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リスキリングとは? DXの実現に欠かせない従業員教育の手法を解説

リスキリングとは? DXの実現に欠かせない従業員教育の手法を解説

「DXはパラダイムシフトだ。従業員に少しずつでもキャッチアップしてもらう良い方法はないだろうか」

ビジネスの現場では、デジタル技術が目覚ましく進化しています。デジタル化という時代の移り変わりに対応できないと自社が衰退してしまうかもしれない、そんな不安を抱えている人もいるのではないでしょうか。

現在、経済産業省は、世界的なデジタル化に日本企業を対応させるため、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。その一環として、従業員のリスキリングを提唱し、注目されています。

今後DXを定着させていくためには、従業員にDXに対応できるような新しいスキルや知識が必要となるのです。

実際、海外ではすでに人事戦略の一つとしてリスキリングが実践されています。成功事例も確認されており(5-1.参照)、リスキリングは新しいスキルの獲得に効果があると証明されています。

日本でもリスキリングを行う企業があり、今後、デジタル時代に対応するためにリスキリングは必須になるといえるでしょう。

本稿では、リスキリングの定義や、リスキリングを実践するメリット、実践する方法などを解説します。今後のDX時代を生き抜くために、参考にしていただければ幸いです。

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1. リスキリングとは?DX時代に必要な人材戦略を解説!

まず、リスキリングの定義や注目されている背景を解説します。

1-1. リスキリングの定義

経済産業省はリスキリング(Reskilling)を「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています[1]

現在、世界的に第4次産業革命に突入しているといわれています。第4次産業革命とは、IoT (モノのインターネット)やビッグデータ、AI(人工知能)を活用した技術革新のことです。これにより産業構造が変化しつつあり、今後は現在ある仕事や業務の内容が変化することも考えられます。

今まで人が行っていた多くの業務がロボットに置き換わる一方で、人は創造性が必要な業務など新たな業務を行う必要が出てくるでしょう。今後誕生する新たな業務に対応するためには、その業務に即したスキルや知識が求められます

リスキリングとは、従業員が次世代に必要とされるスキルや知識を習得することを意味しているのです。

1-2. リスキリングが注目されている背景

リスキリングが注目されている背景として、以下の2点が考えられます。

・企業がDXの取り組みを加速させていること
・コロナ禍で働き方やサービスが多様化したこと

企業がDXの取り組みを加速させていること

現在日本では、国を挙げてDXが推進されています。業務のデジタル化に対応するためには、デジタル人材が必要です。

デジタル人材とは、技術やビジネスの最先端スキルを業務に活用できる人材です。DX推進には欠かせない存在ですが、その育成が進んでいないという現状があります。

コロナ禍で働き方やサービスが多様化したこと

コロナ禍でテレワークが一般化し、オンラインでのやりとりといった非対面型のサービスも増加しました。デジタル技術を活用した働き方やサービスが定着したことで、従業員には新たなスキルや知識が求められつつあります。

このような時代の流れもあり、今後DXを実現していく上で、デジタル人材を育成することは必要不可欠です。企業は、従業員に新たなスキルを獲得してもらい、社会の変化に対応していくことが求められているのです。

1-3. リスキリングとリカレント教育・OJT・生涯学習との違い

リスキリングと混同しやすい言葉に、リカレント教育やOJT、生涯学習があります。それぞれの違いについて知っておきましょう。

リカレント教育

「リカレント教育」のリカレント(Recurrent)は「循環する」という意味です。社会人として働いていた人が、再び大学などに入り直してスキルを身に付け、再び働くといった循環を意味しています。

新しいスキルや知識を習得するという意味では、リスキリングと似ています。

しかし、新しいスキルを身に付けるために離職が前提となっていることが、リスキリングと大きく異なる点です。またリスキリングよりも、従業員が自らの意思で主体的に取り組むイメージのある言葉でもあります。

OJT

OJT(On the Job Training)は、今ある業務の知識やノウハウを部下や新入社員に教え、実践的なスキルを身に付けてもらう、職場内訓練を意味しています。

