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PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

「日本の成人は、先進国の中でもトップクラスの能力を持っている」

こう聞いたら、あなたは信じるでしょうか?

これは過去、実際に行われた「PIAAC(ピアック)」=国際成人力調査の結果です。2011年、OECD(経済協力開発機構)では日本を含む世界24カ国・地域の16~ 65歳を対象として、PIAACを実施しました[1]

その後公表された結果では、日本は読解力数的思考力の2分野で、平均得点が参加国中1位でした。また、ITを活用した問題解決能力についても、レベル2、3(中上位)の人たちの割合が参加国平均よりも高い結果になりました[2]

しかし一方で、この結果を分析した専門家などからは、決して安心できないという声も上がっています[3]。平均点の高さは目立つものの、それ以外の面では課題も見えてきたからです。

2022年には、第2回PIAACの調査が行われることが決まっています。前回の調査から10年が経過し、どのような結果が出るのか注目を浴びています。

本稿では、PIAACの概要とともに、日本の調査結果や特徴、また日本の社会人の課題についてご紹介します。日本の成人の特徴と課題について理解し、今後の採用活動や人材教育の一助となれば幸いです。

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1. 世界中の成人の能力を調査!PIAAC【国際成人力調査】とは?

今、注目のPIAACとはどのようなものなのでしょうか。まずは、PIAACの概要について解説します。

1-1. 「成人力」を測るPIAAC

PIAACは、Programme for the International Assessment of Adult Competenciesの略で[4]あり、「ピアック」と呼ばれています。

PIAACを実施しているOECDは、ヨーロッパ諸国を中心に世界38カ国の先進国が加盟する国際機関です [5]。世界中の成人が持つ、日常生活やビジネスといった実践的な場面で役立つ能力「成人力」と定義し、16~65歳までを対象として調査を行いました。

2011年に行われた第1回調査では、成人力に必要なスキルの高さを調べるため「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」「背景調査」の4項目について調査が行われました。このような調査が世界的、かつ大規模に行われることは初めてだったため、日本国内でも大きな反響がありました[6]

PIAACの特徴は、数学の公式を使って問題を解くといった、単純に知識を問う問題が出題されない点です。「課題を見つけて考える力」、「知識・情報を活用して課題を解決する力」など、あくまで実社会で生きていく上での総合的な力である「成人力」が求められます[7]

また、第1回調査から10年が経過する2022年には、第2回PIAACの調査が実施されます。すでに2021年に予備調査が行われており、2022年に本調査が行われる予定です。

第2回の調査は、下記の内容で実施されることが発表されています。

【図1:第2回PIAAC調査の概要】

読解力(例)
・ホテルにある電話のかけ方の説明を読んで、指定された相手に電話をかけるにはどのように操作したらよいかを答える
・図書館の蔵書検索システムを使って,指定された条件に合う本を選ぶ
文章や図表を理解し、評価し、活用する力
数的思考力(例)
・商品の成分表示を見て、許容摂取量を答える
・作成中の伝票を見て、商品の売上金額を答える
数的な情報や内容を用いて論理的に考える力
状況の変化に応じた
問題解決能力
(例)
・指定された条件を満たす商品を、価格や在庫の変化に応じて適切に選択する
・複数の人のスケジュールを、当日の予定や会場の都合の変化に応じて適切に調整する
条件や状況の変化によって生じる新たな問題を把握し、適切な解決に導く力
背景調査「成人力」に影響を及ぼす要因、「成人力」の差が個人に及ぼす影響などを調べるため、
三つの分野の調査に先立って、学歴、職歴、収入、学習活動への参加状況などについて尋ねる
対象者自身に関する質問

文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 PIAAC(第2回調査)パンフレット」,p2を元にライトワークスにて作成,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_pamph_2021FT.pdf(閲覧日:2022年4月26日)

第2回調査では、第1回の調査項目の「ITを活用した問題解決能力」が「状況の変化に応じた問題解決能力」に変更されています。

さらに、参加する国と地域が24から33に増え[8]、PIAACの学生版であるPISA[9]で上位であったシンガポールも参加します[10]

1-2. PIAACが実施された背景

PIAACが実施された背景には、経済のグローバル化知識基盤社会[11]へと移行する世界の情勢変化があります。

特に、OECDに加盟している先進国では、時代に付いていくだけではなく先導する立場として、今後国民のスキルをより高めていく必要があると考えられています。そこで、まずは各国の成人の持つスキルについて把握するために、PIAACが実施されました。

