1dayインターンシップとは、文字どおり1日だけのインターンシップです。
日本経済団体連合会(経団連)が「1日」を容認したことから、採用活動の一環として1dayインターンシップを開催する企業が急増しています。しかし、「採用セミナーと変わらない」という声も聞かれ、インターンシップへの学生の期待に応えられているか疑問もあります。
本稿では1dayインターンシップについて、その種類やメリット、デメリットをご紹介します。
「1dayインターンシップ」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
⇒ダウンロードする
目次
1. 1dayインターンシップとは
1dayインターンシップとは、1日や半日で実施するインターンシップ(就業体験)のことです。
本来インターンシップは、学生が一定期間、企業やNPO(非営利団体)などで就業体験をする制度です。学生が企業や業務を理解し、自己の適性を知ることが目的で、実務経験を積むことで将来のキャリア形成を考える機会にもなります。
これに対して、1dayインターンシップは企業が採用活動の一環として実施するものです。経団連がもともと「5日以上」としていたインターンシップの最低日数要件を、2017年の夏からなくしたことから、1dayインターンシップを取り入れる企業が急速に増えました。
しかし、1dayインターンシップには課題もあります。十分な就業体験が確保されず会社説明会になってしまう場合があったり、「インターン」という名称がつくことが学生に選考の一部だと誤解させてしまう場合があることです。そこで2020年の2月に経団連より「1dayインターンシップの禁止」が発表されました。就業体験が確保される1日インターンについては「1dayお仕事体験」などの名称がつかわれるようになりました。
人事に関する注目トピックを毎週お届け!⇒メルマガ登録する
2. 1dayインターンシップのおもな種類
1dayインターンシップは主に以下の3タイプに分類できます。
2-1. 会社説明会形式
企業が学生に対し、会社や業務、業界について講義形式で説明します。
経団連が2017年に出した「『採用選考に関する指針』の手引き」の中で、「採用選考活動とは一切関係ないことを明確にして行う必要がある」と明記しているように、採用セミナーとインターンシップは別物ですが、その区別は難しくなってきています。
学生側にも、企業説明会に代わるものとして1dayインターンシップを捉えているという見方もあります。
2-2. ワークショップ・プロジェクト形式
企業の業務に即した課題や設定されたテーマについて、学生たちがグループ討議や企画立案などをします。
アウトプットが伴うため、企業は学生の能力を把握するのによい機会です。優秀な学生にはその後、中長期インターンシップや早期選考会を案内するなどの次のステップを用意することもできます。
学生にとっては、会社説明会形式よりも業界や企業での課題を深く理解できるでしょう。また、活動を通じて、企業側に自分をアピールする機会にもなります。
グループワークで優秀なアイディアが出ればそれを実際に採用するというケースもあり、企業としては一般消費者である学生から斬新な解決策や率直な意見を引き出すという効果も期待できます。
2-3. 見学・体験形式
学生が仕事現場の見学や、実務体験をします。企業によっては、工場見学や接客対応、営業同行をする場合もあります。
1日という限られた時間とはいえ、学生にとっては職場の雰囲気がわかり、また業務のイメージがつかめるよい機会になるでしょう。
説明会と見学や実務体験、ワークショップを組み合わせて実施されることが多い1dayインターンシップ。自社の魅力を伝えるとともに企業や業界研究に役立てたいという学生の期待に応えられるような内容を設計することが重要です。
3. 1dayインターンシップを開催するメリット
採用する企業が急増している1dayインターンシップのメリットはどのような点でしょうか。
3-1. 企業にとってのメリット
学生たちとの接点がもてる
参加する学生は自社に関心を持って来ています。そのような学生との交流によって、学生の傾向やニーズを掴み、今後の採用活動に反映することができます。
選考活動ではないため、どんな意図で参加しようと思ったのか、他にはどんなところを受けているのかなど面接では聞けないようなことも話せるかもしれません。
