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SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説

SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説

「世界では食べるために生産された食料のおよそ3分の1が捨てられている[1]

このような調査結果があることを、知っていますか?

まず、世界では全人口分の食料は生産されています。しかし、その3分の1を捨てています。そして、貧困、自然災害、紛争などが原因で飢餓に苦しむ人々は、世界人口の7人に1人の割合で存在しています。これはつまり、食料の生産と分配が持続可能ではないということに他なりません。

SDGs目標2「飢餓をゼロに」では、こうした現状を改善し、飢餓をなくすこと、さらに将来の世界人口の増加に伴う食料不足に備えることを目標としています。

「飢餓をゼロに」は、世界の全ての人にかかわる「食」に関する重大な課題であり、目標達成には企業の力は欠かせません。食料不足栄養不足を解決するための企業のイノベーションが世界で強く求められています。言い換えれば、「飢餓をゼロに」を目指す分野は、将来にわたって成長が期待されており、ビジネスチャンスが多いということです。

食品、農業分野以外の業種であっても、「飢餓をゼロに」に貢献できるビジネスのアプローチは数多くあると考えられます。例えば、飢餓に苦しむ人々を支援する取り組みはもちろん、廃棄する食料を必要な人に回せる仕組みを創出することや、農業や食産業と共同で仕組みの活性化を促進するなどです。

まずはSDGs目標2「飢餓をゼロに」が目指していることと、飢餓や食料問題の現状を理解しましょう。

本稿では、はじめに「飢餓をゼロに」の具体的な内容を分かりやすくまとめます。続いて、現在抱えている世界と日本の飢餓・食料問題の実態を解説します。

さらに、企業による飢餓・食料課題へのアプローチ法や、取り組むメリット&注意点をまとめ、最後に日本と海外の企業の取り組み事例をご紹介します。

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1. SDGs目標2「飢餓をゼロに」企業がまず知っておくべきこと

2030年までに世界全体で達成を目指すSDGs(持続可能な開発目標)は、環境や社会、経済などの分野に関する17の目標で構成されています。

その2番目に掲げられている目標が「飢餓をゼロに」です。企業がこの目標に取り組む前に、まずは目標内容を正しく理解しましょう。

1-1. SDGs目標2「飢餓をゼロに」が目指すもの

SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説

SDGsの目標2「飢餓をゼロに」は、正式にはこの後に「飢餓を終わらせ、食料の安定確保栄養状態の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」という目標が続きます。

つまり、解決すべき課題には飢餓だけでなく、農業も含まれる、ということです。簡単に言うと、飢えに苦しむ人をゼロにし、全ての人が一年中安全で栄養のある食料を得られるようにすることや、環境を守り続けながら農業を進めることを目標としています。

1-2. SDGs目標2「飢餓をゼロに」の8つのターゲット内容とは

目標2「飢餓をゼロに」をさらに深く理解するために、具体的な目標が示されている8つの「ターゲット」(2.1~2.c)[2]見てみましょう。

2.1
2030 年までに、飢餓をなくし、すべての人々、特に貧困層乳幼児を含む状況の変化の影響を受けやすい人々が、安全で栄養のある十分な食料を一年を通して得られるようにする。

2.2
2030 年までに、あらゆる形態の栄養不良を解消し、成長期の女子、妊婦・授乳婦、高齢者の栄養ニーズに対処する。2025 年までに 5 歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意した目標を達成する。

2.3
2030 年までに、土地、その他の生産資源や投入財、知識、金融サービス、市場、高付加価値化や農業以外の就業の機会に確実・平等にアクセスできるようにすることなどにより、小規模食料生産者、特に女性先住民家族経営の農家・牧畜家・漁家の生産性と所得を倍増させる。

2.4
2030 年までに、 持続可能な食料生産システムを確立し、レジリエントな農業を実践する。
そのような農業は、生産性の向上や生産量の増大、生態系の維持につながり、気候変動や異常気象、干ばつ、洪水やその他の災害への適応能力を向上させ、着実に土地と土壌の質を改善する。

