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DXとは?なぜX?今さら聞けない社会人のためのDX入門(事例付)

DXって、つまるころ何すればいい話なのかな?」と同僚や上司から聞かれたら、さくっと説明できますか?

ビジネス関係のニュースで、DXという単語を見ない日はありません。経済産業省は、「ビジネスにおける価値創出の中心は急速にデジタルに移行しており、今すぐ企業文化を変革しビジネスを変革できない企業は、デジタル競争の敗者に[1]と、厳しい指摘を行っています。

今や待ったなしで取り組むべきDXですが、そもそもDXという概念を正しく理解できているでしょうか。また、DXが進むと、企業や自分の部署にとってどのようなメリットがあるのか、具体的なイメージを持っているでしょうか。

DXについての基礎知識や企業事例を知っておくことは、自分の部署で、さらに企業全体でどんな取り組みができるのか考えるきっかけになります。上司とも、DXについて建設的な議論ができるようになるでしょう。

また、DXは生産性の高い働き方につながる取り組みです。DXの推進によって、自分だけでなく、企業全体の働き方も改善できるかもしれません。

本稿では、DXについての基礎知識DX推進のメリットを解説します。そこからDXのためのアクション日本企業におけるDX推進事例も紹介します。

DXへの理解を深めることで、他部署に先駆けて自分の部署からDXを提案しましょう。 

「DX」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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1. そもそもDXとは?なぜDX?何の略?

まずは、DXについての基礎知識を解説します。DXDは分かるけど、Xはパッと出てこない方、IT化との違いを聞かれたら詰まってしまう方、ここで解消しましょう。

1-1. DX=デジタルトランスフォーメーション

 DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略です。英語ではtransという接頭辞をxと略す慣習があり、Digital TransformationDigital X-formation、つまり「DXというわけです。

Transformationは「完全な変化」を意味します。つまり、DXDigital Transformation)を直訳すると「デジタル技術を使って大きく変化すること」です。そこから、ビジネス領域ではIT・デジタル技術を活用して、企業組織を変革したり、新しいビジネスモデルをつくり出したりすることを指します。

ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化するVUCA時代、DXを進め、柔軟に変化、進化できることは、企業の競争力向上につながるでしょう。

1-2. DXと、IT化・デジタル化の違い

 DXというとITやデジタル技術を導入する」というイメージが湧きます。しかし、これまでアナログで行ってきた業務にITやデジタル技術を導入することは、単なるIT化・デジタル化であり、これだけではDXとはいえません。

DXIT化・デジタル化の違いは何なのでしょうか。IT化・デジタル化の例としては、以下のことが挙げられます。

RPAを導入して、事務作業を自動化する(作業が効率化される)
・飲食店で、各席にタブレットを設置してセルフオーダー形式にする(人が注文を取らなくてもよくなる)

一方、DXとは、そこから一歩進んだ取り組みを指します。つまり、単なる業務効率化にとどまらず、企業そのもの、ビジネスモデルそのものを変革するという、経営戦略に踏み込む取り組みを指すのです。具体的な取り組み例は、5章をご参照ください。


2. 日本企業にDXはなぜ必要?メリットとは?

 ここからは、日本でDXの波が起こっている背景、そしてDXを推進することのメリットを解説します。

2-1. 経済産業省による「DXレポート」

 DXは、政府が推進している取り組みでもあります。経済産業省は、産業界に対して「競争力を維持・強化するためには、スピーディなDX推進が必要」という認識を示しており、その一環として発表されたのがDXレポートです。

 DXレポート2018年から4回にわたって発表し、現状の分析とともに、目指すべきデジタル産業の姿、企業の姿を示しています。さらに、最新のDXレポート2.2では、企業が取るべき具体的なアクションも提案しています。

政府による提言の下、日本全体でDXは進んでいます。つまり、DXは大企業だけが取り組むことではなく、日本企業全体が推進すべき課題なのです。 

2-2. DXはなぜ必要?

