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「36協定とは」をできるだけ簡単に、かつ網羅的に解説!具体例あり

「36協定ってどんなものか、実は人に説明できるほどはわかっていないかも・・」

36(サブロク)協定について、曖昧な理解しかできていない人は意外に多いかもしれません。

36協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といいます。

時間外労働や休日勤務に関する労使協定で、法定労働時間[1]を超えて労働者を働かせられるようにするものであり、労働基準法の第36条に基づく労使協定であるため「36協定」と呼ばれています。

この「36協定」なしには、従業員に残業をさせることはできません。

しかし、2017年度に厚生労働省が全国事業場を立ち入り検査したところ、半数近くの事業場で違法な長時間労働がされているという結果が出ました。さらにその事業場の74%で1カ月当たりの残業時間が80時間超。これは過労死ラインと言われるレベルです。

2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)では、時間外労働の上限規制が設けられ、違反すると罰則が科せられます。
2019年4月にはこの働き方改革関連法が施行されました(中小企業は2020年4月)。

本稿ではこの36協定について、図表や例を挙げながらできるだけ簡単に、かつ網羅的に解説します。

[1] 1日8時間、1週間40時間


1. 【基礎知識】36協定を簡単に解説

36協定とは、労働者に時間外労働または休日労働をさせようとする場合に、労使間で締結しなければならない協定のことで、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」と言います。労働基準法(労基法)第36条が根拠となっているため36協定と呼ばれています。

労基法36条は時間外及び休日の労働について規定しています。この条文によると、使用者は労働者と書面による協定を締結し、行政官庁に届け出ることで労働時間の延長や、休日労働をさせることが可能となります。

労使協定というと使用者と労働組合の間で締結するものという印象があるかもしれませんが、36協定についてはアルバイトやパートタイマーを含め、労働者が1人でもいれば協定を結ぶ必要があります。したがって、ほぼすべての事業場について36協定が適用されると言えるでしょう。

派遣労働者などの非正規職員についても協定が必要ですが、派遣労働者は派遣会社と雇用契約を結んでいますので、派遣先ではなく、派遣元と36協定を締結する必要があります。

派遣元で36協定が締結されていない場合、派遣先の使用者は派遣労働者に対して残業を命じることはできません。また、出向者は「出向元」ではなく、「出向先」での36協定が適用されることにも注意が必要です。

労基法は1947年に制定されてから改正が加えられていますが、限度時間を超える時間外労働を抑えるため、その強化が進められています。

2019年4月に施行された改正労基法では、これまでは限度がなかった、「特別な事情がある場合」の時間外労働時間について上限規制が設けられました。

参考)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の限度に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

では、36協定を届け出ることで可能となる「時間外労働・休日労働」と、「時間外労働の上限」について詳しく見ていきましょう。

1-1. 時間外労働・休日労働

まずは「時間外労働・休日労働」です。いずれも36協定を締結して初めて可能となります。

(1) 時間外労働

労働基準法では「法定労働時間」として、原則1日8時間、1週間40時間と定められており、これを超える残業については、36協定の届け出が必要です。

ほとんどの会社が就業規則や雇用契約書で就業時間を定めていますが、この就業時間を「所定労働時間」といい、法定労働時間を超えて設定することは原則としてできません。

一方、所定労働時間を7時間など、法定労働時間よりも短く定めているケースがありますが、このケースでは、36協定の届け出を出さなくても法定労働時間以内であれば「法定内残業」として、残業をさせることは可能です。

図)36協定

(2) 休日労働

労働基準法では「法定休日」として、1週間に1日以上、または4週間に4日以上の休日を設けなければいけないと定められており、「法定休日」に働かせる場合には、36協定の届け出が必要です。

週休2日制の企業であれば、法定休日に労働させることはないため、36協定の届け出は必要ありません。また、週休2日のうち、1日だけ休日出勤をしたとしても、法定労働時間(週40時間)以内であれば、同様に36協定の届け出は不要です。

