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データリテラシーはDX時代の必須スキル 基本押さえ効果的な育成を

データリテラシーはDX時代の必須スキル 基本押さえ効果的な育成を

「データリテラシー、これからの必須スキルだよね。」

そう言いながら、実際は漠然としたイメージしかなく、話題をそらしがち……という方も多いかもしれません。

現代では、さまざまなデータを基に戦略を立てるケースが多くなっています。「ビッグデータ」と呼ばれるさまざまな種類・形式の巨大なデータを基に、意思決定をしていく局面も増えているでしょう。しかし同時に、膨大な量のデータがあっても、それをどのように扱い、有効活用すればよいか分からない、という課題も見られます。

昨今、ビジネスにおいて欠かせない存在となっているデータを扱うスキルとして、「データリテラシー」が注目されています。

データリテラシーはもはや経営陣だけでなく、ビジネスパーソンなら誰でも身に付けるべきスキルといっても過言ではありません。DX(デジタルトランスフォーメーション)時代といわれる昨今、さらに必須のスキルとなっていくでしょう。今後、データリテラシーを従業員教育の一環に取り入れる企業も一層増えていくと考えられます。

今回は、そんなデータリテラシーの概要、必要な理由、メリットや課題を詳しく解説します。データリテラシーを高める方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

「データリテラシー」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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1. データリテラシーとは DX時代だからこそ必要な能力を分解

データリテラシーとは「データを読み、使い、分析し、論じる能力[1]と定義されています。これは、マサチューセッツ工科大学のRahul Bhargava氏とエマーソン大学のCatherine D’ignazio氏が定義したものです。

ここからは、「データを読み、使い、分析し、論じる能力」を一つずつ解説します。

・データを読む力
・データを使う力
・データを分析する力
・データを論じる力

データを読む力

データを読む力とは、「データが示す情報を正しく理解する力」です。データが示す情報を正しく理解することで、実務に役立つものかどうかを判断できます。

また、データは数字の羅列だけではなく、グラフや表でも表されます。さまざまなパターンで表されるデータを正確に読み取る力も大切です。

データを使う力

データを使う力とは、「データから得られた情報を基に行動する力」です。ビジネスシーンにおいてデータを基にした行動というと、営業やマーケティングなどの業務をイメージするかもしれません。

しかし、データを使うシーンは人事施策を立てる・実行する際にも多く見られます。人材の採用・教育・評価には、人材が持つデータと、それを活用するためのデータリテラシーが欠かせません。

データを分析する力

データを分析する力とは、「データを統計学や数学の知識を用いて読み解き、新たな発見や気付きを見いだす力」です。データを読む力と類似していますが、読むだけでなく分析することで、データが示す情報に深く踏み込んでいく力です。

データを論じる力

データを論じる力とは、「起こしたアクション、またはこれから起こすアクションの根拠について、データを用いて説明する力」です。

アクションの根拠が「経験からくる勘」では、曖昧で説得力に欠けますが、データを用いて論理的に説明すれば、根拠とアクションに整合性を持たせることができます。

このように、データリテラシーとは「データを読む力」「データを使う力」「データを分析する力」「データを論じる力」の4つの力から成り立っています。

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2. データリテラシーはなぜ必要か 3つの理由

データリテラシーについての理解が進んだところで、ここからはデータリテラシーの必要性について解説します。

2-1. 意思決定の重要な根拠が必要なため

ビジネスシーンにおける意思決定には、説得力のある根拠が必要です。データに基づいた根拠によって下された論理的な意思決定は、高い説得力を持ちます。周囲の理解を得やすくなる上、企業自体の信頼性も増すでしょう。

例えば、人事評価を行う際にもデータリテラシーは役立ちます。従業員一人一人のデータを正しく読み解くことで、より正当な評価を下すことが可能です。データに基づいた評価は、公平性を持った評価として受け入れられやすいでしょう。

2-2. 生産性の向上のため

データを根拠とした意思決定に基づく行動は効率的なため、生産性の向上につながります。

「長年の勘」や「なんとなく慣例化しているから」といった曖昧な根拠に基づく行動には多くの無駄が潜んでいます。

例えば、慣例化しやすい新人教育の研修期間を例に取ってみましょう。期間は、「今までの習慣」で決めるのではなく、過去の新人教育の実績を正確に把握・分析した上で決定します。そうすれば適切な期間で新人教育を行うことができ、必要なスキルや知識が定着しやすくなるでしょう。

また、適切な教育期間の設定は、教育担当者の負担を減らすことにもつながります。教育担当者の負担が減少すれば、新入社員へのフォローを手厚くすることが可能となるでしょう。結果、手厚いフォロー体制が整い、新人の早期離職防止に役立ちます。

