「VUCAの時代でも揺るぎなく前進できる組織をつくりたい。どうすればよいだろうか?」
新型コロナウイルスの流行は、企業のテレワーク導入を一気に推し進めました。しかし、感染拡大という待ったなしの状況の下、十分な環境整備ができないままテレワークを開始した企業も多いのではないでしょうか。
うまく活用できれば生産性の向上も期待できるテレワークですが、その反面、丁寧な運用を怠ると従業員の心身の健康を損ねたり、チームワークの悪化を招いたりするリスクがあります。
物理的にマネジメントの目の届かない時間が増える中、根本的にはどのような対策を取ればよいのでしょうか。
そこで本稿では、テレワーク成功のポイントとして、テレワーク先進国であるアメリカで近年注目されている「コネクション・カルチャー」について、マイケル・リー・スタラッド氏の著書「connection culture」を基にご紹介します。
コネクション・カルチャーは、従業員同士の心のつながりをマネジメントに活用する考え方です。
テレワークを新たな働き方を実現するチャンスと捉え、しっかりと定着させたいと考えている企業には、きっと参考になるはずです。ぜひご一読ください。
「コネクション・カルチャー」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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目次
1. コネクション・カルチャーとは 従業員同士の心のつながりを大切にする企業文化
まずは、コネクション・カルチャーとは何か、その効果や注目される背景などについて、具体的に見ていきましょう。
1-1. 組織の生産性を高めるコネクション・カルチャー
コネクション・カルチャーとは、2000年代にアメリカのマイケル・リー・スタラッド氏[1]によって提唱された組織文化の1つです。
コネクション・カルチャーが醸成されている組織では、他者との心のつながりや関係性が重んじられ、一人一人が互いに信頼・協力し、共感と理解に基づく「精神的な絆」で結ばれています。
近いイメージとしては、日本語の「一体感」が該当します。ジョブ型雇用の欧米企業と比べ、メンバーシップ型雇用で従業員を囲ってきた日本企業にとっては、ごく当たり前のなじみのある文化ともいえるでしょう。
しかし、コネクション・カルチャーと日本で育まれてきた従来の一体感との間には違いがあります。それは、従業員を結ぶ絆の質です。
日本企業に存在する一体感の多くは、企業を「イエ」とする集団主義がその根底にあります。従業員の間には同質性をベースとした固い絆ががっちりと形成され、場の空気という無言の圧力によって全体が1つの色に染まっていきます。
考え方や価値観は似通ったものになり、コミュニケーションやマネジメントはしやすい半面、個々の異質性、多様性はなかなか生かされず、個人の実力はある一定レベルで止まってしまいます。
一方で、コネクション・カルチャーが醸成されている組織では、従業員は多様性をベースにした強くしなやかな絆で結ばれています。
他者とのつながりは感じつつも、個々の色はむしろ大切な個性や強みとして認め、生かし合います。そうして、個々が持てる力を最大限引き出し伸ばすことで、組織全体の潜在能力がぐっと高まります。
実際、コネクション・カルチャーの効果として、従業員の心身の健康増進やパフォーマンス改善、組織の収益性アップなどが報告されています。
例えば、神経科学や内分泌学の研究者らによって、「精神的な絆」について以下の効果が実証されています。
・ドーパミンを増加させ、注意力や喜びを高める
・セロトニンを増加させ、恐怖や心配を減らす
・バソプレッシンやオキシトシンを増加させ、他者への信頼感を高める
・ストレスホルモンを減少させ、合理的な意思決定を促進する
