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パラレルキャリアとは 本業以外の活動を認め、企業の成長に活かす

パラレルキャリアとは 本業以外の活動を認め、企業の成長に活かす

パラレルキャリアとは、パラレル(平行)とキャリア(経歴)を合わせた造語で、本業と平行して別のキャリアを築くことを意味します。

週末、いつもと違う名刺を手に、本業とは別の分野で活躍する。そんな活動の仕方が日本で広まりつつあります。例えば、企業で働きながらカフェのオーナーをしたり、小さな事業を立ち上げたりするなど、本業とは接点のない世界の開拓や、好きなことの深掘りです。

2018年、厚生労働省の「モデル就業規則」に、副業・兼業の推進に向けたガイドラインの記述ができたことから、さまざまなキャリアを同時に築く「パラレルキャリア」という概念も注目されるようになりました。企業がダイバーシティの一環として受け入れるケースも出ています。ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、企業が成長を続けるための戦略のひとつとして、従業員の自律を尊重し、働き方の多様性を受け入れるという考え方です。

しかし、これまで副業が一般的ではなかったことから、パラレルキャリアと言われても戸惑いを見せる方も多いのではないでしょうか。
本稿では、パラレルキャリアとは何か、具体例やメリット、注意点を交えながら解説します。

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1. パラレルキャリアとは

パラレルキャリアは、経営学者のピーター・ドラッカーが自著『明日を支配するもの』の中で提唱した、これからの社会における新しい働き方の一つです。パラレル(平行)とキャリア(経歴)を合わせた造語で、本業と平行して別のキャリアを築くことを意味します。「別のキャリア」に明確な定義はなく、ボランティア活動や別企業への就職、自営業の開始など幅広い活動を総括しています。

1-1. 副業との違い

パラレルキャリアはまだ認知度が低く、副業と同様の意味に捉えられがちです。しかし、収入を目的とするか否かという点で両者には違いがあります。一般的に副業が、収入を目的として本業以外の仕事をすることを指すのに対し、パラレルキャリアでは収入が主な目的ではなく、視野の拡大将来に向けた自己投資とした活動を指します。

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2. パラレルキャリアのメリット

パラレルキャリアを推進することによって、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは企業側、従業員側からメリットを解説します。

2-1. 企業側のメリット

企業側のメリットは次の通りです。

優秀な人材の獲得と定着

時代の変化に合わせ多様な働き方を認めることは、企業の魅力を高め、優秀な人材の獲得や定着に繋がります。従業員が定着することは採用コストの点からも、大きなメリットと言えるでしょう。

従業員の自立を促す

パラレルキャリアを望む従業員の要望を尊重することで、仕事へのモチベーションを高めることが期待できます。企業の枠を超えて活躍の場を広げることは、従業員に自信をもたらし、ベンチャー精神と行動力を持った、自立した人材に成長するでしょう。

新しい能力・知恵を獲得

従業員が社外で得た能力・知恵・人脈などを、企業へ還元することが期待できます。それを今後のサービス向上や新しいイノベーションに繋げることも可能です。

このように、企業としては、優秀な人材の確保・定着や従業員の自立を促し新たな知恵を得ることを目的に、パラレルキャリアを認める制度を導入しています。さまざまな働き方を受け入れることで、企業は多様性を活かす強い組織を生むことができるのです。

2-2. 従業員側のメリット

従業員のメリットは次の通りです。

リスクを分散できる

終身雇用が破綻しつつある現在では、大企業に就職すれば安泰という考えは過去のものになりました。定年まで勤め続けられないケースに備えて、早い段階から第二・第三のキャリアを作っておくことはリスクヘッジに繋がります。

新たなスキルや情報の習得

パラレルキャリアを実践することで、本業では関わる機会のなかった組織と交流することができます。新たなスキルや情報を得ることができ、自身の成長に繋がるでしょう。

私生活が豊かになる

会社と家の往復だけでなく、第三の場所にコミュニティを持つことで、多くの刺激と発見を得ることができます。私生活が豊かになり、本業のモチベーション向上にも繋がります。