スキルや知識を習得するという意味ではリスキリングと似ていますが、習得するスキルや知識社内に現存するものであるという点がリスキリングとは異なります。

生涯学習

生涯学習とは、人生を豊かなものにするために学ぶことです。教育機関での学びだけでなく、スポーツや趣味、ボランティア活動などによる学びも生涯学習に含まれます。

社会人になってから新たな知識を身に付けるという意味ではリスキリングと通じる部分がありますが、学ぶ内容やその目的などは大きく異なります。

このようにリスキリングは、リカレント教育やOJT、生涯学習とは明確に違う意味で使われる言葉です。

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2. リスキリングを行うことによるメリット

リスキリングを行うことによって考えられるメリットには、以下のようなことがあります。

・社内に新たなアイデアが生まれる
・業務の効率化ができる
・企業の文化を継承できる
・採用のコストを抑えられる

社内に新たなアイデアが生まれる

リスキリングを行った従業員は、新しいスキルや知識を身に付けられます。またリスキリングを通して、視野が広がることも期待できます。これらが相乗効果となり、今までにないアイデアが生まれる可能性が高まるでしょう。

変化が多い現代において、従来のやり方やサービスに固執していては生き残ることは難しいものです。事業がマンネリ化してしまう恐れもあります。企業力を高め、世の中の変化やニーズに合わせた商品やサービスを展開するために、新たなアイデアの創出は非常に重要な役割を果たします。

業務の効率化ができる

リスキリングで身に付けたスキルや知識を活用することによって、既存業務を効率化できます。

例えば、現場に携わっている従業員にデータ活用などのリスキリングを促すことで、これまでの業務経験を生かしながら、いっそう効率的に業務を行えるでしょう。

業務を効率化できれば、残業を減らすことも可能です。また、新たな事業に取り組むゆとりができ、企業の可能性も広がります。

企業の文化を継承できる

従業員にリスキリングを促すことには、企業の文化を継承できるというメリットもあります。

もちろん、新たな人材を採用して企業のDXを進めるのも良い方法です。しかし、培ってきた企業文化を守りながら、自社の強みと新しいスキルを融合させたいと考えた場合、新たな人材を採用することがベストとはいえません

なぜなら、新たに採用された人材が、自身の持つスキルと既存事業、社風などを、うまく融合させられるとは限らないからです。

そのため、今まで企業に貢献してきた従業員の方が、リスキリングによって新たに得たスキルや知識を社内でどのように生かすのかをイメージしやすいと考えられます。

企業文化や社風をよく知っている従業員のリスキリングを推進し、いっそう活躍してもらうことが、企業の発展の近道となるでしょう。

採用のコストを抑えられる

従業員のリスキリングが進むと、新たな人材を採用する必要がないため採用の手間やコストを削減できます。

中には「高いスキルを持つ即戦力人材を採用した方が良いのでは?」と感じる人もいるでしょう。しかし、そのような人材は多くの企業が欲しているため、採用自体が難しいと予想されます。また、何人も採用したいとなれば、多くのコストがかかります。

労働人口が減少しつつある現代において、新規の人材に頼るのではなく、今の人材を育成し活用するという考え方は企業の発展にも重要だといえるでしょう。

以上のようにリスキリングは、企業にとってさまざまな面でメリットがあります。


3. リスキリングを実践するステップ

ここからは、リスキリングを実践するための具体的なステップを紹介します。

Step1.スキルのギャップを明らかにし、習得すべきスキルを決める
Step2.リスキリングを実践するプログラムを考える
Step3.スキルを習得する
Step4.習得したスキルを業務に生かす

Step1.スキルのギャップを明らかにし、習得すべきスキルを決める

リスキリングのファーストステップは、企業が求めるスキルと従業員が持っているスキルのギャップを明確にすることです。

企業が求めるスキルは、企業の現状や目標などによって異なります。事業内容や業績のデータなどを活用し、従業員に習得してもらいたいスキルを選定しましょう。さらに、そのスキルについて、習得の難易度や内容なども明確にしておきます。

その一方で、従業員が現時点で持っているスキルについても、上長や指導役の先輩などが把握し、社内で共有できるよう可視化させます。

理想と現状のスキルのギャップが明らかとなったら、データベース分析ツールなどを活用し、リスキリングで習得を目指すスキルを決めましょう。

最近はHR Techの流れを受けて、スキルの管理を行うシステムも開発されています。例えば当社製のLMS[2]CAREERSHIP®」では、学習の管理と同時に、スキルの登録と習得状況の見える化が可能です。

CAREERSHIP®スキル管理機能の三つの特徴
 ・従業員に必要なスキルを可視化して管理し、戦略的な人材開発を実現
 ・スキル獲得に必要な学習をひも付けて、自発的な学習を促す仕組みづくりが可能
 ・他社のキャリアを含めてマッピングできるため、自律的なキャリア構築を推進