能力の高い人材を育てることや人材の流出を防ぐことは、企業の生産性の向上につながります。

「新人教育の期間設定」は一見すると些細な業務ですが、データリテラシーを発揮することで生産性の向上という大きな成果を生み出せるのです。

2-3. PDCAサイクルをより円滑に進めるため

PDCAサイクルにおいて、重要なのはCheck(評価)・Action(改善)です。精度の高い評価を下すことで、具体的かつ効果的な改善策を講じることができます。その改善策を基に、より現実的なPlan(計画や目標)設定が可能です。

上記のように、PDCAサイクルをより円滑に進めることは生産性の向上につながる他、従業員のモチベーションアップにもつながります。現実的な目標に向かって活動し、その活動を正確に評価されることで、より前向きな気持ちで業務に取り組めるでしょう。

このように、データリテラシーが必要とされる理由は「意思決定の重要な根拠となるため」「生産性の向上につながるため」「PDCAサイクルをより円滑に進めるため」の3つが挙げられます。


3. データリテラシーを高めるメリットと課題

DX時代を生き抜いていくためには、データリテラシーを身に付けるだけでなく、高めることも重要です。ここからは、データリテラシーを高めるメリットと課題について解説します。

3-1. データリテラシーを高めるメリット

データリテラシーを高めることは、何気なく行っている業務に意味があるという気付きをもたらします。

報告書の作成や売り上げ入力など、特に意識せず行っている業務も、データとなり蓄積されていきます。データリテラシーを高めることで、蓄積されたデータがどのように活用されるかを理解できるため、一つ一つの業務に対してより真剣に取り組めるでしょう。

また、データリテラシーを向上させることにより、膨大な量のデータを正しく扱うスキルも身に付けられます。

DX時代と呼ばれる現代では、信頼性が高く、自分にとって必要なデータを素早く・正確に集めることが大切です。しかし、データリテラシーが低いままだと、データの取捨選択を正確に行えない場合があります。

データリテラシーを高めることは、自身に課せられた業務により真剣に取り組める・自身にとって有益なデータを素早く手に入れることができるなどのメリットをもたらします。

3-2. データリテラシーを高める上での課題

あらゆるビジネスシーンで役立つデータリテラシーは、全てのビジネスパーソンが身に付けるべきスキルとなっています。そのため、企業全体で「データリテラシーを身に付け、高めることは重要だ」という認識を共有する必要があります。

経営層といった一部の人間だけが高いデータリテラシーを身に付け、使い、意思決定を下しても、生産性の向上や円滑なPDCAサイクルにはつながりません。

組織に関わる全ての従業員が、同程度のデータリテラシーを身に付けることで、下された意思決定の根拠を理解し、効率的な行動をし、より円滑にPDCAサイクルを回すという流れができあがります。

そのため、まずはデータリテラシーを身に付ける重要性、さらにそのスキルを高め続ける必要性をどのように周知するかが課題となるでしょう。


4. データリテラシーの高め方

それでは、データリテラシーを高める方法を解説します。どの方法もすぐにできるものばかりなので、ぜひ挑戦してみてください。

4-1. データを基に仮説を立て先の見通しをつける

普段、何気なく行っている業務もデータリテラシーを高める機会となります。「データリテラシーを高めるメリット」でも述べたように、報告書の作成や売り上げ入力などの業務も、データを扱っていることに変わりありません。

「入力した数値がどのような結果をもたらすか」を意識し、データを基に業務内容がどう変化するか見通しをつけてみましょう。

また、仮説を立てるためには、データだけでなく業務に関わる知識の豊富さも重要です。業務に関わる知識を多く身に付ければ、それだけさまざまなパターンの仮説を立てられます。

4-2. データ分析ツールを実際に使ってみる

データを分析するために必要なデータ分析ツールを使ってみることも、データリテラシーの向上に役立ちます。

身近なツールとして、エクセルグーグルアナリティクスが挙げられます。

エクセルには分析ツールが備わっているため、比較的簡単にデータ分析を行うことができます。エクセルに分析したいデータを入力後、分析ツール内で行いたい分析方法を指定するだけなので、エクセルのスキルに不安がある方にも扱いやすいでしょう。

グーグルアナリティクスでは、Webサイトへのアクセス状況をさまざまな角度から分析することができます。例えば通販サイトの場合、サイトへの訪問者数の他、商品をカートに入れた人数・商品決済ページまでアクセスした人数など、サイトの訪問者の行動をあらゆる視点から分析することが可能です。

ツイッターのアカウントを持っているなら、自分のツイートを用いてデータ分析を行うことも可能です。

「いいね!」されたツイートのアクティビティを確認してみましょう。ツイートに対するインプレッション数・エンゲージメント・プロフィールへのアクセス数を見ることができます。これらのデータを分析することも、データリテラシーを高める方法の一つです。

4-3. 統計学の基本を学ぶ

2018年に公示された高等学校学習指導要領では、近年のデータサイエンスの発展やデータを重視する傾向から、数学科において統計教育の一層の充実を図っていくことが盛り込まれました[2]

データの重要性が高まるほど、統計学を学ぶことが大切になってきます。統計学を学ぶことで、データを読み取る力が養える他、データに対する適切な分析方法を導きやすくなります。Webサイトや書籍を使い、統計学の基本を少しでも学んでみましょう。

