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ストレスマネジメントとは?企業の成功事例と効果アップのポイント4つ

ストレスマネジメントとは?企業の成功事例と効果アップのポイント4つ

なぜ、ここまで深刻になる前に本人も企業も手が打てなかったのだろう?

そんな悔しい思いに駆られた経験のある人事担当の方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

ストレスとの上手な付き合い方を考え、適切な対処を行うことを「ストレスマネジメント」といいます。

本来、ストレスは個人的なものであるため、その対処についても個人で行うものと考えるのが妥当でしょう。しかし、生きていく中で切っても切り離せないストレス対策を個人任せにすることは、企業にとって十分なリスク対策とはいえません

ストレスから従業員、そして企業を守るためには、従業員が上手にストレスマネジメントを行えるように企業が支援する必要があります。そのためには、ストレスが及ぼすリスクや、ストレスマネジメントがもたらすメリットについて正しく理解することが重要です。

また、ストレスマネジメントのサポートを行うために、管理職や企業がバックアップの体制を整える必要もあります。

本稿では、企業におけるストレスマネジメントの内容やメリット、企業が行うべき施策のポイント、ストレスマネジメントの効果的な方法についてご紹介します。

ストレスマネジメントの効果や方法について改めて知るとともに、従業員が安心して働き、企業と共に成長できる環境の土台作りに役立てていただければ幸いです。

「ストレスマネジメント」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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1. ストレスマネジメントとは?従業員と企業を守る効果的な手法を紹介

ストレスマネジメントとは、ストレスとうまく付き合い、適切な対策を行うことです。

厚生労働省の調査によると、およそ6割の人が仕事において強い不安やストレスを感じていることが分かっています[1]

「ストレス」といっても一概にくくることはできません。ストレスの原因(ストレッサー)には、大きく分けて以下の3種類があります[2]

(1)「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)
(2)「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)
(3)「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)

このうち、企業の従業員が感じているストレスの多くは、(3)「心理・社会的ストレッサー」です。ストレッサーがあると、従業員の心理面、身体面、行動面でストレス反応が起きます。

従業員にストレス反応が起こると、従業員自身のパフォーマンスが落ちるばかりか、周りへの影響も発生します。しかし、従業員がストレスマネジメントをできるようになると、各自がストレスを感じたときに、どのように対処していけばよいかを考えられるようになります。

対処法の代表的なものは、「ストレスコーピング」と呼ばれる手法です。ストレスコーピングには、原因自体に働きかける方法と、ストレスの感じ方を調整する方法がありますが、第3章で詳しく解説します。

今や、メンタルヘルス上の理由により休業する人も多い時代です。従業員任せにせず、企業側が積極的に、ストレスマネジメントの効果的な方法を教育していく必要があります。

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2. ストレスマネジメントが企業にもたらすメリット

ストレスマネジメントを行うことで、企業が得られるメリットには以下のようなものがあります。

・休職・退職を防ぐことができる
・従業員のパフォーマンス低下を防ぐことができる
・ハラスメントが起こりにくい企業風土になる
・従業員のモチベーション向上に役立つ

休職・退職を防ぐことができる

従業員の休職や退職は、企業にとって大きな損失です。適切なストレスマネジメントを行うことは、従業員の離職を防ぎ、企業にとって必要な人材を確保することにつながります。

従業員のパフォーマンス低下を防ぐことができる

ストレス状態が続くと、仕事でミスをしたり、処理するのに時間がかかったりと、十分なパフォーマンスが発揮できなくなってしまいます。また、精神的に余裕がなくなることで職場の雰囲気が悪くなってしまい、他の従業員に影響を及ぼす可能性もあります。

従業員に十分なパフォーマンスを発揮してもらうためには、ストレスを抱えている本人だけでなく、周りにストレスを連鎖させないよう、ストレスマネジメントが必要です。

ハラスメントが起こりにくい企業風土になる

ストレスマネジメントの教育では、ストレス状態を引き起こしやすい具体的な状況、原因についても学びます。そのため、従業員が「こうした言動はハラスメントになって、相手にストレスを与えることがあるんだ」と気付くきっかけになります。

