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戦略人事とは?日本企業における導入のポイントや障壁、事例をご紹介

戦略人事とは?日本企業における導入のポイントや障壁、事例をご紹介

最近、「戦略人事」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。

「戦略」と「人事」が組み合わさっているのでなんとなくイメージはつかめるものの、「どのような体制を戦略人事というのか」、「導入するにはどうすればよいのか」といった疑問をお持ちの方は少なくないでしょう。

戦略人事とは、経営戦略と人事が一体化した人的マネジメントのことです。経営戦略と人事を連動させることでスピーディーかつ最適な人事配置が可能になります。

昨今の日本経済は、少子高齢化による生産年齢人口の減少や海外企業との競合の激化という課題を抱えており、問題解決の手段として戦略人事が注目されています。

株式会社HRビジョンの「人事白書調査レポート2022」[1]によると、調査対象5200社のうち約9割の企業が戦略人事の重要性を認識しています。にもかかわらず、実際に導入・機能しているのはわずか3割ほどです。

さらに、戦略人事の重要性を理解している企業ほど、経営状態が良好という背景も見えてきました。業績の良い企業ほど、戦略人事への意識が高いということになります。

本稿では、戦略人事の意味や日本企業が導入する際の障壁についてご紹介します。

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1. 戦略人事とは?

戦略人事(Strategic Human Resource Management)とは、経営戦略を達成するための人的マネジメントのことです。経営戦略と人的マネジメントを切り離すのではなく、連動して考え、組織の見直しや売り上げの向上を目指します。

経営戦略を実現するには、経営資源である「ヒト・カネ・モノ」が欠かせません。特に、昨今の少子化が進む日本経済では、人的資源の最大化が大きなテーマとなっています。

戦略人事という概念は、1997年にデイビッド・ウルリッチ氏によって提唱され、その後、アメリカなどの海外で実施されてきました。ところが発祥が海外ということもあり、日本ではなかなか浸透しませんでした(導入の障壁について、詳細は4章をご参照ください)。

しかし、グローバル化が進むにつれ、日本企業においても海外の競合企業に負けないために「攻めの人事」が必要といわれるようになりました。先に述べたように、戦略人事の重要性に対する認識は高まっています。

実際に戦略人事を導入する日系企業も増えています。そういった企業では、経営陣と人事がビジネスパートナーとして協力することで、スピーディーかつ最適な人材配置、経営の質向上、社会貢献の拡大などを達成しています。

人事部との違い

戦略人事と人事部の違いを、一言で言うなら「目的」です。人事部人事業務を効率的に行うために設置されます。例えば、役員会で決定した異動結果を発令したり、給与や労務管理などの業務を担当したりします。

一方、戦略人事は経営戦略を達成するため、人事担当者が経営者と肩を並べて人的マネジメントを行います。経営者の後ろではなく、人事担当者と経営者が同じ目線で前を向き、企業目標の達成に向けて「ヒト」を組織するのが戦略人事なのです。

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2. 戦略人事が注目されている理由

戦略人事が日本企業で注目されている理由を知れば、導入を検討するヒントが得られるかもしれません。以下で見てみましょう。

2-1. スピーディーな人的マネジメントが可能になる

日本経済を取り巻くグローバル化の波を乗り切るにはスピード感のある人事が必要です。従来型の人事では、人事担当者から部長、部長から役員会へと、上申のプロセスが複雑で意思決定に時間を要しました。

戦略人事を導入すれば、人事の現場と経営層のつながりが強くなり、人事に関する提案をダイレクトに経営会議に挙げることができるようになります。

時間のかかる会議などを割愛することで 、優秀な従業員により高度な業務を任せるための昇格や、人材を補充するためのヘッドハンティングなどを迅速に行えます。

スピーディーに人的マネジメントを最適化できることは、戦略人事を導入するメリットの1つです。

2-2. 企業全体に経営戦略を浸透させることができる

戦略人事の導入によって、経営戦略のビジョンを企業全体に浸透させることができます。

人事担当者は経営に関しても大きな責任を担うので、経営陣の思想を従業員に伝えるためコミュニケーションを図り、役員陣と現場の温度差を少なくします。そうすることで、「今、自社は何をしようとしているのか。どのような働きが求められているか」を従業員が明確に理解できるようになります。

経営陣または人事担当者だけでなく、従業員全体が同じ思いを持つことで、経営戦略や企業目標の達成が可能になるのです。

2-3. 人材と企業の品質が向上する

戦略人事の導入によって、人材を適切な部署に配置できます。結果として、従業員が才能と能力を発揮しやすい環境が整い、 従業員一人一人のレベルアップが可能になります。

従業員のレベルが上がれば、当然、企業品質・顧客満足度も向上します。顧客からの信頼は経営戦略を達成する上で欠かせない要素です。戦略人事の導入によって、従業員一人一人がやりがいと責任を持ち、仕事と向き合える環境が整います。