 今、ここまでDXが必要だといわれている理由は、主に3つあります。

・「2025年の崖」を超えるため
・コロナ禍によって、社会活動のデジタル化が進んだため
・業務効率化や生産性向上が急務なため

詳しく見てみましょう。

「2025年の崖」を超えるため

 2025年の崖」とは、日本企業が複雑化・老朽化・ブラックホール化した既存システムに依存し続けた場合、DXを実現できず、経営・人材・技術などさまざまな面で問題が起こるというリスクのことです。

国際競争で後れを取ったり、システムトラブルやデータの滅失・流失が起こったりして、2025年以降、年間最大12兆円の損失が生じる可能性があるとされています 。

具体的には、企業の既存システムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化が進み、以下のような事態に陥ると考えられています。         

データ活用ができず、デジタル競争の敗者になる
既存システムの維持管理費が高騰し、IT予算全体を圧迫する
IT人材不足に加え、既存システムの知識を持つ人材が不足するため、サイバーセキュリティ・システムトラブルによるリスクが増大する

2025年の崖を超えるために、企業にはDXを推進して経営を変革することが求められています。

DXレポート内のDX実現シナリオでは、「2025年までの間に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムについて、廃棄や塩漬けにするもの等を仕分けしながら、必要なものについて刷新しつつ、DXを実現する[2]」ことが提言されています。

 

コロナ禍によって、社会活動のデジタル化が進んだため

 コロナ禍で、人々の社会活動は大きく変化しました。

消費者の目線で考えると、ネットショッピング、電子マネー、動画配信サービスなど、さまざまなデジタルサービスが生活に浸透し、欠かせない存在になっています。

企業活動においては、コロナ禍によりテレワークが普及し、コミュニケーションツール(ZoomTeamsなど)を使った仕事の進め方が広がりました。これまで当たり前だったビジネスの慣例(押印、客先常駐、対面販売)も、否応なしに見直す必要が生まれました

このように、コロナ禍によって、デジタル技術を活用した社会活動が当たり前のものになりました。2020年発表のDXレポート2では、「テレワークなどをはじめとしたデジタルによる社会活動の変化は元に戻らない」と指摘されています[3]

市場、働き方がデジタル化した今、企業が成長するためには、DXを活用した既存ビジネスの変革、新たなビジネスの創出が欠かせません。                          

コロナ禍以前にも、DXによって今までになかった価値を創出して成功する企業はすでに登場していました。例えば、民泊の仲介をするプラットフォームのAirbnbや、タクシー配車アプリのUberなどが有名です。

現在は予想ができない大きな変化が相次ぐVUCA時代です。不安定な時代に企業が成長を続けるためには、DXを進め、事業環境の変化に合わせて経営戦略自体を柔軟に変革していく必要があります。

業務効率化や生産性向上が急務なため

 2020年の日本の時間当たり労働生産性は、OECD加盟38カ国中23位、主要先進国(G7)の中では最下位[4]です。

世界の企業を相手に競争するには、DXによって業務を効率化し、生産性を向上させる必要があります。また、効率化すれば、その分、人間にしかできない仕事に注力でき、新しい価値を生み出すことにもつながります。

2-3. DXのメリットは企業の価値向上

 DXを進める主なメリットは、以下の2つです。

・企業の競争力が高まる
・ステークホルダーにとっての企業価値が上がる

詳しく見てみましょう。

企業の競争力が高まる

 DXの推進に成功した企業は、単なる業務の効率化にとどまらず、ビジネスモデルの変革や生産性の向上を果たしています。成功した企業の事例は、5章で紹介しています。

一方、多くの企業は、まだDX=業務の効率化にとどまっている状況です。これはチャンスでもあります。一歩抜きん出て、先行してDXの成功を成功させることは、企業にとって競争力の向上につながります。

ステークホルダーにとっての企業価値が上がる

 今やDXへの取り組みは、企業価値を測る上でも重要な要素です。DXへの取り組みの有無は、株価にも影響します。

ステークホルダーへの情報発信には、DXの取り組みに対する各種認定制度が活用できます。例えば、以下の2つの制度があります。

DX認定制度
・デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)

DX認定制度

 「情報処理システムの運用及び管理に関する指針」を踏まえ、優良な取り組みを行う事業者を経済産業省が認定する制度です。対象はすべての事業者で、ビジョンの策定や戦略・体制の整備をすでに行っている状態(DX-Readyであるという認定を受けることができます。

認定されると、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)のホームページ認定事業者として公表され、DXに積極的に取り組む企業であるとPRできます。また、DX投資促進税制による支援措置や、金融による支援措置(中小企業者対象)を受けることもできます。

・デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)

経済産業省と東京証券取引所、IPAが、東京証券取引所に上場する企業から、「企業価値の向上につながるDXを推進するための仕組みを社内に構築し、優れたデジタル活用の実績が表れている企業[5]」を選定する制度です。

DX認定制度で認定されている企業が対象で、DX銘柄(うち2社がDXグランプリ)およびDX注目企業が選定されます。

選定されることで、DX推進の優れた実績を持つ企業(グランプリは、「デジタル時代を先導する企業」)であるとPRすることができます。

さらに、これらの制度の認定基準をDX推進のためのフレームワークにして、企業がビジョンや戦略を策定する際の基準として活用することも可能です。DXを進めるロードマップを作成する際には、ぜひ参考にしましょう。


3. 日本企業でDXはなぜ進まないのか?障壁とは?