4-4. データサイエンティスト検定を受ける

データサイエンティスト協会が行っている、データサイエンティスト検定を受けることで、自身が持つデータリテラシーのレベルを把握することが可能です。

データサイエンティスト検定ではアシスタントからシニアまで4つのスキルレベルが設定されており、明確な基準がないデータリテラシーのレベルを可視化することができます。

参考)
データサイエンティスト協会ホームページ
https://www.datascientist.or.jp/

データリテラシーの高め方には、「データを基に仮説を立て先の見通しをつける」「データ分析ツールを実際に使ってみる」「統計学の基本を学ぶ」「データサイエンティスト検定を受ける」の4つの方法があります。データリテラシーを意識すると、普段何気なく行っている業務でも多くのデータを扱っていると気が付けるでしょう。


5. 【事例】データリテラシーをビジネスに活用している企業の例

ここからは、実際にデータリテラシーをビジネスに活用している企業の事例をご紹介します。データリテラシーを高めることが、企業にどのようなメリットをもたらすのか、参考にしてください。

5-1. Netflix, Inc.

Netflix, Inc.は、インターネット上でさまざまな映像コンテンツを配信しています。配信サービスの加入者数は2億人を超え、世界中で人気を集めています。同社の成功の裏には、高いデータリテラシーがあります。

同社は、多くの加入者が視聴する映像はもちろん、視聴した時間帯・映像を巻き戻しや早送りした箇所・どのようなキーワードを使用して映像を検索したかなど、加入者の行動をデータとして緻密に分析しました。

高いデータリテラシーを生かし、多くの人が魅力に感じる映像コンテンツを制作・配信し続けることで業績向上につなげた事例です。

5-2. 株式会社あきんどスシロー

株式会社あきんどスシローでは、店内で提供されるすし皿1枚1枚にICタグを搭載しました。そのICタグを使って、すし皿に乗ったすしネタの種類・回転レーンに投入された時間・すしネタが食されたか、廃棄されたかをデータとして分析しています。

その結果、すしネタの人気傾向や廃棄量の正確な把握が可能となり、廃棄量を大幅に削減することに成功しました。同時にコスト削減にもつながり、顧客の満足度も向上しています。

Netflix, Incと株式会社あきんどスシローという、分野の異なる2社をご紹介しました。どちらもデータリテラシーを高めることで、より顧客に寄り添ったサービスを展開することができるようになりました。その結果、企業の生産性も向上しています。

データリテラシーの向上は、企業の価値と可能性を高める重要なポイントといえるでしょう。

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6. まとめ

DX時代では、データを読み・使い・分析し・論じる能力、すなわち「データリテラシー」が必須となります。

データリテラシーが必要な理由は下記の3点です。

・意思決定の重要な根拠が必要なため
・生産性の向上のため
・PDCAサイクルをより円滑に進めるため

データリテラシーを高めることは、普段何気なく行っている業務の意味や価値を見出すことにつながります。データの入力や管理などによって蓄積されたデータがどのように活用されるか理解できるため、業務に対してより真剣に取り組めるでしょう。

また、データリテラシーを高めることで、自身にとって有益なデータを素早く手に入れることができるというメリットも生まれます。

データリテラシーを高める上では「データリテラシーを身に付け、高めることは重要だ」という認識をどのようにして企業全体に周知するかが課題です。

組織の一部の人だけがデータリテラシーを高めても、生産性の向上や円滑なPDCAサイクルにはつながりません。組織に関わる全ての従業員が、同程度のデータリテラシーを身に付けることが大切です。

データリテラシーを高めるには、下記の4つの方法が挙げられます。

・データを基に仮説を立て先の見通しをつける
・データ分析ツールを実際に使ってみる
・統計学の基本を学ぶ
・データサイエンティスト検定を受ける

データやデータリテラシーの大切さを解説しましたが、データが全てではありません。データを扱うのも、そのデータを基に意思決定を下すのも人です。データを重要視し過ぎず、あくまでも判断材料の一つして扱うことが大切です。

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[1] Rahul Bhargava, Catherine D’Ignazio. Approaches to Building Big Data Literacy. MIT Media Lab. September28,2015 https://dam-prod.media.mit.edu/x/2016/10/20/Edu_D’Ignazio_52.pdf(閲覧日:2022年1月12日)
[2] 総務省統計局「学校における統計教育の位置づけ」, https://www.stat.go.jp/teacher/stat-education.html(閲覧日:2022年3月23日)

参考)
総務省統計局「学校における統計教育の位置づけ」,https://www.stat.go.jp/teacher/stat-education.html(閲覧日:2022年3月23日)
Senses Lab.「ロングテール戦略とは?|方法・事例・限界」,https://product-senses.mazrica.com/senseslab/column/long-tail(閲覧日:2022年3月23日)
総務省「ビッグデータ活用の注目事例」,https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc131120.html(閲覧日:2022年3月23日)

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