2.5
2020 年までに、国、地域、国際レベルで適正に管理・多様化された種子・植物バンクなどを通じて、種子、栽培植物、家畜やその近縁野生種の遺伝的多様性を維持し、国際的合意にもとづき、遺伝資源やそれに関連する伝統的な知識の利用と、利用から生じる利益の公正・公平な配分を促進する。

2.a
開発途上国、特に後発開発途上国の農業生産能力を高めるため、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発、植物・家畜の遺伝子バンクへの投資を拡大する。

2.b
ドーハ開発ラウンド[3]の決議に従い、あらゆる形態の農産物輸出補助金と、同等の効果がある輸出措置を並行して撤廃することなどを通じて、世界の農産物市場における貿易制限やひずみを是正・防止する。

2.c
食料価格の極端な変動に歯止めをかけるため、食品市場やデリバティブ[4]市場が適正に機能するように対策を取り、食料備蓄などの市場情報がタイムリーに入手できるようにする。

簡単にまとめると、貧困層や子どもの飢餓撲滅、栄養不良の改善、小規模食料生産者の生産性の向上や雇用創出適正な所得の獲得、災害などに対し適合力のある(レジリエントな)農業の実践などを目指しています。

1-3. SDGs目標2「飢餓をなくそう」が必要な理由とは

では、SDGsにおいてなぜ目標2「飢餓をなくそう」が必要なのでしょうか。

一つは、飢餓で栄養不良の状態の人々が現在地球上で約8億1100万人、つまり世界人口の約10人に一人の割合で存在している[5]からです。要因はさまざまですが、貧困、自然災害、紛争などが主なものです。

中でも子どもの飢餓は、深刻な栄養不良により身体的・知的な発達に遅れが生じ、命を落としてしまうことも多く、特に危惧されています。飢餓による子どもの死亡率の高さや発達の遅れは、国の成長や発展の遅れにもつながり、長期的にも負の影響を及ぼすことになります。

もう一つは、将来の世界の人口増加食料需要の増加に備えるためです。

日本などの先進国の人口は近年減少傾向にありますが、2050年には2010年比で世界人口は1.3倍に、食料需要は1.7倍の約58億トンにまで増えることが予測されています[6]

こうした将来に備え、開発途上国、先進国を問わず、全ての人が安定的に食料を得られるよう、食料の生産性やフードシステム(生産、製造、運輸、卸売、小売、消費などの一連の流れ)の効率を高めていかなければなりません。

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2. SDGs目標2 世界と日本の飢餓問題の実態

次に、飢餓について考えるため、世界と日本の飢餓や食料問題の主な実態を見てみましょう。

2-1. SDGs目標2 世界の飢餓の課題は 「飢餓人口増加」と「食品ロス」

国連食糧農業機関(FAO)などが発表した2021年版の「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」によると、2020年、世界で約8億人が飢餓状態にあります。特に、消耗症疾患(Wasted‐栄養不足に起因する低体重)にある5歳以下の子どもの4分の1近くがサブサハラアフリカ、半数以上が南アジアで報告されました[7]

そして新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、世界の飢餓人口は2019年から増加しており(表1)[8]、このままでは2030年までの目標達成は難しいと言われています[9]「持続可能な開発目標(SDGs)報告2020」によると、特に途上国の小規模農家大きな打撃を受けている状況です[10]

表1) 世界の飢餓人口の年次推移
SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説
引用元)国連WFP他「The State of Food Security and Nutrition in the World 2021」,p.10, https://www.fao.org/documents/card/en/c/cb4474en(閲覧日:2022年5月2日)

また、食品ロスの問題は、先進国だけでなく実は開発途上国にもあります。その発生要因は異なります。

先進国では食品ロスの多くが小売と消費の段階で発生していている一方、開発途上国の食品ロスの多くは収穫後と加工の段階で発生しています。

先進国では、外観品基準消費期限などの条件から外れたものが、加工や小売り、消費段階で廃棄されるためです。

途上国では、技術不足で作物を収穫しきれずにいることや、貯蔵設備や流通システム、加工施設が不足していたり未整備であったりするため、農家が作物を市場に届けられず、収穫された作物が手つかずの状態のまま食料が劣化し、無駄になっています[11]

