「従業員を守るために、カスハラについてもっと知りたい」
セクハラやパワハラなどのさまざまなハラスメントが社会問題となる中、顧客からのハラスメント行為「カスハラ(カスタマーハラスメント)」が問題視されています。
2021年に交運労協が行った調査[1]によると、交通運輸、観光サービス業に従事する所属組合員のうち、直近2年以内に利用者等からの迷惑行為の被害に遭ったと回答した人は半数近くの46.6%でした。
加えて、直近2年以内で迷惑行為が増えていると回答した人は57.1%と半数を超えています。
顧客からの中傷や暴力により従業員の心身の健康が損なわれると、パフォーマンスが低下するだけでなく、休職・離職まで追い込まれてしまう場合があります。
さらに、適切なカスハラ対策を行わなかったために従業員が被害を受けたとなれば、企業が責任を問われることもあります。従業員を守るため、また、企業を守るためにも、カスハラ対策は必須なのです。
本稿では、カスハラとはどのような行為なのか解説し、発生状況やクレームとの違いなど詳しく解説します。
さらに、カスハラ対策をしないリスクや企業が行うべきカスハラ対策も紹介するので、カスハラ対策の強化を検討している方はぜひご参考ください。
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目次
1. カスハラ(カスタマーハラスメント)とは?
カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略称で、顧客や取引先によるハラスメント行為を言います。本章では、カスハラの定義や概要などを解説します。
1-1. カスハラ(カスタマーハラスメント)の定義
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為を指します。
厚生労働省が発行している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」[2]では、以下のように定義されています。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
つまり、顧客や取引先から受けたクレームなどのうち、不当なものや業務を妨害するほど悪質なものがカスハラにあたるということです。
かつて企業は「お客様は神様」という意識で顧客対応を行っていました。しかしカスハラが原因で従業員の心身の不調や離職などを招くケースも多く、企業にはカスハラに対する適切な対処が求められています。
1-2. カスハラに該当する行為の例
先述の厚生労働省のカスハラ対策マニュアルでは、以下のような行為がカスハラに該当するとされています。
- 暴行や傷害などの身体的な攻撃
- 脅迫や暴言、中傷などの精神的な攻撃
- 土下座の強要
- 居座りや監禁などの拘束的行為
- 不当な言動(威圧的、差別的、性的)
- 従業員個人への攻撃・要求
また、以下の要求行為は、妥当性によってカスハラに該当する場合があるとされています。
- 商品交換
- 金銭補償
- 謝罪(土下座を除く)
同マニュアルには、顧客と接する機会が多い小売、運輸、飲食サービス、宿泊などの業種の企業が実際に受けた具体的なカスハラの事例が挙げられています。以下に一部をご紹介します。
- 頻繁に来店しその度にクレームを入れる
- 大声・暴言で執拗にオペレーターを責める
- 同じ質問を繰り返し、対応のミスが出たところを責める
- SNSやマスコミへの暴露をほのめかした脅し
- 入手困難な商品の過剰要求
- 難癖をつけたキャンセル料の未払い・代金の返金要求
- 特定の従業員へのつきまとい
正当な理由がないにもかかわらず過剰な要求をしたり、対応者の揚げ足を取ったりという事案が多いようです。
このようなカスハラが度を超すと、暴行罪、脅迫罪、強要罪、侮辱罪、業務妨害罪、不退去罪など、刑法の犯罪に該当する可能性があります。
1-3. カスハラは企業間でも発生する
カスハラは顧客からのハラスメント行為というイメージがありますが、企業間でも発生します。
たとえば「無理難題に対応させられた」「取引先から誹謗中傷を受けた」「性的な対応を要求された」などがあります。
こうした不当な要求などがあっても、取引解消を恐れて受け入れてしまうケースは少なくありません。
これまで、優越的な立場を利用して取引先に不当な要求を行う事例は、公正取引委員会などによって規制や是正がされてきました。
しかし今後は、同様の事例や、より軽い事例もカスハラと見なされ、ステークホルダーから「コンプライアンスに問題がある」と判断される可能性があります。
従業員にカスハラを受けた場合の対応を学んでもらうと同時に、取引先にカスハラをしないように指導することも重要です。
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2. カスハラ(カスタマーハラスメント)の現状と背景
日本において、カスハラはどのくらい発生しているのでしょうか。また、その背景にはどのような原因があるのでしょうか。
本章では、日本のカスハラの現状と背景をひもときます。
2-1. 日本におけるカスハラの発生状況
カスハラの被害は増加傾向にあります。
2021年に交運労協が行った調査[3]によると、交通運輸、観光サービス業に従事する所属組合員のうち、直近2年以内に利用者等からの迷惑行為の被害に遭ったと回答したのは半数近くの46.6%でした。
