自律学習(自律学習)は理想だが、学習のモチベーションを保つのが難しいのでは?

近年、多様化する人材を効率的かつ効果的に育成する手法として、従業員が自発的に学び能力をアップデートしていく、自律学習(自律的学習)が注目されています。

自律的に学習し、業務の中でも自律的に行動できる自律型人材の育成を進めたいと考える企業も増加しています。

テクノロジーを活用し、ビジネスパーソンの自律的な学習を支援し、それによる成長を促進すること、これが新しい企業内教育の形です。

本稿では、自律的学習の意味注目されている理由ビジネスパーソンの自律学習(自律的学習)の実態を紹介します。また企業が支援する上での効果的な方法を具体的に解説します。ぜひ参考にしてください。

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自律学習(自律的学習)とは?

「自律学習(自律的学習)」とは、学習者が自ら学習のゴールを定め、学習内容を選択・実行・管理し、勉強の成果について評価する学習プロセスのことです。これをビジネスのシーンで言い換えると、従業員が自らの能力をアップデートするために、自発的・主体的に必要な知識やスキルを身に付けることを指します。

英語では「Self-Directed Learning」「Autonomy learning」という二つの言い方があり、主に言語学の分野では「Autonomy learning」として使われることが多くなっています。どちらもほぼ同様の内容を表しており、学習者が自分で自身の学習の理由あるいは目的と内容、方法に関して選択を行い、その選択に基づいた計画を実行し、結果を評価することと定義されています。

自律学習(自律的学習)は、以下のようなプロセスで行われます。

図)(自律学習)自律的学習の流れ

自律的学習(自律学習)の流れ

企業内教育における自律学習(自律的学習)の手段は、代表的なものとしてeラーニングや、コーチング、ほかにLXP×マイクロラーニングによるアダプティブラーニング、企業内大学などさまざまです。

自律学習(自律的学習)では、これらの手段をうまく活用しながら、自分で学習の管理を行い、目標とする知識やスキルの修得を目指します。

自律学習と自立学習の違い

自律学習は、自分自身で学習の目標を設定し、その達成のために計画を立て、実行する能力を指します。

それに対し自立学習は、新しい情報やスキルを自分の力で見つけ出し、身につけることです。

ビジネスパーソンが日々の業務スキル向上と変化する市場環境への対応を行っていくためには、自己成長を促進し適応力を強化する自律学習と自立学習の両方が求められるといえるでしょう。

社会人に自律学習(自律的学習)が求められる理由とは?これからの人材教育に欠かせないわけ

今、なぜ従業員の自律的学習が注目されているのでしょうか。いくつか理由を挙げてみます。

  • VUCA時代の変化へのキャッチアップが必要
  • 従来型の教育の行き詰まり(効果、コスト)
  • 限られた人材の価値を最大化するため
  • グローバル競争力を強化するため

VUCA時代の変化へのキャッチアップが必要

昨今は、IT技術のすさまじい速度での進歩や世界規模での感染症拡大など、パラダイムシフトが多く起こっています。そのため、変動が激しく不確実な時代、「VUCA時代」と呼ばれています。

先の見通しがきかないVUCA時代では、めまぐるしい変化にキャッチアップしていかなければなりません。常に新しい知識を常に身に付けなくては、新しい価値を創出することもできません。

必要な教育を都度企業側が用意していたのでは、変化への対応は追いつけなくなるでしょう。そこで、自身が身につけるべきスキルや知識を従業員本人が見定め、自ら学んでいくことが必要になっていくのです。

自律的な学習が可能な人材を育成することで、環境の変化にも適応できる組織を作り上げることができるでしょう。

従来型の企業内教育の行き詰まり(効果、コスト)

これまでのような一律的な従業員教育では、より専門性や個別化を必要とする個々の従業員の学びのニーズを満たしきれません。また、従業員一人一人に最適化した教育を行うには、多大なコストがかかり、今まで以上の管理も必要になります。

自律学習で従業員それぞれが自身に適した学習を選択し、自由に学べる環境を構築できれば、効果面とコスト面双方の改善が可能になるでしょう。

限られた人材の価値を最大化するため

日本では、少子化によって企業の人材不足が課題となっています。外部から優秀な人を連れてくるには限界があるため、今いる従業員の能力を最大限伸ばすことで、自社の利益を向上することが求められています。