現状、国際的にこのような調査を行っているのはPIAAC以外にはありません[12]。そのため、PIAACによって得られたデータを活用し、教育・訓練システムの改善点を探ったり、経済成長の促進に役立てたりすることが期待されています。

また、スキルだけでなく学歴や職業などの背景調査を併せて行うことで、学校教育や職業訓練とスキル習熟度の関連性を調べたり、個人が持つスキルの習熟度が社会的・経済的な成果にどのぐらい関与しているのか、といった点について検証したりすることもできます。

1-3. PIAACの調査内容

第1回PIAACでは、以下の4つの項目の調査が行われました。

・読解力
・数的思考力
・ITを活用した問題解決能力
・背景調査

それぞれの項目について、詳しく見てみましょう。

読解力

読解力とは、文章や図表の内容を理解した上で、得られる情報を適切に読み取り、活用する能力のことです。

調査結果は0~500点で示され、読解力が高い順にレベル5~レベル1未満の6段階で評価・分析されます[13]

第1回PIAACで出された「読解力」の例題としては、下記の内容が公開されています。

【読解力の問題例:市民マラソンに関する問題】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

「レイクサイド市民マラソン・ウォーキング大会」のホームページを見てください。次の質問の答えをクリックしてください。

市民マラソン開催者と話をしたいと思っています。開催者の電話番号を調べるためのリンクをクリックしてください。

引用元)文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 調査問題例」,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1340415-4.pdf(閲覧日:2022年5月24日)

上記は習熟度レベル2、難易度240点に設定されており、読解力の設問の中ではやや易しい問題です[14]。この問題に正答するには、解答者は「問い合わせ先」というリンクをクリックしなければなりません。

問題に設定された習熟度レベルが上がるにつれ、読み取る情報の量も多くなります。また、必要のない情報や、紛らわしい情報も多く含まれているため、文章や図の中から必要な情報を読み取り、答えを導き出す力が求められます。

数的思考力

数的思考力は、数的な情報を使って論理的に考える能力のことです。数字だけでなく、図形やグラフなどの問題も含まれています。

調査結果は読解力と同様、0~500点で示され、高い順にレベル5~レベル1未満の6段階で評価・分析されます。

数的思考力では、以下のような例題が公開されています。

【数的思考力の問題例:教育水準の問題】

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この二つのグラフは、1960年から2005年までのメキシコ人男女の教育水準を示しています。次の質問の答えをプルダウンメニューの中から選択してください。

1970年には、6年を超える学校教育を受けたメキシコ人男性は約何パーセントでしたか。

引用元)文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~読解力・数的思考力~」,p10,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_2.pdf(閲覧日:2022年4月27日)

こちらは習熟度レベル4、難易度354点の問題です。グラフから必要な情報を探し、目盛りを参考に大体の数値を読み取って、「0~10%」、「10~20%」といった10種類のプルダウンメニューから解答を選択する必要があります。

この他にも、スーパーの値札やお菓子の箱詰め、自動車の走行記録表など、日常生活や職場で実際に目にするようなものを題材に問題が出題されています[15]

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株式会社ライトワークス「ビジネスの課題を解決する数値分析」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/10646(閲覧日:2022年4月27日)

ITを活用した問題解決能力

ITを活用した問題解決能力は、情報を獲得・評価し、他者とコミュニケーションを取りながら、デジタル技術やコミュニケーションツール、ネットワークを活用してタスクを遂行する能力のことです[16]

調査結果は読解力・数的思考力と同様に0~500点で示されますが、ITを活用した問題解決能力はレベル3~レベル1未満の4段階で評価・分析されています。

ITを活用した問題解決能力では、下記のような例題が公開されています。

【ITを活用した問題解決能力の問題例:パーティーの招待状の問題】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由あなたは大きなパーティーを企画しており、電子メールで招待状を送りました。あなたは出席できる人とできない人を確認したいと考えています。これまでに受信した返事を整理してください。返事を整理したら、「次へ」をクリックして進んでください。

引用元)文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~ITを活用した問題解決能力~」,p1,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_3.pdf(閲覧日:2022年5月24日)

上記の問題は、返信されたメールの内容を確認し、受信トレイの「出席」「欠席」フォルダに分けるという、習熟度レベル1の比較的易しい問題です。問題解決に必要なステップが比較的少なく、必要な操作の範囲も限られています。

これ以外にも、メールソフトや会議室の予約システムなどを使って与えられた指示を行う問題[17]が出されており、社会人にとっては重要なスキルであるといえるでしょう。

背景調査

背景調査では、成人力に影響を及ぼす要因や、成人力の習熟度が個人に与える影響などを調べます。

調査項目は、対象者の年齢性別学歴といった基本的な情報だけでなく、両親の学歴、本人の職業収入、職場におけるスキル使用の状況学歴とスキルのミスマッチなど多岐にわたります。

