内々定とは、内定前に企業が学生に対して内定の約束をすることです。
事実上の内定だと言えますが、あえて内定と呼ばないのには企業側に理由があるからです。
ここ数年は「売り手市場」と呼ばれ、企業の採用活動は厳しくなっています。日本経済団体連合会(経団連)は、「採用選考に関する指針」を定めていますが、そのスケジュールよりもかなり早くから実際の採用活動が進んでいるのは公然の事実でしょう。その中で内定を出してよい期間も定められていますが、その日よりも前に学生を確保しておきたい。「内々定」という仕組みは、こうした企業の本音と、指針という建前との乖離(かいり)の表れとも言えるかもしれません。
本稿では、内々定について、内定との違いや、内々定を巡る最近の傾向について解説します。
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1. 内々定とは
内々定とは、内定前に、企業側が採用したい学生に対し、内定を出す「予定」であるという通知をすることです。
経団連の「採用選考に関する指針」では、新卒者の就職活動について次のように示しています。
・広報活動:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
・選考活動:卒業・修了年度の6月1日以降
・内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
しかし、就職活動はもっと早くから進んでいるため、表向きは内定日を守りつつ、「内々定」という形式で、事実上の「内定」を出しているのです。
企業が、10月1日の内定日を待たずに内々定を出すのは、採用したい学生を早期に囲い込みたいという理由からに他なりません。どの企業でも優秀な学生がいたらなるべく早く確保したいというのが本音でしょう。「あなたを採用したい」と意思をいち早く示すことで、自社への入社の意思を固めさせることを期待しています。
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2. 内定との違い
内々定は、事実上の内定と述べましたが、以下の2点について違いがあります。
・労働契約か否かの違い
・取り消し時の違い
一つずつ説明していきます。
2-1. 労働契約か否か
内々定は、正式な内定を「予定」していることを通知するもので、法的には労働契約には当たりません。
一方、内定は、「始期付解約権留保付労働契約」(しきつきかいやくけんりゅうほつきろうどうけいやく)と言い、労働契約が成立した状態を指します。「始期付」とは内定者が実際に働き始めるまでに日数があるためで、新規学卒者であれば4月から予定されているということです。「解約権留保付」とは、やむをえない事情があれば解約も有り得るということを意味します。
企業側からの通知には以下の事項が必要です。
・採用確定の連絡
・入社日の通知
・入社後の労働条件を提示
・研修の案内
一般的には、企業は上述の内容を記載した「内定通知」または「採用通知」を学生に送付し、学生側は同封されている「入社承諾書」を提出します。これによって、双方が合意したとみなされ、必要書類の返送を受理していなくとも、その時点から労働契約が成立したことになるのです。
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2-2. 取り消し時の違い
内々定には法的拘束力がないため取り消しは可能とされています。
しかし、不当な取り消しや、取り消しの際の企業の不誠実な対応は、当事者である学生の信頼を損なうだけではありません。このような情報は、学生同士、あるいは大学のキャリアセンターに共有され、企業の評判を落とすことになります。
また、法的には契約は成立していないとしながらも、学生の期待を侵害したとして企業が損害賠償を求められたケースもあります。
一方、内定においては、労働契約が成立した以上、内定の取り消し=企業の解約権行使は解雇に相当するとみなされます。
では、どのような場合が解約事由になるのでしょうか。
・内定者が単位取得不足などで卒業ができなくなった場合
・内定者が病気やケガなど健康上の理由で働けない状態になった場合
・内定者が入社条件とされた資格を取得できなかった場合
・内定者に犯罪行為があった場合
・内定者に経歴の詐称があった場合
・企業の業績悪化など経営上やむを得ない事情があった場合
企業にとっての「やむをえない事情」は、過去の判例では、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であり、これを理由として採用内定を取り消すことが客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」としています。
解雇に相当するほどの理由がなければ取り消しは困難と考えておくべきでしょう。
3. 内々定を巡る企業の動き
経団連に加盟していない外資系や中小企業は、採用指針に拘束されないため、経団連加盟の大手企業の選考スケジュールより早い段階で内々定を出す動きが増えています。
また、選考開始日である6月1日に内々定を出した学生を招集して「内々定式」を開催する企業も現れ、この傾向は今後も拡大することが予想されます。
4. まとめ
内々定とは、正式な内定を出す前の採用予定通知です。
経団連の「採用選考に関する指針」で採用活動のスケジュールを定めています。しかし、就職活動はそれよりも先に進んでいるのが実態です。
指針で規定されている10月1日の内定日を建前上は守りつつ、早期に学生を囲い込みたいという企業の思惑を実現したのが「内々定」なのです。
内々定は事実上の内定ですが、以下の2点で内定と異なります。
◆内々定
・法的拘束力はない。
・取り消しは可能。
◆内定
・労働契約であるため、法的拘束力がある。
・内定の取り消しは解雇に相当する。そのため、解雇事由が必要。
経団連に加盟せず、採用指針に拘束されない外資系や中小企業では、加盟大手企業よりも早い段階で内々定を出すところが増えています。また、選考開始日の6月1日に学生を招集して「内々定式」を開催する企業もあり、この動きは今後広がっていくことが予想されます。
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参考)東洋経済ONLINE 「6月1日「内々定式」がハッキリ増えた就活戦線」
https://toyokeizai.net/articles/-/177087?page=2