3. 戦略人事を導入するための4つの要素

戦略人事を導入する際の4つの要素を取り上げます。

HRBP(HRビジネスパートナー)

まず、人事担当者と経営者はHRBP(HRビジネスパートナー)という考え方が必要です。「人事は経営陣の後ろで指示に従っていればよい」という見方は捨てて、経営陣と肩を並べて舵を取るイメージが戦略人事には欠かせません。

人事担当者には、ビジネスパートナーとして企業戦略の知識と理解が求められ、人事の観点から戦略を遂行する責任があります。

OD&TD(組織開発&タレント開発)

OD(organization development)&TDTalent Development)とは、組織開発&タレント開発の略です。これらには、経営戦略を実行できる組織づくりリーダー格となる管理職の育成が含まれます。組織とヒトを同時に育てることが、戦略人事には必要なのです。

関連記事:タレントマネジメントとは 能力の見える化で適材適所への人材配置を
関連記事:管理職研修で学ぶべき内容は?管理職の職階別の役割や目的から成功のポイントを解説

CoE(センター・オブ・エクセレンス)

エクセレンスという言葉には、優秀・卓越という意味があります。戦略人事において、人事担当者には総合的な卓越性を発揮することが期待されます。例えば、人材開発や人事制度、新卒・中途採用など全てに精通した、プロフェッショナルとしての仕事ぶりが求められます。

参考)
ATD(Association for Talent Development)は人事担当者のスキルを定義するため、APTDAssociate professional in Talent Development)、CPTDCertified Professional in Talent Development)という2種類の資格認定を行っています。

 

プロフェッショナルな人事担当者として、その知識、スキルを証明することができるので、戦略人事の導入に役立てることができます。ATDの活動内容については、以下をご参照ください。

 

OPs(オペレーションズ)

OPs(オペレーションズ)とは、人事担当者が行う給与計算や退社処理などの事務作業のことです。Opsにミスが多く、非効率であれば経営戦略の達成は難しいでしょう。

Opsの正確性・効率性は戦略人事の基本といわれており、オペレーション部門に配置される従業員は大きな責任を担っています。


4. 日本企業が戦略人事を導入する際の障壁

先述の通り、「人事白書調査レポート2022」[2]によると、戦略人事の重要性を理解している企業は多いものの、機能している企業は約3割という結果になっています。戦略人事の導入において、何が障壁になっているのでしょうか。

4-1. 経営戦略が明確になっていない

戦略人事を効果的に展開するには経営戦略を明確にする必要があります。しかし、戦略人事という概念が薄い日本では、経営層にその意識が足りていない場合があります。

経営戦略は、戦略人事の基盤です。経営層には、経営戦略を明確に打ち出し、人的マネジメントを展開しやすい組織に改革することが求められます。

4-2. 人事担当者が従来の制度から抜け出せない

経営陣が明確な経営戦略を打ち出しても、人事担当者が戦略人事を十分に理解していないと攻めの人事を展開するのは難しいでしょう。日本企業では、内部公平性や年功序列制度など日本人型人的マネジメントが根強くあり、それらは戦略人事の足枷になります。

重要なのは人事担当者が従来型の制度へのこだわりを捨て経営者と同じ目線で人的マネジメントを展開することです。自社内に適任の人事担当者がいないのであれば、外部から引き抜く、または新規採用として募集するなどのアプローチも必要でしょう。

4-3. 従業員が変化を好まない

戦略人事を導入するには従業員の協力が不可欠です。しかし、終身雇用や年功序列制度になじみのある従業員の場合、戦略人事の導入に難色を示すことがあります。

新しい人事制度を導入するとリストラされたり、強制的に異動させられたりするなどのマイナスイメージを持っているのかもしれません。戦略人事は従業員にとってマイナスではなくプラスになることを説明し、経営戦略に納得してもらうことが重要です。


5. 戦略人事とAI(人工知能):人員不足の解決策になるか

人員不足は日本企業が抱える問題の上位にランクインしています。近年、AI(人工知能)の開発が進み、戦略人事においてもAIを導入できないだろうか、という見方が広まっています。

HR総研による人事担当者へのアンケート調査[3]では、人事部門にAIを導入することについて以下のような意見が挙げられました。

  • 「AIでほぼ9割が解決できる、しかも正確に。」
  • 「ヒトがしていたことをコンピューターがしてくれれば、次にヒトがすべき課題が明確になる。」
  • 「どんなものになるのか判らない。人事は関係ないと現状では考える。」
  • 「費用対効果としてどうかは懐疑的。」