このように、従業員にとっては、リスクヘッジになる上、新たなスキルの習得や私生活が豊かになるというメリットが挙げられます。


3. パラレルキャリアの注意点

パラレルキャリアを受け入れる上で、企業は「労働時間の管理」「情報漏洩」「本業への支障」などに十分配慮する必要があります。トラブルを回避するためにも、パラレルキャリアをどの範囲で認めるか明言し、副業の内容を従業員に申請させるよう就業規則に記載するなどルールの整備が重要です。


4. パラレルキャリアの具体例

パラレルキャリアの具体例としては、企業に勤めながら自分で会社を興す、家業を持ちながらNPO法人でも働くことなどが挙げられます。収入の有無は問わない自己実現に向けた活動なので、本業の傍ら趣味に関する活動をしたり、ボランティアに参加したりすることも当てはまります。

近年では、企業がパラレルキャリアを推進する動きも出ています。

4-1. ロート製薬株式会社

ロート製薬は2016年に「社外チャレンジワーク」「社内ダブルジョブ」という制度を作りました。「社外チャレンジワーク」は副業を認める制度で、就業時間外に収入を伴う仕事をすることが可能になります。一方、「社内ダブルジョブ」制度は、就業時間の一部を利用して、他部署での仕事を経験するというものです。

同社では「自立した人」を輩出することが企業の役割だと考えており、ベンチャー精神のような「興す」気概と行動力を持つ人材を育てる目的で、これらの制度を設けました。2016年は「社外チャレンジワーク」に60名強の応募があり、薬剤師の有資格者がドラッグストアで店員として働くほか、地ビールの製造・販売会社を設立した従業員も現れました。

4-2. 株式会社DeNA

DeNA は2017年に「フルスイング」と題した人事プロジェクトを開始しました。プロジェクトには、社外の副業を認める「副業制度」のほか、従業員と他部署の本部長が合意すれば直属の上司を通さなくても異動が実現する「シェイクハンズ制度」や、他部署の仕事を兼務できる「クロスジョブ制度」などが含まれます。

同社がプロジェクトを実施した背景には、パラレルキャリアを望む従業員を尊重することで、仕事へのモチベーションを高め、本業へ寄与してもらう狙いがあります。
これまで「シェイクハンズ制度」を利用して異動した従業員は30組にのぼり、「副業制度」を利用した従業員のひとりはファッション関連アプリの支援をするなど、さまざまな働き方が実現しています。


5. まとめ

パラレルキャリアとは、パラレル(平行)とキャリア(経歴)を合わせた造語で、本業と平行して別のキャリアを築くことを意味します。副業と違い収入が主な目的ではなく、視野の拡大将来に向けた自己投資とした活動を指しています。

パラレルキャリアのメリットは次の通りです。

企業側のメリット

  • 優秀な人材の獲得
  • 社員の自立を促す
  • 新しい能力・知恵を獲得

従業員側のメリット

  • リスクを分散できる
  • 新たなスキルや情報の習得
  • 私生活が豊かになる

ただし、パラレルキャリアを受け入れる上で、企業は「労働時間の管理」「情報漏洩」「本業への支障」などに十分配慮する必要があります。パラレルキャリアをどの範囲で認めるか明言し、副業の内容を従業員に申請させるよう就業規則に記載するなどルールの整備が重要です。

パラレルキャリアの具体例としては、本業をしながら自分で会社を興す、家業をしながら他の会社で就業する、趣味に関する活動をする、ボランティアに参加したりする、などが挙げられます。近年では企業がパラレルキャリアを推進する動きも出ており、ロート製薬は業務時間外の副業や他部署の兼務を認める制度を、DeNAは副業制度をはじめとする新たな人事制度を運用しています。

従業員の自律を尊重し、さまざまな働き方を受け入れることで、企業は多様性を活かす強い組織を生むことができます。ビジネス環境の変化に柔軟に対応し、企業が成長を続けるための戦略のひとつとして、パラレルキャリアを検討してみてはいかがでしょうか。

参考)
・日本経済新聞 DeNAが副業解禁、社内外でパラレルキャリアを推進
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21820070T01C17A0000000/
・東洋経済 ロート製薬の「副業解禁」が示す本当の意味
https://toyokeizai.net/articles/-/107508

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