こうした大きな格差や問題点を、さまざまな対策で改善していかなければなりません。

2-2. SDGs目標2 日本の課題は「相対的貧困者の飢餓」「農業人口の減少」「輸入依存」

次に日本の課題についてです。飽食といわれる日本は、飢餓とは無縁に感じがちです。しかし、内閣府発表の「2021年 子供の生活状況調査」の結果によると、「食料が買えなかった経験があった」と答えた割合は、全体では11.3%のところ、低所得世帯では37.7%ひとり親世帯全体では30.3%母子世帯のみでは32.1%を占めています。

このことから、家庭の環境によって十分な食事がとれない子どもたちが一定数いることがわかり、問題視されています[12]

また、食料の生産を担う農業分野では、農業人口の高齢化人口減が大きな問題となっています。2020年と2010年の数値を比較すると、農業人口34%減少平均年齢は66.2歳から67.8歳へ上がり約2歳高齢化が進みました[13]。国内農業の持続可能性を保つために、早急な対策が必要です。

さらに食料自給率の問題があります。消費者庁の資料によると、日本の食料自給率(カロリーベース)は37%にすぎず、先進国の中では最低水準です。さらに、6割の食料を輸入している一方で、日本国内では年間570万トンもの食品ロスがあります[14]。これは、世界で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(2020年で年間約420万トン)の1.4倍に相当します[15]

輸入に頼っていながら多量の食品ロスを発生させている現状は持続可能とはいえません。
ロスを減らすと同時に、まだ食べられる状態のものを有効に活用する取り組みが求められています。なお食品ロスの課題については、SDGsでは目標12「つくる責任使う責任」に示されています。


3. SDGs目標2「飢餓をゼロに」に企業が取り組むアプローチ法とメリット、注意点

では、目標2「飢餓をなくそう」達成のために、企業はどのような取り組みができるでしょうか?これまでに行われているアプローチ法を見てみましょう。また、企業が貧困問題に取り組むメリットや注意点も理解しておきましょう。

3-1. SDGs目標2「飢餓をゼロに」に企業が取り組むアプローチ法

飢餓や食料生産の課題解決に向けて、企業が実際に行っている取り組みの代表的なアプローチ方法4つ挙げます。

・生産技術支援・所得確保支援
・栄養改善
・食品ロス削減マッチング
・代替食の開発

生産技術支援・所得確保支援

途上国の生産者に対して、生産性を向上させるための技術ノウハウ共有をはじめ、高品質の種子肥料の提供、収穫から市場販売におけるシステムづくりのような所得確保支援などが行われています。

栄養改善

飢餓に陥っている人々が自ら食料を入手できるようになることを支援する、食料へのアクセス改善が挙げられます。また、栄養知識や栄養価の高い食品の提供をしています。

食品ロス削減マッチング

まだ食べられる食料を廃棄せず、飢餓や貧困で苦しむ人々に再分配したり、別のものの材料として再活用したりする目的で、マッチングアプリ開発やフードシェアリングサービスが進められています。

代替食の開発

環境負荷が大きい畜産食肉の代替として、環境負荷の低いタンパク質源が開発されています。例えば、大豆を使って肉の食感に近づけた大豆ミート、動物の細胞を体外で組織培養することで肉を製造する培養肉、畜産よりはるかに環境負荷の低い昆虫食などが挙げられます。

以上、企業はこうしたアプローチで、食料安全保障、栄養改善、生産性の向上などの課題に向けた取り組みを行っています。

3-2. SDGs目標2「飢餓をゼロに」に企業が取り組むメリット

SDGsに取り組むこと自体、企業イメージの向上や資金調達が有利になるというメリットがあります。それに加え、飢餓の課題ならではのメリットも期待できるので確認しておきましょう。

・ブランド価値の向上
・新しいビジネスモデルの確立
・将来性のある産業で事業展開できる

ブランド価値の向上

飢餓という社会課題に取り組む企業としての、ブランド価値が向上します。さらに海外の飢餓問題に取り組めば、グローバル市場におけるブランディングの確立にもつながります。