また、パワハラやセクハラといったハラスメントが起こる背景には、「この程度の仕事はできて当然」「男性/女性だから〇〇すべき」といった固定概念や価値観の押し付けがあります。

後述する「ストレスコーピング」では、物事の感じ方・考え方を変える対処法があります。この方法は、セルフケアとして実践していく中で「相手にはこのような事情があるかもしれない」と、多角的に物事を考える力が身に付き、ハラスメントの予防にも効果的です。

このように、ストレスマネジメントを通じて、従業員全体でハラスメントに対する意識が高まれば、ハラスメントの起こりにくい企業風土をつくることができるでしょう。

従業員のモチベーション向上に役立つ

企業がストレスマネジメントに取り組むことは、従業員にとってのモチベーション向上につながります。たとえストレスを感じることがあっても、周りの協力によって問題が解決すれば、従業員は企業に対し信頼感や愛着を持つでしょう。

従業員のモチベーションが高まれば、意見や提案が積極的に出されるといったイノベーションが起きやすい風土が生まれ、企業の成長にもつながります。

以上、4つのメリットを紹介しました。

ストレスマネジメントを行うことは、リスク対策だけでなく、従業員と企業との絆を深めたり、企業を成長させるきっかけになったりします。こういったメリットを念頭に置いて、ストレスマネジメント施策に取り組んでいきましょう。


3. 企業が取り組むべきストレスマネジメント施策のポイント

企業がストレスマネジメントを行う際には、以下のポイントを意識すると効果的です。

3-1. 【point1】従業員のストレス状態を把握する

ストレスマネジメントを行うには、まずは従業員のストレス状態を正しく把握しておく必要があります。そのために、以下の2つを行うようにしましょう。

・ストレスチェックの実施
・ストレスチェックを活用して集団分析を行う

ストレスチェックの実施

「ストレスチェック」は、ストレスレベルを測るためのテストです。自分のストレスがどのような状態にあるのかを調べる簡単な検査で、2015年12月から、従業員が50人以上いる事業所で年に1回実施することが義務付けられました[3]

ストレスチェックの一番の目的は、従業員が自分のストレスについて知ることです。個人結果は本人の同意を得ずに企業側に公開されることはなく、原則として実施者から本人に直接通知されます。

よって、「上司に知られるのではないか」といった心配をする必要はなく、自身のストレスレベルを正確に把握し、確実なセルフケアにつなぐことができます。

厚生労働省は、ストレスチェックが実施できる「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で公開しています。受検だけでなく、集団分析や個人結果の出力などにも使えるので、ぜひ活用しましょう。

参考)
厚生労働省「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」,https://stresscheck.mhlw.go.jp/(閲覧日:2022年1月 31日)

ストレスチェックを活用して集団分析を行う

ストレスチェックの結果は、年齢や所属部署などの一定のまとまりに分けて集団分析を行うこともできます。

集団分析は努力義務ですが、ストレスチェックの結果を活用してPDCAサイクルを回すことで、ストレスマネジメントに大いに役立つでしょう。

集団分析の活用法や事例については、厚生労働省のホームページを参考にしてみてください。

参考)
厚生労働省「管理職向けストレスチェック関連情報」,https://stresscheck.mhlw.go.jp/materialkanri.html(閲覧日:2022年1月 31日)

3-2. 【point2】従業員自身のストレスマネジメントスキルを高める

ストレスマネジメントの基本は、従業員自身によるセルフケアです。セルフケアをしっかり行ってもらうために、以下のような手法を実践してみましょう。

・ストレスコーピングの教育
・ストレス解消の手法を増やす
・ストレスマネジメントが行いやすい環境を整える

ストレスコーピングの教育

ストレッサーにうまく対応しようとすることを「ストレスコーピング[4]」と呼び、厚生労働省では「問題焦点コーピング」と「情動焦点コーピング」の2種類に分けられるとしています。