具体的には以下のとおりです。

参考)36協定が必要のないケース
※土日の週休2日制の企業の場合

曜日計6日
労働時間休み7時間7時間7時間7時間7時間5時間計40時間

このケースでは、土曜日に休日出勤をしているものの週1日休日があり、かつ労働時間も1日8時間以内、週40時間以内であるため、36協定の届け出は必要ありません。

参考)36協定が必要なケース
※土日の週休2日制の企業の場合

曜日計7日
労働時間2時間7時間7時間7時間7時間7時間3時間計40時間

週休2日制で、法定休日が特定されない場合、法定休日はあとに来る休日となります。このケースでは、土日どちらも出勤しており、土曜日が法定休日の労働となるため、36協定の届け出が必要となります。

1-2. 時間外労働の上限規制

前述のように、36協定を届ければ法定労働時間を超える労働や、法定休日の労働が可能になります。

しかし、いくらでも残業・休日出勤をさせて良いというわけではありません。時間外労働の上限が定められています。ここではその内容を確認しましょう。

表)延長時間の限度

期間一般の労働者変形労働時間制の労働者
(3カ月を超える1年単位)
1週間15時間14時間
2週間27時間25時間
4週間43時間40時間
1カ月45時間42時間
2カ月81時間75時間
3カ月120時間110時間
1年間360時間320時間

上記を超える労働をさせる場合には、「特別条項付きの協定」を締結しなければいけません。

特別条項付きの協定を締結すれば、繁忙期など特別な事情がある時期については、上記を超える労働をさせることが可能になります。

ただし、特別条項付きの協定を締結したとしても、1ヶ月45時間を超えて労働させることができるのは、1年の半分(6ヶ月)以内でなければいけません。


2. 36協定で取り決めること

前章では、36協定の届け出によって何が可能になるのかを見て来ました。

ここでは、36協定において労使間で取り決める内容と36協定の締結から届出までの流れについて解説します。

なお、労使間で協定を結んだとしても、36協定の届出をしない限り協定は有効になりません。有効期限前に、届出まで済ませるようにしましょう。

前章と重なる部分もありますが、改めて見ていきましょう。

1. 労働者側の代表の決定
2. 協定の締結
3. 特別条項付き協定の締結(必要な場合)
4. 協定届の作成
5. 協定届の提出
6. 36協定の周知

2-1. 労働者側の代表の決定

使用者と協定を締結する労働者側の代表を、以下の要件に沿って決定します。

ア.労働者の過半数で組織される労働組合がある場合はその労働組合が代表となる
イ.労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者が代表となる(労働者が1人の場合はその人)

なお、代表者は、以下のどちらにも該当する者でなければなりません。

・監督または管理の地位にない者
・労使協定の代表者を選出することを明らかにした上で、投票または挙手などの方法により選出された者

使用者が指名した者を代表として選出した場合や、親睦会の幹事などを自動的に代表にした場合、協定は無効です。

2-2. 協定の締結

労使は以下の事項について協定を結ぶ必要があります。

(1) 時間外労働をさせる具体的な事由
具体的な事由を明確にする必要があります。

(2) 時間外労働をさせる業務の種類
対象業務を拡大することのないよう、業務を細分化することで範囲を明確にしなければなりません。

(3) 時間外労働者の数
対象となる労働者の人数を、(1)の具体的な事由ごとに明確にする必要があります。

(4) 1日の延長労働時間
坑内労働など法令で危険有害業務と定められている業務については、1日2時間という上限があります。

(5) 1日を超える一定の期間についての延長労働時間
「1日を超えて3カ月以内の期間」および「1年間」の双方の延長労働時間について取り決めます。

延長労働時間の限度については、一般の労働者と変形労働時間制の労働者の間で違いがあります。

表)延長時間の限度(※再掲)