ワークショップや実務体験などを通じて、優秀な人材に出会える可能性も大いにあります。
スクリーニングに活用できる
優秀な学生には中長期インターンシップを案内したりと、参加した学生の中から「これは」と思う学生を選び、継続的にコンタクトを取る機会にできます。
若手従業員のモチベーション向上になる
多くの企業において、学生と接する担当者は若手従業員です。企業の中では若手でも学生からみれば社会人の先輩として、その従業員に責任感を生むかもしれません。また自社の採用活動に関わっているということが普段とは違うモチベーションになることも期待できます。
新しいアイディアを得られる
ワークショップで自社の事業を学生たちと考える中で、斬新なアイディアや事業のヒントが生まれる可能性があります。
3-2. 学生にとってのメリット
実際の雰囲気がわかる
通常の採用セミナーにはない、ワークショップや実務体験などの活動を通じて、より企業側との接点がもてるため、具体的に会社の雰囲気を感じることができます。
ミスマッチが防げる
実務を体験してみることで、職場の雰囲気や業務内容が理解できます。「入社してから仕事内容にギャップを感じた」という離職理由が多い今、このような機会は重要です。
スケジュールを立てやすい
1日だけで、また複数回開催される場合もあるため、他の企業でもインターンシップへの参加を考えているような場合でも調整がしやすいでしょう。
学生同士の交流ができる
参加した学生がグループで活動することで、そこから学生同士の交流が生まれるでしょう。同じ業界に関心を持っていることが多いため、他社の選考情報を共有したり、就職に有益な情報を得たりなど就職活動を支えあう仲間づくりも期待できます。
社会人と接する機会になる
採用セミナーでは「選考要素」が出てきて質問しにくいようなことや、実務に関わることを現場の従業員に聞けるよい機会です。
1dayインターンシップのメリットは、企業にとっては採用活動の前哨戦としてその目安になることでしょう。学生にとっては、説明会では知りえない企業の雰囲気に触れることができ、企業や業界研究に有用です。選考には直接関係はなくとも、その経験を就職活動に役立てることができます。
4. 1dayインターンシップの注意点
企業にも学生にもメリットのある1dayインターンシップですが、注意しなければならない点はどのようなことでしょう。
4-1. 企業側の注意点
内容・量ともに適切であること
1日という限られた時間の中で、自社の魅力を伝えることは容易ではありません。内容を盛り込みすぎて一つひとつが希薄になったり、また反対に採用セミナーとさほど変わらないということのないようにしなければなりません。
前出の経団連の「『採用選考に関する指針』の手引き」には、「インターンシップ本来の趣旨を踏まえ、教育的効果が乏しく、企業の広報活動や、その後の選考活動につながるような1日限りのプログラムは実施しない。」とあります。
学生が、職業体験ができたと実感できるような内容になるよう、十分に検討することが重要です。
4-2. 学生側の注意点
あくまでも実務体験であること
実務体験をすると言っても、「一日体験」用であって、実際の業務そのものではないことに注意すべきでしょう。
その企業をより知りたいと思う場合は、中長期インターンシップに参加するのも一つの方法です。
1dayインターンシップを実施している企業へのアンケートでは、「採用セミナーとは全く異なる構成にしている」とした企業は56%、「採用セミナーをベースに少しアレンジしている」が30%、残り14%の企業は「採用セミナーとほとんど同じ」という結果が出ています。
採用セミナーと変わらない場合の学生の評価は低く、企業としては工夫のしどころです。
参考)HR総研 「【HR総研】 2018年&2019年新卒採用動向調査」
https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=195
5. 1dayインターンシップを開催するには
1dayインターンシップを自社にとって最も効果的にするためには、設計段階から計画的に進めることが重要です。
5-1. ターゲットの決定
求める人材像や採用の目標人数をあらかじめ固めておくことは重要です。
目標人数が決まれば、そこから1回の規模や実施回数を算出し、全体の概要が決まります。また、求める人材像が明確であれば、募集の際のエントリーシートの設問を工夫することで実質的に絞り込むことも可能です。