(1)問題焦点コーピング

問題焦点コーピングは、ストレスの原因に直接働きかけて解決を図る方法です。例えば、以下のようなものが挙げられます。

人間関係のストレスの場合……相手と話し合ってみる、「こんな事を言われる/されると悲しい」「こういう風に接してほしい」など自分の気持ちを伝えてみる

 

仕事内容がストレスになっている場合……業務が多すぎるなら上司に相談して業務の割り振りを見直してもらう、スキルが足りないなら勉強してスキルアップする

問題の本質に直接アプローチするため、少し勇気がいるかもしれませんが、その分効果的な方法でもあります。

(2)情動焦点コーピング

情動焦点コーピングは、ストレスに対して受け手の考え方、感じ方を変えてみる方法です。問題焦点コーピングと同じストレスの場合、以下のようになります。

人間関係のストレスの場合……「相手がいつも怒っているのは、職場以外に原因があるのかもしれない」「感情が上手に表現できなくて大変そうだ」などと考えてみる

 

仕事内容がストレスになっている場合……「この仕事ができるようになれば、自分はその分成長できる」「目標のためにはこの経験も必要だ」などと考える

情動焦点コーピングは、問題焦点コーピングを行うのが難しい場合にも有効です。また、自分自身の思考の癖に気付きやすくなるため、ストレスを生みにくい思考力も身に付きます。

ストレスコーピングの教育は、このような手法を広めることによって行います。外部による研修プログラムも多数存在するので、そういったプログラムの受講を促すのもよいでしょう。

また、新入社員研修の一環としてストレスコーピング教育を取り入れ、若手のうちからストレスコーピングを習慣付けておくことも効果的です。

ストレス解消の手法を増やす

ストレスマネジメントでは、ストレスに合わせた対処法を行うことが重要です。前述したストレスコーピングだけでは十分な対応ができないと感じたら、自分なりのストレス解消法を行って気晴らしをしましょう。

例えば、身近な人に悩みを相談してアドバイスをもらったり、つらい気持ちに共感してもらったりすることも効果的です。また、運動やリラクゼーションで体をリフレッシュすることで、ストレスが解消されることもあります。

ストレス解消法は、選択肢が多ければ多いほどストレスとうまく付き合えるようになります。下記のように、自分なりのストレス解消リストを作成してみましょう。

ストレス解消リストの例
・友達に話を聞いてもらう
・カラオケに行く
・おいしいものを食べる
・ゲームや読書など、一人で趣味に没頭できる時間を過ごす
・たくさん寝る
・趣味のテニスサークルに参加する
・ヨガをする
・旅行に行く
・岩盤浴に行く
etc……

実際にストレスマネジメントの研修やワークショップなどで、こうしたストレス解消法を100個ほど挙げてリストを作成し、常に持ち歩く方法が指導されることもあります。

ストレス解消リストを作るときに大切なのは、「一般的に」ではなく「自分が」心地良いと感じる点です。また、選択肢の中から1つを選ぶのではなく、いくつかを組み合わせて使えばよいことも覚えておきましょう。

ストレスマネジメントが行いやすい環境を整える

従業員のストレスマネジメントは、企業側からもサポートすることができます。

まずは社内で、ストレスマネジメントに関する教育の機会をつくりましょう。新入社員研修のプログラムに組み込んだり、外部の講師を招いてセミナーを開催したりするのも効果的です。

全従業員にストレスマネジメントの教育を行いたい場合は、e-ラーニングもおすすめです。e-ラーニングは、従業員が自分の都合の良いタイミングで、同じ内容を同じレベルで学ぶことができる点がメリットです。

参考)
株式会社ライトワークス「職場のメンタルヘルス(セルフケア編)」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/470(閲覧日:2022年1月28日)
株式会社ライトワークス「折れない心をつくる レジリエンス」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/7365(閲覧日:2022年3月4日)

また、福利厚生によってストレスマネジメントを行いやすい環境づくりを行うのも効果的です。例としては、スポーツクラブやジムの従業員割引を取り入れる、リフレッシュ休暇を与える、企業がカウンセリングサービスと提携する、などが挙げられます。

