目標11に企業が取り組むアプローチ法とメリット・注意点とは?

以上の課題を踏まえ、目標11「住み続けられるまちづくり」のために企業はどのようなアプローチができるのか、確認しましょう。

また、企業が目標11に取り組む場合、どのようなメリットや注意点があるかも理解しておきましょう。

3-1. 目標11「住み続けられるまちづくりを」への企業のアプローチ法

都市に関する課題へのアプローチ法としては、主に以下の四つが挙げられます。

・環境に配慮した商品・サービスの提供
・防災・復旧支援に関する取り組み
・バリアフリーの促進

環境に配慮した商品・サービスの提供

まずは、環境に配慮した商品・サービスの提供です。

環境に配慮した商品・サービスは、例えばエコ家電やエコカー、エコリフォーム、スマートビルディングなどがあります。これらはクリーンエネルギーの活用や省エネルギー化につながり、温室効果ガスの排出量を減らします。

防災・復旧支援に関する取り組み

三つ目は、防災や復旧支援に関する取り組みです。例えば、耐震改修や防災情報システムの開発、太陽光などを利用した独立電源の開発などが挙げられます。

また、地域防災協定災害時応援協定を結ぶケースも増えています。地域防災協定や災害時応援協定は、防災や災害時に企業が地域に対して行う支援内容をまとめたものです。

例えば、地震時には道路をパトロールし被害状況を報告する、仮設トイレを提供する、食糧や日用品を供給するなど、企業が災害時の対応について事前に行政や地域と協議しておくことで、地域の防災・復旧に貢献することができます。

バリアフリーの促進

四つ目はバリアフリーの促進です。例えば、手すりやスロープの設置、生鮮食品を移動販売する買い物支援などが挙げられます。これらに取り組むことは、障害者や高齢者、妊婦など特別な支援を必要とした人々の地域コミュニティへの参加や自由な消費活動につながり、持続可能なまちづくりに貢献します。

以上が、目標11「住み続けられるまちづくりを」に対する企業の主なアプローチ法です。

3-2. 目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組むメリット

目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組むメリットとしては、以下が挙げられます。

・企業イメージの向上
・コストの削減

企業イメージの向上

まずは、企業イメージの向上です。まちづくりは地域社会に直結するテーマです。そのため、地域のニーズをくみ取り課題を解決していくことは、地域社会での信頼を勝ち取り企業のイメージの向上につながります。

コストの削減

二つ目は、コストの削減です。例えば、生産過程で発生するCO2を削減するために、包装資材を減らしたり再生資源を活用したりすることは、環境への負荷を減らすだけでなく資材コストを抑えられることにもつながります。

以上が、目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組む主なメリットです。

3-3. 目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組む注意点

一方で、 目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組む際にはいくつか注意点もあります。

・地域社会との連携
・長期的な視点

地域社会との連携

まずは、地域社会との連携です。3-2で述べた通り、まちづくりは地域社会に直結するテーマです。そのため、取り組みの際にはまずは各自治体やNPO、地域住民などとよくコミュニケーションをとり、地域の課題を把握した上で自社に何ができるかを考えていくことが大切です。

長期的な視点

「住み続けられるまちづくりを」に取り組むには、長期的な視点を持つことも大切です。なぜなら、取り組みに必要な設備を整えるのに初期投資が必要になる場合があるからです。

例えば、本社や工場などで再生可能エネルギーを利用しようとなった場合、太陽光発電や風力発電など、設備の導入に多額の資金が必要になる可能性があります。しかし、長期的に見れば、CO2の削減や燃料コストの低下につながります。

長期的な視点で、取り組み効果とコストを比較し検討していくことが大切です。

以上が、目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組む注意点です。メリットと注意点を念頭に置いた上で、取り組みを進めましょう。

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4. SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」への企業の取り組み事例五つ

