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企業の人材育成、解決しておきたい8つの課題とは?管理者必見ガイド

企業の人材育成、解決しておきたい8つの課題とは?管理者必見ガイド

「あなたの企業では、人材育成が効率的に行われていますか?」

そう問われて「YES」と回答できる人材育成部門や教育管理者の方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。

企業は常に環境の変化にさらされています。こと「人材」という分野については、ここ10年で実に大きな変化が起きており、経営とリンクした形での人材育成部門の役割はいまだかつてないほど高まっているといえるでしょう。

少子高齢化による人材不足、それに伴う外国人労働者の流入、ビジネスのグローバル化に伴うダイバーシティ対策など、大小の課題を挙げれば枚挙にいとまがありません。

しかし、働き方改革以前に(またはそれとは別に)、自社の人材育成を巡る組織的・意識的な課題を解消できずにいる企業は意外に多いようです。こうした企業では、組織に潜在する課題に気付いていないか、顕在化はできていてもどう解決してよいか分からず抱えたままになってしまっていると見られます。

本稿では、企業の人材育成の課題について、その考え方と解決の仕方をご紹介します。

人材育成の仕組みを効率的に回していくためには、組織内における人材育成部門や教育管理者のプライオリティを上げる必要があります。まずは自社の課題と対策を具体的に整理し、上層部への説得力のある提言につなげていきましょう。それが、組織的な変革へのスタートになるはずです。

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1. 課題の考え方

課題には、顕在化しやすいものとそうでないものがあります。常に頭のどこかにあっても、突き詰めて考えなければ漠然としたまま放置されてしまいます。

そのようなときは、書き出してみる(言語化する)のが一番です。一つ一つを具体化してみると、これまでは見えていなかった新たな課題が見えてきたり、対策が意外と簡単だったりするものです。

ここでは、人材育成を巡って組織にありがちな課題を8つ取り上げてみましょう。

(1)現行の研修の管理業務が大変、または担当者の人数が少なくて、なかなか新しいことができない
(2)研修事業を外注しており、実態をよく把握していない
(3)「学ぶ風土」がない
(4)現行の研修で効果が上がっているのか、よく分からない
(5)現場の教育は各部門に任せているので、人材育成部門で把握していることが少ない
(6)従業員の研修に対する評価がネガティブで、施策が進めにくい
(7)管理職が部下の育成に本腰を入れて取り組んでくれない
(8)世の中にどのような育成方法があるのかよく知らない、調べ方が分からない

自社での課題に近いものが1つでもありましたか?次章ではこれらの課題について、原因と対策を検討します。ぜひ参考にしてください。

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2. 原因と対策

課題が見えたら、原因を考え、それぞれについて対策を練ります。実現の難しい事案もあるでしょう。

しかし、人事はかつてのように家たる組織や家族たる従業員を守るだけの存在ではなく、いまや自社のビジネスを守り、市場を切り開いていく役割を担っています。人材育成は、その重要なミッションを実現するための屋台骨です。

経営層に進言していく攻めの人事を実現するために、人材育成部門として、教育管理者として何をしていくべきか、ここでは、漠然とした課題を具体化し、対策を立てていく方法を例示します。自社に近い課題を見つけて、ぜひ参考にしてください。

2-1. 課題(1)現行の研修の管理業務が大変、または担当者の人数が少なくて、なかなか新しいことができない

「担当者が忙殺されていて他に手が回らない」というのはよく聞くお話です。そうなるには、大きく3つの傾向がみられるようです。

・担当者が兼任である、または本当に人数が少ない
・専任の担当者がいるが、若手で「作業者」に徹してしまっている
・研修の管理がエクセルとメール、電話で行われていて煩雑である

1つ目と2つ目は組織の問題です。ただし、人を増やすのは簡単ではありません。まずは今ある土壌で成果を挙げて徐々に発言力を強化していくか、経営陣をうならせるような改革案を作成して組織の強化を実現する、どちらかになりそうです。

3つ目は業務効率の問題です。講師や物品の手配、受講者との連絡・調整、出欠の管理、提出物の管理やアンケートの集計など、研修を巡る業務はたくさんあります。担当者は「現状キープ」に手一杯で、新規提案をする余裕がありません。

