「サーベイをもっとうまく運用して、結果を有効活用したい」
HR Techの普及や、人的資本経営、組織開発への関心の高まりに伴い、サーベイを実施する企業は増加傾向にあります。
しかし、さまざまな効果を期待してサーベイを導入したものの、従業員のサーベイへの関心の低さに悩んだり、結果を有効活用しきれていないと感じたりする方も少なくないのではないでしょうか。
バヅクリ株式会社の調査[1]によると、エンゲージメントサーベイ(従業員の会社への愛着心やモチベーションを測る調査)への回答経験がある会社員のうち、不満を感じたことがあると答えた割合はおよそ70%に上りました。その理由のトップは、「回答した結果が何に活かされているかわからない」というものです。
サーベイを実施する際には、従業員に回答するメリットをしっかり説明し、結果から得られたデータをどう生かすかという、フィードバックまで徹底して行うことが重要といえます。
本稿では、サーベイの効果を高めるサーベイフィードバック実施の流れやポイント、実施によるメリット・注意点などを解説します。また、サーベイフィードバックを実践している企業事例もご紹介します。
サーベイフィードバックの基本を改めて確認し、よりよい運用につながれば幸いです。
「サーベイフィードバック」のほか、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」(無料)をご利用ください。
目次
1. サーベイフィードバックとは
サーベイフィードバックとは、実施したサーベイ(調査)の結果を本人や所属部署に伝え、改善に役立てることをいいます。企業におけるサーベイとは、働きやすさや仕事への意欲など、従業員が企業に対して抱いているさまざまな心情を調査するものです。
1-1. サーベイフィードバックの概要
サーベイフィードバックの大まかな手順を説明します。
- 従業員に対してサーベイを実施する
- その結果を集計・分析することで組織の課題を「見える化」する
- 集計結果や課題をフィードバックする場を設け、サーベイに参加したチームや従業員自身が主導となり、課題解決に向けたアクションプランを話し合う
サーベイ実施や結果のフィードバックの場では、実態を正確に把握するために、参加する従業員の本音を引き出す必要があります。そのための取り組みも重要です。
1-2. 「サーベイ」と「リサーチ」の違い
「サーベイ=調査」であるため、「リサーチも同じでは?」と思うかもしれません。サーベイもリサーチも「調査」という意味で使用できますが、以下のような違いがあります。
サーベイ
全体像を把握するために広い範囲で調査する
リサーチ
特定の狭い範囲でより細かく調査する
組織の課題を可視化するために行う調査は、全体像の把握が必要です。よって、リサーチではなくサーベイが用いられます。
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2. サーベイフィードバックが注目される背景
サーベイフィードバックが注目される背景には、以下の影響があります。
- HR Techの普及
- 人的資本経営への注目
- 組織開発の重要性の高まり
HR Techの普及
HR Tech とは、HR(Human Resources・人事)とテクノロジーを融合させた造語で、主にIT関連技術を用いて人事業務の効率化をサポートする手法を指します。HR Techの普及により、企業人事に関する調査・分析・管理などが簡単に行えるようになりました。
これまで、サーベイの実施は外部委託や、多くの人手をかけた地道なデータ収集・集計が不可欠でした。しかし、AIやクラウドなどを活用したアンケートツールや診断ソフトが登場し、比較的低コストで簡単に社内でサーベイを完結できるようになり、多くの企業でサーベイやそのフィードバックが行われています。
人的資本経営への注目
経済産業省では、人的資本経営について「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」[2]と、定義しています。2022年5月には人的資本経営の重要な資料である「人材版伊藤レポート2.0」[3]も公表されました。
「人材版伊藤レポート2.0」では、企業の人材戦略における重要な要素の1つとして、エンゲージメントが挙げられています。エンゲージメント向上施策についても触れており、サーベイなどを通した従業員のエンゲージメントレベルの把握や企業文化定着の取り組みが必要とされています。
サーベイとその結果を基にしたフィードバックによってエンゲージメントを高めていくことは、人的資本経営の実践においても大変重要といえるでしょう。
組織開発の重要性の高まり
昨今は転職によるキャリアアップが一般化し、雇用の流動化はますます進んでいます。企業は従業員エンゲージメントを高めて人材流出を防ぐ必要があり、その上で組織開発は非常に重要です。
サーベイフィードバックは組織開発の主な手法の1つです。組織の現状や課題を見える化し解決策を検討するプロセスで、サーベイ結果(データ)に基づいた対話をすることにより従業員の本音を引き出します。
