おすすめ記事

人的資本経営とは? 情報開示義務化の前に知っておきたいポイント

アルムナイ採用とは?メリット・デメリット、必要な準備や事例を紹介

アルムナイ採用とは?メリット・デメリット、必要な準備や事例を紹介

「良い人材を思うように確保できない。教育コストの面からも即戦力人材を求めているので、アルムナイ採用について知っておきたい」

組織の中でポジションに適した人材が見つからない「人材不足」を感じている企業は少なくないでしょう。

近年、人材戦略の一つとして、自社の退職者を中途採用者として迎え入れる「カムバック制度」や「出戻り制度」が増えつつあります。これらの制度を「アルムナイ採用」といい、組織に新たな経験や知見をもたらす人材として、大企業のみならず経済産業省でもアルムナイ(退職者)を活用しています。

今回は、アルムナイ採用のメリット・デメリット、必要な準備や他社事例などを詳しく解説します。自社の人材確保に課題を感じている方はぜひ参考にしてください。

人事が注目する163の用語を解説!「人事用語辞典」を無料でダウンロードする


1. アルムナイとは?

アルムナイ(alumni)は、「卒業生」「同窓生」といった意味の英語で、人事分野では「退職者」を指す言葉として使われています。企業人事におけるアルムナイの位置付けを見ていきましょう。

1-1.アルムナイの概要

近年、企業価値を高めるための「人的資本経営」が注目されています。
これは、従来は人件費の必要な「コスト」とみなされていた従業員を、会社の資産を生み出す「人材資本」として扱う考え方です。

人材流動性の高い欧米では、退職者が数年後に再び同じ会社に戻って働くことは珍しくありません。良い人材を確保するために、退職者のネットワークを作りその中から再雇用を行う「アルムナイ採用」が一般的になっています。

日本においても、アルムナイの優れた取り組みを表彰する「ジャパン・アルムナイ・アワード」が開催され、第一回は経済産業省OBOG会がグランプリになるなど、アルムナイの積極活用を推進する機運は高まっています。

1-2.アルムナイを活用する必要性

パーソル総合研究所の「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」[1] によると、一度離職した人が同じ会社に再入社できる再入社制度(出戻り制度・カムバック制度)を設けている企業は全体で8.6%、うち従業員5000人以上の企業では20.2%でした。大企業を中心に、アルムナイ採用の整備が徐々に進んできていることがわかります。

経済産業省が2022年5月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」[2] では、人的資本経営の考えに基づく経営戦略と人材戦略の重要性が示されています。
CEOとCHRO(最高人事責任者)には、人材ポートフォリオのギャップを踏まえた人材の再配置や外部からの獲得が求められており、自社のアルムナイの中から、他社で有効な経験や知見を得た人材を再雇用することも選択肢の一つです。

アルムナイは、退職者を含めた人材リソースを有効活用できる取り組みです。自社の人材不足解消に役立つ一手となるかもしれません。

1-3.アルムナイ採用とリファラル採用の違い

企業の採用施策として、社員からの紹介で採用候補者を募るリファラル採用があります。

東京商工リサーチの調査[3]によると、中途採用者の主な入職経路は人材紹介会社と民間求人サイトに次いでリファラル採用(同僚、家族、知人からの紹介)が27.3%を占め、ハローワークの26.8%を上回りました。

アルムナイ採用とリファラル採用の違いは大きく2つです。

・入社前の採用コスト
・入社後の教育コスト

入社前の採用コスト

アルムナイ採用では、退職者のネットワークを構築・維持管理したり、アルムナイの中から採用候補にふさわしい人材をピックアップしたりするコストがかかります。

一方リファラル採用では、自社の社員というフィルターを通して採用候補者を集めるため、特別なコストは発生しません。

また、アルムナイ採用とリファラル採用どちらも、採用候補者の質、業務内容とのマッチ度などをある程度スクリーニングできるため、選考プロセスの短縮化が図れるという共通点があります。

入社後の教育コスト

アルムナイ採用では、入社後の教育コストは、一度社員として勤務した経験があるため短期間のキャッチアップ研修で済むケースが多いでしょう。
一方リファラル採用では、通常の中途採用者と同じ教育コストがかかります。