これらを解決する糸口になるのが、ITの活用です。すでにシステムを入れている場合でも、本当に効率良く活用できているか、今一度見直してみるとよいでしょう。

タレントマネジメントシステムや学習管理システム(LMS:Learning Management System)は、昔と比べて格段に機能が充実してきています。システムの活用で担当者の負荷を下げ、その分を「人の頭でしかできない」業務に振り分けていくことで、より効率的な研修管理が可能になります。

関連記事:LMS(学習管理システム)とは?専業ベンダーが基礎から選定ポイントまで徹底解説
関連記事:タレントマネジメントシステムのデメリット4つ LMSとの併用で課題解決

2-2. 課題(2)研修事業を外注しており、実態をよく把握していない

大企業では、教育子会社を持っていてそこに研修事業を一任する、あるいは分野別に研修業者に委託する例がよく見られます。人材育成部門の業務効率にとっては良いように思えますが、任せ過ぎていると自社の人材に関する特性や課題を見失うことになりかねません。それは経営にとっての損失です。

人材育成部門が積極的に運営に関与し、関係者を束ねていく努力が必要です。

2-3. 課題(3)「学ぶ風土」がない

企業文化が教育施策実行の壁になることは、少なくありません。学ぶ風土がないと、学習機会は業務の二の次となり、時間も予算も割いてもらえず、結局大した成果を挙げられず……という悪循環に陥ってしまいます。

実は、「学ぶ風土」というのは人材育成上の大変重要なカギです。これがないと、いくら良い育成プランを作っても、人材育成部門の担当者がしゃにむに働いても、思うような効果は得られません。逆に、風土づくりに成功すれば、強力な追い風となります。

風土づくりのポイントは、大きく2つ挙げられます。

1つ目は、教育と評価の連携です。研修が福利厚生と位置付けられているなど、教育と評価ががまったく連携していない場合、学ぶ側のモチベーションは停滞しがちです。

とはいえ、教育と人事評価を直接的に連携させることは簡単ではありません。そこでその「中間」を担うものとして注目を浴びているのが、スキル評価です。スキル評価とは、特定の業務を遂行するために必要なスキルを洗い出し、一覧化して、その一つ一つに対して評価をするものです。

従業員の業績や能力を総合的な指標で捉える人事評価に対し、スキル評価は業務を構成するスキルを最小単位で拾っていくため、より細かく丁寧な状況把握と、ポイントを押さえた指導が可能になります。

従業員にとって、それは自分自身のカルテのようなものであり、例えば以下のことが見える化されます。

「今、ある業務について自分が求められているスキルはどのようなものなのか」
「そのうちどれが達成できていて、どれが達成できていないのか」
「全て達成したら次にどのようなステップアップがあるのか」

これらの見える化により、直近の目標とそれを達成するためにクリアすべき条件が明確になります。業務の中で、一つ一つのスキル項目をゲームのような感覚で習得していけるので、達成感が得やすく、成長意欲もかき立てられるでしょう。

学んだ内容を業務に活用でき、それが成果につながる設計になっていれば、学習機会はより大切にされるはずです。スキル評価は、それを実現する理想的な仕組みといえるでしょう。

マネジャー層にとっても、部下の成果=業績アップにつながるわけですから、部下の育成や指導により積極的に当たれるようになります。

スキル体系を用意するのはそれなりに大変ですが、一度作り込んでしまえばそれを基にして人材マップを作り、人材の配置や人材育成計画に活用することができます。個別の教育メニューの拡充や、キャリア形成の制度構築に役立てることも可能です。

また、個々の「カルテ」を通じて従業員一人一人がキャリアと向き合うことになるので、エンゲージメントの強化にも役立ちます。スキル評価の仕組みづくりは、それ自体が「学ぶ風土」づくりとなり、それ以上に人材開発領域における大きな可能性も持っているといえるでしょう。

「学ぶ風土」づくり、ポイントの2つ目は、人材育成部門によるPR活動です。例えば、以下のような活動が考えられます。

・「学習強化月間」を立ち上げて、普段有償の研修を無償または割引価格で提供
・学習実績が多かった部門を表彰(学習管理システムを使えば実績の比較は簡単)
・経営層からの発信を強化して動機付けを行う
・社内ポータルにバナーを出す 

学ぶ風土づくりのためには、人材育成部門や教育管理者が音頭を取って、企業と個人を巻き込み、学習→個人の成績アップ→組織の業績アップという図式をつくっていくことが大切です。

