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組織開発とは?雇用の流動化時代に従業員の定着を促す組織づくり

「優秀な従業員の確保や定着を促すために、組織開発が有効らしい」

雇用の流動化がますます進むいま、従業員の帰属意識を高めるための施策を模索している企業も多いことでしょう。人事部門やマネジャークラスでは、「組織開発」という言葉を見聞きし、興味を持っている方もいるかもしれません。

組織開発は自律性と信頼関係を醸成し、従業員の貢献意欲が増す魅力ある会社をつくるための組織的な取り組みです。組織開発に取り組むことで、社内に対話が生まれ、より良い風土の構築に繋がっていきます。

本稿では、組織開発の概要、手法やフレームワーク、具体的に進めるためのプロセスについて詳しくご紹介します。組織開発に興味をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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1. 組織開発とは?

組織開発(Organization Development)とは、一言でいえば従業員にとって「いい会社」をつくるという目的をもった、あらゆる組織的な取り組みのことを指しています。

組織開発の考え方は、日本では古くて新しいものです。1970年代から80年代にかけて小集団活動を中心とした組織開発がブームとなり、やがて現場の改善活動に発展していきました。

その後は組織開発という視点は薄くなったものの、近年では個々の能力を超えた関係性や相互作用の力が重視されるようになり、再び注目されています。

1-1. 組織開発と人材開発の違い

組織開発をもう少し明確に定義するならば、「組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていくことや、そのための支援」[1]です。

人事などに関わっている方は、「人材開発とは違うのか」という疑問が思い浮かぶかもしれません。両者の違いを明確にしてみると、組織開発のイメージがとらえられます。

人材開発は、個人のスキルアップや成長のために施策を講じます。働きかける対象はあくまで個人レベルです。

一方、組織開発の目的は、個人のみならず人と人の関係性、チームや部署などのグループ、さらには組織内外の関係性の質を高めることにあります。

図:組織開発が働きかける対象とするシステムのレベル

出典:中村和彦「組織開発の特長とその必要性(訪米組織開発調査団・報告書)」,「公益財団法人 関西生産性本部 訪米組織開発調査団」,https://www.kpcnet.or.jp/od/report/od2013report_01.pdf(閲覧日:2023年5月1日)を参考に当社作成

つまり、組織開発は個人のスキルに加え、組織が活動するなかで生まれる関係性や相互作用の効果を高めることで、組織の成長や発展につなげていくための取り組みです。組織開発を成功させるためには、組織のなかに対話を生み、良い風土をつくることが鍵になります。

1-2. 組織開発が必要な背景

組織開発に注目が集まるもっとも大きな理由は、雇用の流動化です。仕事をローテーションするメンバーシップ型雇用から、職務を明確に定義するジョブ型雇用に切り替える企業が増え、若年層であるほど平均勤続年数は年々短くなっています。

一般労働者の年齢階級別平均勤続年数の推移(男性)

出典:厚生労働省「一般労働者の年齢階級別平均勤続年数の推移」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/21/backdata/02-02-08.html (閲覧日:2023年5月1日)

一般労働者の年齢階級別平均勤続年数の推移(女性)

出典:厚生労働省「一般労働者の年齢階級別平均勤続年数の推移」https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/21/backdata/02-02-08.html (閲覧日:2023年5月1日)

上図が示すように、60歳以上の男性をのぞくほぼ全ての年代において、2000年前後から平均勤続年数が下降傾向にあることがわかります。

職務経験を積み、そのスキルを他社でも生かすことができるならば、優秀な従業員はより条件がよい仕事を求めて転職することになるでしょう。

いま求められるのは、雇用条件だけでは測れない働きがいとなる従業員エンゲージメント(会社に対する愛着心の伴う貢献意欲)を高めることです。「この会社だから働きたい」と思える会社づくり、すなわち組織開発が必要とされる理由は、まさにここにあるといえます。

組織開発の方法には、決まったやり方があるわけではありません。事業を取り巻く環境や戦略、人材などの状況を見極め、さまざまな打ち手から自社に合う方法を見つけて実践していきましょう。