調査結果の分析では、背景調査と成人力調査の結果を併せて考察することで、興味深い結果が多く報告されています。それについては、次章で詳しく見ていきましょう。

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2. 第1回PIAACの調査結果

第1回PIAACの調査は、2011年8月~2012年2月に行われ、24の国と地域で、約15万7千人が参加しました。各国を比較した結果は下記の通りです。

【図2:PIAACの分野別結果の各国比較】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

引用元)文部科学省「国際成人力調査(PIAAC) 調査結果の概要」,p4,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)

各国の平均得点では、読解力・数的思考力で日本が第1位となっています。一方で、アメリカフランススペインではOECDの平均よりも低い結果が目立ち、フィンランドオランダスウェーデンといった国がいずれも高い平均点という、興味深い結果となりました。

これには、レベル1レベル1未満の成人の割合も大きく関係しています。レベル5の成人の割合が他国より多くても、レベル1やレベル1未満の割合も多くなれば、それだけ平均点が下がるからです。そのため、アメリカのように教育格差がある国では、平均点も低くなる傾向が見られました。

参加国全体に見られた特徴としては、今回調査した「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の全てが学校教育終了後も向上していることが挙げられます。3項目とも30歳前後でピークを迎え、その後徐々に低下していく傾向が見られました[18]

【図3:読解力・数的思考力の習熟度と年齢の関係(日本とOECD平均)】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

引用)国立教育政策研究所,「PIAAC日本版報告書 調査結果の要約」p21,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf(閲覧日:2022年4月28日

また、読解力と数的思考力の2項目では、学歴が高いほどスキルが高い傾向にあり[19]読解力のスキルが高いほど賃金も高い傾向にあることが分かりました[20]


3. 第1回PIAACの結果にみる日本の特徴と課題

第1回PIAACでは、日本はどの項目でもOECDの平均得点を上回り、読解力・数的思考力の平均得点は参加国中1位という結果でした。

ただし、他の国の結果と比較することによって、日本ならではの課題も浮き彫りになっています。ここでは、具体的にどのような特徴や課題があったのか、ご紹介します。

3-1. 第1回PIAACの結果にみる日本の特徴

日本は、読解力・数的思考力の2項目の平均得点が参加国中1位でした。また、どの学歴グループでもスキルが最も高い国の一つになっており、日本の中卒者読解力は、アメリカやドイツの高卒者よりも高いことが分かりました[21]。他国に比べて、同じ学歴で比較した場合の男女差がほとんどないことも特徴です[22]

日本が平均得点1位となった理由としては、レベル3・4の成人の割合が他国に比べて高く、レベル2以下の割合も他国に比べ少ないことが要因と考えられます。

【図4:読解力の習熟度レベル別の分布】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由
引用)国立教育政策研究所,「PIAAC日本版報告書 調査結果の要約」,p8,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf(閲覧日:2022年4月28日)

レベル5の割合だけで見ると、上位にいるものの1位ではありません。第1回の結果は、日本人の平均的なスキルが他国に比べて高いこと、また他国に比べスキルが均一化されていることを表しており、義務教育の成果ともいえるでしょう。

一方、ITを活用した問題解決能力では、コンピュータ調査を受けなかった者を分母に含めたレベル2・3(中上位)の者の割合は参加国中10位で、これには得点としてカウントされない、紙での調査を希望する成人の割合36.8%だったことが大きく関係します。

紙での調査を希望する成人の割合は、OECD平均を大きく上回っており、他国と比較しても、日本にIT活用を苦手とする成人がかなりいたことが分かります。

しかし、コンピュータ調査を受けた成人だけを見れば、平均点は参加国中1位です。パソコンを使える人とそうでない人で、ITスキルの習熟度が二極化していることがうかがえます。

3-2. 第1回PIAACの結果にみる日本の課題

PIAACの結果では、日本の成人の持つスキルは高いものの、他国と比較することで浮き彫りになった課題もありました。

第一に、学歴ミスマッチと女性におけるスキルの過少利用が挙げられます。日本は自身の学歴よりも仕事で必要とされる学歴の方が低いと答えた人が31.1%で、OECDの中で最も多い国の一つでした[23]

また日本では、他国に比べて同じ学歴の男女を比較するとスキル差が少ないという特徴があります。にもかかわらず、スキルを利用する機会の男女差は大きくなっています。

日本では女性が仕事でスキルを使用する頻度が低く、十分なスキルを持っているにも関わらず、使う機会がないというスキルミスマッチが起こっています。下図を見ると、他国と比べても、日本の女性はスキル利用機会が著しく少ないことがよく分かります。