期間一般の労働者変形労働時間制の労働者
(3カ月を超える1年単位)
1週間15時間14時間
2週間27時間25時間
4週間43時間40時間
1カ月45時間42時間
2カ月81時間75時間
3カ月120時間110時間
1年間360時間320時間

(参照)厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準」https://www.startup-roudou.mhlw.go.jp/pdf/040324-4.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

一般の労働者の場合、「1カ月45時間、1年360時間」が上限です。上限を超えた時間外労働は「特別条項付き協定」を締結していない限り違法となります。

(6) 有効期間(1年間以上)
通常1年間が望ましいとされています(平 11.3.31 基発第 169 号)。

有効期間が満了すると協定は失効しますので、再度締結することが必要です。協定の際に自動更新という条項を設けることも可能ですが、労使間で更新について確認し、所轄の労働基準監督署に届け出をする必要があります。

2-3. 特別条項付き協定の締結(必要な場合)

特別な事情により延長時間の限度を超えて労働をさせる場合は、特別条項付協定を結ぶ必要があります。

特別条項の必要事項としては、以下のことを定めなければなりません。

(1) 原則としての延長時間(限度時間以内の時間)

(2) 限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
具体的に定める必要があります。また、特別の事情は臨時的なものに限られ、具体的には、一時的、突発的であること、全体として1年の半分を超えないことが見込まれることが必要です。

(3) 一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続き

(4) 限度時間を超える一定の時間
(2)で定めた特別な事情が発生した際は、1ヶ月60時間まで、1年に420時間まで限度時間を延長することができます。

なお、延長時間については、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度とされています。

また、延長する時間は、可能な限り短くするように努めなければいけません。

大企業は2019年4月以前、中小企業は2020年4月以前まではこの上限はありませんでしたが、2021年現在においては会社規模に関わらず上記の上限が設けられていますので、注意してください。

(5) 限度時間を超えることができる回数
(2)で定めた特別な事情が発生した際は、年に6回まで(4)で定めた時間まで延長することができます。

(6) 限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内、1年間)ごとの割増賃金率
限度時間を超える労働時間の割増賃金率は、法定割増賃金率(25%)を超えるように努力する必要があります。

なお、大企業については、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%)以上に設定しなければいけません。

また、中小企業についても2023年4月より大企業と同様に50%の割増賃金を支払うことが義務付けられます。

【取り決め例】

 

延長時間が1カ月45時間を超えた場合の割増賃金率を30%とし、1年360時間を超えた場合の割増賃金率は35%とする。

 

この場合の割増賃金率は以下のように設定する必要があります。(2021年時点)
・月45時間以内→25%
・月45時間超、月60時間以内→30%
・月60時間超→50%(※大企業の場合)
・年間360時間超→35%

 

(表)時間外労働時間が1ヶ月45時間を超えると30%、1年360時間を超えると35%に設定している場合の割増賃金率

出典)厚生労働省「改正労働基準法1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し関係(限度時間を超える時間外労働の抑制)」http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/091214-2_03.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

2-4. 協定届の作成

指定の様式に従って協定届を作成します。

協定届は事業場ごとに締結する必要があります。本店や支店があれば協定届は両方について作成し、各々管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。

2-5. 協定届の提出

作成した協定届を管轄の労働基準監督署に提出します。届け出をもって協定が有効になるため、有効期間開始前に届け出る必要があります。

なお、2021年3月末より、事業場ごとに労働代表者が異なる場合でも、電子申請に限り、本社から一括での届出が可能になりました。

図)36協定の電子申請の流れ

出典)厚生労働省「労働基準法・最低賃金法などに定められた届出や申請は電子申請を利用しましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000724367.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

2-6. 36協定の周知

協定の内容を下記の(1)〜(3)のいずれかの方法を用いて労働者に周知する必要があります。

(1) 労働者の見やすい場所に掲示するまたは書類を備え付けること
(2) 書面を労働者に交付すること
(3) パソコンなどの記録媒体に記録し、労働者が常時確認できるようにしておくこと