このような福利厚生でストレスマネジメントを促進する場合、制度を設けるだけではなく、従業員に対して利用のハードルを下げることも重要です。

例えば、リフレッシュ休暇の利用を義務化する、ポイントを付与してメンタルケアに使えるサービスの利用を促すといったサポートがあると、従業員も気軽にストレスマネジメントを行いやすくなるでしょう。

3-3. 【point3】管理職が部下のストレスマネジメントをサポートできるようにする

管理職は、部下のストレス状態にいち早く気付いて対応することで、早期発見・ケアにつなげることができます。管理職の立場から効果的にサポートを行うには、以下のような方法があります。

・定期的なコミュニケーションを実施し、変化に気付く
・部下のストレスコーピングを補佐する
・ラインケアを学ぶ

定期的なコミュニケーションを実施し、変化に気付く

管理職は、部下のストレスによる変化に気付き、早めに対処することが大切です。ストレスによる変化としては、例えば以下のようなものが挙げられます[5]

「いつもと違う」部下の様子
・遅刻、早退、欠勤が増える
・休みの連絡がない(無断欠勤がある)
・残業、休日出勤が不釣合いに増える
・仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
・業務の結果がなかなかでてこない
・報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
・表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
・不自然な言動が目立つ
・ミスや事故が目立つ
・服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

週に1度1on1ミーティングを実施する、違和感に気付いたら声を掛けるなどして、変化に気付けるようアンテナを張っておきましょう。

参考)
株式会社ライトワークス「部下を育て組織を強くする 1on1ミーティング」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/5716(閲覧日:2022年3月4日)

部下のストレスコーピングを補佐する

管理職は、部下のストレスコーピングをサポートすることができます。

例えばストレスの原因に直接アプローチする問題焦点コーピングでは、業務量を調整したり、配置を見直したり、相手との間に入って話し合いを行ったり、といった協力が可能です。

また、考え方を変える情動焦点コーピングでは、部下の話を傾聴して感情の整理を促したり、認知のゆがみを修正したり、といった役割を果たすことができます。

管理職は部下とのコミュニケーションでストレス状態を把握し、必要に応じてコーピングの補佐を行うよう心掛けましょう。

ラインケアを学ぶ

部下のストレスマネジメントを補佐するには、管理職が部下に対して行う「ラインケア」を学ぶと効果的です。ラインケアは管理職向けの研修プログラムに組み込まれているケースもありますが、eラーニングでも学ぶことができます。

参考)
株式会社ライトワークス「職場のメンタルヘルス(ラインケア編)」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/469(閲覧日:2022年1月28日)

また、傾聴といったラインケアを行う上で重要になるコミュニケーションスキルをさらに深く掘り下げて学べば、より効果的にストレスマネジメントをサポートできるでしょう。

参考)
株式会社ライトワークス「ビジネスを円滑に進めるためのコミュニケーション」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/10655(閲覧日:2022年2月16日)

3-4. 【point4】専門家のサポート体制を整える

従業員がストレスチェックで高ストレス状態と判定された場合や、メンタルヘルスに明らかな不調が見られる場合、産業医や保健師などの専門家への相談につなげる必要があります。

専門家からサポートを受ける場合、以下のような選択肢があります。

・社内の専門家からサポートを受ける
・社外の専門家からサポートを受ける

社内の専門家からサポートを受ける

産業医や保健師といった社内の専門家は、セルフケアやラインケアの推進、外部機関との窓口、復職支援など、ストレスマネジメントにおける中心かつ重要な役割を果たしています。

ストレスチェックの結果を受けての面談、メンタルヘルスに関する相談なども、基本的に提携している産業医や保健師が行います。

ストレスマネジメントをより強化するには、産業医や保健師を常駐させて定期的に面談の機会を持つ、専任のカウンセラーを雇うなど、社内の専門家を増やしてサポートの機会を多くすることも効果的です。

社外の専門家からサポートを受ける

社外の専門家とは、主にメンタルヘルス不調の従業員に休職が必要かどうか、復職が可能かどうかといった診断や復職支援の際に連携が必要です。社外の専門家にサポートを受ける際は、社内の専門家とも連携しながら行います。