最後に、目標11「住み続けられるまちづくりを」を目指す企業の取り組み事例を、日本企業と海外企業に分けて紹介します。

4-1. 日本企業の取り組み事例

まず目標11「住み続けられるまちづくりを」に取り組む日本企業の事例です。ここでは、経団連SDGs特設サイト「Keidanren SDGs」の「Innovation for SDGs 事例集」から三つご紹介します。

・大和ハウス工業株式会社
・積水テクノ成型株式会社
・株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

大和ハウス工業株式会社

日本で現在持続可能な都市開発に向け推し進められているのが、「環境未来都市」構想です。「環境未来都市」構想では、産官学が連携し、環境に配慮しながら豊かな生活を送れるまちづくりを目指しています。

大和ハウス工業株式会社は、未来都市として選定された富山市のまちづくりを手掛けました。それが、ネット・ゼロ・エネルギー・タウン「セキュレア豊田本町」です。

ネット・ゼロ・エネルギー・タウンとは、住宅の省エネ性能を向上させたり、再生可能エネルギーを活用したりすることで、街全体で創られるエネルギーが使われるエネルギーよりも多い街のこと。「セキュレア豊田本町」では、住宅や公園で使われるエネルギーのすべてが、太陽光発電などでまかなわれています。

また、災害時の活動拠点として公園にトイレベンチや防災倉庫を設置したり、地震時の二次災害を防ぐために道路を無電柱化したりするなど、災害への対策も充実しています。

このように、環境に優しく災害に強いまちを作ることで、持続可能な社会の実現に貢献しています。

積水テクノ成型株式会社

ゲリラ豪雨など想定外の雨量による河川の氾濫や洪水、冠水が増えている中、積水化学工業株式会社の子会社である積水テクノ成型株式会社が開発したのが、雨水貯留システム「クロスウエーブ」です。

これは、学校や公園、商業施設などの地下にプラスチック製ブロック材を埋め貯水槽を作ることで、雨水の流出を抑制するというものです。

国内では都道府県の97%で導入されおり、日本全土における水害の防止に貢献しています。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

株式会社セブンイレブン・ジャパンは、買物が不便な地域に住んでいる人や外出が難しい高齢者などのために、「セブンあんしんお届け便」という移動販売サービスを行っています。

2022年現在、全国で110台が走っており、常温、冷蔵、冷凍の食品から日用品までさまざまな商品を家庭へ届けています。生活に必要なものをまとめ買いする人も多く、地域に欠かせないサービスとなっています。

4-2. 海外企業の取り組み事例

次に、海外企業の取り組み事例です。「Global 100[8]」(世界で最も持続可能な100社)と「SDG INDUSTRY MATRIX —産業別SDG手引き」に掲載されている企業の中から二つご紹介します。

・マコーミック(アメリカ)
・メルセデス・ベンツ・グループ(ドイツ)

マコーミック(アメリカ)

企業の生産活動では、毎日たくさんのエネルギーが消費され、廃棄物や温室効果ガス、環境汚染の原因となる有害物質が排出されています。

そこで香辛料などの調味料を製造・販売するマコーミックは、2030年までに温室効果ガス排出量を42%削減し、固形廃棄物のリサイクル・回収率を85%に引き上げることを目標に、次のような取り組みを行っています。

・ネット・ゼロ・カーボンビルの建設:エネルギー消費量を抑えたり、再生可能エネルギーを利用したりすることで、CO2の排出量が実質ゼロとなる製造施設を建設
・サプライヤーへの支援:CO2の排出量削減に向け、サプライヤーへ資金・教育を援助
・パッケージングの改善:CO2の排出量削減に向け、パッケージの軽量化や再生プラスチックの利用を促進
・節水:サプライチェーン全体の水の使用量をモニタリングし、節水を促進

これらの取り組みの結果、同社は環境に配慮した持続可能なビジネスを展開する企業として、国際的な認知度を高めています。

メルセデス・ベンツ・グループ(ドイツ)