LMSの活用で、従業員との信頼関係を保ち、自発的かつ前向きなリスキリングを進めていくことができます。
〉スキル管理機能を詳しく見る

関連記事:LMS(学習管理システム)とは?専業ベンダーが基礎から選定ポイントまで徹底解説

Step2.リスキリングを実践するプログラムを考える

次に、リスキリングを実践するプログラムを考えます。プログラムの準備方法には、以下の2通りがあります。

・自社で学習プログラムを開発する
・外部のリスキリングプログラムを活用する

自社でプログラムを開発するとなると、コストや手間がかかります。そのため、リスキリングのコストを抑え、なるべく早く取り組みたいと考えている場合は、外部のリスキリングプログラムを活用する方法がおすすめです。

外部のプログラムを使用する際は、自社に合うものかを精査することがポイントです。その理由は、同じスキルを習得させる場合でも、企業によって適したプログラムが異なるからです。

例えば、繁忙期である、遠方の従業員が多いなど、個別に学習できるeラーニングや通信教育が適しているケースもあれば、実践的な内容を集合研修で学んだ方が良いケースもあります。

最適なプログラムの実践方法は企業によって異なります。また内容についても、各プログラムでアプローチの方法が異なるため、企業によって合う・合わないが出てくると考えられます。

リスキリングプログラムを考えるときには、運用方法予算の他、従業員が効率的にスキルを習得できるかを念頭に置いて検討するとよいでしょう。

関連記事:eラーニングとは?システムやメリット、導入事例、費用について解説
関連記事:集合研修のメリットとは?オンライン研修とのブレンドが効果的な人材育成のカギ

Step3.スキルを習得する

いよいよ従業員がスキルを習得する段階です。各従業員にリスキリングプログラムを提供し、学習が続けられるようサポートしましょう。

リスキリングを実践する時間については、事前に決めておくケースや、好きな時間に取り組むケースなど、企業によってまちまちなようです。従業員が離脱したり不満を感じたりしないようにするためにも、従業員の意見を参考にしながら実施時間を決定しましょう。

離脱者を出さないためには、学習の進捗状況を把握し、アドバイスをすることも大切です。LMSなども活用し、必要に応じたサポートを行ってください。

Step4.習得したスキルを業務に生かす

リスキリングは、スキルを習得して完了ではありません。そのスキルをいかに活用し、成果を出せるかが重要です。

そのためには、プログラムで習得したスキルを実践する機会が必要です。まずは試験的に簡易な内容から実践させ、徐々に業務に応用ができるよう実践範囲を拡大していきましょう。

スキルを試す機会を設けることで、従業員にスキルが定着しやすくなります。また、少しずつ実践の範囲を広げると、スキルの応用方法をイメージしやすくなるでしょう。

以上が、リスキリングを実践するステップです。企業は、従業員が効率的にスキルを習得できるような仕組みを考え、スキルを習得できるまで学び続けられるようサポートしましょう。


4. リスキリングを実践するときの注意点

リスキリングを実践するときの注意点には、以下のようなものがあります。

・社内の理解を得る
・自社に適したプログラムを選ぶ
・従業員のモチベーションがキープできる仕組みを整える

社内の理解を得る

リスキリングを成功させるためには、社内の理解を得ることが大切です。

リスキリングが日本で始まったのは最近のことです。特に日本では今まで、デジタル技術の導入ついては外部に委託することも多かったため、従業員をリスキリングするといった取り組みを行う企業はまれでした。そのため、リスキリングに抵抗感を示す従業員も一定数いるようです。

その他、業務時間外に学習時間の確保が必要となるケースなど、それまで他の目的で使っていた時間をリスキリングに割かなければならない場合にも従業員の反発が考えられます。

このような従業員にリスキリングについて理解してもらうためには、そのメリットを自分にも関係があることと認識してもらう必要があります。業務効率化の程度など、説得力のあるデータを示し、分かりやすく具体的に説明するようにしましょう。

リスキリングをスムーズに実践するためには、従業員の理解が欠かせません。従業員の声も参考にしつつ、理解を得られるよう努めましょう。

自社に適したプログラムを選ぶ

リスキリングで効果を得るためには、自社に適したプログラム選びも欠かせません。外部のリスキリングプログラムを活用する場合、従業員に習得させたいスキルや知識を効率的に学べるプログラムかどうか、精査することが必要です。

とはいえ、そのプログラムが自社の求めているものかどうか分かりにくいこともあるでしょう。その場合は、外部の専門家に相談するのも一つの方法です。自社だけで解決しようとせず、外部の力も積極的に活用しましょう。

従業員のモチベーションがキープできる仕組みを整える

リスキリングを行う際には、従業員のモチベーションがキープできる仕組みを考えることも必要です。

リスキリングの課題の一つに、うまくスキルが習得できなかったり、「やらされている」と感じたりすることによって、学習意欲が低下してしまうことが挙げられます。つまり、従業員のモチベーションを維持することが、リスキリングを成功させるポイントとなるのです。