それぞれの人材の能力を最大化するためには、個々に適した学習を進めることが肝要です。

グローバル競争力の強化するため

終身雇用制度が一般的だった日本企業では、生産性や従業員個々人の専門性の低さが問題になっています。これは、ジョブ型人事制度への転換や組み込みを行うことを難しくしている理由でもあります。

国際的な競争力を高め企業としてより発展していくためには、従業員の専門性を高めていくことが求められます。それぞれが自身の専門性を高めていくための学習を進めていく必要があるのです。

これらの理由を受けて、従業員には自律学習が求められています。

これまで、人材育成と言えば「企業が従業員を育てる」というものでした。しかし、上記のような理由から、今後は「企業が育てる」から「企業は従業員が自分で育つ支援をする」というように、視点を切り替えることが必要になっています。企業の支援によって従業員の自律的学習が進めば、個々人にとっての学びの「個別最適化」もかなえられるのです。

企業が社員の自律的学習を支援するメリット

自律的学習を企業が支援するメリットとして以下のようなものが挙げられます。

  • 個別最適の学習機会提供が可能
  • 人事担当者の育成に係る負担が減る
  • 人事担当者が戦略人事に集中することができる

個別最適の学習機会提供が可能

自律的学習は、今やテクノロジーの活用が一般的です。eラーニング教材をはじめとするテクノロジーを用いることによって、それぞれの従業員にとって最適な学習機会とコンテンツの提供が可能になります。これにより、従業員の育成効率が上がります。

人事担当者の育成に係る負担が減る

従業員の育成も、前述のようにテクノロジーを使うことでオートメーション化されます。そのため、人事担当者の育成に係る負担が減るでしょう。

人事担当者が戦略人事に集中することができる

育成に係る負担が減るため、人事担当者は戦略人事に集中することができると言えます。

自律的学習を支援することが企業にとっても多くの利益をもたらすことがおわかりいただけたでしょうか。このような理由から企業で自律的学習を行う意味は大きいでしょう。

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個人任せでは自律学習の導入は難しい?企業の学習支援への課題

企業への自律学習の導入には大きなメリットがあることをご紹介しました。しかし、自律学習をうまく導入できている企業は多いとは言えません。自律学習がさかんに行われる企業を目指すにはどのような壁があるのでしょうか。

株式会社ライトワークスでは、2023年1月、企業の人事責任者および担当者を対象とした人材開発(学習支援)に関するアンケート調査を実施しました。

自社の人材開発(学習支援)における課題として、以下のような回答が得られています。

企業の人材開発(学習支援)における課題_自律学習
株式会社ライトワークス 「人材開発(学習支援)の取り組み」に関するアンケート

「社員が学ぶ時間を取れない」「社員の学びへのモチベーションが低い」という課題が約35%と最も多く、「社員が学ぶ必要性を感じていない/何を学ぶべきかわかっていない」「社内に学びを促進する土壌・文化がない」という課題も少なくない企業が感じていることが分かります。

このことから自律学習を導入するためには、社員任せにして自律的に学習していってくれることを期待するのではなく、企業側が学びやすい風土を作っていく必要があるということが考えられるでしょう。

また、「学習が成果につながらない(つながっているか見えない)という課題も多くの企業が感じていることから、自律学習の導入のみならず学習効果の見える化も実施していくべきであると言えます。

本当に自律学習(自律的学習)は可能?ビジネスパーソンの実情を紹介

そうは言っても、従業員が普段の業務を続けながら、自発的に自律的学習を行うことは可能なのでしょうか。

ここで参考になるのは、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが2019年に行った「会社員の自律的な学びに関する実態調査」の結果です。同社は、20〜50代の、1年以上学びを継続している会社員489人に対して調査を行いました。

調査結果より、ビジネスパーソンの学習の頻度継続期間継続できない理由など、実情を紹介します。

ビジネスパーソンは週2~4日学習している、継続期間は1~3年が最多

前提として、学習の内容として人気だったのは語学、ビジネススキルや知識がおよそ4割、スポーツや健康がおよそ3割でした。他にも文化・芸術、IT・情報処理など興味を持って学んでいる分野はさまざまでした。