コネクション・カルチャーは、異なる時間、異なる場所で異なる価値観を持って働く人々をつなぎ、仕事を助けるセーフティネットといえるでしょう。
1-2. コネクション・カルチャーが注目される背景
コネクション・カルチャーが注目される背景には、近年の人々の孤独感の増加が挙げられます。
これまで、スピード社会の中で生き残るため、労働者はより早くより多くの利益を上げることが求められてきました。しかしその結果、職場の人間関係は着実に希薄化していきました。
心のつながりを感じられるような充実した人間関係を築くための十分な時間を確保することができず、組織に属していながらも孤独を感じる人が増えています。
それは結果的に、1-3で後述する通り、組織全体の生産性を低下させ、本末転倒の状態に陥ることにつながります。
テレワークなど働き方が多様化し、同じ時間、同じ場所で働く機会が減りつつある今、他者との心のつながりを感じながら働くことは、今まで以上に難しくなっています。
しかし、人間は無機質な機械ではなく、心があり、感情があります。そして、労働の根幹を担うのも人間です。
持続的に成果を上げるためには、働き手が支え合い、認め合いながら生き生きと働くことのできる環境が必要です。組織には、意識的に従業員のつながりを維持・創出する工夫や努力が求められます。
具体的で目に見える数字やタスクと違い、心のつながりは可視化することが難しく見過ごされがちです。
しかしその分、伸び代は大きく、改善することができれば組織にとっては大きなチャンスになるといえるでしょう。
1-3. コネクション・カルチャーの対極は「支配の文化」「無関心の文化」
『コネクション・カルチャー』の著者マイケル・リー・スタラッド氏によると、組織文化は、コネクション・カルチャーと支配の文化(culture of control)と無関心の文化(culture of indifference)の3種類に大別されます。
支配の文化(culture of control) では、特定の地位や権力を持つ人が他者をコントロールします。人々は疎外感や不安感を抱き、失敗を恐れて挑戦や意見を述べることを拒むようになるため、組織はイノベーションの機会を失います。
また、もう1つの無関心の文化(culture of indifference)では、人々の優先事項はお金や地位を得ることであり、周囲との健康的で協力的な関係構築についてはあまり注意が払われません。従来型の組織に多く見られる文化でもあり、従業員は代替可能な組織の歯車として、個としての存在感や重要性を意識することなく働きます。
これら2つの組織では、従業員の健康度や生産性が低下するといわれています。従業員が孤独感やストレスを抱えやすく、不安を感じたり、うつ病や依存症などに陥ったりするリスクが高くなるためです。
実際、ハーバード大学の精神科医エドワード氏によると、精神科を受診するビジネスパーソンのほとんどは、他者とのつながりがない、または少ない環境に置かれていて、孤独や混乱、不信感などのネガティブな心理状態を訴えていることが明らかになっています。
そのため、自社や自チームの文化が支配の文化(culture of control)や無関心の文化(culture of indifference)に当てはまる場合は、文化をコネクション・カルチャーへと変革していくことが重要です。
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2. コネクション・カルチャーを構成する3つの要素
コネクション・カルチャーは、以下3つの要素で構成されています。
(2) バリュー(value)
(3) ヴォイス(voice)
(1) ビジョン(vision)
まず1つ目は、ビジョンです。ビジョンとは、事業を通じて目指す将来の姿・状態です。有名どころだと、以下のようなものがあります。
・Think different(Apple Inc.)