新しいビジネスモデルの確立

問題解決のために新規事業に参入したり、パートナー企業などと協働で事業を行ったりすることにより、新たな事業機会を獲得することができます。

将来性のある産業で事業展開できる

農業をはじめ食産業は生活に欠かせないインフラの一部です。その上世界の人口増加や食料需要の増加、健康志向の向上が予測されているため、食料関連ビジネス今後の成長が期待されており、これから伸びる可能性の高い産業で事業を展開できます。

以上が、主なメリットです。

3-3. SDGs目標2「飢餓をゼロに」に、企業が取り組む際の注意点

こうしたメリットがある一方で、以下のような注意点もあるので事前に把握しておきましょう。

・気候変動の影響を受けやすい
・単独でのビジネス展開が難しい

気候変動の影響を受けやすい

農畜産物は、気候変動の影響を強く受けます。そのため、作物に関わる取り組みを行う場合、気候変動の影響の軽減や、気候の変化を利用して新しい品種をつくるなどの対応策が不可欠になってきます。

単独でのビジネス展開が難しい

取り組みをスタートし、事業として継続させるためには、飢餓に苦しんでいる人々の事情やニーズ、海外であれば法体制や慣習などの徹底的な調査が重要となります。そうした情報収集は容易ではないため、自社単独でビジネスを展開するのは難しく、現場に密着している団体や機関、組織などのパートナーとの協力が不可欠です。

以上が、取り組む上での注意点です。メリットと注意点をしっかり押さえた上で、取り組みを検討しましょう。

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4. SDGs目標2「飢餓をゼロに」日本&海外企業の取り組み事例5選

それでは最後に、目標2「飢餓をゼロに」に対する企業の取り組み事例を5つ紹介します。

4-1. SDGs目標2 日本企業の取り組み事例

まず目標2「飢餓をゼロに」に取り組む日本企業の事例を3つ紹介します。ここで紹介する企業は、外務省のウェブサイト「JAPAN SDGs Action Platform」の「ジャパンSDGsアワード[16]」、または農林水産省のウェブサイト「SDGs×食品産業」の企業一覧から選出しています。

・味の素グループ
・株式会社日本フードエコロジーセンター
・敷島製パン株式会社(パスコ)

味の素グループ
ニーズに合った製品で栄養バランスを向上

味の素グループは、世界各国のさまざまな人々の栄養ニーズに基づき、栄養バランスを向上させる製品を供給しています。たとえば2009年に立ち上げたガーナ栄養改善プロジェクトでは、アミノ酸を含む栄養補助パウダーである「KOKO Plus(ココプラス)」の開発・製造・販売を通じ、離乳期の子どもの栄養不良の改善に貢献しています。

またインドネシアでは、子どもの低体重、発育阻害、貧血の割合が高いという社会問題に対し、2018年度よりボゴール農科大学の栄養学科と協働して学校給食プロジェクトを実施。10代の生徒を対象に栄養バランスの良い給食の提供栄養教育を実施し、行動変容や貧血状態の改善につなげています。

株式会社日本フードエコロジーセンター
食品廃棄物を飼料として有効活用

日本フードエコロジーセンターは、関東近郊の180の事業所から食品残さを受け入れ、それを再利用して良質な飼料を製造しています。この飼料「リキッド・エコフィード」は産学官連携で開発され、輸入飼料の代替とすることで飼料自給率の向上に貢献しています。

また、同社の飼料を一定割合以上用いて飼養された豚肉をブランド化し,養豚事業者や製造業,小売りなどのステークホルダーと協働して販売するなど、循環型のビジネスモデルを構築しています。

敷島製パン株式会社(パスコ)
国産小麦の利用率を上げ安定供給を目指す

製パンメーカーとしてパンを安定的に供給する責務を果たすために、パスコは国産小麦使用比率を上げる活動に積極的に取り組んでいます。国産小麦を使用した商品ラインアップの充実、既存商品への国産小麦利用の拡充を進め、2030年までに国産小麦の使用比率20%をめざしています。

また、世界の人口増加による未来の食料不安に備え、持続的な食料の安定供給の一環として、貴重なタンパク源で地球環境にも優しい昆虫食に着目。「Korogi Cafe」シリーズを開発し発売しました。