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2-4. 課題(4) 現行の研修で効果が上がっているのか、よく分からない

研修の効果を測定するのは容易ではありません。まずは、「よく分からない」理由を考えてみる必要があります。

・学習目標は明確になっているか
・テストやアンケートは実施しているか
・受講者のその後のパフォーマンスや業績をチェックする仕組みができているか(キャリア面談、評価との連携など)

これらは、研修の効果を測るための指標です。そして、個別の研修の先には、「自社が将来的に求める理想の人材像」がなくてはなりません。あくまで「ゴール」があり、そこに向かって育成プランが意識的に、意図的に組まれている、これが人材育成の在るべき姿です。

その下で育成された人材が、自社の将来を支えることになるのです。

すなわち、研修全体の効果を実感するには、経営目標に即した理想の人材モデルを定義するところから始める必要があります。そのモデルをブレイクダウンしたところに、個別の研修の学習目標があり、それに対する受講者の取り組みとその評価があるわけです。

その過程で、業績アップに結び付かない(=実践に役立たない)カリキュラムは自ずと淘汰されることになるでしょう。

この作業は一筋縄ではいきませんが、これをすると、自ずと経営層とのコミュニケーションが生まれ、将来を見据える大局的な視点の確立と、自社独自の教育プランの作成につながります。

システム任せにはできない、まさに「人の頭でしかできない」業務です。教育部門の真価を発揮するチャンスと捉えて、ぜひ挑戦してみてください。

2-5. 課題(5) 現場の教育は各部門に任せているので、人材育成部門で把握していることが少ない

コンプライアンスなどの汎用的なテーマは人材育成部門発で全社向けに、業務知識は各部門で個別に、という体制を取っている企業は多いと思います。

効率的で効果的といえますが、情報共有のしにくさが問題です。育成プランを作るには、人材に関する課題を把握する必要があるのに、それが各部門に点在していて、人材育成部門に集約することができません。

定期的にマネジャー層から教育の実施状況や能力開発上の課題などを吸い上げるとしても、従業員の数が多くて整理しきれない、フォーマットが統一できず分析に手間取る、といった課題が出てくるでしょう。部門別の教育状況はブラックボックス、という例もあります。

こうした問題を解決するために活用されているのは、やはりITです。全ての部門の教育施策を1つの学習管理システムにまとめてしまえば、従業員一人一人の学習履歴が簡単に管理でき、これをデータベースとして活用すれば、傾向分析もしやすくなります。

部門レベルだけでなく、子会社、グループ会社、全てを1つの学習管理システムに集約している企業もあります。人事データベースや社内ポータルと連携することで、システム運用の手間は減らせますし、何より施策の効率的な実施、情報の共有、履歴データの活用など、組織が大きいほど恩恵も大きくなります。

部門別の教育状況が見えず、人材育成に活用することができない、という企業では、システムの利用状況の確認や連携、刷新などを検討されてはいかがでしょうか。

関連記事:LMS(学習管理システム)の比較ポイント8つを詳しく解説【企業向け】

2-6. 課題(6) 従業員の研修に対する評価がネガティブで、施策が進めにくい

人材育成部門の「顧客」はその企業の従業員です。

しかも、特定のビジネスのターゲット顧客は共通する特性でくくられますが、企業、特に大企業は多様な業種・経歴の老若男女で構成されており、考え方・感じ方もさまざま、場合によっては国籍もさまざまで、小社会のような体を成します。

その顧客たちに、それぞれが満足できる教育サービスを提供するにはどうしたよいか、これは大きな課題でしょう。

人材育成部門から通達される教育施策について、現場にありがちな不満を見てみましょう。

・ 研修参加のために時間を取られたくない
・ 研修テーマに興味がないので参加したくない
・ やる気が出ない

それぞれについて、解決方法を見ていきましょう。

研修参加のために時間を取られたくない

人手不足により従業員一人一人の仕事量は増えており、さらに育児や介護などプライベートと両立しなければならない場合も多くなっています。忙しい毎日の中、研修に参加する時間があるなら仕事を片付けたいと考えるのは自然なことでしょう。

この不満を解消するには「業務量を調整する」「研修を負荷の少ないものにする」、この2点が考えられます。

まず、業務量の調整です。業務量の調整ができれば、「いつも通りの仕事量はこなさなければならない、その上、研修にも行かなければならない」という事態は起こりません。この点をスムーズに進めるには、企業に「学ぶ風土」がしっかり根付いていることが必要です。