 必要性もメリットもあるにもかかわらず、日本全体でDXは十分に進んでいませんアメリカと比べた調査[6]では、日本のDXへの取り組みの遅れがはっきりと見てとれます。

同調査によると、DXに取り組んでいる企業(「全社戦略に基づき、全社的にDXに取組んでいる」「全社戦略に基づき、一部の部門においてDXに取組んでいる」「部署ごとに個別でDXに取組んでいる」)は、日本が約56なのに対して、アメリカは約79です。

一方、取り組んでいない企業は、日本で33.9%、アメリカで14.1という結果でした。

グラフ)DXへの取り組み状況
引用元)
IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「DX白書2021:日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術」,2021年10月,p2,https://www.ipa.go.jp/files/000093706.pdf(閲覧日:2022年8月4日)

この差はどこから生まれたのでしょうか?ここからは、日本においてDXがなぜ進まないのか、その主な原因を解説します。

3-1. 企業がDX推進を攻めのビジネス戦略と捉えていない

 本来、DXの目的は、企業、ビジネスモデルそのものを変革すること、つまり新たな形のビジネスを創出することです。それは収益につながる、攻めのビジネス戦略であるはずです。

しかし、いまだに多数の企業で、DXを単なる効率化として捉えている現状があります。そのため、取り組みが効率化のためのIT化・デジタル化にとどまっており、本来のDXが進んでいないのです。

例えば、以下のような調査結果が出ています。

本来のDX(ビジネスモデルの変革・創造)で、成果が出ている企業は10%未満である[7]

・企業のIT予算配分の平均比率を見ると、70%以上が現行ビジネスの維持・運営に当てられており、ビジネスの新しい展開のための予算は30%以下である[8]

日本において本来のDXを進めるためには、まずはDXを単なるコスト対策ではなく、攻めのビジネス戦略として捉えることが必要です。

3-2. DX人材の不足

 企業にDX推進で最も課題となっていること」を聞いた調査では、最も多い回答が「人材・スキルの不足」でした[9]。人材不足に対して、どのような対策ができるのでしょうか?

DXを進めるためには、部門ごとに以下のような人材が必要です。

・技術部門:デジタル技術やデータ活用に精通した人材
・各事業部門:顧客や市場、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの実行を担う人材[10]

DX人材を確保するためには、スキルを持った人材を採用する、もしくは自社の人材を育成する方法があります。

DX人材を採用する場合、自社の課題を解決できる優秀な人材を獲得すること採用後のミスマッチを防ぐことが大切です。そのために、まずは自社の課題を整理し、どのような人材を採用するのか明確にします。

その上で、求めるスキル、採用後のポジションなどを候補者に明示しましょう。採用活動を通して、企業、候補者双方の認識を合わせることがポイントです。

自社の人材を育成する場合のポイントは、リーダーシップやコミュニケーション力に長けた対象者を選定することや、座学とOJTを組み合わせた効果的な研修方法を提供することなどです。DX人材の育成については、以下の記事をご覧ください。

このように、人材確保に当たっては、自社の課題と必要な人材像を明確にすること、企業と人材のミスマッチが起こらないよう戦略的に進めることが求められます。

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4. DX推進のためにすべきこととは?現状把握と取り組み領域の検討

 実際に自社でDXを推進しようとしたとき、何から考えればよいのでしょうか?DX白書2021では、具体的なアクションを考える際に、以下の2つの観点で検討することを提案しています[11]

DXの実現レベル
DXの取り組み領域

詳しく見てみましょう。

DXの実現レベル

 まずは、現状分析です。現時点でDXをどんなレベルで達成できているのか、担当者間で認識をすり合わせましょう。DXの達成度は、以下の3つのレベルに分類することができます。

図)DXの段階
引用元)
経済産業省、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」,2020年12月28日,p25,https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf(閲覧日:2022年7月28日)

各レベルの取り組み例は、以下の通りです。
デジタイゼーション:配車実績情報の電子化
デジタライゼーション:配車業務の自動化
デジタルトランスフォーメーション:配車プラットフォームの構築