従業員のリスキリングに対する意欲をキープするためには、以下のような工夫が必要です。

・同じ目的を持つ仲間と刺激し合える場を設ける
インセンティブ制度を設ける
・リスキリングによる成長を実感できる環境を提供する

企業は、従業員がリスキリングを続けられる仕組みを考え、従業員をサポートしましょう。

ここまで、リスキリングの注意点を見てきました。新しいスキルの習得には、従業員の努力が必要です。努力を促すためにも、ここで紹介した注意点を参考にしてみてください。


5. 【事例】実際にリスキリングを行っている海外企業

リスキリングの取り組みが始まって間もない日本企業に対し、海外企業は続々と実践しています。企業の特色によってさまざまな内容のリスキリングを実施しているようなので、自社で行う際の参考にしてみてください。

5-1. AT&T Inc.

アメリカの通信事業者「AT&T Inc.」は2008年に、従業員の約半数が10年後には役に立たないスキルしか持っていないことを把握しました。このままでは通信業界の変化に対応できないと考え、2013年からリスキリングをスタートさせました。

2020年までに10億ドルを投じ、オンラインの訓練コースや学習支援のプラットフォーム、キャリア開発のための支援ツールなどを従業員に提供しています。

従業員10万人のリスキリングを実行した結果、同社は以下のような効果を得ました。

・社内で必要な技術職の81%を社内の人材で充足している
・リスキリングを行った従業員を実施していない従業員と比較したところ、以下のような結果が出た
  ・1.1倍高い評価を受けた
  ・1.3倍多く表彰された
  ・1.7倍昇進した
  ・離職率が1.6倍低くなった

5-2. Amazon.com Inc.

世界最大のEC 企業「Amazon.com Inc.」も、2019年7月に従業員10万人を対象にリスキリングを行うことを発表しました。実施されるリスキリングは、2025年までに7億ドルを投じて行われる、世界最大規模のものです。

同社では、非技術系人材を技術職へ転向させるプログラムや、デジタルスキルを持つ従業員がさらに高度なスキルを習得するためのプログラムを用意しました。デジタル技術の全体的な底上げを目指し、リスキリングを実行中です。

5-3. Walmart Inc.

世界最大の小売りチェーン「Walmart Inc.」では、2016年から社内研修にバーチャルリアリティ(VR)を活用しています。

具体的な活用方法は以下のようなものです。

・頻度の少ない大規模イベントや自然災害でのトラブルに備えて、VRで疑似体験をし、実践的なスキルを習得する
・新しいサービスや設備を導入する際、事前にVRで扱い方を身に付ける

小売り業界のDXに対応できるよう、VRという技術を使って従業員を支援しているのです。

ここまで、海外企業の事例を見てきました。すでに効果を得ているケースもあり、リスキリングの有効性は確かであるといえます。


6. 【事例】実際にリスキリングを行っている国内企業

ここでは、すでにリスキリングをスタートさせた国内企業を3社紹介します。

6-1. 富士フイルム株式会社

人材育成を重視している富士フイルム株式会社では、人材育成を支える教育制度が充実しています。

その特徴には、以下のようなことが挙げられます。

・従業員一人一人の役割を強化できる研修を実施していること
・それぞれの現場で必要なスキルを自ら学べるプログラムを実施していること
・OJTとOFF-JTを密に連携させていること

富士フイルム株式会社は、一人一人の従業員が自分の能力を最大限に発揮することで、全体として良い変化が生まれることを期待しているのです。

富士フイルム株式会社は2000年代に、写真フイルム事業から化粧品事業への事業転換を行いました。通常大きな事業転換を行うと、人材の大規模な入れ替えが必要になります。しかし、富士フイルム株式会社では人材の入れ替えがそれほど必要なかったとのことです。

このことからも、富士フイルム株式会社が事業戦略の変更に対応し、従業員のスキルをうまく変換できたことがうかがえます。

6-2. 株式会社日立製作所

株式会社日立製作所は、DXを推進する「人財」育成に力を注いでいます。2020年9月にはグループ企業の全従業員にDX教育を実施すると発表しました。当時の国内におけるリスキリング事例としては最大の規模です。

日立グループの人財教育を行う「日立アカデミー」は、DX人財の育成を3層に区分して捉えています。

・リテラシー:DXを自分に関連のあることとして捉えられる・デジタルの基礎知識を習得している
・基礎スキル:担当業務に応じた対応力を強化する
・プロ化:デジタル技術を推進できるスキルを身に付ける