肯定・否定どちらの意見もあり、可能性を期待しつつも慎重な見方が強いようです。現時点では、人的マネジメントにAIを導入する事例が限られているため明確なことは分かりませんが、今後、AIと戦略人事が大きく関わっていくことが予想されます。


6. 戦略人事の導入の事例

国内の一部企業は戦略人事を積極的に導入しています。いくつか事例をご紹介します。

6-1. 楽天株式会社(現:楽天グループ株式会社)

楽天株式会社では、「グローバルな変革を起こす」を経営戦略として、戦略人事が展開されています。同社が重視しているのは、世にイノベーションを生み出す人材の育成と、変化・成長の促進です。

従業員の能力を最大限に発揮できる環境を整えるため、働きやすい職場環境の構築を追求し、評価・報酬など、さまざまな面で基準の見直しや新たな制度・手法の導入を実施しました。さらに、従業員のコンディションや退職リスクの管理にAIを導入するなど、最新のIT技術も取り入れています。

このように、経営戦略と人事マネジメントを融合することで、グローバル規模の成長と変化を後押ししています。

6-2. ヤフー株式会社(現:LINEヤフー株式会社)

ヤフー株式会社は1996年に設立され、「決済金融・eコマース・広告」の3分野を軸としたサービスを展開しています。

設立当時は、従来の管理型の人事を行っていましたが、2012年に社長が交代したことを皮切りに人的マネジメントに関して大きな改革を実施し、大胆な人事改革を100以上行ないました。その際、重要視していたのが「社員の才能と情熱を解き放つ[4]ことです。

従業員のモチベーションを高めるために評価制度を見直し、従業員が真の姿を出せる職場環境の構築を目指しています。戦略人事が企業の活性化を加速させており、今後、さらなる成長が期待できます。

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7. まとめ

本稿では、戦略人事についてご紹介しました。

戦略人事とは、経営戦略と人事を融合させる人的マネジメントのことです。両者が連動することでスピーディーかつ最適な人事配置が可能になります。戦略人事は従来の人事とは目的が異なり、単に人事業務を効率的に行うだけでなく、人事担当者が経営者と肩を並べてヒトを組織することが特徴です。

昨今、戦略人事が注目されている理由は以下の通りです。

  • 「今」、必要な人材をスピーディーに配置できる
  • 企業全体に経営戦略を浸透させることができる
  • 人材と企業の品質が向上する

また、戦略人事を導入するには以下の要素が重要です。

  • BP(ビジネスパートナー)
  • OD&TD(組織開発&タレント開発)
  • CoE(センター・オブ・エクセレンス)
  • OPs(オペレーションズ)

戦略人事を効果的に展開するには上記の要素、全てが重要です。導入を検討する際には1つずつクリアしていくとよいでしょう。

戦略人事の重要性を理解しているものの、導入をためらう企業は少なくありません。それには、以下の要因が考えられます。

  • 経営戦略が明確になっていない
  • 人事担当者が従来の制度から抜け出せない
  • 従業員が変化を好まない

戦略人事の導入には、大なり小なり変化が伴います。企業目標の達成に向けて、経営者・人事担当者・従業員が協力することが戦略人事の導入に欠かせないポイントです。

楽天株式会社やヤフー株式会社などの大手企業は積極的に戦略人事を展開し、成果を上げています。

戦略人事は、今後さらに重要度が高まると見込まれます。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

[1] 株式会社HRビジョン「人事白書調査レポート2022 戦略人事」,『日本の人事部』,https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/2888/
[2] 株式会社HRビジョン「人事白書調査レポート2022 戦略人事」,『日本の人事部』,https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/2888/
[3] HR総研 「人事の課題とキャリアに関する調査 人事の課題」,『HRpro』,
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=209
[4] パーソルキャリア株式会社「ヤフーにおける人事戦略とは。人財開発企業に向けた取り組み」,『d’s JOURNAL』,
https://www.dodadsj.com/content/190722_yahoo-kanadani/

参考)
ミツカリ「戦略人事の導入に成功した企業事例とは?人事課題の解決事例について」
https://mitsucari.com/blog/personnel_strategy_examples/
日本の人事部「9割近くの企業が『戦略人事」の重要性を認識しているが、実際に『戦略人事」として機能できている企業は約3割」
https://jinjibu.jp/article/detl/hakusho/1960/
HR総研「人事の課題とキャリアに関する調査 人事の課題」
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=209
日本の人事部「企業と人が成長し続けるための“戦略人事”~世界で戦うGEと楽天の人事に学ぶ~」
https://jinjibu.jp/hr-conference/report/r201611/report.php?sid=809
d’s JOURNAL「ヤフーにおける人事戦略とは。人財開発企業に向けた取り組み」
https://www.dodadsj.com/content/190722_yahoo-kanadani/

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