学習の頻度は、週4日以上が27.0%、週2〜3日が32.7%でした。頻度は、学習する分野によって違い、語学やIT・情報処理は頻度が高く、スポーツ・健康、生活文化・芸術は低い結果になっています。

学習の継続期間は、1〜3年41.9%、5年以上38.7%でした。学習の頻度や期間は、目的や特性によって異なるということです。

ビジネスパーソンが自律的な学習を継続できない理由は、多忙だから

同調査では、学習を1年以上継続している人で、学びが一過性で終わってしまった経験があると回答した人は6割に上りました。

このことから半数以上の人が長期的な学びにつながらず、自律的学習が終わってしまったことがわかります。

自律的学習が継続しなかった人の割合
図1)自律的学習が継続しなかった人の割合
引用元)リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】会社員の自律的な学びに関する実態調査」, https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000345/ (閲覧日:2022年1月25日)

自律的学習を継続することが難しい理由には、どのようなものがあるのでしょうか。

同調査によると、継続できなかった理由として最も多かったのは「忙しくて時間が取れない」で25.2%、続いて「成果が感じられない、難しすぎた」が14.1%、「コロナで通えない、生活が変わった」が10.5%でした。

その他にも「面倒になって後回し」や「内容に興味がもてない、目標がもてない」、「体調が不十分、疲れてできない」など、それぞれ数%ありました。

自律的学習を継続することが難しい理由
表1)自律的学習を継続することが難しい理由
引用元)リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】会社員の自律的な学びに関する実態調査」, https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000345/ (閲覧日:2022年1月25日)

これらの調査で挙げられた回答を見ると、自律的学習は企業から直接求められるタスクではないため、日々の業務を優先して学習の時間の確保が難しくなり後回しになりがちなようです。結果、学習の継続が困難になりやすいと言えます。

従業員個人が働きながら自律的学習を継続することが困難な場合、企業が学習を支援する仕組みを作ることが肝要と言えそうです。

企業が従業員の自律学習(自律的学習)を支援する方法

それでは、企業が従業員の自律的学習を支援し、継続して学習を続けてもらうには、どのようにすれば良いのでしょうか。ここでは、企業ができる効果的な自律的学習の4つの支援方法を紹介します。

  • 自律的学習に取り組む風土をつくる
  • 個人の学習に留めずサポートする
  • 適切な学習機会を提供する
  • 専用の学習グループを作る(ソーシャルラーニング)

自律的学習に取り組む風土をつくる

まずは、企業側が自律的学習の重要性を従業員たちに共感してもらい、社内で学習環境を整えていく必要があります。自律的学習の意義や、メリットを全体集会や社内報などで発信しましょう。

すでにeラーニング等を導入している企業は、コンテンツを周知したり、取り組み方のコツを具体的に伝えるのもよいでしょう。

個人の学習に留めずサポートする

自律的学習にはモチベーションの維持も大切です。上司や人事担当は従業員のモチベーションを維持し、他の従業員にも学習を促すため、定期的に自律的学習について従業員同士で情報を共有する機会を提供しましょう。

従業員は異なる部署の同僚とより深く知り合うことができ、チームをより強固にすることができます。さらに、他の従業員がどのように自律的学習を進めているか知ることで、互いに学ぶことができます。

また、学習者と定期的なミーティングを設定すれば、自律的学習に取り組む人が直面している障害や課題を理解することができます。目標に到達するための正しい方向性を示し、学習方法における潜在的な盲点を認識する手助けができます。

企業が自律的学習を支援するには、テクノロジーをうまく活用して、それ以外のところでも企業として自律的学習に取り組みやすい雰囲気を作る必要があります。従業員を巻き込み、支援する体制を整えましょう。

適切な学習機会を提供する

自律的学習を成功させるには、学習者が自分の学習ニーズを満たすコンテンツにアクセスできる学習機会を提供しましょう。具体的には、以下の4つが挙げられます。

  • eラーニング(マイクロラーニング)
  • 記事やレポート
  • 研修やセミナー
  • 企業内大学

・eラーニング(マイクロラーニング)

従来、eラーニングを活用する企業では、企業側が必須とする教育コンテンツ、あるいは自己啓発系コンテンツの2種類を提供するのが主流でした。しかし、自己啓発系コンテンツの内容はほとんど福利厚生に近く、学習効果はなかなか望めるものではありませんでした。