社外の専門家と連携することは、社内に専任の専門家を置くよりもコストがかからない、社内の人に知られたくない悩みを相談できる、といったメリットがあります。

ストレスマネジメントは、主に社内の専門家が計画・指導を行います。ストレスマネジメントを実施する中で問題が発生したときは、社内の専門家に相談し、必要であれば社外の専門家の力も借りるようにしましょう。


4. 要注意!管理職自身にもストレスマネジメントの対策を

どちらかといえばストレスマネジメントを「主導する側」と考えられる管理職ですが、実は管理職に多い40~49歳は、男女ともに最もストレスを抱えやすい年齢でもあります

業務上の責任が重くなる一方、家庭内でも子どもの進学や親の介護など、さまざまなストレス要因が重なりやすくなっているため、管理職自身にもストレスマネジメント対策が必要です。

管理職自身が行うストレスマネジメントとしては、以下のようなものが挙げられます。

・部下のストレス対策を積極的に行う
・アンガーマネジメントを学ぶ
・外部の専門家を利用する

部下のストレス対策を積極的に行う

管理職が注意したいのは、部下がストレス状態に陥ると、問題解決のために自身がストレスを抱えがちな点です。

そのため、日頃から部下とコミュニケーションを取って、職場環境を把握しておきましょう。ストレス要因になり得る業務の偏りを見直したり、無駄な作業を省いて効率化したりするなど、職場環境の改善を行うことで、ストレスを受けるリスクを減らすことができます。

部下のストレスの原因を早期発見対策することが、自分自身のストレスマネジメントにもなるのです。

アンガーマネジメントを学ぶ

管理職がストレスを感じやすい場面の一つが、「部下に注意するとき」ではないでしょうか。つい感情的になって怒鳴ってしまったり、パワハラと思われるような言動を取ってしまったりすることもあるかもしれません。

こういったストレス要因を減らすためには、アンガーマネジメントを学ぶことが効果的です。アンガーマネジメントでは、怒りが生まれやすい思考の癖に気付き、感情をうまくコントロールしたり、怒り以外の形で上手に気持ちを伝えたりすることを学びます。

アンガーマネジメントを学ぶには、研修eラーニングを活用する、書籍などを購入するといった方法があります。

参考)
株式会社ライトワークス「怒りをコントロールするアンガーマネジメント」,https://www.lightworks.co.jp/e-learning/7202(閲覧日:2022年2月14日)

外部の専門家を利用する

管理職になると、立場上どうしても身近な人には悩みを相談しづらい、と感じる人も多いようです。第三者である外部の専門家と提携し、定期的に管理職向けの面談やカウンセリングを行うのも有効でしょう。

専門家との面談では、あえてオフィス内で面談することを避けたり、電話やオンラインで相談したりするなど、管理職が話しやすいように配慮してくれるケースもあります。

このように、管理職自身のストレスマネジメントには、ストレスにつながりそうな要因を減らしたり、ストレスを抱えた際の相談先を確保したりするといった方法があります。管理職の方こそ、積極的にストレスマネジメントを行って自分自身をいたわり、部下やチームに気を配る余裕を持っておきましょう。


5. 【事例】ストレスマネジメントを成功させた企業の事例

最後に、ストレスマネジメントを成功させている企業の事例をご紹介します。自社でストレスマネジメントをサポートする際の参考にしてみましょう。

5-1. 事例1:ヤフー株式会社

情報通信業大手のヤフー株式会社では、上司と部下が最低でも週1回面談をする「1on1」という制度を設けています。

定期的に面談の機会を設けることで、上司は業務だけでなく、部下の体調の変化についても早期に把握することができます。そのため、面談をきっかけに産業保健スタッフにつながる事例が増えたそうです。

また、従業員6,696人(2018年6月末現在)[6]の企業全体に対し、産業医9人、保健師など看護職6人が勤務しており、社内の専門スタッフが充実しているのも特徴です。