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2. 組織開発の手法・フレームワーク

ここからは、組織開発によく使われる手法やフレームワークをご紹介します。

それぞれの特徴を知ることで、自社に取り組みやすい方法を見つけやすくなるでしょう。

2-1. 1on1

1on1とは、上司と部下が11で対話を重ねる手法です。

評価面談とは異なり、組織のなかに話しやすい関係性をつくることを目的とします。仕事に対するやりがいや不満、職場の人間関係やキャリア展望など、部下が話したいことを対話のテーマにするといいでしょう。

基本的に上司は聞き役となり、部下を取り巻く状況に理解と共感を示すことが必要です。上司のコミュニケーション能力が問われる場であるともいえます。

2-2. コーチング

コーチングは、職場のさまざまな場面で用いられるコミュニケーションの手法です。ティーチングが「教えること」であるのに対し、コーチングは「導くこと」と捉えると理解しやすいかもしれません。

例えば上司が傾聴や質問などによって部下に気づきを促すことで、進むべき方向性を見つけることを支援します。

2-3. アプリシエイティブ・インクワイアリ

アプリシエイティブ・インクワイアリAppreciative Inquiry, 以下AI)は、グループの対話を通して組織のビジョン、ありたい姿を見出すためのプロセスです。発見(Discover)、夢(Dream)、設計(Design)、実行(Destiny)の4Dプロセスを実践していきます。

AIは「価値を認める探求」と訳出できるように、ポジティヴな思考法をベースとしたフレームワークです。問題を改善するという視点ではなく、人材や組織の強みを伸ばしていくように問いを立てていきます。

AIのポイントは、マイナスな要素や互いを否定することを避け、常に言葉や雰囲気をプラスの方向にもっていくことです。

2-4. ワールドカフェ

ワールドカフェは、その名の通りカフェのようなリラックスした雰囲気のなかで会話をすることにより、創造的なアイデアを生み出そうとするものです。

飲み物やおやつをつまみながら、もしくは会議室を出て開放的なスペースで行うなど、一人一人の参加者が気軽に発言できる場であることにワールドカフェの意味があります。

テーマはオープンな問いであり、何か答えを出そうとするものではありません。「いい会社とはどのような会社か」につながるさまざまなテーマを考案し、自由に話すなかで思わぬアイデアが飛び出してくるでしょう。

2-5. サーベイフィードバック

サーベイフィードバックは、組織調査(サーベイ)と対話を組み合わせることで、組織開発の方向性を模索する方法です。

サーベイの結果を組織の重要なメッセージとして受け止め、従業員の本音を引き出す対話をしていきます。マネジメントのあり方や風土などを「見える化」し、対話を通してデータを意味づけするプロセスのなかで、本音を「言える化」へと発展させようとするものです。

データを利用することで、建て前ではなく本音に根づいた対話が可能となり、意味ある施策の施行につながっていきます。


3. 組織開発のプロセス

ここからは、実際にどのように組織開発を進めていくのかを説明していきます。

組織開発は、意志さえあればいつでも始められることです。組織の日常のなかでこうしたプロセスをどのように落とし込めるか、ぜひ考えてみてください。

3-1. 組織の「ありたい姿」を明確にする

組織のありたい姿は通常、社是や経営理念として公言されています。また最近では、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)のように階層的に表すことも多くなりました。

どのような形であっても、組織開発を始めるうえで組織の「ありたい姿」が言語化されていることは必須です。しかし少し踏み込んでみると、実際には「絵に描いた餅」となっていることも少なくありません。

そこで最初のステップとして、まずは現在定めている「ありたい姿」が本当に目指すべきものであるかを再検討することから始めます。AIやワールドカフェなどの手法を利用しながら進めていくのがいいでしょう。

3-2. 現状を把握する

「ありたい姿」が明確になったら、それに対して現在の組織がどのような状態にあるのかを確認します。

組織の状態を確認するためには、事実に基づく現状の把握が必要です。さまざまな側面から調査し、多角的なデータを集めましょう。

1on1は、現場の声から職場のあり方を理解するのに役立つ方法です。一方、より客観的なデータを得るためには、社内サーベイを実施するのがいいでしょう。

3-3. 組織内で現状を共有し、課題を導出する

社内サーベイで集めたデータを組織のメンバーで共有し、これらを手がかりとして具体的な課題を導き出します。このときに有効となるのが、サーベイフィードバックのフレームワークです。

職場の問題を自覚しつつも、公式な場でこれらを問題化するのは簡単なことではありません。しかし、意見を裏づける客観的なデータがあれば、問題点の指摘がしやすくなります。