参考)厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/var/rev0/0145/3504/201417102954.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

36協定は、労使間で協定を締結、協定届を作成、労働基準監督署に提出、労働者に周知することで手続きが完了します。


3. 36協定に違反した場合の罰則

36協定に違反すると、労基法119条が適用され、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

しかし、実際には一度の突発的な違反行為で罰則行為が適用されることはほとんどありません。労働基準監督署から是正勧告が出され、改善に向けての措置が求められることになります。

コンプライアンスの観点からも、罰則があるかどうかではなく、法律違反にならないような体制を普段から整えておくことが重要です。


4. 時間外労働が法令違反になるケース

36協定を締結していない場合はもちろん、36協定を締結している場合であっても、時間外労働は法令違反になるケースがあるため、慎重にならなければいけません。

ここでは、時間外労働が法定違反になるケースについて解説します。

4-1. 36協定を締結していない状態での時間外労働

36協定を締結していない場合、「法定労働時間」である1日8時間、1週間40時間以上の労働をさせることは法令違反となります。

「所定労働時間が7時間の場合の1時間の時間外労働」のように、8時間に収まる範囲での時間外労働は問題ありませんが、法定労働時間を超える労働をさせることはできません。

4-2. 特別条項を締結していない状態での月45時間以上の時間外労働

36協定を締結していても、月45時間以上の時間外労働は法令違反となります。

月45時間以上の時間外労働をさせる場合には、特別条項を締結しなければいけません。

4-3. 月100時間を超える時間外労働

特別条項を締結していても月100時間以上、年720時間を超える時間外労働をさせることはできません。また、月100時間以内であっても、それが複数月続き、複数月の平均が80時間を超える時間外労働は禁止されています。

4-4. 法定外労働時間に割増賃金の設定をしていない

法定外労働時間には、通常の賃金に法定割増賃金率である25%を上乗せしなければいけません。

なお、大企業の場合、月60時間を超える労働時間には割増賃金率50%を上乗せするよう定められており、2023年4月からは中小企業にもこれが適用されます。

36協定を締結していても、法定時間外労働には割増賃金を上乗せしなければ法令違反となるので注意しましょう。


5. 36協定の現状と課題解決への道

36協定によって、時間外労働について取り決めがされているとは言え、それが守られていないのが現状です。

長時間の労働時間を抑え込もうとする法律があるにも関わらず、長時間労働によって過労死する人や、体を壊す労働者があとを絶ちません。

企業には、従業員の健康を守る義務があります。36協定の現状と課題を踏まえ、そして課題を解決するために努めなければいけません。

ここでは、36協定の現状と課題解決のために努めるべきことについて解説します。

5-1. 36協定の現状と課題

平成25年の厚生労働省の調査によると、36協定を締結している事業場は大企業で94.0%、中小企業で43.4%でした。大企業のほとんどが、36協定を締結している一方で、中小企業は半数以下という結果になっています。

また、36協定を締結していない事業場の締結していない理由についての調査結果は以下のとおりです。

調査対象となった事業場の35%が、36協定の存在すら知らないと回答しています。協定の締結や届け出を失念していたという理由も少なからずあります。

参考)厚生労働省労働基準局「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/shiryo2-1_1.pdf(閲覧日:2021年9月2日)

次に、厚生労働省が平成31年4月から令和2年3月に、32,981事業場に対して実施した監督指導の結果を見てみましょう。

表)主な違反内容

違法な時間外労働があったもの賃金不払残業があったもの過重労働による健康障害防止措置が未実施のもの
15,593 事業場(47.3%)2,559 事業場( 7.8%)6,419 事業場(19.5%)

出典)厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000667303.pdf(閲覧日:2021年9月2日)

多くの事業場で労働基準関係法令の違反があったことが分かります。中でも目立つのは違法な時間外労働で、36協定を締結することなく時間外労働を行わせた、協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせた、という事例でした。