社内相談窓口ではメールでの相談の他、WEB予約で対面相談を行うなど、気軽に相談できる体制が整っています。

5-2. 事例2:ボッシュ株式会社

ボッシュ株式会社では、新入社員だけでなく中途入社の従業員に対しても、オリエンテーションの際にセルフケア研修を実施しています。

また、eラーニングやオンラインでの相談対応を活用し、全国各地の営業所ストレスマネジメントが行えるようにしています。

過去には、ストレスチェックで高ストレスと判定されていても、医師の面接指導を受ける人が非常に少なかったそうです。しかし、前段階として社内の看護職やカウンセラーによる面談を行うことで、面談の希望者が増加しました。

研修で従業員が自身のストレスに対する意識を高め、企業側は必要なサポートを受けやすいように環境を整えて、成果に結びついている例です。

5-3. 事例3:サンデン・ビジネスアソシエイト株式会社

サンデン・ビジネスアソシエイト株式会社では、ストレスチェックの結果を生かして職場環境の改善を行っています。

例えば、ストレス値が高い部署からの「仕事中緊迫しているので、靴を脱いでゆっくりくつろげる休憩スペースが欲しい」といった要望を受けて、部署の一角に休憩スペースを設けました。

また、開発部門では社内の重要な業務を担っているため、非常に忙しく、また仕事の負担改善も難しい状況でした。この部署には窓がなかったため、天井に空の壁紙を貼る、小さなカフェコーナーを作るなどの工夫を行いました。

こういった取り組みにより、仕事内容は大変であっても従業員のモチベーションが維持され、ストレスチェックの結果も良好になりました。特に、「上司のサポート」の項目が良い結果になったとのことです。

ここまで、3つの事例を紹介しました。いずれも、従業員教育や仕組み化によって、ストレスマネジメントを上手にサポートしています。ぜひ参考にしてください。

「職場のメンタルヘルス」をeラーニングで社員教育

eラーニング教材:職場のメンタルヘルス(ラインケア編)

職場のメンタルヘルスについて正しい知識と対応方法を身につける

この記事のとおり、職場環境によってストレスを感じ、それがメンタル不調として業務に支障をきたす人が増えています。企業は社員の「心の病」や「自殺」を予防する必要があり、「メンタルヘルス」への取り組みが強く求められています。
本教材では、メンタルヘルスの重要性と社会的背景を学習し、組織マネジメントにおける当領域についての知識や対策を身に付けることができます。

本教材をeラーニングとして配信することで、効率的に「職場のメンタルヘルス」の社員教育をすることが可能です。


6. まとめ

ストレスマネジメントとは、ストレスと上手に付き合い、適切な対処を行っていくことです。

ストレスの原因(ストレッサー)には、大きく分けて以下の3種類があります。

(1)「物理的ストレッサー」(暑さや寒さ、騒音や混雑など)
(2)「化学的ストレッサー」(公害物質、薬物、酸素欠乏・過剰、一酸化炭素など)
(3)「心理・社会的ストレッサー」(人間関係や仕事上の問題、家庭の問題など)

このうち、企業の従業員のストレスの多くは(3)「心理・社会的ストレッサー」です。ストレッサーがあると、従業員の心理面、身体面、行動面でストレス反応が起き、パフォーマンスの低下や周りへの影響が発生します。

企業がストレスマネジメントを行うメリットとしては、従業員の休職や退職、パフォーマンス低下を防ぐ他、ハラスメントの抑制従業員のモチベーション向上などが挙げられます。

企業にとってストレスマネジメントは、リスク対策だけでなく、人材教育といった成長戦略の一環としても必要な手段なのです。

ストレスマネジメントを行う際には、以下の4つのポイントを押さえることが重要です。

【point1】従業員のストレス状態を把握する
【point2】従業員自身のストレスマネジメントスキルを高める
【point3】管理職が部下のストレスマネジメントをサポートできるようにする
【point4】専門家のサポート体制を整える

