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パラレルキャリアとは 本業以外の活動を認め、企業の成長に活かす

パラレルワークとは 企業の生産性を上げる新しい働き方と成功事例

パラレルワークとは 企業の生産性を上げる新しい働き方と成功事例

「このところ、新しい働き方が続々と生まれている。きちんとキャッチアップすれば、自社でも採用できそうだ。」

新しい情報にアンテナを張り続けるのはなかなか難しいものです。しかし、個人と企業、両方にメリットがある働き方があるなら、人材不足や生産性の低下に悩む企業の人事担当者にとっては耳より情報ですよね。

働き方改革の推進により、ワークスタイルに対する意識が変化しています。フレックスタイム制やリモートワークなどの新しい働き方が一般的になる中、「パラレルワーク」という働き方も注目を浴びています。

パラレルワークとは、並行して複数の仕事や収入が発生しない仕事以外の活動を行う状態を指し、パラレルワークをする人をパラレルワーカーといいます。パラレルワークをする従業員は複数の仕事により、幅広い知識や経験を得られます。その知見が活かされることで、自社へのさらなる貢献も期待できるでしょう。

本稿ではパラレルワークの定義や注目されている背景を踏まえ、企業側・従業員側のメリットと注意点、さらに導入企業の事例を紹介します。また社内でパラレルワークをする「社内複業」という制度についても解説しているので、自社に新しい働き方を導入する際の参考にしてください。

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1. パラレルワークとは 企業の生産性を押し上げる新しい働き方

まずはパラレルワークの定義や、導入企業が増えている背景について見ていきましょう。また、パラレルワークと混同されやすい言葉との違いも詳しく解説します。

1-1. パラレルワークとは その定義を解説

パラレルワークとは、「並行」を意味するParallel「仕事」を意味するWorkを掛け合わせた言葉で、並行して複数の仕事をしている状態を表します。複数の仕事をしているという意味から「複業」と表現されることも多く見られます。そして、パラレルワークをする人をパラレルワーカーと呼称します。

ビジネス用語として使われるパラレルワークとは、複数の本業を持っている状態を指すのが一般的です。ただし、Workには「仕事」以外にも「作業」「研究」といった意味があるように、本来は仕事だけでなくボランティア活動やクリエイティブな作業など幅広い活動を含みます。

1-2. パラレルワークの導入企業が増えている背景

パラレルワークを制度として導入する企業が増加傾向にある背景には、労働者の価値観の変化があります。

働き方改革の推進により仕事に対する意識が変化した現代では、フレックスタイム制やリモートワークなどを希望する労働者が増え、働き方が多様化しています。その一つとして、パラレルワークにより複数のキャリアを築いたり、生計を立てたりしたいという労働者も増加傾向にあるのです。

また先行きが不透明な現代において「いつ自社の経営が悪化するか分らない」と不安を抱える労働者も少なくありません。そのため、定年退職まで一つの企業で働くのはリスクがあると考え、パラレルワークによって自分なりのワークスタイルを確立したいという意識が高まっています。

1-3. パラレルキャリアとの違い

パラレルワークと混同されやすい言葉に「パラレルキャリア」があります。

パラレルキャリアとは経営学者のピーター・ドラッカーが提唱した働き方で、並行して複数のキャリア(経歴)を築くことです。パラレルワークは複数の本業を持ったり、研究や創作など複数の活動を行ったりすることを意味するため、パラレルキャリアを実現するための手段ともいえるでしょう。

1-4. 副業や兼業との違い

パラレルワークは「副業」や「兼業」との違いが明確ではないため、混同されることがあります。

それぞれの違いを明確に説明するのは難しいですが、あえていうならば副業・兼業は本業以外に収入を得る仕事をすることを指します。これは、厚生労働省のガイドラインに記載されている内容から読み取れます。

厚生労働省のガイドラインによると、副業・兼業は「二つ以上の仕事を掛け持つこと」と定義されています[1]。また副業・兼業の形態は、以下が挙げられています。

企業に雇用される形で行うもの(正社員、パート・アルバイトなど)
自ら起業して事業主として行うもの
コンサルタントとして請負や委任といった形で行うもの

一方のパラレルワークは、収入を得る仕事だけでなく、幅広い活動を対象としているといった違いがあります。

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2. パラレルワークのメリット 企業側&従業員側の両方から解説

パラレルワークを導入することで、企業側も従業員側もメリットを得られます。主なメリットを以下で解説します。

2-1. 企業側のメリット

企業側は以下のメリットが期待できます。

・従業員のスキルの向上
・社内の活性化
・優秀な人材の確保

従業員のスキルの向上

従業員は、複数の仕事により幅広いスキルを身に付けることができます。そのスキルを活かし、自社の新規事業立ち上げや新商品開発などへの貢献が期待できます。

社内の活性化

従業員の「パラレルワークをしたい」という希望を制度として取り入れることで、従業員の満足度が向上します。また、パラレルワークを通じて企業の垣根を越えてやりたい仕事に挑戦できるので、働くこと自体のモチベーションの向上も期待できます。意欲的に仕事に打ち込む従業員が増えることで、社内の活性化につながるでしょう。