法律があるのにも関わらずこれほどまでに違反が多いという現状を軽視することはできません。監督を実施した32,981事業場における時間外・休日労働時間が最長の者の統計結果が以下の表です。

表)違法な時間外労働があったもの

出典)厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/content/11202000/000667303.pdf(閲覧日:2021年9月2日)

15,593の事業場で過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外・休日労働を行っているという実態がわかります。

5-2. 課題解決のために企業が心がけるべきこと

36協定が締結されずに時間外労働が行われている大きな原因の一つに、労働者が「法令を知らない」ということがあげられます。

出典)日本労働組合総連合会 「36協定に関する調査2017」https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20170707.pdf(閲覧日:2021年9月2日)

2017年に日本労働組合総連合会(連合)が全国の20歳~65歳の労働者(自営業・自由業、パート・アルバイト除く)1,000名に対して実施した調査では、36協定を締結する必要性を「知らない」という割合が43.5%でした。若い世代ほどこの割合が高くなっています。

今後の36協定の問題解決、その他の労働条件の改善のためには、まず労働者への周知を徹底していくことが重要なポイントであると言えるでしょう。


6. 新しくなった36協定届の書き方

2021年4月より、36協定届の様式が新しくなりました。届出日が2021年4月1日以降の場合には、この新様式で届け出なければいけません。

36協定届は毎年届け出なければいけないため、慣れている企業でも注意が必要です。

以下は、新様式の記載例です。


出典:厚生労働省,「36協定届が新しくなります」https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf(閲覧日:2021年8月23日)

具体的な変更点は以下のとおりです。

変更点① 36協定届における押印・署名の廃止

新型コロナウイルス感染症の感染防止のため、行政手続きの押印について見直しが行われており、36協定届における押印・署名も廃止となりました。

ただし、協定届が協定書を兼ねる場合に、労使双方で合意・締結されたことを明らかにするために、労働者代表と使用者の署名または記名・押印が必要です。

協定書と協定届は別のものですが、協定届は協定書を兼ねてもよいため、ほとんどの会社が協定届に必要事項を記入し、労使の署名または記名・押印をして届けています。

変更点② 協定当事者に関するチェックボックスの新設

労働者代表の適格性について、以下の要件に関するチェックボックスが新設されました。実態として要件を満たしていたとしても、チェックボックスにチェックがされていないと労働基準監督署に受理されないので、必ずチェックを入れるようにしましょう。

  • 管理監督者でないこと
    管理監督者は労働者代表になれません。
    管理監督者は、「経営者と一体的な立場にある人」を指し、一般的に「管理職」がこれにあたります。

  • 36協定を締結する者を選出することを明らかにした上で、投票・挙手等の方法で選出すること
    労働代表者は、36協定を締結する者を選出することを明らかにした上で、労働者全員の投票・挙手等の方法で選出しなければいけません。

    「投票・挙手等の方法」として、持ち回り決議も可能とされているため、多くの会社は書面やメールを配って同意してもらうという方法を取っているようです。

    なお、「労働者」には、パートタイマー、アルバイト、有期雇用労働者、非正規労働者、休職者・育児休業者・介護休業者(協定期間中に出勤が予定されていない場合も含む)なども含まれます。

  • 使用者の意向に基づいて選出された者でないこと
    労働者代表になる人を、使用者が指名することはできません。管理監督者以外の労働者から立候補してもらったり、推薦してもらったりして選出するようにしてください。
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7. まとめ

36(サブロク)協定とは、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」といい、時間外労働や休日勤務に関する労使協定で、法定労働時間を超えて労働者を働かせられるようにするものです。