加えて、直近2年以内で迷惑行為が増えていると回答した人は57.1%と半数を超えています。
また、日本労働組合総連合会が2022年12月に公表した、自身もしくは職場の人がカスハラを受けたことがあるという1000人を対象にした調査[4]では、受けたことのあるカスハラ行為の上位は以下のようになっています。
- 暴言:55.3%
- 説教などの権威的な態度:46.7%
- 同じクレーム内容の執拗な繰り返し:32.4%
- 威嚇・脅迫:31.9%
- 勤務先への不当な苦情、投稿:23.9%
男女別の結果を見てみると「セクハラ行為」を受けた女性は16.6%となっており、男性の3.1%よりも10ポイント以上高くなっています。
このようにカスハラの被害が広がりつつあり、企業には迅速な対応が求められています。
2-2. なぜカスハラが発生するのか
カスハラが発生する要因は多岐にわたりますが、大きな要因として以下の二つが挙げられます。
- スマートフォンの普及
- さまざまなハラスメントの表面化
スマーフォンの普及
まず挙げられるのは、スマートフォンの普及です。
消費者はSNSやブログ、口コミサイトなどで気軽に情報を発信できるようになり、クレーム対応中の従業員を撮影した動画や写真などをアップロードする人々が現れました。投稿された動画や写真は、その場にいない人々にも拡散されてしまいます。
スマートフォンの普及によって、消費者の発言力や誤った権利意識が高まり、軽々しく誹謗中傷を行いやすい環境が出来てしまったのです。
さまざまなハラスメントの表面化
多様なハラスメントが問題視されるようになったことも影響しているでしょう。
以前から顧客によるハラスメントはありましたが、顧客対応の範疇とされ、公にされることがありませんでした。
しかしセクハラ・パワハラをはじめとした多様なハラスメントが社会的な問題となり、カスハラも世間から注目を浴びるようになったのです。
このように、日本ではスマートフォンの普及やさまざまなハラスメントの表面化により、カスハラが問題となっています。
3. カスハラ(カスタマーハラスメント)とクレームの境目は?
いざ顧客から苦情を受けた際、カスハラなのかクレームなのか判断に迷うこともあるでしょう。
ここでは、カスハラとクレームの境目をどのように判断するか解説します。
3-1. カスハラとクレームの違い
英語のクレーム(Claim)は「要求」「主張」といった意味で訳されます。
日本では「苦情」という意味合いで使われることが多く見受けられます。しかし、商品やサービスの改善要求などポジティブなクレームも存在します。
常識に照らして妥当なクレームには真摯に対応すべきでしょう。
一方、カスハラとは、先述の通り顧客からの著しい迷惑行為を言います。暴言・暴力などのほか、クレームのうち、悪質で妥当性がなかったり、社会通念上不当であったりするものはカスハラです。
カスハラには毅然とした態度で対応することが大切です。
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3-2. カスハラであると判断する基準
3-1.のカスハラとクレームの違いを踏まえると、カスハラを判断する基準として、以下の二つの視点が挙げられます。
・要求内容の妥当性
・手段・態様の社会通念上の相応性
たとえば、介護サービスを提供している顧客から、「○○さんと同じサービスを自分にも提供しろ」と執拗に要求されたとします。しかし、この顧客との契約上、○○さんと同じサービスは提供できません。
この場合、顧客が要求するサービスを提供できない理由は契約内容であり、企業側に過失はありません。契約外の執拗な要求は妥当性に欠けるため、カスハラと判断してよい例です。
そのほか、よくあるのは土下座の要求です。土下座は謝罪の手段として社会通念上の相応性がありません。
従業員を長時間拘束してのクレームも業務に支障が出るため、社会通念上の相応性に欠けると言えます。これらもカスハラと判断できます。
このように、二つの視点からカスハラかどうか判断しましょう。
3-3. カスハラの判断基準を定めるポイント
カスハラとクレームの区別は法令では定義されていないため、企業が判断基準を設ける必要があります。
前述の「要求内容の妥当性」と「手段・態様の社会通念上の相応性」の2点を意識して基準を設けておくと、現場で適切な対応ができるでしょう。
たとえば以下のような基準が考えられます。
- 正当な理由のある商品の返金は応じるが、理由のない慰謝料の請求や、高額すぎる迷惑料の請求などはカスハラとする
- クレームの電話はカスハラではないが、適切に説明や対応をしたにも関わらず長時間もしくは連日電話してくる場合はカスハラとする
なお、業種によっては、自社の商品・サービスに過失があるのか判断しにくく、クレームの悪質性を判断しかねる場合もあるでしょう。
また、顧客第一主義の企業文化である場合は、著しい暴言や脅迫ではない限りはカスハラとしない企業もあります。
そのため、自社の業種や企業文化などに応じてカスハラの判断基準を定めることが重要です。
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4. カスハラ(カスタマーハラスメント)対策をしないリスク
カスハラが社会的な問題となり、企業はカスハラ対策を行う必要に迫られています。カスハラ対策を怠るとどのようなリスクがあるのか解説します。
4-1. さまざまな問題の発生
カスハラを放置していると、以下のような問題が発生しかねません。