建前でなく、本音から導かれた解決策の実践により、組織にとって意味のある施策が行えるのです。
3. 企業で行われるサーベイの種類
企業でよく行われるサーベイには、以下の5種類があります。
エンゲージメントサーベイ
従業員が自社に抱く愛着心(エンゲージメント)を調査するサーベイで、経営課題の整理や離職防止対策などを目的として行われる。
組織サーベイ
組織の全体像把握を目的としたサーベイ
パルスサーベイ
「パルス」は鼓動・脈拍といった意味を持つ言葉で、短期間に同じ内容の調査を繰り返し実施し、組織の変化を把握するサーベイ
従業員サーベイ
特定のテーマについて実態を把握するために実施されることが多いサーベイ
モラールサーベイ
業務に対する意欲や人間関係に関する満足度、パワハラなどの課題を明らかにするサーベイ
エンゲージメントサーベイやその他のサーベイについて、詳細は以下の記事をご参照ください。
4. サーベイフィードバックのメリット
サーベイフィードバックによって、以下のようなメリットが期待できます。
- サーベイ回答へのモチベーション向上
- 課題の見える化と解決策の発見
- 生産性やエンゲージメントの向上
- 人材育成に役立つ
- 従業員間のコミュニケーション促進
- 離職防止
サーベイ回答へのモチベーション向上
フィードバックが不十分な場合、従業員は時間をかけて回答したサーベイが何のために利用されているか分からず、回答へのモチベーションを下げてしまいます。次のサーベイでは真面目に回答しない従業員が増える恐れがあるでしょう。
企業側が、「サーベイでこのような課題が把握できたので、わが社としてはこうアクションをしていきます」という具体的で従業員が納得できるフィードバックを行えば、従業員の回答へのモチベーション向上が期待できます。
従業員が前向きにサーベイに協力してくれれば、回答の質が良くなり、実態をより正確に反映したものになります。
課題の見える化と解決策の発見
日々の業務や人間関係に抱く思いは人それぞれで、同じ事柄でも感じ方は人によって異なる場合があります。その気持ちや感じた内容などは、単に「個人の意見」と捉えられることが多いでしょう。
しかし、サーベイによって個人の意見がデータとして扱われると、「実は組織全体の課題だった」と判明する場合があります。今まで特に気にしていなかった事柄も、課題に発展する兆候が見つかるかもしれません。
明らかになった課題を適切なフィードバックによって対象者に共有することで、そのメンバーが主体となって的確な解決策を検討できます。
生産性やエンゲージメントの向上
課題を可視化し、導き出した解決策を実践していけば、組織全体の生産性向上につながります。
また、サーベイフィードバックでは組織の課題だけでなく、良さや強みも明らかになります。それらを組織全体で共有し、従業員一人一人が組織の強みや魅力を伸ばそうとすれば、さらに生産性を高められるでしょう。
課題や強みの共有は、組織として次のステップを目指したり、企業理念を実現しようと行動したりするために重要なエンゲージメント向上にも役立ちます。
人材育成に役立つ
サーベイの結果を対象者にフィードバックすれば、従業員はチームや自身の成長のために必要なスキルや、達成するべき目標を把握できます。サーベイフィードバックは、組織の全体像を把握すると同時に、組織をつくる個人の育成にも生かすことが可能です。
従業員間のコミュニケーション促進
サーベイの結果をフィードバックした後、サーベイ参加者は課題解決に向けて話し合いを行います。話し合いを重ねる中で、従業員間のコミュニケーションが促進され、結束が強まります。
業務中は、組織に関する深い話をするタイミングや余裕がないケースが多いでしょう。話し合いの場で課題について議論したり、普段あまり話さない人とも交流したりすると、組織全体の人間関係を円滑化する効果が期待できます。
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離職防止
サーベイによって従業員が抱える不満や課題を把握し、企業としての対策を提示すれば、従業員は「企業側は自分の不満や課題を解決しようとしてくれている」と感じ、離職を踏みとどまる可能性が高まります。
また、フィードバック後の話し合いによってコミュニケーションが活性化すれば、エンゲージメントも高まり、長く働き続けたいと思えるようになるでしょう。
5. サーベイフィードバック実施の流れとポイント
サーベイフィードバックの実施の流れやポイントを確認しましょう。
5-1. サーベイの実施理由とルールの周知
サーベイに参加する従業員には、事前に実施の理由やルール、結果のフィードバックを行うことを説明しましょう。調査の目的をしっかり説明すれば、何のために実施するのかと企業側に疑念を抱いたり、不誠実な回答をしたりする従業員を減らせます。