このほかリファラル採用の注意点として、社内にリファラル採用者の派閥ができてしまう、既存の社員と似たような属性・価値観の人材が集まり組織に多様性がなくなるなどの弊害があることも知っておきましょう。

人事に関する注目トピックを毎週お届け!⇒メルマガ登録する


2. アルムナイ採用のメリットとデメリット

アルムナイ採用は、かつて自社で働いた経験がある人材を再雇用する施策です。
教育コストを圧縮できるメリットがある一方、社内に退職者の出戻りを歓迎しない社員がいるケースも。
会社側・アルムナイ側それぞれの具体的なメリット・デメリットを整理しました。

2-1.アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用を行う会社側のメリットは大きく2つあります。

・人材の質の保証
・教育コストの圧縮

人材の質の保証

アルムナイは過去の働きぶりが明らかであるため、未知の人物を採用するよりリスクが低く、人材の質が保証されています。

教育コストの圧縮

アルムナイは自社の業務や経営方針をすでに理解しているため、採用後の教育コストを圧縮できるメリットもあります。

アルムナイ側のメリットには、以下のような点が挙げられます。

・アンマッチリスクの低さ
・活躍しやすさ

アンマッチリスクの低さ

すでに社風や業務内容を理解している職場で働けるため、未知の会社に転職するよりも「社風が合わない」「業務内容が合わない」といったリスクは低くなります。

活躍しやすさ

アルムナイは、別の会社で経験を積み、新しい知見を持つ即戦力として、高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
また、一度外に出て他社を経験したことで、改めて元職場の良さに気づく人も少なくありません。

2-2.アルムナイ採用のデメリット

アルムナイ採用における会社側のデメリットとして、出戻り社員を受け入れることに起因する以下の点に注意が必要です。

・既存社員との溝
・人事制度の混乱

既存社員との溝

社内に「退職者=裏切り者」と捉える風土があったり、他社での経験や新しい知見を受け入れない社員がいたりすると、アルムナイの能力が評価されず再離職につながる可能性があります。

人事制度の混乱

継続した社歴の長さが評価の基準となる人事制度があったり、退職後の経験を考慮せずアルムナイを元の職位で雇用したりすると、アルムナイのモチベーションが下がり思ったように活躍できないケースがあります。

採用されるアルムナイ側にとってのデメリットは、大きく2つあります。

・再離職に至るリスク
・会社の風土に起因した低評価

再離職に至るリスク

一度退職に至った原因が解消されないまま再雇用された場合、同じ原因でアンマッチを起こし再離職に至ってしまうリスクがあります。職場環境や業務内容など、そもそもの離職原因を丁寧に把握しておくことが肝心です。

会社の風土に起因した低評価

継続した社歴の長さを重要視する慣習や、社外での経験や知見に価値を見いださない風土がある場合、アルムナイの能力が正しく評価されず、活躍しづらい環境と言えるでしょう。

ここまで、会社とアルムナイそれぞれのメリット・デメリットを紹介しました。アルムナイ採用にあたっては、双方のデメリットの発生を抑える事前準備が必要になるでしょう。


3. アルムナイ採用に必要な準備とは

企業とアルムナイ双方のデメリットを解消し、アルムナイ採用を成功させるためには、どのような準備が必要なのでしょうか。

3-1.社内の受け入れ体制

まず取り組みたいのが、社内の意識改革です。社歴の長さを重視する日本企業において、出戻り人材を評価して受け入れることに抵抗がある社員は少なくありません。

そこで、人材ポートフォリオに基づいた人員配置を行い、社員の強み弱みに合わせたプロジェクトアサインや、個人のキャリアパスの実現に前向きな社風を作りましょう。

既存社員が「会社は自分のキャリアパス形成に協力してくれる」と感じられる環境を整えてから、アルムナイの活用に手をつけると、「そんなキャリアパスもあるのだな」と出戻り人材に対する理解も深まります。

次に、アルムナイを採用した後の教育体制についてです。アルムナイは自社の経営方針や業務内容への基本的な理解はあるものの、ブランク期間の社内事情を把握しているわけではありません。