労働基準法の第36条に基づく労使協定であるため「36協定」と呼ばれています。

「36協定」なしには、従業員に残業をさせることはできません。

36協定を届出ることで、以下のことが可能になります。

(1)時間外労働
(2)休日労働

36協定は、以下の流れで取り決め、締結します。

1. 労働者側の代表の決定
2. 協定の締結
3. 特別条項付き協定の締結(必要な場合)
4. 協定届の作成
5. 協定届の提出
6. 36協定の周知

36協定に違反した場合、労基法119条が適用され、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。

しかし、実際には一度の突発的な違反行為で罰則行為が適用されることはほとんどありません。労働基準監督署から是正勧告が出され、改善に向けての措置が求められることになります。

36協定を締結していない場合はもちろん、36協定を締結していても時間外労働が法令違反になるケースがあります。

具体的には以下のとおりです。

・36協定を締結していない状態での時間外労働
・特別条項を締結していない状態での月45時間以上の時間外労働
・月100時間を超える時間外労働
・法定外労働時間に割増賃金の設定をしていない

36協定について理解しておかないと、気づかないうちに法令違反になっている可能性もあるため、しっかりと理解しておくようにしましょう。

とはいえ、36協定で時間外労働について取り決めされているにも関わらず、それが守られていないのが現状です。

平成25年の厚生労働省の調査によると36協定を締結している事業場は大企業で94.0%、中小企業で43.4%でした。「36協定を締結していない」と回答した事業場のうち、35%が「36協定の存在すら知らない」と回答しています。

さらに、厚生労働省が平成31年4月から令和2年3月に、32,981事業場に対して実施した監督指導の結果、78.1%の事業場で労働基準関連法令違反がみられました。違反内容のうち最も多かったのは「違法な時間外労働があったもの」で、15,593事業場、全体の47.3%に上ります。

また、時間外・休日労働時間が最長の者の統計結果を見ると、15,593の事業場で過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外・休日労働が行われている実態がわかりました。

36協定が締結されずに時間外労働が行われている大きな原因の一つに、労働者が「法令を知らない」ということがあげられます。

2017年に日本労働組合総連合会(連合)が全国の20歳~65歳の労働者(自営業・自由業、パート・アルバイト除く)1,000名に対して実施した調査では、36協定を締結する必要性を「知らない」という割合が43.5%でした。若い世代ほどこの割合が高くなっています。

今後の36協定の問題解決、その他の労働条件の改善のためには、まず労働者への周知を徹底していくことが重要なポイントであると言えるでしょう。

2021年4月より、36協定届の様式が新しくなりましたので、届出日が2021年4月1日以降の場合には、この新様式で届け出なければいけません。

新様式で変更になったのは、以下の2つです。

変更点① 36協定届における押印・署名の廃止
変更点② 協定当事者に関するチェックボックスの新設

36協定届は、毎年届出る必要がありますので、これまで提出している企業も注意しなければいけません。

「働き方改革」が進められ、労働環境が改善されつつある昨今でも、違法な労働時間がゼロではないのが現状です。

違法な労働時間は、働く人々の健康へ大きな影響を及ぼし、最悪の場合過労死に至ることも否めません。

36協定は、労働者を守るものでもありますが、繁忙期には労働時間を延長できる要件も盛り込まれています。

違法な労働時間を減らしていくためには、使用者はもちろん、労働者も36協定を含む労働に関する法令を理解しなければいけません。

「他人事」とはせず、積極的に法令について理解を深めることが大切です。

参考)
厚生労働省,「36協定届が新しくなります」,https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf(閲覧日:2021年6月30日)
厚生労働省,「36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針」,https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf(閲覧日:2021年6月30日)
総務省,「昭和二十二年法律第四十九号労働基準法」,『e-gov法令検索』, https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049_20200401_502AC0000000013&keyword=%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%9F%BA%E6%BA%96(閲覧日:2021年6月30日)

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  • 人事企画 …健康経営、従業員エンゲージメント など
  • 制度・環境の整備 …インクルージョン、ピアボーナス など
  • 労務管理 …がんサバイバー、36協定 など

ぜひ様々なシーンでお役立てください。

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