説明の際は、「サーベイやサーベイフィードバックとは何か」「従業員が得られるメリット」などが簡単に分かる動画やスライドなどを用意するのがおすすめです。短時間で説明でき、口頭のみで説明されるより、従業員の理解も深まります。
また、サーベイへの参加は通常業務とは別の作業となるので、従業員に協力への感謝や労いの言葉をかけることも忘れてはなりません。
5-2. サーベイの実施
説明をしたら、サーベイを実施します。質問数や内容は調査の目的に応じて変わりますが、従業員が抱える悩みや職場の課題を明確にできるものにしましょう。
5-3. 結果の集計
サーベイで得たデータは、なるべく早めに集計・分析をします。サーベイの実施から時間が経ち過ぎると、従業員のフィードバックに対するモチベーションが下がったり、サーベイ実施時点とは課題が変わってしまったりするからです。
できるだけ情報が新しいうちに集計し、速やかにフィードバックに進むのも、サーベイフィードバックの成功のポイントです。
5-4. 全体へのフィードバック
サーベイ参加者に結果を共有します。フィードバックは担当者の主観を入れず、シンプルで分かりやすく伝えるよう心がけましょう。
5-5. 次のアクションを決定し実行する
ここがサーベイフィードバックの最も重要なポイントです。「フィードバックをしたらそれで完了」ではありません。事前説明から、フィードバックを基に次のアクションを決定して実行するまでが一連の流れです。
組織内で結果と解釈を共有する場を設け、未来に向けたアクションプランを作り、課題解決やワンランク上の目標達成に向けての擦り合わせをします。
メンバーの人数が多過ぎると意見を言いにくい人がいたり、全員の意見を把握することに時間を要したりする場合もあります。人数によっては、話し合いを少人数のグループで実施し、各グループでまとまった意見を代表者が持ち寄るなども1つの方法です。
サーベイとフィードバックは、1度実施して終わりではありません。定期的に実施し、アクションプランの確認や、必要に応じた軌道修正を行いましょう。
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6. サーベイフィードバック実施時の注意点
従業員が「サーベイに回答してよかった」と思える、成果あるフィードバックを行うには、以下の点に注意しましょう。
- データだけに注目しない
- 回答へのモチベーションを下げる発言をしない
- 回答者を特定しない
- マンネリ化を防ぐ
- アクションの進捗を評価する
- 前向きにフィードバックを行う
データだけに注目しない
サーベイの結果を受け、課題の解決策を検討する際、目に見えるデータや数値ばかりに目を向けるのは避けましょう。
例えば、社内コミュニケーションに関する調査の結果が良くなかったことを受け「データ(数値)を良くする=課題解決」だと考えてしまった場合を想定してみます。
この場合、「週1回ランチミーティングを開こう」「先輩・後輩のペアをつくって業務やコミュニケーションを円滑にしよう」といったコミュニケーション機会の増加、つまりデータ(数値)に直結する安直な対処法を提案してしまいがちです。
しかし、そもそも本音で対話できる人間関係の基盤が築けていなかったり、上司・先輩の教え方や対応に問題があったりするなど、根本的な課題に気付けていない可能性があります。
データが示唆する根本的な原因を追求し、真の課題解決に向けた対策を実施しましょう。
回答へのモチベーションを下げる発言をしない
サーベイ担当者は、回答へのモチベーションを下げる発言をしないよう注意が必要です。
サーベイとフィードバックを定期的に実施していると、参加者側だけでなくサーベイ担当者も実施がルーティン化していきます。すると「定期調査ですので、いつも通り協力お願いします」など、サーベイの重要性を低めてしまうような発言を無意識にしてしまうかもしれません。
企業にとって、サーベイやフィードバックは従業員が日々の業務の中で感じる課題や悩みなどを把握し、解決に導くものです。うわべだけの回答では正しいデータが得られず、問題解決につながりにくくなるので、発言には注意しましょう。
回答者を特定しない
誰がどのように回答したかの特定が可能なサーベイを行うと、参加者は「正直に回答しにくい」「ネガティブな回答をしたら人事評価に響くのでは?」と感じ、実態を反映した回答を得にくくなります。
サーベイとフィードバックの実施前には、回答者の特定はしないこと、回答内容は人事評価に影響しないことを必ず伝えましょう。
サーベイとフィードバックはあくまで、組織の現状を把握し今後の目標設定などの参考にするために実施するものです。「個人の不利益にはならないので、たとえネガティブな内容でも本心で回答してほしい」など、従業員が回答しやすい声がけをしましょう。
マンネリ化を防ぐ
サーベイの回数を重ねると、従業員が回答に慣れてマンネリ化する恐れがあります。そのまま継続するとサーベイが形骸化し、正確なデータが取れなくなってしまいます。
マンネリ化を防ぐには、サーベイを実施する目的やメリットを毎回丁寧に説明することが重要です。従業員がこれらを把握していないと、サーベイで見える化されたデータの意味が伝わりません。