・服のチカラを、社会のチカラに(株式会社ファーストリテイリング)
・世界の人々から最も必要とされる企業グループ(ソフトバンク株式会社)
ビジョンが浸透している組織では、一人一人が仕事に誇りを持ち、目標に向かって一致団結して突き進みます。
例えば、国際的な化粧品ブランドであるThe body shopの創設者Anita Roddickは、社会貢献とビジネスの両立をビジョンに掲げ、環境に優しく、動物実験によらない製品開発に取り組みました。
また、生産については、「援助ではなく取引を!」をモットーに発展途上国の女性たちと契約し、彼女たちの安定した雇用と収入の確保を実現させました。
これらの取り組みは、結果として顧客や従業員の心を強く引き付け、商品を差別化し、何年もの間、不況知らずの成長率を維持することにつながりました。
(2) バリュー(value)
コネクション・カルチャーの構成要素、2つ目はバリューです。バリューとは、従業員を人として尊重することです。
バリューがしっかりしている組織では、労働における人間の普遍的欲求[2]を正しく理解した上で、従業員を気遣ったり配慮したりします。また、一人一人の個性を大切にし、強みを引き出し生かすことで、個人の成長を後押しします。
例えば、米国大手企業情報サービスのダン&ブラッドストリート(Dun & Bradstreet Corp.)では、毎週月曜日と金曜日には出張の必要な会議を禁止し、従業員のプライベートな時間が十分に守られるように配慮しました。
また、従業員の成長を重んじ、従業員一人一人に対して最適なメンターを選出し、継続的にフィードバックを受けられる体制を作りました。
(3) ヴォイス(voice)
コネクション・カルチャーの構成要素、3つ目は、ヴォイスです。ヴォイスとは、言い換えると風通しの良さであり、ヴォイスを重んじる組織では、意思決定者は謙虚な姿勢で周りからの意見を求め、周囲の人々もまた、安心感を持って正直に自分の考えを共有します。
これは、最善策を探す手助けになるだけでなく、メンバーがお互いについてよく知り、尊敬や承認、所属といった人間の普遍的欲求を満たしながら絆を育むことにつながります。
例えば、2000年、ゼロックス(Xerox Corporation)は倒産寸前でした。CEOは米連邦破産法を申請するようアドバイスを受けていましたが、それを受け入れる代わりに、彼女は1年間でおよそ16万kmの距離を移動しながら、自ら従業員や顧客の元に出向き率直な意見交換をしました。
そして、集まったアイデアの中から最も良いものを実行に移し、その後10年で同社は見事、息を吹き返しました。
3. コネクション・カルチャーのメリット
本章では、コネクション・カルチャーの具体的なメリットをご紹介します。
(2) エンゲージメントの向上
(3) 意思決定の質の向上
(4) イノベーションの促進
(5) サスティナビリティの向上
(1) 生産性の向上
コネクション・カルチャーは、組織の生産性を向上させます。なぜなら、つながりは従業員の心身の健康を増進させ、パフォーマンスを改善する効果があるためです。
心身の健康は、従業員の創造性を豊かにし、意思決定の質を高め、働く情熱とエネルギーをもたらします。
Corporate Leadership Councilが2004年に世界5万人を対象に行った研究では、職場でつながりを実感している従業員は、平均的な従業員よりも20%生産性が高く、離職する可能性は87%低くなることが明らかになっています。
また、The Hay group(2010)によると、7年以上にわたって400以上の企業を調査した結果、エンゲージメントとコネクションの得点が高い上位4分の1の企業は、下位4分の1の企業の2.5〜4.5倍増収していることが分かっています。
(2) エンゲージメントの向上
コネクション・カルチャーは、従業員のエンゲージメントを向上させます。つながりを感じている従業員は、個人の利益よりも組織目標を重んじる傾向があり、組織目標に標準を合わせて、達成に向け行動を起こすためです。
ギャラップ(Gallup, Inc.)が2017年に行った調査では、過去10年間、労働者の5人に1人は組織の利益に反して働いていることが明らかになっていますが、しっかりとつながりを醸成することで、組織を同じ方向へ引っ張る人の割合を増やすことができます[3]。
(3) 意思決定の質の向上
コネクション・カルチャーは、意思決定の質を高めます。なぜなら、コネクション・カルチャーの中では、互いへの信頼をベースに、従業員間で日頃から密に情報交換が行われるためです。
また、つながりを感じている従業員は、たとえ意思決定者が聞きたくない場合でも、組織のパフォーマンス改善など必要な場合は声を上げて情報を共有します。そのため、組織やリーダーは、最適な意思決定を行うために必要な最良の情報を得ることができます。