メルセデス・ベンツ・グループは、大都市が抱える交通事故や渋滞、排気ガスによる大気汚染といった問題に対処するため、以下のようなモビリティーサービスを提供しています。

・自治体への車両データの提供:自治体の交通安全管理のための意思決定をサポートするため、車両利用者の同意を得て車両データを収集・分析し、自治体へ提供

・電動シャトルバスの開発:個人の車利用を減らし交通渋滞の緩和やCO2の削減に貢献するため、電動シャトルバス「eシターロ」を開発し公共交通事業者へ納入

これらのサービスを通じて、「安全」、「低ストレス」、「環境に優しい」都市の道路・交通インフラの実現に寄与しています。

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5. まとめ

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、正式には「都市や人間の居住地をだれも排除せず安全かつレジリエントで持続可能にする」と定められています。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」のターゲットの内容を簡単にまとめると、治安悪化や環境汚染の原因となるスラム問題の改善、公共交通機関の整備、文化・自然遺産の保全、防災対策、大気汚染の防止、廃棄物の管理、緑地や公共スペースの拡充などです。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」は、急速に都市化が進み人口が都市へ一気に集中することで起こる不平等や環境汚染、自然災害に備え、多くの人類の未来を守ることにつながります。

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に関する世界的な課題としては、主に以下の六つがあります。

・スラムの改善
・大気汚染
・公共交通機関の整備
・廃棄物管理
・公共スペースの拡充
・自然災害への対応

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に関する日本の課題としては主に以下の二つがあります。

・食料アクセス問題
・自然災害への対応

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」への企業のアプローチ法としては、主に以下の三つが挙げられます。

・環境に配慮した商品・サービスの提供
・防災・復旧支援に関する取り組み
・バリアフリーの促進

SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組むメリットとしては、以下が挙げられます。

・企業イメージの向上
・コストの削減

一方で、SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」に企業が取り組む際には、以下のような注意点もあります。

・地域社会と連携
・長期的な視点

メリットと注意点を念頭に置いた上で、取り組みを進めましょう。

企業の取り組み事例として、以下五つをご紹介しました。

・大和ハウス工業株式会社
・積水テクノ成型株式会社
・株式会社セブン‐イレブン・ジャパン
・マコーミック(アメリカ)
・メルセデス・ベンツ・グループ(ドイツ)

地域社会、そしてさまざまな企業の努力によって、持続可能なまちづくりは実現します。

本稿が、取り組みを考える際の参考になりましたら幸いです。

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[1] 国土交通省国土政策局「都道府県別の災害リスクエリアに居住する人口について」,https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/content/001373119.pdf (閲覧日:2023年4月16日)
[2] 慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ,「SDGsとターゲット新訳 Ver.1.2(2021.3)」, https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_ver1.2.pdf(閲覧日:2023年1月25日), 太字は編集部による編集

[3] 国連「MAKE CITIES AND HUMAN SETTLEMENTS INCLUSIVE,SAFE,RESILIENT AND SUSTAINABLE」,https://unstats.un.org/sdgs/report/2022/goal-11/
[4] WHO「Ambient (outdoor) air pollution」,https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/ambient-(outdoor)-air-quality-and-health(閲覧日:2023年3月27日)

[5] 農林水産省「17の目標と食品産業とのつながり:目標11に対する取組」,『SDGs×食品産業』,https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_11.html#goal_top(閲覧日:2023年2月2日)
[6] 農林水産政策研究所「食料アクセス困難人口(2015年)」,https://www.maff.go.jp/primaff/seika/fsc/faccess/table01.html(閲覧日:2023年2月2日)
[7] 内閣府「令和4年版防災白書」,『防災情報のページ』,https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r4.html(閲覧日:2023年2月2日)
[8] 「Global 100」とは、カナダの出版・調査企業である「Corporate Knights」社により2005年にスタートしたSDGs達成に貢献している企業のランキング。「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (世界で最も持続可能な100社)」とも呼ばれ、世界経済フォーラム(WEF)がスイスのダボスで開催している年次総会(ダボス会議)で毎年発表され注目されています。