4-2. SDGs目標2 海外企業の取り組み事例

続いて海外企業の「飢餓をゼロに」への取り組み事例2つ見てみましょう。「2022 Global 100(2022年 世界で最も持続可能な100社)[17]」のランクイン企業と「SDG INDUSTRY MATRIX 日本語版-食品・飲料・消費財」に掲載されている企業から紹介します。

・クリスチャン・ハンセン(デンマーク)
・ダノン(フランス)

クリスチャン・ハンセン(デンマーク)
収量を増加させるバイオ製品を開発

クリスチャン・ハンセンは、食品、栄養、製薬、農業の各業界向けに原料を提供しているバイオサイエンス企業です。日本ではビフィズス菌Bb-12を開発した企業としても有名で、「Global 100」では2021年(24位)、2020年(2位)と連続でランクインし評価を受けています。

同社はFMCコーポレーション(米国、農業化学製品会社)との戦略的提携により、微生物を用いた植物の病気を防ぐ植物防疫製品「Nemix® C」を2013年に発売。根の発達と保護を強化することでサトウキビの収量を10%増加させることが可能な製品で、農業の生産効率を向上させることに貢献しています。

ダノン(フランス)
学校内食堂支援で子どもの健康食品アクセスを促進

ダノンはステークホルダーの成長や発展につながる支援を行うため、2009年に「エコシステムファンド」を設立し、これまで世界各地の90のプロジェクトを支援してきました。

例えばインドネシアでは、ダノンインドネシアとその地元のパートナーであるインドネシアフードバンクと共同で、「WarungAnakSehat」(「Canteen Ladies」とも呼ばれる)プロジェクトを立ち上げ、女性起業家による健康食品を扱う学校内食堂のネットワークづくりを支援。健康的な食品だけでなく、保護者、教師、学校の子どもたちに栄養教育も提供し、子どもたちの健康食品へのアクセスを促進させました。これにより、女性起業家のサポート雇用創出、子どもの栄養不良の改善を実現しました。

以上、国内企業と海外企業の取り組み事例を5件紹介しました。

こうした飢餓や食料問題に対する取り組みがビジネスモデルとして世界に広まり、2030年に向けてより多くの課題が解決されることが期待されています。これから飢餓・食料課題に取り組もうとしている企業の方は、ぜひこれらの事例を参考してみてください。

食料問題を救う!「フードテック」の開発事例

 

飢餓や栄養不良といった課題への直接的な取り組みの他に、食料問題の解決策の一つとしてフードテックの活用が大いに期待されています。

 

フードテックは、フードとテクノロジーを組み合わせた造語。先端テクノロジーを用いた取り組みやサービスが食材の生産・製造に加わることで、農業食品ロスなどの社会課題に対して新たな付加価値を生み出しています。その応用例の一部をご紹介します。

 

植物工場

 

植物工場とは、太陽光をLED、土を培養土などで代用し、内部環境を徹底管理しながら野菜や苗を育てるものです。屋内での栽培のため、生産量が天候や害虫の影響を受けにくく、あらゆる地域で安定的に食料が得られるようになると期待されています。

 

たとえば日本のスタートアップ企業、株式会社プランテックスは、人工光型植物栽培装置及び植物成長管理システムを開発。さらに株式会社クボタの出資を受け、現在マザー工場も建設予定です。

 

画像)プランテックスが開発した人工光型植物栽培装置

SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説
引用元)
株式会社クボタ「ニュースリリース「日本のアグリテック企業に資本参加」」, 2020年11月30日, https://www.kubota.co.jp/news/2020/20-69j.html (閲覧日:2022年5月17日)

 

タンパク源の新素材 

 

タンパク源の代替食品や環境に優しい食品として、代替肉培養肉昆虫食の開発が注目を浴びています。

 

大豆などの植物由来原料で代替肉を製造開発しているBEYOND MEATやImpossible Foodsなどの米国企業が有名です。BEYOND MEATはマイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏が出資していることでも知られています。

 

また、株式会社ニップンが開発した「SOYL PRO(ソイルプロ)」は、豆腐を原料とした、一般的な粒状大豆たんぱく (大豆ミート)と異なる新素材です。

 