(4) イノベーションの促進
コネクション・カルチャーは、組織のイノベーションを促進します。なぜなら、つながりを感じている従業員は、積極的に組織の改善点や新たなアイデアを模索し、提案を行うためです。
さまざまな領域から多様なアイデアを集め掛け合わせることは、製品やサービス、プロセスのイノベーションにつながります。
(5) サスティナビリティの向上
コネクション・カルチャーは、組織のサスティナビリティを向上させます。なぜなら、つながりのレベルの高い組織では、従業員同士が日常的によくコミュニケーションを取り、協力し合い、活発にコラボレーションを行っているためです。
これは、外部環境の変化を敏感に捉え、ビジネス上のチャンスやリスクを特定し、対処することにつながります。
世界がより複雑でダイナミックに変化していく中、組織が持続的に発展し生き残るために必要な俊敏性と適応力を高めます。
4. コネクション・カルチャーを醸成するポイント
では、実際にコネクション・カルチャーを醸成するにはどうすればよいのでしょうか。本章では、コネクション・カルチャーを醸成・維持するためのポイントをご紹介します。
4-1. コネクテッドメンバーとコネクテッドリーダー
コネクション・カルチャーを醸成する鍵を握るのが、「コネクテッドメンバー」と「コネクテッドリーダー」と呼ばれる人々です。
コネクテッドメンバーは、2章でご紹介した「ビジョン」「バリュー」「ヴォイス」というコネクション・カルチャーの構成要素を理解・実践し、組織に働き掛けることができる従業員です。職種や役職は関係なく、ある人はシニアマネージャーだったり、ある人は受付係だったりします。
コネクテッドリーダーは、コネクテッドメンバーの中でも、コネクション・カルチャーの体現者として周囲の手本となり助言を行う、コネクション・カルチャーの醸成を牽引する従業員です。
コネクテッドリーダーは、サーバントリーダー(奉仕するリーダー)とも表現され、地位や権力による統制ではなく、周りに奉仕し尽くすことで、周りを導いていく、という姿勢を持っています。
コネクテッドメンバーとコネクテッドリーダーは影響し合いながら、2章でご説明したビジョン、バリュー、ヴォイスを内包した暖かい信頼関係の中で、素晴らしい成果を出します。
その結果、周囲の人々も次第につながりを感じるようになり、組織目標に向かってモチベーションを高く持ち、互いに協力しながら最善を尽くすようになります。こうして、組織は持続的に高い成果を上げることができるようになります。
なお、コネクテッドメンバーやコネクテッドリーダーが社内にいない、または少ない場合は、コネクションを強化するスキルを持った人を採用したり、教育を施したりすることで増やすことができます。
図2 コネクション・カルチャー
4-2. コネクション・カルチャーを持続させる
コネクション・カルチャーを組織に根付かせるためには、元々ある支配の文化(culture of control)や無関心の文化(culture of indifference)を変えていく必要があり、そのためには一貫した努力や工夫が求められます。
具体的なステップとしては、以下の5つが挙げられます。
(2) アクションプランを検討・実行する
(3) 定期的にサーベイを行う
(4) メンターを置く
(5) コネクションを促す行動を褒めたたえて周知する
(1) マインドを変える
コネクション・カルチャーとは何か、なぜ必要なのか、どのように醸成・維持するのかなど、コネクション・カルチャーや、その重要性について従業員が理解し納得できるよう促します。
例えば、コネクション・カルチャーの書籍を薦めたり、コネクション・カルチャーに関連する以下の題材について考える機会を設けたりするとよいでしょう。
・ダイバーシティ&インクルージョン
・心理的安全性
・レジリエンス
・サーバントリーダーシップ
・AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
・コンフリクトマネジメント
(2) アクションプランを検討・実行する
コネクション・カルチャーを醸成するためのアクションプランを検討し、実行します。検討する際は、実行のしやすさや効果の大きさを考慮します。具体的には、次のような項目が挙げられます。
・従業員を鼓舞し、団結を促すキャッチフレーズを考える
・個々の強みや興味・関心に合った仕事をアサインする
・将来の夢や出身地など、仕事に関係のない雑談をする時間を設ける
・トップがメンバーに目標達成までの進捗状況や今後の戦略について話し、質問を受ける機会を設ける