特に、組織内の変化を細かく把握する目的で行われるパルスサーベイは実施頻度が高く、説明やフィードバックを適切に行わないとすぐに形骸化してしまうため注意が必要です。
アクションの進捗を評価する
サーベイフィードバックの場で次のアクションを決定しても、対象者がなかなか行動に移さないケースもあります。アクションがなければ、サーベイを実施しても環境は変わりません。
サーベイフィードバックの場で決定したアクションは、必ず進捗の評価をしましょう。
アクションの進捗を定期的に評価していけば、思うような効果が得られなかった場合でも、スムーズに別のアクションを実践し軌道修正を図ることができます。
前向きにフィードバックを行う
サーベイで得たデータの分析結果は「組織の課題」に焦点が当たりやすく、ネガティブになりがちです。しかし、自社の理想の姿を描き未来に向けて話し合う、前向きで明るい雰囲気でのフィードバックも重要です。
サーベイで判明した課題以外の良い部分・強みも共有するなど、従業員のモチベーションアップにつながる工夫をしましょう。
7. サーベイフィードバックの企業事例
最後に、サーベイフィードバックの企業事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
7-1. パナソニック株式会社
電機メーカーのパナソニック株式会社では、年に1度、サーベイ(意識調査)が行われており、従業員は人間関係や組織内の制度、自身の成長などについて回答します。
従業員の働きがい向上支援のための専任組織である「A Better Workstyle編集局」には、サーベイ結果をきっかけに寄せられる相談も多いといいます。
ただし、最初に持ち込まれた課題をうのみにはしません。組織の担当者との対話や、現場の従業員へのインタビューなどを行って本当の状況を見える化し、真の課題を見つけ出した上で、対策を考えます。
同社は課題を見える化するために、心理的安全性を確保し、本音を言いやすくするさまざまな取り組みをしています。一人一人がパーソナルなことや仕事に対する思いを語る「オフサイトミーティング」、職場の素晴らしさを語る「自慢大会」などが、代表的な施策です。
サーベイフィードバックで組織の課題について考えると同時に、職場や従業員の長所についての話し合いも行い、ポジティブな雰囲気の中で本音の対話を実現しています。
7-2. 株式会社メルカリ
株式会社メルカリは組織の急激な拡大に伴い、組織のコンディションを見える化するために、2018年よりサーベイフィードバックに注力しています。
同社のサーベイは3カ月に1度と実施頻度が高めです。これは、組織の再編が早ければ3カ月おきに行われるためで、サーベイとフィードバックも3カ月ごとでないと意味がなくなってしまうからです。
また、サーベイを行う際には、何を集計しているのか分からない質問をしないよう注意しています。例えば、「あなたの上長は尊敬できて、フィードバックがうまいですか?」といった2つ以上の問いを含む質問は、回答を迷わせてしまう上、集計結果がアクションプランに結びつくのか分からなくなるため、項目に含めません。
他にも、高頻度でサーベイを実施するに当たって従業員の不満を生まないよう、5~10分の短時間で回答できる質問量にする、未回答者には個々でリマインドのメッセージを送るなどの工夫をしています。
7-3. 株式会社デンソー
株式会社デンソーでは、長年組織開発に注力する中でサーベイフィードバックを行っています。
同社が効果的なサーベイフィードバック実施のために重視しているのは、「関係性の質」の向上です。関係性の質とは、メンバーの人となりを理解することを指します。これがベースにないと、話し合いで本音のコミュニケーションが取れません。
同社は、以下のような関係性の質向上への取り組みを実施しています。
・1970年代から行っている「ファミリートレーニング(職場ぐるみ訓練)」を現代に合わせてアレンジした休日のワークショップ
・3人1組で話し合いを行う「しゃべり場」
・業務におけるメンバー間の認識のズレが分かる「塗り絵」
関係性の質向上とともにサーベイフィードバックが行いやすくなり、組織開発の加速が期待されています。
8. まとめ
企業におけるサーベイフィードバックとは、従業員に実施したサーベイ(調査)の結果を本人や所属部署に伝え、改善に役立てることをいいます。フィードバックの場では、サーベイで明らかになった課題やその解決策について話し合いを行います。
サーベイと似た言葉にリサーチが挙げられますが、以下のような違いがあります。
サーベイ:全体像を把握するために広い範囲で調査する
リサーチ:特定の狭い範囲でより細かく調査する
昨今、サーベイフィードバックが注目される背景として、以下のようなものがあります。
- HR Techの普及
- 人的資本経営への注目
- 組織開発の重要性の高まり
また、企業でよく実施されるサーベイには以下の5種類があります。