参考)
The Economist「Safe Cities Index 2021ホワイトペーパー」,https://safecities.economist.com/safe-cities-2021-whitepaper-jp/ (閲覧日:2023年4月16日)
内閣官房国土強靱化推進室「戦略的政策課題 東京一極集中リスクとその対応について」,https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/resilience/dai50/siryo3-1.pdf (閲覧日:2023年3月22日)

国際開発センターSDGs室「ゴール11:住み続けられるまちづくりを」,https://www.idcj.jp/sdgs/goal/goal-11/(閲覧日:2023年1月25日)
国際連合広報センター「住み続けられる まちづくりはなぜ大切か」,https://www.unic.or.jp/files/11_Rev1.pdf(閲覧日:2023年1月25日)
国連「MAKE CITIES AND HUMAN SETTLEMENTS INCLUSIVE,SAFE,RESILIENT AND SUSTAINABLE」,https://unstats.un.org/sdgs/report/2022/goal-11/(閲覧日:2023年1月25日)
国連「11 SUSTANABLE CITIES AND COMMUNITIES」,『SUSTAINABLE DEVELOPMENTGOALS』,
https://www.un.org/sustainabledevelopment/cities/(閲覧日:2023年1月25日)
環境省「大気汚染が引き起こす問題」,『こども環境白書2016』,p.22-23,https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/kodomo/h27/files/full.pdf (閲覧日:1月27日)
公益財団法人日本ユニセフ協会「11.住み続けられるまちづくりを」,『持続可能な世界への第一歩 SDGs CLUB』https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/11-cities/(閲覧日:2023年2月1日)
農林水産省「17の目標と食品産業とのつながり:目標11に対する取組」,『SDGs×食品産業』,https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_11.html#goal_top(閲覧日:2023年2月2日)
SDGs推進本部「SDGsアクションプラン2021~コロナ禍からのよりよい復興と新たな時代への社会変革~」,https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_Action_Plan_2021.pdf(閲覧日:2023年2月2日)
内閣府「企業による自治体および住民団体との地域防災協定(減災への取組)」,『内閣府 防災情報のページ』https://www.bousai.go.jp/kyoiku/keigen/torikumi/tsh19006.html(閲覧日:2023年3月16日)
一般財団法人)日本防火・危機管理促進協会「災害時応援協定のすすめ ~災害を乗り越える官民のパートナーシップ16ステップ~」,https://boukakiki.or.jp/crisis_management/H26chousa_gaiyou.pdf  (閲覧日:2023年3月16日)
地方創生推進事務局「環境未来都市構想とは」,『内閣官房・内閣府総合サイト 地方創生』,https://www.chisou.go.jp/tiiki/kankyo/kousou.html#:~:text=%E3%80%8C%E7%92%B0%E5%A2%83%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E9%83%BD%E5%B8%82%E3%80%8D%E6%A7%8B%E6%83%B3%E3%81%AF,%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%80%81%E7%A9%B6%E6%A5%B5%E7%9A%84%E3%81%AB (閲覧日:2023年3月17日)

大和ハウス工業株式会社「北陸3県初のネット・ゼロ・エネルギー・タウン」,https://www.daiwahouse.co.jp/about/community/case/toyotahonmachi/ (閲覧日:2023年3月17日)
大和ハウス工業株式会社「ネット・ゼロ・エネルギー・タウンの実現」,https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/eco/products/2013_1.html(閲覧日:2023年4月6日)
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株式会社リコー,「リコー、世界で最も持続可能な100社『2023 Global 100 Most Sustainable Corporations』に選定」,https://jp.ricoh.com/info/2023/0118_1(閲覧日:2023年4月6日)

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