・現在の悩みや信念、過去の失敗談や教訓について、オープンに話をする機会を定期的に設ける
(3) 定期的にサーベイを行う
組織の文化は、チームや部署などより細かい単位の文化の集まりです。また、各集団間のつながりが崩壊していると、従業員のエンゲージメントにも影響します。
そのため、全従業員にサーベイを実施し、チームや部署ごとのカルチャーの状況を確認します。具体的には、チームや部署ごとのカルチャーの種類、他のチームや部署とのつながりを確認します。
例えば、マーケティング部にはコネクション・カルチャーがあるが、営業部の文化は支配の文化であり、各チーム同士は互いに無関心である、などとチェックします。
そして、誰がコネクテッドリーダーで、誰がコネクテッドメンバーで、誰がつながりによるサポートを必要としているかを特定します。
サーベイを実施することは、各チームや部署のリーダーにコネクション・カルチャーを醸成する責任を認識させることにつながります。
(4) メンターを置く
将来のコネクテッドリーダーやコネクテッドメンバーを育成するため、(3)の結果を基にメンターとなり得る人を特定し、配置します。
従業員はメンターから影響を受けながら、次第にコネクテッドメンバーやコネクテッドリーダーへと成長していきます。
(5) コネクションを促す行動を褒めたたえて周知する
イントラネットやSNS、社内報などで、コネクテッドリーダーやコネクテッドメンバーの行いを褒めたたえます。手本となる行動を具体的に示すことで、他の人も同様に振る舞うよう促します。
以上が、コネクション・カルチャーを醸成・維持するためのポイントです。
採用から育成・配置まで多角的なアプローチが求められますが、上記のポイントを押さえながら地道に取り組みを続けることで、コネクテッドメンバーやコネクテッドリーダーを徐々に増やし、コネクションの輪を広げていくことができます。
5. コネクション・カルチャーの導入事例
コネクション・カルチャーを実際に導入した企業は、どのようなことに取り組み、その結果どのような効果を得たのでしょうか。
本章では、米自動車大手のフォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company)の成功事例をご紹介します。
2000年代、経営不振に陥っていたフォード・モーター・カンパニーを救ったのが、2006年にCEOに着任したアラン・ムラーリー氏です。
ムラーリー氏は「One Ford」と呼ばれる新経営戦略を掲げ、バラバラだった組織を1つにまとめることで、19四半期連続の高収益を記録するなど経営再建を果たしました。
以下、どのようにコネクション・カルチャーが醸成されたのか、ビジョン、バリュー、ヴォイスについてそれぞれ具体的に見てみましょう。
創業者ヘンリー・フォード氏のビジョン「opening the highways for all mankind(全人類に幹線道路を開く)」を従業員と共有しました。
そして、「人々に移動の自由を与え成長の機会にアクセスできるようする」という同社の存在価値や社会的意義を説明し、従業員を鼓舞し、目標達成に向け一致団結を促しました。
「One ford」、「the power of teams」といった言葉を繰り返し使用したり、「work together effectively as one team」といったフォードの16の価値観を記載した財布サイズのカードを配布したりして、チームとしての意識を高め、従業員間の信頼関係構築を促しました。
また、会議ではファシリテーターとなり他者を犠牲にしてつくられたユーモアを禁止したり、対外折衝では永続的な関係構築に向けwin-winとなるよう努めたりするなど、社内外において、相手を敵対視するのではなく認め、尊重する姿勢を示しました。
リーダーたちに、現在直面している問題はオープンにすること、自分のことばかりでなく周りへの援助を積極的に行うことを求めました。
例えば、BPR(Business Plan Review)と呼ばれる週に1度のレビュー会議では、各地のリーダーたちの目標進捗状況を、緑は問題なし、黄色は危険、赤は問題ありなどいった具合に色分けをして共有しました。そして、問題点についてはフォローアップ会議を行い、解決策について議論を交わしました。
会議中は安心して話しやすい雰囲気が保たれており、率直なフィードバックやスムーズな合意形成に役立ちました。
このように、フォード・モーター・カンパニーではCEO自らがコネクテッドリーダーとして率先して手本を示し、周囲に働き掛けることでコネクション・カルチャーの醸成に成功しました。
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6. まとめ