- エンゲージメントサーベイ
- 組織サーベイ
- パルスサーベイ
- 従業員サーベイ
- モラールサーベイ
サーベイフィードバックは、正しく運用することで以下のようなメリットが期待できます。
- サーベイ回答へのモチベーション向上
- 課題の見える化と解決策の発見
- 生産性やエンゲージメントの向上
- 人材育成に役立つ
- 従業員間のコミュニケーション促進
- 離職防止
サーベイフィードバックは、以下の流れで実施します。
- サーベイの実施理由とルールの周知
- サーベイの実施
- 結果の集計
- 全体へのフィードバック
- 次のアクションを決定し実行する
サーベイフィードバックの効果を高めるために、以下の点に留意しましょう。
- データだけに注目しない
- 回答へのモチベーションを下げる発言をしない
- 回答者を特定しない
- マンネリ化を防ぐ
- アクションの進捗を評価する
- 前向きにフィードバックを行う
最後に、サーベイフィードバックの企業事例として、以下の3社を紹介しました。
- パナソニック株式会社
- 株式会社メルカリ
- 株式会社デンソー
サーベイフィードバックをうまく運用すれば、組織の課題を見える化できると同時に、良い部分や強みも明らかにできます。さらに、エンゲージメント向上や円滑な人間関係の構築に役立ち、従業員にとって「長く働き続けたい企業」となります。
サーベイを実施する際は、業務外の作業をすることになる従業員に労いの言葉を忘れず、成果のあるサーベイを実施できるようにしましょう。
貴社の人事施策見直しに、この記事がお役に立てば幸いです。
サーベイフィードバックとは何ですか?
企業が従業員に対して実施したサーベイ(調査)を集計・分析し、フィードバックを行う人事施策です。サーベイは仕事への意欲や働きやすさ、企業に抱く心情など幅広い内容を調査する目的で行われ、組織の全体像を把握するために役立ちます。
サーベイとは何ですか?
サーベイ(survey)は、日本語で「調査」や「測定」を意味する英単語で、ものの全体像を把握するために広い範囲で調査することをいいます。似た言葉にリサーチ(research)がありますが、リサーチは特定の狭い範囲でより細かく調査する際に使用します。
エンゲージメントサーベイは何のためですか?
エンゲージメントサーベイは、従業員が自社に抱く愛着心(エンゲージメント)を調査するものです。経営課題の整理や離職防止対策などを目的として行われます。
[1] 株式会社 PR TIMES「社員の約70%がエンゲージメントサーベイに不満、施策なきサーベイはエンゲージメントを低下させる バヅクリ株式会社」,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000058.000058147.html(閲覧日:2024年3月4日)
[2] 経済産業省「人的資本経営 ~人材の価値を最大限に引き出す~」,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/index.html(閲覧日:2024年3月4日)
[3] 経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~」,2022年5月公表,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf(閲覧日:2024年3月4日)
参考)
株式会社ラフール「サーベイフィードバックとは?重要性と実施する際の注意点」,『Well-Being Workers』,https://survey.lafool.jp/mindfulness/column/0131.html(閲覧日:2024年3月4日)
株式会社Schoo「サーベイフィードバックで組織が変わる。効果的に実施するためのポイントを解説」,『Schoo for Business』,https://schoo.jp/biz/column/1222(閲覧日:2024年3月4日)
株式会社RECOMO「サーベイフィードバックとは?必要性や組織開発に期待できる効果について解説!」,https://recomo.jp/method/3385/(閲覧日:2024年3月4日)
経済産業省「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~人材版伊藤レポート2.0~」,https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf(閲覧日:2024年3月4日)
株式会社ラフール「エンゲージメントサーベイとは?具体的な質問項目や無駄にしないためのポイントを解説」,『Well-Being Workers』,https://survey.lafool.jp/mindfulness/column/0112.html(閲覧日:2024年3月4日)
中原淳,『「データと対話」で職場を変える技術 サーベイ・フィードバック入門』,株式会社PHP研究所,2020年