現状にしっかり向き合い、問題点を解消するための具体的な課題を設定することで、組織開発によってどのような風土を築きたいのかを明確にできるでしょう。

3-4. 試行的な実践を積み重ねる

課題が設定されれば、いよいよ実践を開始します。このとき心に留めておきたいのは、一度に大きな変革を行うのではなく、スモールスタートで試行錯誤を積み重ねていくことです。

組織開発では、試行錯誤の過程での発見に大きな意味があります。取り組みの結果だけでなくプロセスにも着目することで、意味ある発見を蓄積できるでしょう。

3-5. 検証・フィードバックを繰り返す

取り組みのなかから意味ある発見をするために、結果やプロセスに関して常に検証とフィードバックをしていきましょう。例えば、「部署間の壁を低くする」という課題を設定して部署横断的な対話を行う場合です。

定期的にワールドカフェ形式で対話の場を設けたところ、仕事だけでは見えないさまざまな背景事情を共有することができた反面、時間の経過とともに集まりが悪くなりました。

このような場合は、新たにSNSを使って結果の共有や意見交換を促す、ランチ会など集まりやすい場を設け、現状に合う方法を模索していきましょう。

組織開発を成果につなげるうえで大切なことは、都度の結果にこだわらないことです。小さな発見を大切に長期的に継続していきましょう

3-6. 定期的に効果を確かめ、共有、展開する

長期的に継続することが必要な組織開発ではありますが、漫然と続けて形骸化してしまっては意味がありません。

こうしたことを避けるために、一定期間を経た段階で効果を検証し、全社的に共有、展開していきます。

さまざまな取り組みが共有されることで、自分の身の回りだけでなく全社的に学びが広がっていきます。同じ取り組みでも場が変われば成功することもあり、失敗することもあるかもしれません。

組織の中で経験を共有することは、個々の学びを深めるだけでなく、組織そのものの成長にもつながっていくでしょう。

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4. 組織開発の企業事例

最後に、組織開発に取り組む企業の事例をご紹介します。

社員にとって「いい会社」をつくるあらゆる取り組みを組織開発ととらえれば、その内容は多岐に渡るものです。ここでは各企業の取り組みのなかで、本稿でふれた内容に関連するものを中心にまとめていきます。

4-1 アイ・オー・データ機器

アイ・オー・データ機器は、2013年に大規模リストラによって従業員を2割減らすという苦渋の決断後、「自分たちで考えて出した答えで行動する組織」への転換を図りました。

まず人事部門のメンバーが、コンサルティング会社のセミナーに参加して組織改善のエッセンスを学び、社内へレクチャーや執行役員向けの研修が行われました。

その後、ワークショップ形式の研修である「対話合宿」の実施や、会社が大切にしていることを共有する「カルチャーブック」の発信などを試みますが、それだけでは従業員の意識改革は進みません。

そこで大規模な社員の意識調査を行ったところ、人事と現場の意識の違いが明確になりました。そこでデータの数値だけを見るのではなく、どのデータが本質的に重要か、また影響している要素は何かといった議論を重ねていきます。

その結果から「現状」と「望ましい姿」を明確にした上で、具体的な教育・人事施策を展開し、さらにその変化を測定することを続けています。

定量的なデータをとるだけでなく、関係者がその読み方をめぐって深い対話をすることにより、サーベイの結果が強力な経営ツールとして機能するようになったといえるでしょう。

4-2.オムロン

オムロンは、「よりよい社会をつくる」という企業理念の実践の場として、2012年に「The OMRON Global AwardsTOGA)」を設けています。

従業員が日々の仕事のなかでの取り組み発表する場を設け、こうした取り組みを全従業員が共有することで企業理念への共鳴、共感の輪を拡大していこうとするものです。

年間を通じて実践されるTOGAへの挑戦はチームで取り組まれ、組織や地域の予選を勝ち抜いたチームはグローバル大会に出場します。さまざまなチームの取り組みや審査による評価は組織全体で共有され、職場の話題となることで学びに繋がっていきます

コロナ禍以降、2021年に開催されたTOGAグローバル大会では、延べ5万人を超える従業員が参加しました。受賞したテーマはオンライン、オフラインのハイブリット配信で全従業員に伝えられるだけでなく、社外からも投資家やメディア関係者、学生などが参加しています。