現在の達成度を認識して、より高いレベルの取り組みを目指すという観点で具体的な取り組みを考えてみましょう。

DXの取り組み領域(どの領域に取り組むのか?取り組み案を分類し、整理する)

次に、これからどのような領域でDXを推進していくかを検討します。DX領域は、大きく「全社横断テーマ」「個別機能単位のテーマ」に分類できます。

各領域の取り組み例は、以下の通りです。

全社横断テーマ:プラットフォームビジネス構築、サブスクリプションモデル構築
個別機能単位のテーマ:事業活動を機能ごとに分類したバリューチェーン単位の取り組み(マーケティング、調達、生産・製造、顧客接点など)

これまでに行った取り組みを分類・整理すれば、次に取り組むべき領域が見えてくるはずです。また、ブレストで出てきたアイデアを分類・整理することで、取り組みの優先順位を付けることもできます。


5. 日本企業におけるDX取り組み事例

 ここからは、日本企業における具体的なDX取り組み事例を見てみましょう。

5-1. ビジネスモデルの創出:株式会社LIXIL

 DX銘柄2022に選定された株式会社LIXILでは、IoT技術を活用して以下のような新たなビジネスモデルを創出しています。

・スマート宅配ポスト
IoTを活用した宅配ボックスを展開しています。スマートフォンと連動して、荷物集配の遠隔管理(集荷依頼、カメラ機能を使った投函・取り出しの見守りなど)ができるサービスです。

・メルカリポスト
フリマアプリ「メルカリ」で出品した商品を投函、発送できる無人宅配ボックスを開発、提供しています。

LIXIL Toilet Cloud
パブリックトイレのメンテナンス業務を刷新するサービスです。AIがトイレの利用状況をモニタリングし、施設の特性を踏まえて清掃業務プロセスの最適化・指示出しを行います。これに加え、排水管洗浄サービス、定額制修理サービスといったプランも提供しており、包括的なトイレ管理サービスの仕組みをつくっています。

5-2. 業務プロセスの改革:株式会社リコー

 DX銘柄2022に選定された株式会社リコーでは、自社トナー工場にAIを導入することで、省力化・高品質化・従業員満足度の向上を実現しました。さらに、このノウハウを自社の他製品分野に活用したり、顧客向けサービスとして展開したりしています。

 自社トナー工場が抱えていた課題
「長く複雑な工程の品質管理、制御」「膨大な工場データの確認・監視」に多くの熟練技術者が必要
24時間稼働のための交代勤務」「制御ミスでの損失発生」が、熟練技術者にとって体力的・精神的な負担

AI導入後
省力化労働生産性が2
高品質化不良品発生率6591%減(総生産量が5%アップ)
従業員満足度全社平均より10%高いスコア(導入前のスコアは全社平均より10%低かった)

5-3. 組織、企業文化の改革:ソニーグローバルソリューションズ株式会社

 HRテクノロジー大賞を受賞したソニーグローバルソリューションズ株式会社では、従業員間で新たなネットワークづくりができる仕掛けを施した独自アプリTalent Networkを構築して、組織、企業文化の改革に取り組みました。

このアプリによって、従業員の担当業務、保有スキル、各職場の業務や学びといった、動的な人材ポートフォリオを社内公開しました。それによって、リスキルや学び直し、社内異動といった、従業員の主体的なキャリアアップを支援しています。

5-4. デジタル基盤の強化:中外製薬株式会社

 DXグランプリ2022を受賞した中外製薬株式会社では、DXの推進に当たってCHUGAI DIGITAL VISION 2030として、以下の3つの基本戦略を定めました。

1:デジタル基盤の強化
2:すべてのバリューチェーン効率化
3:デジタルを活用した革新的な新薬創出

ここでは、「1:デジタル基盤の強化」の具体的な取り組みをご紹介します。

Digital Innovation LabDIL)(従業員のDX推進アイデア活用)
従業員のアイデアを集め、デジタルを活用して業務改善や新たな価値創造を行う仕組みです。400件以上のアイデアが集まり、10件以上が本番開発につながっています。失敗を恐れずに挑戦する企業風土の醸成にも寄与している取り組みです。

Chugai Digital Academy(デジタル人材育成)
この仕組みにより、データサイエンティストをはじめ100人を超えるデジタル人材育成を果たしています。