【図5:成人男女の仕事における読解力利用スコア】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由
引用)川口 大司「人口減時代の人材育成・活用——技能発揮へ働き方改革カギ」,『独立行政法人経済産業研究所』,https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/kawaguchi/08.html(閲覧日:2022年4月28日

第二に、生涯学習への参加率が低いことです。下図の通り、日本の25歳以上の大学入学者数の割合OECD加盟国の中でも特段低く、生涯学習への参加が少ないのが現状です。

【図6:25歳以上の「学士」課程への入学者の割合】

PIAAC(国際成人力調査)とは 日本が1位でも安心できない理由

引用)文部科学省「今後の社会人受入れの規模の在り方について」p4,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/042/siryo/__icsFiles/afieldfile/2018/07/26/1407548_3.pdf(閲覧日:2022年4月29日)

第1回PIAAC調査では、読解力、数的思考力、ITを活用した問題解決能力のいずれも、学校教育終了後も向上し、30歳前後でピークを迎えることが分かっています。学校教育や職場のOJTだけでなく、日本の成人に学び直しの機会が多ければ、さらに能力を伸ばす可能性を秘めている、ともいえます。

せっかく高いスキルを持っていても、使う機会がなければ劣化してしまいます。また、失ったスキルを再び身に付けるためには、再教育再投資も必要になります。

スキルや学歴のミスマッチを防ぎ、女性のスキル活用の機会を増やす、リカレント教育にシフトしていくといった点が、今後の課題であるといえるでしょう。


4. まとめ

PIAACは、世界中の成人が持つ、日常生活やビジネスといった実践的な場面で役立つ能力に関する調査です。

16~65歳を対象としており、第1回は2011年に実施され、ヨーロッパを中心に、日本やアメリカを含む24の国と地域が参加しました。2022年には、第2回調査が行われることが決まっています。第2回の調査では参加国が増え、PIAACの学生版であるPISA で上位であったシンガポールも参加します。

成人力の定義は、あくまで実社会で生きていく上での総合的な力であり、数学の公式を使うなど知識を問う問題は出題されません。

実施された背景には、経済のグローバル化知識基盤社会への変化があります。PIAACのような世界的かつ大規模な調査は今までになかったため、結果を基に教育・訓練システムの改善点を探ったり、経済成長の促進に役立てたりすることが期待されています。

第1回の調査内容は「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」「背景調査」の4項目で、それぞれの内容や例題をご紹介しました。

第1回調査の結果では、日本は読解力、数的思考力の平均得点が参加国中1位でした。参加国全体の結果を分析すると、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の全てが学校教育終了後も向上し、30歳前後でピークを迎えた後、低下していく傾向が見られました。

日本の結果を詳しく見てみると、全体的にOECD平均よりもスキルが高く、例えば日本の中卒者の読解力は、アメリカやドイツの高卒者よりも高いことが分かりました。また、スキルレベルが低い人も少ないことから、平均得点が高くなったと考えられます。

ITを活用した問題解決能力のレベル2・3(中上位)の者の割合は参加国中10位でしたが、コンピュータ調査を受けた成人だけを見れば、平均得点は参加国中1位でした。これは紙での調査を選択した人が多かったことも要因であり、日本の成人のITスキルが二極化していることが分かります。

PIAACの結果を受けて考えられる課題としては、学歴ミスマッチと女性におけるスキルの過少利用、生涯学習への参加率が低いことが挙げられます。

具体的には、自身の持つスキルや学歴を活用しきれていないこと、女性男性同程度のスキルを持っているのにスキルを活用する機会が少ないこと、また他国よりも平均してスキルが高いにもかかわらず、学校教育終了後に学び直す機会が少ないことを挙げました。

PIAACでは、日本の成人は優れた能力を持っているものの、まだまだ能力を活かしきれていない、能力を伸ばす機会が少ないといった課題も判明しました。

今後、PIAACのデータ活用や調査内容の改善が進めば、世界における職業能力評価の一指標になるといえるでしょう。第2回の結果についても、興味深く追っていきたいところです。

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[1] 文部科学省「国際成人力調査とは」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm(閲覧日:2022年4月26日)
[2] 文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 PIAAC(第2回調査)パンフレット」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_pamph_2021FT.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
[3] 冷泉彰彦「「国際成人力調査」日本トップは喜べるのか?」,『ニューズウィーク日本版』,2013年10月15日,https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2013/10/post-594.php(閲覧日:2022年5月24日)