昆虫食では、フードテックベンチャーの株式会社グリラスが、徳島大学との研究をもとに、安心・安全で高品質な食用コオロギを開発し販売。また、株式会社良品計画との共同開発で「コオロギせんべい」や自社ブランド「C.TRIA」を展開しています。

 

画像)無印良品の「コオロギせんべい」

SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説
引用元)
良品計画「ニュースリリース「無印良品 コオロギせんべい ネットストア先行販売のお知らせ」」, 2020年5月13日,https://ryohin-keikaku.jp/news/2020_0513.html (閲覧日:2022年5月17日)

 

ロボット技術

 

ロボット技術は、人手不足対策・省力化にも貢献しています。農作業や収穫、調理をサポートするロボットが開発されています。

 

例えば、ヤンマーホールディングス株式会社は無人走行テクノロジーを使った農業用トラクター「ロボットトラクター」を開発しました。タブレットによる遠隔操作で農作業を熟練並みの高精度でこなし、農作業の省力化効率化に貢献すると期待されています。

 

画像)ヤンマーのロボットトラクター
SDGs目標2「飢餓をゼロに」食料課題と企業の取り組み5つを解説
引用元)
ヤンマー,ニュースリリース「『Society 5.0 科学博』にロボットトラクターを展示」, 2021年7月8日, https://www.yanmar.com/jp/agri/news/2021/07/08/95045.html(閲覧日:2022年5月17日)

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5. まとめ

SDGsの目標2は、正式には「飢餓をゼロに―飢餓を終わらせ、食料の安定確保栄養状態の改善を実現し、持続可能な農業を促進する」です。

簡単に言うと、飢えに苦しむ人をゼロにし、全ての人が一年中安全栄養のある食料を得られるようにし、環境を守り続けながら農業を進めることを目指すものです。

SDGsにおいて目標2「飢餓をなくそう」が必要な理由は、現在、世界には飢餓で栄養不良の状態で苦しむ人々が約8億1100万人、つまり世界人口の10 人に一人の割合で存在しているからです。

もう一つは、将来の世界の人口増加食料需要の増加に備えるためです。

飢餓や食料問題の実態を見ると、世界の場合は 「飢餓人口増加」「食品ロス」、日本の場合は「相対的貧困者の飢餓」「農業人口の減少」「輸入依存」といった問題や課題が挙げられます。

こうした飢餓や食料の課題解決に向けて、企業は以下のようなアプローチ取り組みを行っています。

・生産技術支援・所得確保支援
・栄養改善
・食品ロス削減マッチング
・代替食の開発

目標2「飢餓をゼロに」に企業が取り組む際には、以下のようなメリットが期待できます。

・ブランド価値の向上
・新しいビジネスモデルの確立
・将来性のある産業で事業展開できる

また、目標2「飢餓をゼロに」に企業が取り組む場合、注意点は以下のようなものが挙げられます。

・気候変動の影響を受けやすい
・単独でのビジネス展開が難しい

実際に日本企業が行っている「飢餓をゼロに」への取り組みを、外務省の「JAPAN SDGs Action Platform」または農林水産省の「SDGs×食品産業」に掲載されている企業から3つ紹介しました。

・ニーズに合った製品で栄養バランスを向上:味の素グループ
・食品廃棄物を飼料として有効活用:日本フードエコロジーセンター
・国産小麦の利用率を上げ安定供給を目指す:敷島製パン株式会社(パスコ)

海外企業の取り組み事例は、「2022年Global 100」または「SDG INDUSTRY MATRIX-食品・飲料・消費財」をもとに企業を選び紹介しました。

収量を増加させるバイオ製品を開発:クリスチャン・ハンセン(デンマーク)
・学校内食堂支援で子どもの健康食品アクセスを促進:ダノン(フランス)