また、eラーニングには、自分の都合の良い時間に場所を選ばず学べるというメリットがある一方で、自由度の高さの反面、結局学習が続かず、従業員の自律的学習につなげにくいという状況がありました。

しかし、自律的学習の流れを受けて、eラーニングのあり方も大きく変化しています。その一つが、マイクロラーニングの登場です。これにより隙間時間に気軽に学習することができるようになり、従業員が自律的学習に取り組みやすくなりました。

マイクロラーニングはeラーニングの一種で、「1~5分程度の短いコンテンツを、パソコンやスマートフォンなどで学習する手法」です。気軽に学習することが可能なだけでなく、その短さゆえに、隙間時間を使って大量のコンテンツを受講することが可能です。マイクロラーニングを活用することで、学習意欲の向上や学習の継続が期待できます。

eラーニングの管理においても、革新が進んでいます。近年はLXP(学習体験プラットフォーム:Learning Experience Platform)が注目されており、従業員の自律的学習を支える仕組みが整ってきました。

LXPにおいて最も特徴的なのは、個人の学習進捗や嗜好に基づき、より適切なコンテンツのリコメンドを受けられるという点です。これにより、パーソナライズした教育が可能になります。

さらに詳しく:LXPとは?LMSとの違いやメリットは?人材育成の最新トレンド紹介

隙間時間でも学習できる大量の教材の視聴×個人への最適化により、テクノロジーを最大限活用した上で、従業員の自律的学習を支援できるでしょう。

LXPとLMS、そしてマイクロラーニングの関係

最近、人材育成業界では「LXP」が注目を浴びています。LXPとは「Learning Experience Platform」の略で、日本語にすると「学習体験プラットフォーム」という意味です。

例えばNetflixなどの動画配信サービスでは、個人の視聴履歴をもとにお勧めの動画が自動表示されたり、ランキングが表示されたりします。LXPもこれに似ていて、集団に対して画一的な教育を施すのではなく、個人に最適な教育を届け、自律的な学習に役立ててもらうという思想に基づいています。

LMSが基本的にその会社の従業員を対象に公開されるのに対し、LXPはより広く一般に開かれたプラットフォームです。

そうしたプラットフォーム上で、個人に最適な教育を提供するためには、なるべく細かい単位で、自由度高く運用できる教材が必要です。教材の単位が細かいと、例えば弱点分野だけピンポイントで学習するということが可能になりますし、関心のあるテーマを探しやすくなります。

こうした背景から、マイクロラーニングはLXPととても相性の良いコンテンツとされています。

では企業はLXPを導入すればよいのかというと、そうとも言えません。

まず、アメリカはLXPの先進国ですが、日本とアメリカでは雇用スタイルが大きく異なり、これによって個人にとっての「成長」の在り方に違いがあります。

アメリカで主流のジョブ型雇用では、あらかじめ定義された仕事に対して人を割り当てます。個人は自己研鑽を積んで必要な能力を身に付け、その仕事を取りに行くのです。

一方で、日本では「メンバーシップ型雇用」が主流です。メンバーシップ型雇用では、まずは会社に人(メンバー)を入れ、さまざまな業務を経験させながら育てていきます。所属する企業特有の教育を「受ける」ことに慣れている日本のビジネスパーソンは、LXPという環境が整っていても、これを使いこなせない可能性があります。

企業にとっても、自社の理想の人材を育てていくために、これまでに作り上げて来た仕組みや教育ノウハウを手放し、「個人の主体性に任せる」という選択をするのはなかなか難しいところでしょう。

それは、自社の教育ノウハウが会社の知的財産であり、文化であり、競合と戦っていくための「人財」を確保していくための戦略そのものだからです。従業員自身もそこに価値を見出して会社を選んでいると言えます。

日本のLMSベンダーは今後、LXPの考え方や新しい技術を取り入れつつ、日本のビジネス文化にマッチした企業教育というものを追求・提案していくものと思われます。例えば、オンラインの企業内大学やキャリアデザイン、スキルマップといった機能の追求がこれに当たります。