【point1】では、ストレスチェックの結果を活用して個人、集団のストレス状態を把握します。

【point2】では、ストレスマネジメントの対処法として代表的なストレスコーピングを中心に、従業員自身のセルフケアをサポートします。

ストレスコーピングには、原因自体に働きかける方法と、ストレスの感じ方を調整する方法があります。この他にも、自分なりのストレス解消法を多くストックして使い分けることで、ストレスへの対処がうまくできるようになります。

e-ラーニングや福利厚生など、企業ができる方法でセルフケアをサポートすることも必要です。

【point3】では、管理職が早期に部下のストレス状態に気付き、必要な対処を行えるようにします。

定期的にコミュケーションを取り、必要であれば部下のストレスコーピングを補佐するのも管理職の役割の一つです。また、ラインケアについて学んだり、コミュケーションスキルを高めたりすることもストレスマネジメントのサポートに役立ちます。

【point4】では、社内・社外の専門家を活用し、ストレスマネジメントの方針を決めたり、深刻なストレス状態になったときに相談できる体制を整えたりします。

また、気を付けておきたいのがストレスマネジメントを行う側である管理職自身のストレスマネジメントについてです。管理職に多い40~49歳はストレスが多い年齢層かつ、周りに悩みを相談しづらい人も多いため、ストレスリスクが高いといえます。以下のような対策を積極的に行うようにしましょう。

・部下のストレス対策を積極的に行う
・アンガーマネジメントを学ぶ
・外部の専門家を利用する

ストレスマネジメントを成功させている企業の事例では、3社をご紹介しました。

ヤフー株式会社では、上司と部下が最低でも週1回1on1ミーティングを行っています。面談をきっかけにメンタルヘルス不調者を早期発見し、専門家のサポートにつなげるケースが増えたという事例です。

ボッシュ株式会社では、ストレスチェックで高ストレスと診断されても、医師の面接指導を受ける人が少ないことが課題でした。このケースでは、前段階として社内の看護職やカウンセラーとの面談を行ったことで、面談を希望する従業員が増加しています。

サンデン・ビジネスアソシエイト株式会社では、仕事の負担を減らすことが難しかったため、休憩スペースやカフェコーナーを設けるなど、少しでもリフレッシュできるよう職場環境を整えました。その後ストレスチェックの結果が良好になり、従業員のモチベーション維持にも効果がありました。

このように、ストレスマネジメントにはさまざまな手法があります。ストレスマネジメントの主体はあくまで個人ですが、企業は管理職や専門家の相談体制を整えたり、ストレス解消のためのサポートを行ったりすることができます。

企業側のサポートで従業員のストレスマネジメントを質の高いものにし、ストレスに負けず、共に成長していける関係を築きましょう。本稿が、その一助になれば幸いです。

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[1]厚生労働省「改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」,https://www.mhlw.go.jp/content/000561014.pdf(閲覧日:2022年1月28日)
[2] 厚生労働省「ストレスとは」,『こころの耳』,https://kokoro.mhlw.go.jp/nowhow/nh001/(閲覧日:2022年3月3日)
[3] 厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150709-1.pdf(閲覧日:2022年3月3日)
[4]厚生労働省「ストレスコーピング」,『e-ヘルスネット』, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-068.html(閲覧日:2022年1月29日)
[5]厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」,p16,https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000153859.pdf(閲覧日:2022年1月 31日)
[6] 厚生労働省「ヤフー株式会社(東京都千代田区)」,『こころの耳』,https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp051/(閲覧日:2022年3月3日)

参考)
厚生労働省「ストレスマネジメント(すとれすまねじめんと)」,『e-ヘルスネット[情報提供]』,https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/tobacco/yt-049.html(閲覧日:2022年3月4日)
NHK「NHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」第2回内容」,『NHK』,https://www.nhk.or.jp/special/stress/02.html(閲覧日:2022年2月16日)
厚生労働省「ボッシュ株式会社(東京都渋谷区)」,『こころの耳』,https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp087/(閲覧日:2022年3月4日)
厚生労働省「サンデン・ビジネスアソシエイト株式会社(群馬県伊勢崎市)」,『こころの耳』,https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp097/(閲覧日:2022年3月4日)

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