この三つのうちグループの全従業員を対象に行っているのは、リテラシー研修です。現場の従業員がDXの基礎知識を習得することで、部門を超えた連携を取ることができ、結果的に企業全体のDX化を推進できると考えているのです。

6-3. 三菱商事株式会社

「人材は最大の資産」と考える三菱商事株式会社は、変化に対応できる力の必要性を感じている企業の一つです。2019年度からスタートした新たな経営指針「中期経営戦略2021」では、経営力の高い人材を目指した段階的な人材育成とその活用を目標に据えました。

同社の人材育成プログラムは、毎年見直しを行いながら実施されています。現在は、経営人材となるために必要なスキルや、成長支援をマネジメントするために必要な知識を習得するためのプログラムの他、デジタル人材を育成するためのプログラムなどを多数展開中です。

個々のレベルに応じた研修を提供したり、従業員が自律的に学習できる仕組みを整えたりすることでリスキリングをサポートしています。

ここまで国内企業の事例を見てきました。ここで紹介した国内企業は、現在進行形でリスキリングを実施しています。今後どのような効果が現れるのか目が離せません。

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7. まとめ

リスキリング(Reskilling)とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」です。

企業がDXの取り組みを加速させていることや、コロナ禍で働き方やサービスが多様化したことなどにより注目度が高まっています。

リスキリングを行うことによって、以下のようなメリットがあります。

・社内に新たなアイデアが生まれる
・業務の効率化ができる
・企業の文化を継承できる
・採用のコストを抑えられる

実際、いち早くリスキリングを導入したAT&T Inc.では、以下のような効果を得ました。

・社内で必要な技術職の81%が社内の人材で充足している
・リスキリングを行った従業員を実施していない従業員と比較したところ、以下のような結果が出た
  ・1.1倍高い評価を受けた
  ・1.3倍多く表彰された
  ・1.7倍昇進した
  ・離職率が1.6倍低くなった

リスキリングを実践するステップは以下の通りです。

Step1.スキルのギャップを明らかにし、習得すべきスキルを決める
Step2.リスキリングを実践するプログラムを考える
Step3.スキルを習得する
Step4.習得したスキルを業務に生かす

リスキリングでは、スキルの習得がゴールではありません。企業は、従業員が学んだスキルを業務に生かせるようになるまでしっかりとサポートしましょう。

リスキリングを実践するときに注意したいことは以下のようなことです。

・社内の理解を得る
・自社に適したプログラムを選ぶ
・従業員のモチベーションがキープできる仕組みを整える

これらは、リスキリングによって成果を出すために欠かせないことです。しっかりと仕組みを整えてからリスキリングをスタートさせると、スムーズに実践できるでしょう。

DX時代の到来を受け、企業にとって必要なスキルや知識が変化すると予想されます。時代の変化に対応するためには、今の人材をどう生かすかが鍵となるでしょう。

今後、リスキリングを実践し従業員のスキルや知識を高めることが、企業の成長や継続につながります。この機会に、リスキリングを行うことを検討してみてはいかがでしょうか。

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[1] リクルートワークス研究所 石原直子 人事研究センター長/主幹研究員「リスキリングとは -DX時代の人材戦略と世界の潮流-」,『経済産業省』2021年2月26日,p6,https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf (閲覧日:2022年4月12日)
[2] Learning Management System、学習管理システムのこと

参考)
経済産業省・みずほ情報総研株式会社「今後に向けた取組(案)について」,2021年3月11日,https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/003_03_00.pdf(閲覧日:2022年4月12日)
リクルートワークス研究所 石原直子 人事研究センター長/主幹研究員「リスキリングとは -DX時代の人材戦略と世界の潮流-」,『経済産業省』2021年2月26日, https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf (閲覧日:2022年4月12日)
内閣府「第2章 新たな産業変化への対応(第1節)」,『日本経済2016‐2017』,
https://www5.cao.go.jp/keizai3/2016/0117nk/n16_2_1.html(閲覧日:2022年4月12日)
富士フイルムホールディングス「人材育成」,https://holdings.fujifilm.com/ja/sustainability/activity/work-style/priority-issue-2/human-resource-development(閲覧日:2022年4月12日)
株式会社日立アカデミー「DXを推進する人財育成」,https://www.hitachi-ac.co.jp/service/opcourse/subcate/dx/(閲覧日:2022年4月12日)
三菱商事「人材育成・活躍促進」,https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/resource/training.html(閲覧日:2022年4月12日)

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