・記事やレポート

ニュース、調査、レポート、記事などを共有して、業界の動向について最新の情報を提供し、勉強する機会を作ってあげましょう。

・研修やセミナー

企業は従業員が興味を持ちそうな研修プログラムを提供しましょう。その際は、通常業務を抜けて参加しても差し支えない雰囲気作りが大切です。

また外部でもセミナー、ウェビナーなど学習イベントには常に目を光らせておきましょう。単発のイベントでも十分な知識を得ることができますし、何より学習意欲を持続させることができます。

・企業内大学

企業内で従業員に学習する場を提供し、従業員の能力向上を目指す制度で、カリキュラムは企業によってさまざまです。

企業内であるため従業員からすると無料で学ぶ感覚が得られます。従来の研修と異なり、たくさんの講義の中から自分の学びたいことを選べるので、学習意欲を保ちやすいというメリットもあります。

「自由に学んでください」となっているよりも、「一つの大学」として、ある程度学習のカリキュラムや段階を用意したり、修了の際には証明書を出すなどすれば、学習の道筋が立てやすく、達成感も得ることができます。

この他にも、自律的学習をサポートするツールはさまざまです。従業員のニーズに合った方法で学習を進められるようにサポートしましょう。

専用の学習グループを作る(ソーシャルラーニング)

ソーシャルラーニング(参加者が相互に教え・学ぶことができる学習形態)の手法を用いた学習機会のことを指します。

具体的には、自己啓発に積極的な人のためのオンライン学習グループを作り、従業員同士で知識を交換し、経験を共有できるようにします。自律的学習の経験がある従業員は、学習リソースに関する提案や学習者の質問に対する回答で貢献しましょう。

企業が自律的学習を支援するには、テクノロジーをうまく活用することが重要です。それ以外のところでも、企業として自律的学習に取り組みやすい環境を作る必要があります。従業員を巻き込み、支援する体制を整えましょう。

【企業事例】従業員の自律的学習を上手に支援できた例

この章では、自律的学習を積極的に取り入れている企業の事例を紹介します。

株式会社JTB

株式会社JTBは、自律的な学習を促進し、社員の行動変容を実現するための人材育成戦略を推進しています。同社では、人的資本経営を推進する中でカルチャー改革を経営基盤に据えています

JTBグループ横断型人財開発プラットフォーム「JTBユニバーシティ」でのeラーニングなどを活用した研修を通じて、社員自身が積極的に学び、成長を続ける文化の醸成を進めています。

社員一人ひとりが目指すべきキャリアを明確にしたうえで個々のニーズに合った学習機会を提供し、さらに自律学習で獲得したスキルを実際に活かす機会を提供、その結果を評価する、その評価から社員が次に学ぶべきことを明確にする、という成長プロセスを整備し、社員のキャリア自律を支援しています。

自律学習を通して自律型人材を育成している好事例といえるでしょう。

株式会社JTBの具体的な人材育成戦略については、以下の記事で紹介しています。

>>JTBの研修はなぜ「社員を動かす」のか~人的資本経営における人財育成の効果を最大化する仕組みとは~(ライトワークスコーポレートサイトへ遷移します)

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社では、社員一人一人の自律的な成長をサポートするため、学ぶ意欲のある従業員を後押しする学習機会を提供しています。

就業時間外にも受講できるeラーニング研修の充実

キヤノン株式会社では、2017年から「学び方改革」を始動しました。これまであった就業時間内の研修は参加しづらいという意見をもとに、土日を活用した研修、アフター5研修、インターネットを活用した研修の充実化を図りました。

特に、いつでもどこでも何度でも学習できる、スマホ動画コンテンツの作成に力を入れていて、研修のモバイル化に取り組んでいます。学び方改革で講師はほぼ100%内製化しているそうで、高度な技術や外部の刺激も取り入れるため一部外部の講師も活用しているとのことです。

これらの研修は交通費や残業代は出ませんが、本人の自発的意思で参加できます。上司の許可や受講料も必要ありません。隙間時間に学習できるため、大勢の学習意欲の高い社員受講しているということです。

IBM

IBMでは、社員が常に学び続けられる環境の構築に尽力しています。2013年には、当時のIBM会長ジニー・ロメッティ氏が、全ての従業員が年間最低でも40時間をスキル学習に充てるという目標、「THINK40」を掲げました。