「学ぶ風土」があるということは、経営層をはじめ全従業員が学ぶことの重要性を認識しているということです。そのような企業では、例えば、業務時間中の研修参加を業務の一環として積極的に奨励し、参加したことやさせたことが人事評価にもプラスになるシステムの運用も可能でしょう。

研修に参加したり、させたりすることが評価につながるなら、上司が部下の研修参加に理解を示しやすくなるため業務の調整がスムーズに進み、部下は無理なく研修参加の時間を確保できます。

次は、研修を負荷の少ないものにすることです。集合研修には、講師や参加者同士で直接交流して刺激を受け、モチベーションを高めることができるという大きなメリットがあります。

しかし、近い会場を選んだり、プログラムの内容を工夫したりしても、まとまった時間を取られてしまうことは事実です。繁忙期など、どうしても長時間業務から離れられない場合もあるでしょう。

そこで活用できるのが、集合研修とeラーニングの併用(ブレンディッド・ラーニング)や、eラーニングへの置き換えです。

ブレンディッド・ラーニングは、集合研修とeラーニングの長所を生かして複合的に活用し、相乗効果を狙う手法です。例えば、研修テーマについての知識の習得や集計の必要なテストを事前にeラーニング済ませておき、時事的な内容や実技演習などを集合研修で実施します。

内容によりますが、こうした工夫により研修期間を半分程度に短縮することも可能です(詳細は記事「集合研修をeラーニングにする方法 動画と専用ツールで簡単リユース」参照のこと)。

また、集合研修を映像化したり、スライド資料をコンテンツ化したりして、eラーニングに置き換えるのもよいでしょう。

集合研修の全てを代替することはできませんが、eラーニングはインターネット環境があれば学習を進めることができます。時間や場所をそれぞれの都合に合わせられるため、時間の確保という点では負担を軽くすることができます。

「学ぶ風土」を根付かせることを最優先にしつつ、時間的な負担を減らす方法として検討してみていかがでしょうか。

関連記事:集合研修のメリットとは?オンライン研修とのブレンドが効果的な人材育成のカギ
関連記事:eラーニングとは?システムやメリット、導入事例、費用について解説

研修内容に興味がないので参加したくない

興味が湧かない理由を考えてみましょう。受講者が研修の目的をきちんと理解していない、あるいは受講者の実際の業務に研修の内容がマッチしていない可能性があります。

前者については、事前に研修に参加してもらう目的(例えば、業務効率化のために○○の技術力を強化してほしいなど)を上司と部下で共有し、参加することの意義を理解してもらうとよいでしょう。

コンプライアンスなど、全社的に実施される教育施策は、とかく一人一人の受講者にその必要性・重要性が伝わりにくいものです。キャンペーン施策を打つなど、人材育成部門としても従業員の意識強化に取り組みましょう。

ある企業では、コンプライアンス研修の前に社長からのビデオメッセージを従業員に配信し、法令順守の大切さを理解してもらう取り組みを行っています。

後者については、教育施策そのものの見直しが必要かもしれません。必要な従業員に、必要な教育を届かせるにはどうしたらよいでしょうか。

例えば、日ごろから従業員の業務上の課題や希望するキャリアを面談などで把握しておき、役に立ちそうなテーマについて声を掛けるという形を取れば、従業員側も前向きに参加できます。また、スキルチェックとして、eラーニングによるテストを実施し、全体の傾向や弱点分野を把握しておくのも手です。

適材適所ならぬ「適学適所」が実現すれば、より効率的かつ合理的な人材育成が可能になるでしょう。

やる気が出ない

必要だと分かっていても、「勉強が嫌い」という人はたくさんいます。このタイプの従業員に対しては、人材育成部門や上司が動機付けを工夫することが必要です。ここでも「学ぶ風土」づくりは大変重要でしょう。

加えて、やる気が出ない理由にもよりますが、学ぶことを人事評価と結び付けることも、やる気を高める有効な手段になり得ます。学習を進めると福利厚生のポイントと交換できる、といった分かりやすいインセンティブを設けるのもよいでしょう。