これらの事例は、自社の本業を通して飢餓問題や食料問題の解決につなげている点や、他の企業や組織と共同で取り組みを生み出している点で高い評価を受けています。

こうした事例がビジネスモデルとして世界に広まり、2030年に向けてより多くの企業が目標2「飢餓をゼロに」を目指すことが求められています。

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[1] 国際連合食糧農業機関(FAO)「世界の食料ロスと食料廃棄」, p.5, https://www.fao.org/3/i2697o/i2697o.pdf(閲覧日:2022年4月11日)
[2] 慶應義塾大学SFC研究所xSDG・ラボ,「SDGsとターゲット新訳 Ver.1.2(2021.3)」, https://xsdg.jp/pdf/SDGs169TARGETS_ver1.2.pdf(閲覧日:2022年2月28日)※太字部分は編集部にてボールド加工
[3] 2001 年 11 月のドーハ閣僚会議で開始が決定された、世界貿易機関(WTO)発足後初となるラウンドのこと。閣僚会議の開催場所(カタールの首都ドーハ)にちなんで「ドーハ・ラウンド」と呼ばれるが、正式には「ドーハ開発アジェンダ」と言う。
[4]株式、債券、為替などの元になる金融商品(原資産)から派生して誕生した金融商品のこと。
[5] 国際農林水産業研究センター「340.「 2021年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」概要」,https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210720 (閲覧日:2022年5月2日)
[6]農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室「2050年における世界の食料需給見通し」,.10https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_mitosi/attach/pdf/index-12.pdf(閲覧日:202252日)
[7] 国際農林水産業研究センター国連世界食糧計画(WFP)「340. 2021年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」概要報告2021年度版」https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210720 (閲覧日:2022年5月2日)
[8] 国連WFP他「The State of Food Security and Nutrition in the World 2021」, CHAPTER 2 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD,p.10 , https://doi.org/10.4060/cb4474en (閲覧日:2022年5月2日)
[9] WFP国連世界食糧計画「ニュースリリース 「国連報告書: パンデミックの年に世界の飢餓が急増」」,2021年7月12日,https://ja.wfp.org/news/un-report-pandemic-year-marked-spike-world-hunger(閲覧日:2022年5月2日)
[10] 国連広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告2020概要」,https://www.unic.or.jp/files/SDGsReport-2020-Overview_Japanese.pdf https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/sdgs_report/sdgs_report_2020/(閲覧日:2022年5月2日)
[11] 農林水産省「aff」,2020年10月号, https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html (閲覧日:2022年5月2日)
[12] 内閣府「令和3年 子供の生活状況調査の分析 報告書 2.1保護者の生活状況」p.26, https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r03/pdf/s2-1.pdf (閲覧日:2022年5月2日)
[13] 農林水産省「令和2年度食料・農業・農村白書の概要」, p.20, https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r2/pdf/r2_gaiyou_all.pdf(閲覧日:2022年5月2日)
[14] 農林水産省「~食品ロス量(令和元年度推計値)を公表~」, https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/211130.html (閲覧日:2022年5月2日)
[15] 消費者庁消費者教育推進課「食品ロス削減関係参考資料」, https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/food_loss/education/ (閲覧日:2022年5月2日)
[16] ジャパンSDGsアワードとは、SDGs達成に向けて優れた取り組みを行っている、企業や団体などをSDGs推進本部として表彰するもの。NGO・NPO、有識者、民間セクター、国際機関等の広範な関係者が集まるSDGs推進円卓会議構成員から成る選考委員会の意見を踏まえて決定されます。2021年にはその第5回が行われている。
[17] 「Global 100」とは、カナダの出版・調査企業である「Corporate Knights」社により2005年にスタートしたSDGs達成に貢献している企業のランキング。「Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (世界で最も持続可能な100社)」とも呼ばれ、世界経済フォーラム(WEF)がスイスのダボスで開催している年次総会(ダボス会議)で毎年発表され注目されている。