実際に、2019年の日本IBM社員平均学習時間100時間に達しており、世界でもトップクラスだということです。

一人ひとりにパーソナライズされた学習の提供で自律学習を支援

同社では、従業員一人一人が飽きることなく、継続的に楽しみながら学習できる環境を構築するため、2016年から新たなLMSを導入しました。これにより、一人一人にパーソナライズされた学習が推奨され、場所を問わず学習することが可能になりました。まさに、LXPを体現したものです。

特筆すべきは、ソーシャルラーニングの手法を用いて学びを促進している点です。LSM内のソーシャル・ネットワーク機能により、利用者は学びの機会を見つけて参加し、利用者同士で相互に学習内容を共有して、評価し合うことができます。これにより、人事や研修部門が学習を強制せずとも、従業員が自律的に学習し続けることができています。

同社の事例は、システムを導入するだけではなく、自律的に活用してもらう仕組みづくり参考になるでしょう。

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まとめ

自律的学習とは、学習者が自ら学習のゴールを定め、学習内容を選択・実行・管理し、勉強の成果について評価する学習プロセスのことです。

従業員の自律的学習は、以下のような理由から注目されています。

・限られた人材の価値の最大化が必要
・VUCA時代の変化へのキャッチアップのため
・グローバル競争力の強化が必要
・従来型の教育の行き詰まり(効果、コスト)

従業員の自律的学習を支援すると、企業側には以下のようなメリットがあります。

・個別最適の学習機会提供が可能
・人事担当者の育成に係る負担が減る
・人事担当者が戦略人事に集中することができる

しかし、自律的学習は基本的には普段の業務と並行して行わなければなりません。ビジネスパーソンが自律的学習をしていく上では、忙しさのために学習時間の確保が難しいという課題があります。

自律的学習を上手に支援するために、企業は以下のことに取り組むとよいでしょう。

・自律的学習に取り組む風土をつくる
・個人の学習に留めずサポートする
・適切な学習機会を提供する
・専用の学習グループを作る(ソーシャルラーニング)

自律的学習を社内で浸透させることは、人事として大きなコストを注ぎます。またうまく実践できたとしても、育った人材が社外へ出て行ってしまう可能性もあります。

しかし、自律的学習で培ったスキルや知識を従業員自身が仕事に応用することで、従業員は働くやりがいを感じることができます。これは働くことへの満足度が高まり、離職者を減らすことにもつながると言えます。

自律的学習は、学習者の意欲次第でどこまでも学び続けることができます。従業員がこれまで社になかったスキルを開拓し身に付けることによって、企業の新たなビジネスの可能性が広がります。

従業員も企業もWin-Winな自律的学習への取り組みを一歩踏み出してみるのはいかがでしょうか。

参考)
青木直子「自律学習」,大修館書店,2005年
Talent_lms“The power of self-directed learning in the workplace”, https://www.talentlms.com/blog/power-self-directed-learning-workplace/ (閲覧日:2022年1月22日)
リクルートマネジメントソリューションズ「【調査発表】会従業員の自律的な学びに関する
実態調査」, https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000345/ (閲覧日:2022年1月22日)
UMU「自律的学習を成功させる6つのポイント」,https://umujapan.co.jp/column/6points-for-learning/#index_id1 (閲覧日:2022年2月5日)
GLOBIS「自律学習を促す、学習設計のポイント」,https://gce.globis.co.jp/column/learning-design-points-that-encourage-autonomous-learning/ (閲覧日:2022年2月6日)
Atd,” How to Support Self-Directed Learning in a Learning Organization” https://www.td.org/insights/how-to-support-self-directed-learning-in-a-learning-organization (閲覧日:2022年1月23日)
The eLearning Coach” Self-Directed Learning: Empowerment In The Workplace” https://theelearningcoach.com/learning/self-directed-learning/ (閲覧日:2022年1月24日)
HRNOTE「企業内大学の特徴を解説」,https://hrnote.jp/contents/b-contents-composition-college-0722/ (閲覧日:2022年1月24日)
キャノン株式会社「人材育成・キャリア形成」, https://global.canon/ja/employ/new/workstyle/work-program.html (閲覧日:2022年2月9日)
東証マネ部!「AI人材を育てる「社内大学」を作ったダイキンの狙い」, https://money-bu-jpx.com/news/article029061/ (閲覧日:2022年1月23日)