社会人教育とは、社会で働き続けるために必要な能力の開発、すなわち社会人として備えているべきリテラシーに関する教育ということができるでしょう。
企業にとっては自社の人材育成ということになりますが、特定の業務に関する知識やスキルの育成というよりも、ビジネス全般に広く通用する能力の開発が対象です。
人材不足が深刻化し、生産性の向上や人材の流動化が求められる中、どこへいっても通用する人材を育てることは、企業による大きな社会貢献であり、同時に自社の競争力を高めるための礎となるでしょう。
また、終身雇用制度が崩壊しつつあり、さらに「働き方改革」の推進によって働き方の選択肢も広がる中、「どこへいっても通用する人材になること」は働く個人にとっても大変重要です。
本稿では、現代のビジネスパーソンに広く求められる基礎能力とは何か、というところから、社会人教育について考察します。
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1. 社会人教育とは
冒頭で述べた通り、社会人教育とは特定の科目や特定の時期の教育を指すわけではなく、企業が人材育成の一環として、または個人が自己研さんのために、任意のタイミングで目的に応じたプログラムを活用する形をとるのが一般的です。
この意味では、社会人教育とは「ビジネス全般に広く通用する能力の継続的な開発」ということができるでしょう。ビジネスパーソンとしての生涯学習といってもよいかもしれません。
では、「ビジネス全般に広く通用する能力」とは具体的にどのような能力でしょうか。
これについて、経済産業省は2006年から「社会人基礎力[1]」という能力モデルを提唱しています。社会人基礎力は、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」と定義され、大きく分けて以下の三つの能力で構成されています。
- 前に踏み出す力(アクション)
- 考え抜く力(シンキング)
- チームで働く力(チームワーク)
以下で、それぞれの項目について考察してみます。
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2. 前に踏み出す力(アクション)
「前に踏み出す力」は、以下の能力で構成されています。
・主体性
・働きかけ力
・実行力
ビジネスの状況は年々変化していくため、自ら考えて行動する人材が求められます。組織を構成する全員が、指示を待つだけではなく、自ら状況の変化を感知し、他者に働きかけ、アクションを起こしていく姿勢を持てば、ビジネスのスピードが上がり、組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。
そのためには、個々の従業員が自社のビジネスに積極的に関わっていく意識を持つことが重要です。企業には、そうした意識の醸成とともに、従業員の自主性を尊重する姿勢が求められます。
3. 考え抜く力(シンキング)
「考え抜く力」は、以下の能力で構成されています。
・課題発見力
・計画力
・創造力
これらは、2章の「前に踏み出す力」の前提となる能力といえるでしょう。なぜなら、アクションを起こすといってもやみくもに動けばよいというものではなく、その前に課題を設定し、打ち手を考え、アクションを実行に導く計画を立てる必要があるからです。
ただし、たとえアクションを尊重する組織だったとしても、なんらかの合理的なメリットがなければその主張を受け入れることはしないでしょう。そのため、この一連の思考プロセスは筋が通ったものでなくてはいけません。
この3つの能力を発揮するためには、論理思考に関する訓練が必須といえるでしょう。現状を分析し、根拠となる事実から合理的な筋道を立てて結論を導き出す力は、ビジネスのあらゆるシーンで役立ちます。
eラーニング教材:論理的思考を身につけるクリティカルシンキング
クリティカル・シンキングの本質は、今まで考えてきたことや行動してきたことを「本当にこれでいいのか」と疑ってとらえて、広く深く考えることにあります。この記事のとおり「考え抜く力」をつけるには、論理思考の訓練が必要です。
本教材では、実際のビジネスの場を想定した例題でそのコツを修得することにより、創造的なアイディアを出したり、課題(=イシュー)の解決につながる結論を導きだせるようになります。
本教材をeラーニングとして配信することで、効率的に「クリティカル・シンキング」社員教育をすることが可能です。
4. チームで働く力(チームワーク)
「チームで働く力(チームワーク)」は、以下の能力で構成されています。
・発信力
・傾聴力
・柔軟性
・状況把握力
・規律性
・ストレスコントロール力
「どこへいっても通用する人材」とは、すなわちどのような組織にも適応できる人材ということです。組織の中で自分の能力を最大限に発揮し、目標の達成に貢献することが、「チームで働く力」の体現といえるでしょう。
チームにはリーダーが必要ですが、チームの運営はリーダーだけが行うものではありません。チームのメンバーが、チームの目標や置かれている状況を理解し、他のメンバーを尊重しながら自分の役割を的確にこなすことが、チームとしてのパフォーマンス向上につながります。
一つ一つの項目は個人の性質・性格次第のように見えますが、学習や経験を通じて培っていけるものです。企業はできるだけ早いうちから、こうした能力の育成に取り組むようにしましょう。
5. まとめ
社会人教育は、「ビジネス全般に広く通用する能力の継続的な開発」といえます。ビジネス全般に広く通用する能力については、経済産業省が「社会人基礎力」という能力モデルを提唱しており、以下のような能力で構成されています。
● 前に踏み出す力(アクション)
・主体性
・働きかけ力
・実行力
● 考え抜く力(シンキング)
・課題発見力
・計画力
・創造力
● チームで働く力(チームワーク)
・発信力
・傾聴力
・柔軟性
・状況把握力
・規律性
・ストレスコントロール力
「前に踏み出す力」はビジネスの推進に不可欠であり、「考え抜く力」は「前に踏み出す力」の前提として必要なものです。また、「チームで働く力」は、組織の中で自分の能力を最大限に発揮していくための土台といえます。
このように考えると、社会人教育とは、特定の業務を遂行するための知識やスキルとは別に、自分をマネジメント/プロデュースし、組織としての価値創造に貢献できる人材の育成、ともいえそうです。
昨今、管理職に必要な能力として「ヒューマンスキル」が注目されていますが、「社会人基礎力」は全てのビジネスパーソンに求められる最も基礎的なヒューマンスキルなのかもしれません。
こうした、いわゆるソフト面の能力のボトムアップは、個人の自立的な成長を促進すると同時に、イノベーションの源泉にもなり得るでしょう。
社会人教育を、今の時代に必要な社会人基礎力の習得という視点で捉え直し、自社の人材育成に役立ててみてはいかがでしょうか。
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[1] 経済産業省「社会人基礎力」<http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/>