また集合研修に参加させて、従業員が外部・内部の人々と交流して刺激を受けたり、社内SNSで同期と励まし合ったりする機会をつくることも、モチベーションを保つ助けになるでしょう。

業務関連だけでなく、異業種交流会のような、普段は接点がない人たちとの交流に参加するよう促すこともおすすめです。いつもと違う顔ぶれと話すことでリフレッシュできる他、自身の業務について新しい視点やアイデアを得ることができ、モチベーションアップにつながります。

2-7. 課題(7)管理職が部下の育成に本腰を入れて取り組んでくれない

これは企業の人材育成にとって重大なハードルです。従業員の最も身近にいる、モデルたるべき、そして評価者である上司が教育に前向きでないと、人材育成部門発の教育施策は業務の劣後に回され、充分な効果が期待できなくなります

すると、よほど志高く自律的に学習する従業員でない限り、企業側が希望する人材には育たないでしょう。そして、その責任を人材育成部門が問われることになりかねません。

そこで、管理職が部下の育成に本腰を入れてくれない理由を考えてみます。

・ 忙しくて部下の育成に手が回らない
・ 世代の違う部下と価値観が合わず、どう指導したらよいか分からない
・ 成長に教育は必要なし、「自分で盗んで育て」と思っている
・ ずっとうまくいってきた指導方法が最近は通用しない

それぞれの解決策を見てみましょう。

忙しくて部下の育成に手が回らない

スポーツで選手兼監督を務める人はプレイングマネジャーと呼ばれますが、ビジネスの世界でも増加傾向にあるようです。プレイングマネジャーは、他の従業員と同様に個人の仕事で成果を求められ、加えて部下をまとめる管理職の役割もこなさなければなりません。

人手不足や人件費削減の影響で、管理職も部下と同量の仕事をしなければチームや部署が機能しない場合もあり、マネジメント業務だけに集中できる環境ではなくなっているのです。

そのような環境では、目の前の仕事を片付けることや部下のフォローが最優先になり、どうしても育成が後回しになってしまいます。

本当は業務量を調整して負担を減らし、マネジメントに専念してもらうのが一番ですが、現実的には難しいでしょう。それ以外で人材育成を充実させる方法としては、下記の2つが考えられます。

・部門ごとに管理職とは別の「教育管理者」を置く
・システムを活用する

部門ごとに、管理職とは別の「教育管理者」の配置ができれば、上司が片手間で部下を育成するような事態は避けられます。プレイングマネジャーは続けざるを得ないとしても、育成を他の人に任せられることで業務的にも精神的にも負担が軽減されるでしょう。

育成を受ける側は時間的にも内容的にも充実した適切な教育を受けることができ、どちらにもメリットがあります。

また、システムをうまく活用して業務を効率化すれば、浮いた時間を育成に使うことができます。人材育成に関する具体的なシステムとしては、従業員の能力把握や適材適所の配置を大きな目的とするタレントマネジメントシステムや、研修や学習の進捗を管理する学習管理システムがあります。

データで管理しておくことで部下の育成に必要な情報をすぐに取り出すことができ、スピーディで的確な指導が可能になります。

また、こうしたシステムは人事システムと連携できるものが一般的です。従業員の勤怠や給与、能力・経験、目標設定・進捗、人事評価、そして学習やスキルの状況など、従業員についてのあらゆる情報をシステム上で管理し、効率的・効果的な人材の管理につなげることができます。

管理職の負担軽減のためにかけられるコストや人員を検討し、人材育成を後回しにしないための施策を実施してみてはいかがでしょうか。

関連記事:事例で解説!LMS(学習管理システム)の効果的な活用法

世代の違う部下と価値観が合わず、どう指導したらよいか分からない

「今どきの若者のトンデモ言動」に驚いて、途方に暮れている管理職の方は意外と多いようです。人材育成部門としては、そうした管理職に向けたフォローも必要でしょう。

考え方の違う者同士が折り合いをつけて円滑に事を進めるには、やはり相手を理解することが大切です。年功序列・終身雇用の時代が長かった年長者と、転職が当たり前になりプライベートを重視する傾向のある若手とは、仕事に対する考え方が異なります

ここで、大まかな世代別にどのような特徴があるのか確認してみましょう。ぜひ上司・部下との接し方の参考にしてみてください。

団塊世代(1947~49年生まれ)
団塊世代の人々が社会に出始めたのは1970年代で、高度経済成長の最中です。働き方は年功序列・終身雇用が一般的でした。戦後の経済をリードしてきた自負があり、下の世代には押しが強く感じられることもあるようです。