優秀な人材の確保

労働者の働き方が多様化している今の時代、パラレルワークを制度として取り入れていることは企業の魅力となり、採用活動において有利に働きます。そのため、優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。また、従業員の満足度が向上することで、離職率の低下も期待できます。

このように企業が従業員のパラレルワークを認めることで、従業員のスキルやモチベーションが向上したり、優秀な人材を確保しやすくなったりするメリットがあります。これらのメリットは、生産性向上にもつながるでしょう。

2-2. 従業員(パラレルワーカー)側のメリット

従業員側は以下のメリットが期待できます。

・スキルの向上
・視野の広がり
・リスクの分散

スキルの向上

パラレルワークは、従業員のスキルアップに役立ちます。今まで経験したことのない業種や分野などでパラレルワークをすると、新たな知識や実務経験を身に付けることができ、スキルアップにつながります。

視野の広がり

パラレルワークにより複数の仕事や活動を始めると、これまでに経験したことのない出来事に遭遇したり、接点のなかった人たちと話したりする機会が増えます。新しい経験や人脈視野を広げ、自身の成長につながるでしょう。

リスクの分散

今は先行きが不透明な時代のため、自身が勤めている企業がリストラや倒産をする可能性もゼロとはいえません。パラレルワークにより複数の収入源を持ったり、別のキャリアを積んだりしておけば、万が一のリスクに備えられるのです。

このように、パラレルワークをする従業員は、スキルの向上や視野の広がりなどのメリットを得られます。また、リスクを分散できることもメリットの一つです。


3. パラレルワークの注意点 企業側&従業員側の両方から解説

パラレルワークには多くのメリットがある反面、注意すべき点もいくつか存在します。企業や人によってはデメリットともなるため、パラレルワークの導入を検討する際には以下の点を意識しましょう。

3-1. 企業側の注意点

企業側の注意点としては、以下が挙げられます。

・情報漏えい
・パフォーマンスの低下

情報漏えい

パラレルワークは情報漏えいのリスクがあります。例えば、従業員が自社で使用しているパソコンを他社の仕事でも使用している場合、自社の情報を誤って他社に流出させてしまうことが考えられるでしょう。

パラレルワークを導入するにあたり、情報漏えいを防ぐための仕組み作りや従業員の意識改革は必須です。

パフォーマンスの低下

自社以外の仕事量や費やす時間の配分などは、従業員が自己管理します。そのため、自社以外の仕事が多過ぎると労働時間が増加してしまい、十分な休息を取ることができません。その結果、睡眠不足やストレスなどで疲労が蓄積し、自社での仕事のパフォーマンスが低下してしまう恐れがあります。

このようにパラレルワークの導入により、企業には情報漏えいや従業員のパフォーマンス低下などのリスクが生じます。パラレルワークを導入する際には、上記の点について対策を検討しておきましょう。

3-2. 従業員(パラレルワーカー)側の注意点

パラレルワークをする従業員側の注意点としては、以下が挙げられます。

・自己管理が難しい
・税務関係の手続きをしなければいけない

自己管理が難しい

複数の仕事のスケジュールや進め方などは、従業員自身が決めます。掛け持つ仕事が増えるにつれて労働時間も増加するため、時間管理が難しくなるでしょう。その結果、休息が不十分になったり、納期に間に合わなかったりするなどのリスクにつながります。

税務関係の手続きをしなければいけない

複数の収入源があると、金額によっては会社で行う年末調整以外にも自身で確定申告をしなければいけません。書類の作成や申請などを自ら行う必要があり、事務作業が苦手な人は苦労するでしょう。税理士に依頼する方法もありますが、コストがかかる点に注意しましょう。

このように、パラレルワークをする従業員側にも注意点があります。自己管理の難しさや税務関係の手続きの手間などを充分に検討してから、パラレルワークを始めましょう。

パラレルワークは企業にとっても従業員にとっても多くのメリットがありますが、実施するにあたり注意しなければいけない点もあります。パラレルワークを導入する際には、お互いの注意点を理解した上で、事前に対策を練っておきましょう。


4. 【事例】パラレルワークの導入成功事例

実際にパラレルワークを制度として導入し、従業員のモチベーション向上やスキルアップなどの効果を感じている企業も珍しくありません。ここからは、パラレルワークを導入して成功した企業事例を紹介します。

4-1. サイボウズ株式会社

「100人いれば、100通りの働き方」を掲げるサイボウズ株式会社は、2012年から複業を認める制度を取り入れています。さらに2017年には、他に本業を持つ人材を採用する「複業採用」を開始しました。これは、さまざまな知見や専門性を持つ人材を採用することで、従業員の自立を促すだけでなく組織を強化する目的で打ち出されました。