5-2. 形式や企画の決定
1dayインターンシップに何を求めるかを明確にしておくことも大事なポイントです。
自社や業界を知ってもらう第一歩とするのか、多くの学生と交流できる場にするのか、または一人ひとりの学生の能力を把握する機会にするのかなどです。
1dayといっても実質的には数時間です。そのなかで、コストや人員も考慮しながら、効果的な内容にするには目的を定めてしっかりと計画する必要があります。
5-3. 集客
学生を募集する際に、ターゲットの学生に訴求できる方法や媒体を検討します。
大手リクルーティングサイト、SNS、大学の就職課などアプローチは様々あります。また、自社の伝えたいことを理解してもらうには告知する内容も重要です。どのような表現をすれば響くかを十分検討しましょう。
5-4. 運営
1dayインターンシップが珍しいものではない以上、当日の運営体制の良し悪しが学生の判断材料になります。滞りなく進行できるようにしっかりと事前準備を整えることが重要です。
5-5. フォロー
多くの企業が1dayインターンシップを開催している中で、自社を印象づけるためには終了後も継続的にコンタクトをとることが大切です。
メールでの連絡や自社のSNSに参加を促すことは必須です。内容としては、採用サイトや早期選考会、エントリー受付、会社・工場見学会などの案内が挙げられます。
1dayインターンシップは学生にとっては一度の機会であり、企業にとっては自社に関心のある学生との最初の接点です。自社の採用計画を明確にし、内容の十分な検討と計画的な実施が重要です。
6. まとめ
1dayインターンシップとは、1日または半日で実施するインターンシップです。2022年からは「1dayお仕事体験」などの名称が使われるようになりました。
主に3つの形式があります。
・会社説明会形式
・ワークショップ・プロジェクト形式
・見学・体験形式
多くの場合、これらを組み合わせて実施されています。自社の魅力を伝えるとともに、企業を深く理解したいという学生の期待に応えられるような内容にすることがポイントです。
1dayインターンシップを開催するメリットと注意点として次のようなことがあります。
メリット
◆企業
・学生たちとの接点がもてる
・スクリーニングに活用できる
・若手従業員のモチベーション向上になる
・新しいアイディアを得られる
◆学生
・実際の雰囲気がわかる
・ミスマッチが防げる
・スケジュールを立てやすい
・学生同士の交流ができる
・社会人と接する機会になる
注意点
◆企業
・内容・量ともに適切であること
◆学生
・あくまでも実務体験であること
1dayインターンシップを開催するにあたっては、以下の各段階において設計段階から計画的に進めることが重要です。
①ターゲットの決定
②形式や企画の決定
③集客
④運営
⑤フォロー
ターゲットを明確にすることは採用の大前提です。また、参加した学生を継続的にフォローすることで自社を学生にアピールしていくことも重要です。
1dayインターンシップは、採用活動の前哨戦として、今、急速に取り入れる企業が増えています。それは、他社との差別化を図らなければ学生にとって魅力のないものとして評価されることでもあります。
優秀な人材を採用したいというのが採用活動の目的です。その橋渡しになるような効果的なインターンシップにするために、採用セミナーの焼き直しではない、学生のニーズに合った内容を設計することが求められています。
社員教育や人材開発を目的として、
・eラーニングを導入したいが、どう選んだらよいか分からない
・導入したeラーニングを上手く活用できていない
といった悩みを抱えていませんか?
本書は、弊社が20年で1,500社の教育課題に取り組み、
・eラーニングの運用を成功させる方法
・簡単に魅力的な教材を作る方法
・失敗しないベンダーの選び方
など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を
全70ページに渡って詳細に解説しているものです。
ぜひ、貴社の人材育成のためにご活用ください。
プライバシーポリシーをご確認いただき「個人情報の取り扱いについて」へご同意の上、「eBookをダウンロード」ボタンを押してください。
参考)BIZHINT 「1dayインターンシップ」
https://bizhint.jp/keyword/47886