DX推進で業務フローに大きな変更があったり、事業部の再編成で組織に大きな変化があったりした場合、差分をキャッチアップするための研修が必要になるでしょう。

また、アルムナイを退職前とは異なる部門に配置する場合は、業務内容を理解するための研修も必要になります。

このようなキャッチアップ研修には、スキル管理を行うシステムを活用すると良いでしょう。例えば当社製のLMS「CAREERSHIP®」では、学習の管理と同時に、スキルの登録と習得状況の見える化が可能です。

CAREERSHIP®スキル管理機能の3つの特徴

 

 ・従業員に必要なスキルを可視化して管理し、戦略的な人材開発を実現
 ・スキル獲得に必要な学習をひもづけて、自発的な学習を促す仕組みづくりが可能
 ・他社のキャリアを含めてマッピングできるため、自律的なキャリア構築を推進

3-2.アルムナイ採用を前提としたイグジットマネジメント

退職者をアルムナイ採用で再雇用し、その後活躍してもらうためには、前提として円満に退職して自社にネガティブなイメージを持っていない人材でなくてはなりません。

そのためには、適切なイグジットマネジメント(退職マネジメント)が欠かせません。これは、退職までの面談や退職後のステップアップ支援などを行い、ポジティブな転職や円満退職を実現する人事管理の手法です。

組織の新陳代謝において、自社のキャリアに行き詰まりを感じる人材や、組織内に活躍の場を見出せない人材が発生することは避けられません。

しかし、それは会社と社員の双方にとって不幸な状態です。丁寧な1on1面談を繰り返し、会社と社員の双方が「別の環境に活躍の場を求めた方が良い」と納得できれば、円満退職に至ることも可能です。環境を変えて躍進する可能性を信じ、丁寧なイグジットマネジメントを行いましょう。

イグジットマネジメントは、社員の退職後も続きます。ステップアップ支援や近況確認などを通じて関係をキープしておくことで、アルムナイに声をかける下地ができあがるのです。

3-3.アルムナイネットワークの構築

アルムナイの人材プールを増やすためには、イグジットマネジメントに加えて退職者の組織化が欠かせません。

パーソル総合研究所の調査[4]では、実際にアルムナイとして再入社した人の入社ルートについて、公式な再入社制度を利用した人は4.0%、非公式に上司や同僚から打診があったりコンタクトを取ったりした人は75.7%と、アルムナイ採用が個人の人脈に依存しがちな実態が明らかになっています。

人脈頼りの状況では、退職後に人脈が切れてしまった優秀なアルムナイを捕捉できません。また、元上司とは折り合いが悪いものの、自社に戻りたいという意欲があるアルムナイとコンタクトを取ることもできません。

そこで、自社の公的な枠組みとしてアルムナイネットワークを作ることで、退職前の人脈に関わらずアルムナイの状況を把握し、人材プールとして活用できるようになります。

アルムナイネットワークでは、社内報およびプレスリリースの配信や、OBOGイベントを開催するなど自社とのつながりをキープする施策を行いましょう。


4. アルムナイを積極活用している他社事例

ここからは、アルムナイを積極活用している他社の事例を紹介します。

4-1.みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは、専用サイト上にアルムナイネットワークの独自SNSを構築しています。

元社員同士がクローズドな空間で交流できるほか、アルムナイと現役社員がキャリア観や働き方について対話するイベントなども開催。キャリア採用情報やカジュアルな相談窓口も設置しています。

会社の垣根を越えたオープンでフラットなつながりを構築していることが評価され、アルムナイの優れた取り組みや関係性を表彰する「ジャパン・アルムナイ・アワード2022」のグランプリを受賞しました。

4-2.経済産業省OBOG会

経済産業省OBOG会は、有志で設立された霞が関のアルムナイです。

官民連携のプロジェクトや政策において、民間と行政の両方を経験している通訳として、より良い政策を考える取り組みを行っています。官民癒着の誤解を受けないよう「公共政策に貢献するためにつながる」という点にも配慮しています。

民間から省庁にカムバックした人材とも連携したアルムナイネットワークを構築しており、省庁におけるアルムナイへの挑戦が評価され「ジャパン・アルムナイ・アワード2021」でグランプリを受賞しました。