すでに自社で働いている従業員の複業だけでなく、複業を切り口にして新しい人材を確保する取り組みは、同社の働き方に対する柔軟な考え方を具現化しています。

4-2. カゴメ株式会社

カゴメ株式会社は「すべての人がイキイキと働く『生き方改革』」を掲げ、さまざまな人事制度を打ち出してきました。そのうちの一つとして、2019年に副業制度を取り入れています。同社での残業時間や副業の労働時間などに条件を設けており、その条件を満たした場合のみ副業が認められます。

同社の制度上では「副業」としていますが、一カ所に限定されないキャリア構築の機会提供を目的としていることからパラレルワークともいえるため、本稿で紹介しました。

4-3. 株式会社新生銀行

新生銀行グループでは就業時間外の時間の使い方について、従業員の自由を尊重して複業を認めています。仕事内容には条件を設けていないため、同社での業務経験を活かしている従業員もいるそうです。他にも趣味を活かしたり起業したりするなど、さまざまな働き方が実現しています。

ここで紹介した3社は、パラレルワークの導入により従業員の自己実現を支援しています。パラレルワークは業種や企業規模に関わらず導入できるため、多様な働き方を認めたいと考えている企業はぜひ参考にしてください。


5. 社内でのパラレルワーク導入も可能!「社内複業」制度を紹介

パラレルワークというと、現在働いている企業以外での活動をイメージする人が多いでしょう。しかし、社内でパラレルワークをする「社内複業」という働き方を取り入れる企業も増えています。

社内複業とは、自分が所属する部署に籍を置きながら、他の部署の業務を掛け持つ制度です。社内にはさまざまな部署があるため、今まで経験したことのない部署の業務を経験することで、新しい知識を身に付けたりキャリアパスの幅を広げたりする効果があります。

社内複業制度を取り入れている企業は、パナソニック株式会社株式会社リコーなどです。社内複業は企業が従業員の複業状況を管理しやすいため、今後さらに導入企業が増加していくでしょう。


6. まとめ

パラレルワークとは「並行」を意味するParallel「仕事」を意味するWorkを掛け合わせた言葉で、並行して複数の仕事をしている状態を表します。収入が発生する仕事だけでなく、ボランティア活動やクリエイティブな作業なども含まれているのが特徴です。

パラレルワークのメリットは以下の通りです。

企業側のメリット
・従業員のスキルの向上
・社内の活性化
・優秀な人材の確保

従業員(パラレルワーカー)側のメリット
・スキルの向上
・視野の広がり
・リスクの分散

ただし、パラレルワークを導入する際には、以下に注意しましょう。

企業側の注意点
・情報漏えい
・パフォーマンスの低下

従業員(パラレルワーカー)側の注意点
・自己管理が難しい
・税務関係の手続きをしなければいけない

このような注意点への対策を取り、制度としてパラレルワークを導入して多様な働き方を認めている企業事例も多数あります。サイボウズ株式会社、カゴメ株式会社、株式会社新生銀行など、さまざまな企業がパラレルワークを導入しています。

また、パナソニック株式会社や株式会社リコーのように、社内の他部署の業務を掛け持つ「社内複業」を取り入れている企業事例もあります。

パラレルワークは働き方改革や労働者の意識の変化により、今後さらに注目されていくでしょう。パラレルワークによって従業員がさまざまな知識や経験を得ることは、企業にとって新たな強みになるはずです。多様化する働き方のニーズに対応するため、パラレルワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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[1] 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」,2020年11月,https://jsite.mhlw.go.jp/hyogo-roudoukyoku/content/contents/001215755.pdf(閲覧日:4月6日)

参考)
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」,2020年11月,https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000695150.pdf(閲覧日:4月6日)
サイボウズ株式会社「「複業採用」を開始 サイボウズでの仕事を複(副)業とする方を積極募集」,2017年1月17日,https://topics.cybozu.co.jp/news/2017/01/17-1601.html(閲覧日:4月6日)
一般社団法人 日本経済団体連合会「副業・兼業の促進 働き方改革フェーズⅡとエンゲージメント向上を目指して」,2021年10月12日,https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/090_honbun.pdf(閲覧日:4月6日)
エール株式会社「#複業解禁 株式会社新生銀行」,『パラレルキャリア専門エール通信』,2019年5月,https://aile-official.co.jp/media/company201905/(閲覧日:4月6日)
株式会社新生銀行「新生銀行の働き方改革」,https://www.shinseibank.com/corporate/reworkstyle/(閲覧日:4月6日)
パナソニックホールディングス株式会社「パナソニックの#はたらくってなんだろう
大企業でパラレルキャリア?社内複業はメリットだらけ!」,『パナソニックグループ採用情報』,2020年8月,https://recruit.jpn.panasonic.com/feed/talk007.html(閲覧日:4月6日)
株式会社リコー「Challenge:自分のやりたい仕事を社内で見つける!【第2話】」,2020年4月3日,https://jp.ricoh.com/about/empowering-each-other/interview06(閲覧日:4月6日)

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