バブル世代(1965~69年生まれ)
バブル景気の時代に就職した人々です。就活は超売り手市場で、かなり良い待遇を受けていたようです。企業が大量採用したため同期が多く、またインターネットが普及していないころに学生時代・新入社員時代を過ごしたため、コミュニケーション能力が高いことが特徴です。

氷河期世代(1970~84年生まれ)
バブル崩壊後の就職難の時代に社会に出た人々です。非正規雇用で働くことを選ばざるを得なかった人も多くいます。企業の倒産やリストラを目の当たりにしたため、終身雇用に頼らずとも生きていけるよう、専門知識を身に付けたり資格を取得したりするなど、自身の価値を高めることに力を入れる傾向があります。

ゆとり世代(1987~2004年生まれ)
いわゆる「ゆとり教育」を受けて育った人々です。情報化社会に育ち、パソコンやスマホが手放せない世代です。がむしゃらに仕事をして社会的な地位や高い年収を獲得することよりは、プライベートを充実させることを優先する傾向があります。

さとり世代(1990年代生まれといわれています)
ゆとり世代と育った時代や環境が似ており、大きな違いは見られません。幼少のころから不景気だったため、車やブランド品を買うなどのぜいたくをするより、将来のために倹約して質素な生活を好みます。ゆとり世代と同様、デジタル機器の扱いに強く、仕事よりプライベートを重視する傾向があります。

特に若い世代において、飲みニケーションははやりません

コーチングや1on1ミーティング、ランチ、業務の合間の雑談などを活用して、部下の人となりを理解しておく習慣を、管理職の方々に身に付けてもらいましょう。その積み重ねによって徐々に信頼関係が生まれ、部下の思いや考え・悩みを理解し、必要な対策を取ることができるようになります。

こうしたコミュニケーションは、従業員に仕事の意義や価値を理解させ、自主性や仕事に対するモチベーションを高めることにもつながっていきます。

成長に教育は必要なし、「盗んで育て」と思っている

「上司や先輩の背中を見て育て」という古いタイプの考え方です。今50代以降のビジネスマンが若手だったころは、これで良かったかもしれません。

しかし、世代差の件と同様で、今はコミュニケーションが重要視され、何かと「言語化」をしないと伝わらなくなっています。管理職の方々には、「文化が変わった」と割り切ってもらうしかありません。

そして、人材育成部門発の教育施策の重要性を理解してもらうことです。

2-8. 課題(8) 世の中にどのような育成方法があるのかよく知らない、調べ方が分からない

技術革新によってビジネス環境の変化のスピードが速くなっている今、人材育成の現場にもITが導入され、育成方法は多角化しています。人手不足の中、効率的に高い効果を得られる育成方法を選択、または組み合わせていく必要があるでしょう。

まず、世の中にどのような育成方法があるのか、見てみましょう。

・ 集合研修
・ eラーニング
・ 集合研修とeラーニングの組み合わせ(ブレンディッド・ラーニング)
・ OJT
・ 大学の社会人向け講座
・ 1対1での対話(コーチングや1on1ミーティング)
・ タレントマネジメント
・ 社内SNSの活用

解決したい課題によって、適切な方法が違ってきます。どの方法がどの課題解決に向いているのか、見ていきましょう。

集合研修

新人研修のような、基本的な知識を大人数に効率的に習得させたい場合や、仲間意識を高めたい場合、参加者同士のディスカッションをメインとするような場合に適した方法です。

しかし、準備に時間がかかり、参加する従業員も時間を確保する必要があるため、繁忙期や頻繁に外出する必要のある職種の従業員には不向きです。

eラーニング

時間や場所を選ばないeラーニングは、多忙な従業員に最適です。また、本店と支店など職場が離れていても、上司が部下の学習の進捗を把握し、アドバイスができるというメリットもあります。その他、5分程度の隙間時間でも学習ができるマイクロラーニングという方法もあります。

関連記事:マイクロラーニングで自律学習を促進!人材育成への活用方法も解説

集合研修とeラーニングの組み合わせ(ブレンディッド・ラーニング)