4-3.三菱ケミカル株式会社

三菱ケミカル株式会社では、多様性のある人材比率に関するKPIを設定しており、戦略的なダイバーシティの向上という観点から、アルムナイ活用に取り組んでいます。

経営戦略上で必要となる人材確保の手段として、社内人材の育成や社内公募などを補う形でアルムナイを戦略的に採用。社外で経験を積んだ上で「三菱ケミカルで成果を上げよう」という目的意識の明確な人材として、「ウェルカムバック」の掛け声のもと、アルムナイを歓迎する風土を醸成しています。


5. まとめ

アルムナイ採用は、自社の退職者を中途採用者として迎え入れる戦略的な人事施策です。
退職者を含めた人材リソースを有効活用できるため、自社の人材不足解消にも役立つでしょう。

アルムナイ採用は、会社側、アルムナイ側それぞれに次のようなメリットがあります。

会社側
・人材の質の保証
・教育コストの圧縮

アルムナイ側
・アンマッチリスクの低さ
・活躍しやすさ

アルムナイ採用に必要な準備として、以下の3つが挙げられます。

・社内の受け入れ体制
出戻り人材を評価して受け入れられるよう、社内の意識改革に取り組みましょう。アルムナイを採用した後の教育体制についても準備が必要です。

・アルムナイ採用を前提としたイグジットマネジメント
退職者をアルムナイ採用で再雇用するためには、円満退職して自社にネガティブなイメージを持っていない人材でなくてはなりません。丁寧なイグジットマネジメントを行い、アルムナイに声をかける下地を作りましょう。

・アルムナイネットワークの構築
退職前の人脈頼りの採用ではなく、自社の公的な枠組みとしてアルムナイネットワークを作り、アルムナイを人材プールとして活用できるようにしましょう。

最後に、アルムナイを積極活用している以下の組織の事例をご紹介しました。

・独自SNSでアルムナイネットワークを構築しているみずほフィナンシャルグループ
・カムバック人材とも連携したアルムナイネットワークである経済産業省OBOG会
・多様性に関するKPIを設定してアルムナイを活用している三菱ケミカル株式会社

アルムナイの活用は、組織に新たな経験や知見をもたらします。人材確保の難しさを感じている企業は、アルムナイ採用を検討してみてはいかがでしょうか。

\eラーニングで何ができる?導入に失敗しないための完全ガイド/

[1] パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」,2020年6月16日公表,https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/alumni.html(閲覧日:2022年10月25日)
[2] 経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf(閲覧日:2022年10月25日)
[3]東京商工リサーチ「令和2年度企業の雇用状況等に関する調査研究報告書」,令和3年3月公表,p53,https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000562.pdf(閲覧日:2022年10月25日)
[4]パーソル総合研究所「コーポレート・アルムナイ(企業同窓生)に関する定量調査」,2020年6月16日公表,https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/alumni.html(閲覧日:2022年10月25日)

参考)
経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf(閲覧日:2022年10月25日)
経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集」,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0_cases.pdf(閲覧日:2022年10月25日)
アルムナイ研究所「ジャパン・アルムナイ・アワード2022受賞組織・受賞者」,『アルムナイ研究所』,https://alumni-lab.jp/jaa2022/(閲覧日:2022年10月25日)
アルムナイ研究所「ジャパン・アルムナイ・アワード2021受賞組織・受賞者」,『アルムナイ研究所』,https://alumni-lab.jp/jaa2021/(閲覧日:2022年10月25日)

無料eBook「人材育成大百科」

人材育成の基本から、計画の立て方、効果的な教育手法、そして学習管理システム(LMS)の最新活用法までをコンパクトに解説。

人材育成に関する悩みや課題を解決するための完全ガイドです。

【資料内容】
人材育成の基本の説明/人材育成計画のたて方/育成計画表のサンプルと作成方法ガイド/効果的な育成手法の紹介/人材育成を効率化するLMSのご紹介

プライバシーポリシーをご確認いただき「個人情報の取り扱いについて」へご同意の上、「eBookをダウンロード」ボタンを押してください。