Chugai Scientific InfrastructureCSI)(クラウド基盤)
大容量のデータを安全に利用、移動、保管し、全社データの利活用を推進することを目的としたクラウド基盤を構築しました。従来と比べ環境構築コストを1/11に削減するとともに、構築期間の大幅短縮を実現しました。

5-5. プラットフォームの拡大:日本瓦斯株式会社

中外製薬株式会社と同じくDXグランプリ2022を受賞した日本瓦斯株式会社では、DXを軸に、ガス・電気の小売からエネルギーソリューション事業に進化することを目指し、以下に取り組んでいます。

・プラットフォーム事業の拡大
・エネルギーソリューションへの挑戦

今回は、「プラットフォーム事業の拡大」の取り組みをご紹介します。次に挙げた取り組みを、プラットフォームとして他社に提供し、共同で利用しています。

LPG託送
ガスの検針から製造(充填)に至るまでのサイクルから収集したデータを、AIによるディープラーニングで分析、処理し、物流の効率を上げるという、LPガス配送の仕組みです。データがリアルタイムで可視化されることで、LPガスの製造や配送を「予測」でなく「実績」に基づいて行うことができるようになりました。

・スペース蛍
ガスメーターの遠隔自動検針などを可能にするIoT機器で、検針業務のコスト削減、精緻なデータ取得を可能にしました。


6. まとめ

 本稿では、DXについての基礎知識をはじめ、必要とされている背景やDXを推進するメリット、実際に取り組むためのポイントなどを紹介しました。

DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称です。IT・デジタル技術を活用して、企業組織を変革したり、新しいビジネスモデルをつくり出したりすることを指します。

DXを進めて柔軟に変化、進化できる企業は、ビジネス環境が目まぐるしく変わるVUCA時代において、高い競争力を持っているといえます。

DXと似た言葉にIT化、デジタル化があります。アナログで行ってきた業務にITやデジタル技術を導入することは、単なるIT化・デジタル化です。DXとは、そこから一歩進んで、ビジネスモデルそのものを変革するという、経営戦略に踏み込む取り組みだと理解しましょう。

DXは、政府が推進している取り組みでもあります。経済産業省が発表するDXレポートでは、現状の分析とともに、目指すべきデジタル産業の姿、企業の姿が示されています。DXは大企業だけが取り組むことではなく、日本企業全体が推進すべき課題なのです。

今、DXが必要とされる理由は、主に3つあります。

1つ目は、2025年の崖を超えるためです。2025年の崖とは、DXが実現されない場合に、2025年以降、日本全体で年間最大12兆円の経済損失が起こる可能性があるという問題のことです。これを避けるために、各企業は既存システムに依存する従来の経営を刷新し、DXを推進することが求められているのです。

2つ目は、コロナ禍で人々の消費活動、働き方がデジタル化したためです。これは不可逆な動きです。この状況下で企業が成長するためには、DXによって従来のビジネスを柔軟に変革させること、新しいビジネスを創出することが欠かせません。

3つ目は、業務効率化や生産性向上が急務なためです。日本の時間当たり労働生産性は、世界的に見て低い状況です。世界の企業を相手に競争するためには、DXによる業務効率化・生産性の向上が必要です。

また、企業がDXを推進することには大きなメリットがあります。本稿では主なメリットを2つ紹介しました。

1つ目は、DXを成功させること、つまりDXによってビジネスモデルの変革や生産性を向上させることは、他の企業に対してアドバンテージになるということです。多くの企業で、DXが十分に進んでいない今がチャンスであるともいえます。

2つ目は、DXを推進することで、ステークホルダーに対して企業価値を上げられるということです。ステークホルダーへの情報発信には、DX認定制度や、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)の選定などを活用するとよいでしょう。

必要性が高く、メリットもあるにもかかわらず、いまだに日本では十分にDXが進んでいないのが現状です。その理由として、「多くの企業がDXを単なる効率化・コスト対策として捉え、攻めのビジネス戦略だと認識していないこと」「DX人材が不足していること」が挙げられます。

DX人材の獲得に際しては、自社の課題と必要な人材像を明確にすること、そして新たに採用する場合も自社で育成する場合も、企業と人材のミスマッチが起こらないよう戦略的に進めていくことが求められます。

実際に自社でDXに取り組む場合には、まずは現在のDXの実現レベルを認識し、これまでの取り組みを整理することから始めましょう。それによって、どのようなレベル、領域でDXを推進していくかが見えてくるはずです。