[4] 文部科学省「国際成人力調査とは」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm(閲覧日:2022年4月26日
[5] 経済産業省「OECD(経済協力開発機構)」,https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/oecd/index.html(閲覧日:2022年4月27日)
[6] 深町珠由「PIAAC から読み解く近年の職業能力評価の動向」,p71,https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/09/pdf/071-081.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
[7
] 国立教育政策研究所「国際成人力調査(PIAAC)」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html(閲覧日:2022427日)
[8] 国立教育政策研究所「国際成人力調査(PIAAC)」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html(閲覧日:2022427日)
[9] Programme for International Student Assessment 学習到達度調査、15歳を対象に実施
[10] 文部科学省,国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)Programme for International Student Assessment~201 8年調査国際結果の要約~」p12,  https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2018/03_result.pdf(閲覧日:2022年4月29日)
[11] 新しい知識や情報技術が、社会を構成する全ての領域における活動の基盤として重要性を増した社会のこと
[12]「文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 PIAAC(第2回調査)パンフレット」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_pamph_2021FT.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
[13]文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 調査問題例」,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1340415-4.pdf(閲覧日:2022年5月24日)
[14] 文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 調査問題例」,p1,https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1340415-4.pdf(閲覧日:2022年5月24日)
[15] 文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~読解力・数的思考力~」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_2.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
[16] 国立教育政策研究所「PIAAC日本版報告書 調査結果の要約」p17,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
[17] 文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~ITを活用した問題解決能力~」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_3.pdf(閲覧日:2022年4月27日)

[18] 文部科学省「国際成人力調査(PIAAC)調査結果の概要」,p14,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
[19] 文部科学省「国際成人力調査(PIAAC)調査結果の概要」,p15,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
[20] 文部科学省「国際成人力調査(PIAAC)調査結果の概要」p18,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)

[21] 文部科学省「国際成人力調査(PIAAC)調査結果の概要」,p15,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
[22] 国立教育政策研究所,「PIAAC日本版報告書 調査結果の要約」,p22,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf(閲覧日:2022年4月28日)
[23] 深町珠由「PIAAC から読み解く近年の職業能力評価の動向」,p76,https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/09/pdf/071-081.pdf(閲覧日:2022年4月27日)

参考)
文部科学省「国際成人力調査(PIAAC:ピアック)」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm,(閲覧日:2022年4月26日)
文部科学省,国立教育政策研究所「OECD国際成人力調査 PIAAC(第2回調査)パンフレット」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_pamph_2021FT.pdf,(閲覧日:2022年4月26日)
経済産業省「OECD(経済協力開発機構)」,https://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/oecd/index.html(閲覧日:2022年4月27日)
深町珠由「PIAAC から読み解く近年の職業能力評価の動向」,https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/09/pdf/071-081.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
国立教育政策研究所「国際成人力調査(PIAAC)」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/div03-shogai-piaac-pamph.html(閲覧日:2022年4月28日)
国立教育政策研究所「PIAAC日本版報告書 調査結果の要約」,https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/pdf/piaac_summary_2013.pdf(閲覧日:2022年4月28日)
文部科学省「国際成人力調査(PIAAC)調査結果の概要」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/11/07/1287165_1.pdf(閲覧日:2022年4月26日)
文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~読解力・数的思考力~」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_2.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
文部科学省,国立教育政策研究所「OECD 国際成人力調査 調査問題例~ITを活用した問題解決能力~」,https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/__icsFiles/afieldfile/2013/10/16/1287165_3.pdf(閲覧日:2022年4月27日)
川口 大司「育児休業と女性の技能利用:PIAACからの知見」,『独立行政法人経済産業研究所』,https://www.rieti.go.jp/jp/publications/nts/18e003.html(閲覧日:2022年4月28日)
川口 大司「人口減時代の人材育成・活用——技能発揮へ働き方改革カギ」,『独立行政法人経済産業研究所』,https://www.rieti.go.jp/jp/papers/contribution/kawaguchi/08.html(閲覧日:2022年4月28日)
IEC「国際成人力調査(PIAAC)文部科学省 生涯学習政策研究部 総括研究官 籾井圭子氏に訊く」,https://www.iec.co.jp/piaac/index.html(閲覧日:2022年4月29日)
舞田敏彦「日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低」,『ニューズウィーク日本版』,2015年8月4日,https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3823_2.php(閲覧日:2022年4月29日)
教育ZINE「国際成人力調査からみる日本の特徴と課題」,https://www.meijitosho.co.jp/sp/eduzine/news/?id=20130951(閲覧日:2022年4月29日)

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