参考)
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター「2021年世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)概要」, https://www.jircas.go.jp/ja/program/proc/blog/20210720(閲覧日:2022年5月6日)
国際連合『持続可能な開発目標(SDGs)報告2021』, 2 ZERO HUNGER, https://unstats.un.org/sdgs/report/2021/goal-02/(閲覧日:2022年5月6日)
農林水産省大臣官房政策課食料安全保障室「2050年における世界の食料需給見通し」,
p.5,p.10, https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_zyukyu_mitosi/attach/pdf/index-12.pdf (閲覧日:2022年5月6日)
国際連合経済社会局「世界人口推計 2019年版 データブックレット」, p.1, https://www.unic.or.jp/files/15fad536140e6cf1a70731746957792b.pdf (閲覧日:2022年3月31日)
内閣府政策統括官(政策調整担当)「令和 3 年子供の生活状況調査の分析報告書
」, https://www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/chousa/r03/pdf/print.pdf (閲覧日:2022年3月31日)
農林水産省,プレスリリース「~食品ロス量(令和元年度推計値)を公表~」,令和3年11月30日, https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/211130.html (閲覧日:2022年3月31日)
農林水産省, プレスリリース添付資料,「日本の食品ロスの状況(令和元年度)」,令和3年11月30日, https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/attach/pdf/211130-5.pdf (閲覧日:2022年3月31日)
WFP国連世界食糧計画, ニュースリリース「国連報告書: パンデミックの年に世界の飢餓が急増」,2021年7月12日, https://ja.wfp.org/news/un-report-pandemic-year-marked-spike-world-hunger(閲覧日:2022年3月31日)
岩坂 健志「BOPビジネスの成功事例にみるリスクマネジメント:成功要因の開発経済学的視点からの分析と特徴」, 危険と管理, 41巻, p.104-116, 2010, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarms/41/0/41_104/_pdf/-char/ja(閲覧日:2022年3月31日)
農林水産省,SDGs×食品産業「17の目標と食品産業とのつながり:目標2に対する取組」,https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/goal_02.html#goal_top(閲覧日:2022年3月31日)
味の素グループ「サステナビリティデータブック2021」,p.35,https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/ir/library/databook/main/00/teaserItems1/02/linkList/0/link/SDB2021jp_all%20(1).pdf (閲覧日:2022年5月6日)
外務省, JAPAN SDGs Action Platform,ジャパンSDGsアワード「第2回「ジャパンSDGsアワード「株式会社日本フードエコロジーセンター」, https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/award2_1_nihonfoodecology.pdf(閲覧日:2022年3月31日)
CHR HANSEN「Can plant microbes help feed the world?」,https://www.chr-hansen.com/en/sustainability/innovating-for-a-sustainable-future/can-plant-microbes-help-feed-the-world (閲覧日:2022年3月31日)
健康産業オンライン「特集【SDGs】世界中に広がるSDGsの波」,2020年6月1日, https://www.kenko-media.com/health_idst/archives/14075 (閲覧日:2022年3月31日)
Corporate Knights「2022 Global 100」,https://www.corporateknights.com/rankings/global-100-rankings/2022-global-100-rankings/100-most-sustainable-corporations-of-2022/ (閲覧日:2022年3月31日)
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン,「SDG Industry Matrix日本語版」, https://www.ungcjn.org/activities/topics/detail.php?id=204 (閲覧日:2022年3月31日)
DANONE ecosysteme, WARUNG ANAK SEHAT, http://ecosysteme.danone.com/projectslists/warung-anak-sehat/ (閲覧日:2022年5月6日)
Dannon, Press Release, 2021年6月28日,「Danone Ecosystem Fund’s CANTEEN LADIES Project Wins The 2021 GEEIS-SDG Award For Its Solutions Addressing Economic And Health Challenges In Indonesia」, https://www.danone.com/media/press-releases-list/danone-eosystem-fund-geeis-sdg-award-20211.html (閲覧日:2022年3月31日)
フードテックラボ制作委員会/農林水産省大臣官房政策課, FOOD TECH Lab, https://foodtech-lab.jp/casestudy/ (閲覧日:2022年3月31日)
経済産業省「【フードテックの旗手】植物工場の概念一新 密閉空間で完全制御」,『METI Journal ONLINE』,2021年04月13, https://journal.meti.go.jp/p/15120/(閲覧日:2022年3月31日)
ニップン「環境配慮商品」, https://www.nippn.co.jp/csr/environment/eco/1223004_10541.html (閲覧日:2022年3月31日)
国際連合広報センター「持続可能な開発目標 カラーホイールを含むSDGsロゴと17のアイコンの使用ガイドライン」, https://www.unic.or.jp/files/SDG_Guidelines_AUG_2019_Final_ja.pdf(閲覧日:2022年3月31日)

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