TOGAは本社主導の企画と運営によって始まってから、試行錯誤を重ねて今の形となりました。企業理念実践の物語として発信されることで、社内外にオムロンの風土を理解、浸透させる機会になっているといえるでしょう。


5. まとめ

本稿では組織開発の概要、手法やフレームワーク、そして具体的なプロセスと取り組み事例についてご紹介しました。

組織開発は、対話を生み、よい風土をつくるためのあらゆる組織的な取り組みであり、「組織内の当事者が自らの組織を効果的にしていくことや、そのための支援」です。

人と人の関係性、チームや部署などのグループ、さらには組織内外の関係性の質を高めることで、組織の成長や発展を促します。

組織開発が求められる背景には雇用の流動化があり、雇用条件だけでは生まれない従業員エンゲージメントを高めるために有効と考えられています。

組織開発に決まった方法はありません。状況を見極めてさまざまな打ち手から自社に合うものを見つけて実践していただくために、以下の手法やフレームワークをご紹介しました。

1on1
・コーチング
・アプリシエイティブ・インクワイアリ
・ワールドカフェ
・サーベイフィードバック

またこれらの方法を用い、具体的に進めていくための組織開発のプロセスを以下の手順で説明しました。

・組織のありたい姿を明確にする
・現状を把握する
・組織内で現状と課題を共有する
・試行的な実践を積み重ねる
・検証・フィードバックを繰り返す
・定期的に効果を確かめ、共有、展開する

最後に、組織開発の他社企業事例として、2社のご紹介をしています。

・アイ・オー・データ機器
・オムロン

組織運営において人材の重要性がますます高まるなか、雇用条件だけでは優秀な従業員をつなぎ止めることがますます難しくなっています。

従業員にとって魅力ある会社づくりを実践し、従業員エンゲージメントを高めるために、いま組織開発はどのような会社にとっても取り組む意義があるでしょう。

スモールスタートが可能な組織開発は、すぐにでも取り組むことができます。いま始められることを探すために、本稿が少しでも参考になることを願っています。

組織開発と人材開発の違いは何ですか? 

人材開発は、個人のスキルアップや成長のために施策を講じます。一方、組織開発は個人の能力のみならず働く人々の関係性や相互作用の効果を高め、組織の成長や発展につなげていきます。組織開発を成功させる鍵は、組織のなかに対話を生み、良い風土をつくることです。

組織開発の目的は何ですか?

組織開発の目的は、組織のなかに自律性と信頼関係を醸成し、従業員の貢献意欲が増す魅力ある会社をつくることです。優秀な従業員が移動することを防ぐためには、雇用条件だけでは測れない帰属意識を高めることが不可欠です。従業員に「この会社だから働きたい」と思ってもらえる会社をつくることを目指します。

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[1] OD Network Japan「組織開発とは」https://www.odnj.org/aboutod/(閲覧日:2023年5月1日)

参考)
経済産業省 ・ マーサー ジャパン株式会社「経営競争力強化に向けた人材マネジメント 研究会 」(第2 回公開資料)https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/jinzai_management/pdf/002_02_00.pdf (閲覧日:2023年5月1日)
鈴木義幸「組織開発に向けてのコーチング」https://coach.co.jp/view/20190306.html (閲覧日:2023年5月1日)
ミツカリ「アプリシエイティブインクワイアリーのやり方とは?原理とステップを理解する」https://mitsucari.com/blog/appreciative_inquiry_method/ (閲覧日:2023年5月1日)
あしたの人事「ワールドカフェとは?効果・テーマ・方式・やり方を解説」https://www.ashita-team.com/jinji-online/business/9230 (閲覧日:2023年5月1日)
中原淳「サーベイフィードバック超⼊門」http://www.nakahara-lab.net/blog/wp-content/uploads/2020/04/surveyfeedback2020_nakahara_presentation.pdf (閲覧日:2023年5月1日)
産労総合研究所「アイ・オー・データ機器 事例レポート(組織開発)」https://www.e-sanro.net/jirei/organization/e1911-205.html (閲覧日:2023年5月11日)
オムロン「The OMRON Global Awards(TOGA)」https://www.omron.com/jp/ja/about/corporate/vision/initiative/ (閲覧日:2023年5月1日)

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