コネクション・カルチャーとは、2000年代にアメリカのマイケル・リー・スタラッド氏によって提唱された組織文化の1つです。
コネクション・カルチャーが醸成されている組織では、他者との心のつながりや関係性が重んじられ、一人一人が互いに信頼・協力し、共感と理解に基づく「精神的な絆」で結ばれています。
また、コネクション・カルチャーの効果として、従業員の心身の健康増進やパフォーマンスの改善、組織の収益性アップが報告されています。
コネクション・カルチャーは、異なる時間、異なる場所で異なる価値観を持って働く人々をつなぎ、仕事を助けるセーフティネットといえるでしょう。
コネクション・カルチャーが注目される背景には、近年における人々の孤独感の増加が挙げられます。
労働の根幹を担う人間は、無機質な機械ではなく、心があり、感情があります。持続的に成果を上げるためには、働き手が支え合い、認め合いながら生き生きと働くことのできる環境が必要であり、組織には意識的に従業員のつながりを維持・創出する工夫や努力が求められます。
『コネクション・カルチャー』の著者マイケル・リー・スタラッド氏によると、組織文化は、コネクション・カルチャーと支配の文化(culture of control)と無関心の文化(culture of indifference)の3種類に大別されます。
支配の文化(culture of control)と無関心の文化(culture of indifference)の組織では、従業員の健康度や生産性が低下するといわれています。
そのため、自社や自チームの文化が支配の文化(culture of control)や無関心の文化(culture of indifference)に当てはまる場合は、文化をコネクション・カルチャーへと変革していくことが重要です。
コネクション・カルチャーは、以下3つの要素で構成されています。
(1) ビジョン(vision)
(2) バリュー(value)
(3) ヴォイス(voice)
コネクション・カルチャーのメリットは、以下の5つです。
(1) 生産性の向上
(2) エンゲージメントの向上
(3) 意思決定の質の向上
(4) イノベーションの促進
(5) サスティナビリティの向上
コネクション・カルチャーを醸成する鍵を握るのは、コネクテッドメンバーとコネクテッドリーダーと呼ばれる人々です。
コネクション・カルチャーを組織に根付かせるためのステップとしては、以下の5つが挙げられます。
(1) マインドセットを変える
(2) アクションプランを検討・実行する
(3) 定期的にサーベイを行う
(4) メンターを置く
(5) コネクションを促す行動を褒めたたえて周知する
コネクション・カルチャーの導入事例としては、米自動車大手のフォード・モーター・カンパニーが挙げられます。
働く人、場所、時間の多様化が加速する中で、今後も企業が持続的に成長していくには、個々の個性を生かしつつ、組織としての一体感を従業員全員で共有することが重要です。
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[1] モルガン・スタンレーの元最高マーケティング責任者。コストコ・ホールセール・コーポレーション、Google LLC、ジョンソン&ジョンソン、米国財務省など、多くの主要な組織で講演や指導を行っている。
[2] 尊敬、承認、所属、個人の成長、仕事の意義、進歩
[3] Gallup. State of the American Workplace, State of the American Workplace, https://www.gallup.com/workplace/238085/state-american-workplace-report-2017.aspx(閲覧日:2020年12月13日)
参考)
Michael Lee Stallard ,CONNECTION CULTURE, ASTD DBA the Association for Talent Development, 2015.
Michael Lee Stallard,CONNECTION CULTURE second edition, ASTD DBA the Association for Talent Development, 2020.
Gallup. State of the American Workplace, State of the American Workplace, https://www.gallup.com/workplace/238085/state-american-workplace-report-2017.aspx(閲覧日:2020年12月13日)