ここまで見てきたように、コロナ禍で社会が大きく変わっていく今、企業にとってDXを推進することは急務です。そして、DXは新たなビジネスを生み出す大きなチャンスでもあります。本稿が、自社や自分の所属部署でどのような取り組みができるのかを考える一助となりましたら幸いです。

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[1] 経済産業省、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」,2020年12月28日,https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf(閲覧日:2022年7月28日)
[2] 経済産業省、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開(サマリー)」,2018年9月7日,https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf(閲覧日:2022年8月3日)
[3] 経済産業省、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」,2020年12月28日,https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf(閲覧日:2022年7月28日)
[4] 公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」,2021年12月17日,p10-11,https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2021.pdf (閲覧日:2022年11月7日)
[5] 経済産業省「「DX銘柄2022」「DX注目企業2022」を選定しました!」,https://www.meti.go.jp/press/2022/06/20220607001/20220607001.html(閲覧日:2022年10月13日)
[6] IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「DX白書2021:日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術」,2021年10月,p2,https://www.ipa.go.jp/files/000093706.pdf(閲覧日:2022年8月4日)
[7] 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2022」,2021年7月,第1章p43,https://juas.or.jp/cms/media/2022/04/JUAS_IT2022.pdf(閲覧日:2022年8月4日)
[8] 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2022」,2021年7月,第1章p18,https://juas.or.jp/cms/media/2022/04/JUAS_IT2022.pdf(閲覧日:2022年8月4日)
[9] 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2022」,2021年7月,第2章p46,https://juas.or.jp/cms/media/2022/04/JUAS_IT2022.pdf(閲覧日:2022年8月4日)
[10] 経済産業省「「DX 推進指標」とそのガイダンス」,2019年7月,p22,https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12546205/www.meti.go.jp/press/2019/07/20190731003/20190731003-1.pdf(閲覧日:2022年10月3日)
[11] IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「DX白書2021:日米比較調査にみるDXの戦略、人材、技術」,2021年10月,p35,https://www.ipa.go.jp/files/000093706.pdf(閲覧日:2022年8月4日)

参考)
総務省「令和4年情報通信白書」,2022年7月,https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/pdf/n3800000.pdf(閲覧日:2022年10月4日)
総務省「令和3年情報通信白書」,2021年7月,https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n2100000.pdf(閲覧日:2022年8月4日)
経済産業省、デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート:ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開(サマリー)」,2018年9月7日 ,https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf(閲覧日:2022年8月3日)
経済産業省、デジタル産業への変革に向けた研究会「DXレポート2.2(概要)」,2022年7月,https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/covid-19_dgc/pdf/002_05_00.pdf(閲覧日:2022年10月13日)
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内閣官房「用語集」,『世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(令和2年7月17日閣議決定)』,https://cio.go.jp/node/2413(閲覧日:2023年10月4日)
総務省情報流通行政局情報通信政策課情報通信経済室「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究の請負成果報告書」,2022年3月,https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/linkdata/r04_03_houkoku.pdf(閲覧日:2023年10月4日)
経済産業省 中小企業庁「「デジタル・トランスフォーメーション」DXとは何か? IT化とはどこが違うのか?」,『ミラサポplus』,https://mirasapo-plus.go.jp/hint/15869/(閲覧日:2023年10月4日)
経済産業省 中小企業庁「事例から学ぶ!「どうすればいいの?IT化・デジタル化」」,『ミラサポplus』,https://mirasapo-plus.go.jp/hint/16760/(閲覧日:2022年8月3日)
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LIXIL「「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄2022」に初選定」,2022年6月8日,https://newsroom.lixil.com/ja/20220608_dx(閲覧日:2022年12月28日)
LIXIL「パブリックトイレのメンテナンス業務をDX刷新するIoTサービス「LIXIL Toilet Cloud」提供開始」,2022年3月7日,https://newsroom.lixil.com/ja/20220307(閲覧日:2022年12月28日)
HR総研「第7回 HRテクノロジー大賞」,https://hr-souken.jp/hrtech_award/(閲覧日:2022年8月4日)
中外製薬「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」,https://www.chugai-pharm.co.jp/profile/digital/vision.html(閲覧日:2022年8月4日)
日本瓦斯「エネルギー託送とは」,https://www.nichigas.co.jp/for-company/dx/energy(閲覧日:2022年12月28日)
日本瓦斯「DXの取り組みで目指すストーリー」,https://www.nichigas.co.jp/for-company/dx(閲覧日:2022年12月28日)