ブレンディッド・ラーニングは、集合研修とeラーニングを組み合わせて、それぞれの欠点を補い、良い部分を生かす方法です。集合研修の効果を高めるために、もはや欠かせないものとなっています。

OJT

即戦力を育成したい場合に適した方法です。しかし、現場の負担が大きいため、人材育成部門部や指導担当者同士で育成内容や手法を共有し、適切な育成がされているか定期的に確認することが必要です。

大学の社会人向け講座

変化の激しい時代には、常に最新の知識やスキルを習得することが欠かせません。働き方改革でも社会人の学び直しが推進されており、政府が給付金などの支援策を講じています。しかし高額な費用や時間確保が大きな課題となっており、放送大学やMOOCの活用が注目されています。

1対1での対話(コーチングや1on1ミーティング)

業務に対して積極的でない自分から学ぶ姿勢が見えないなどの従業員に対して有効な方法です。1対1で対話することにより、部下は上司への信頼が高まって相談しやすくなり、また、自分に求められている役割を確認することができます。

部下が自身の目標を明確にして自主性や仕事へのモチベーションを高めるためには、キャリア指導も有効です。この際にも、「自社が将来的に求める理想の人材像」が明確であることが重要です。

そこに向かうためにどのようなスキルを高めていけばよいのか、部下自身はどのようなキャリア構築を望んでいるのか、一緒に擦り合わせていきましょう。

なお、1対1での対話は効率の良い方法ではないため、他の方法と組み合わせて活用することがおすすめです。

タレントマネジメント

タレントマネジメントは、従業員のタレント(才能)・業務経験・スキルなどをデータとして一元管理し、人材の適性配置や育成・教育などに活用する人事管理の方法です。従業員を適材適所で配置し、その適性を有効活用することで一人一人のパフォーマンスを上げることができます。

収集すべき情報は何か、収集した情報の整理方法システムの維持方法を明確にして、実際に活用できるシステムを構築・運用することが大切です。

関連記事:タレントマネジメントとは 能力の見える化で適材適所への人材配置を

社内SNSの活用

従業員同士のコミュニケーションの活性化に役立ちます。X(旧:Twitter)やLINEのような感覚で、気軽にコミュニケーションを取ることができます。

また、例えば、誰かが接客ロールプレイング動画を投稿し、それを見た他の従業員が「いいね」やコメントを付け、お互いに切磋琢磨できるようなシステムもあり、さまざまな活用方法が考えられます。


3. まとめ

効果的な人材育成をするためには、現状から課題を洗い出し、それについて原因を考え、対策を練ることが必要です。

人材育成部門や教育管理者にありがちな課題として、以下のようなものが挙げられます。

(1)現行の研修の管理業務が大変、または担当者の人数が少なくて、なかなか新しいことができない
(2)研修事業を外注しており、実態をよく把握していない
(3)「学ぶ風土」がない
(4)現行の研修で効果が上がっているのか、よく分からない
(5)現場の教育は各部門に任せているので、人材育成部門で把握していることが少ない
(6)従業員の研修に対する評価がネガティブで、施策が進めにくい
(7)管理職が部下の育成に本腰を入れて取り組んでくれない
(8)世の中にどのような育成方法があるのかよく知らない、調べ方が分からない

課題が見えたら原因と対策を整理し、自社の状況に即した説得力のある人材育成プランを作成して提案しましょう。

変化の激しい時代、人材育成部門は従来のように組織や従業員を守るだけでなく、自社のビジネスを守り、発展させていく役割をも担っています。人材育成は、その重要なミッションを実現するための屋台骨です。

経営層に進言していく攻めの人事を実現するために、人材育成部門として、教育管理者として何をしていくべきか、ぜひこの記事の内容を参考に考えてみてください。

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参考)
・東洋経済ONLINE 管理職と現場の「二刀流」の厳しすぎる実態
https://toyokeizai.net/articles/-/205267
・日本の人事部 プレイングマネージャー
https://jinjibu.jp/keyword/detl/205/
・日本経済新聞HP 「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論 解を探しに・引き算の世界(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO98989500Z20C16A3I10000/
・ハタラクティブHP  バブル世代とのジェネレーションギャップはコミュ力が鍵
https://hataractive.jp/useful/2330/
・JobQ HP【さとり世代の年齢とは】特徴からお金の使い方まで徹底的に解説
https://job-q.me/articles/4421

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