- 生産性の低下
- 従業員の休職・離職
- 業績の悪化
生産性の低下
カスハラの被害に遭った従業員は「私のせいでお客様を怒らせてしまった」などと思うようになり、自身の仕事に自信を持てなくなります。
また、暴言や脅迫などのストレスによりモチベーションが維持できず、パフォーマンスが下がってしまいます。
このようなカスハラの被害者が増えれば、企業全体の生産性低下につながりかねません。
従業員の休職・離職
カスハラを受けると多大な恐怖や悲しみなどの感情に襲われ、従業員は大きなストレスを感じます。
ストレスが原因となり心身の不調を招いて、休職や離職につながることもあります。休職者や離職者が多くなると社内の人手不足を引き起こし、業務に支障をきたす可能性も考えられます。
業績の悪化
カスハラ対策ができていないと世間に認知されると、「従業員を大切にしない会社」「顧客の言いなり」といった企業イメージが根付いてしまいます。
また、誹謗中傷を放置していると「あの会社の商品は不良品ばかりだ」「接客態度が悪い」など、事実に反する評価が広まることもあります。その結果、業績にも悪い影響が及びかねません。
このような問題が発生すると企業にとって大きな損失を招くため、適切なカスハラ対策が必要です。
4-2. 企業責任を問われるケースも
カスハラ対策を行っていないと、従業員がカスハラの被害を受けた際に企業責任を問われるケースもあります。
労働契約法第5条[5]では、使用者(企業側)に労働者の安全配慮義務が定められています。
カスハラ対策を怠ると、企業側は労働者が安全に働ける環境作りをしていないと判断され、法令違反とされる可能性があります。次章の5-4.も併せてご覧ください。
5. 企業のカスハラ(カスタマーハラスメント)に対する取り組みの義務は?
企業はカスハラによるさまざまなリスクを回避するため、適切なカスハラ対策を行う必要があります。
ここでは、カスハラ対策に関する厚生労働省の指針や法律について解説します。
5-1. カスハラを定めた法律はないが対策は必要
カスハラの定義や、カスハラに対する取り組み内容を定めた法律は、2023年6月15日現在で存在していません。
しかし、厚生労働省がカスハラ対応マニュアルやパワハラ指針を公表しており、企業に対策を促しています。また、従業員の安全を守るための法律もあります。
そのため、法律でカスハラ対策が義務付けられていないからと言って対策をしなくてよいということにはなりません。
5-2. 厚生労働省が「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表
厚生労働省は、企業が取り組むべきカスハラ対策の内容をとりまとめた「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しています。
基本的なカスハラの例や対応の仕方、カスハラ対策の重要性、カスハラ対策のポイントなどを知ることができます。
このマニュアルの作成にあたっては、顧客に接する機会の多い小売、運輸、飲食サービス業などの企業12社にヒアリングが行われており、実際のカスハラ例や対策の好事例も掲載されています。
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf(閲覧日:2023年5月29日)
5-3. 厚生労働省「パワハラ指針」でカスハラに言及
2022年6月1日から適用されているパワハラ指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」)は職場のパワーハラスメントに関する指針です。
この指針の中にはカスハラに言及している部分があります。カスハラを「顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)」と定義し、企業が行うべき対策として以下のような取り組みを示しています。
・相談先(上司など)の周知、相談対応者の教育
・悪質な顧客に一人で対応させないなど、カスハラ被害者への配慮
・カスハラ対応マニュアルの整備や研修の実施
この指針も参考に対策を考えると良いでしょう。
厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】」(パワハラ指針)
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf (閲覧日:2023年5月29日)
5-4. 労働契約法における「安全配慮義務」
労働契約法第5条では、使用者(企業側)が労働者の生命や身体などの安全を確保して働けるよう「安全配慮義務」が定められています。
たとえば、従業員が顧客からの誹謗中傷を受けた際、企業側がその事実を知りながら放置したことで、従業員が精神的な病にかかったとします。
企業側は、従業員を守るための適切なカスハラ対策を行っていないとされ、安全配慮義務に抵触すると考えられます。
こうした場合、カスハラの被害を受けた従業員に損害賠償請求をされる可能性があります。
e-GOV「労働契約法」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128 (閲覧日:2023年5月9日)
以上のように、カスハラ対策そのものを定めた法律は存在していないものの、厚生労働省がマニュアルや指針を公表しています。
さらに、適切な対策を行わなければ、労働契約法の安全配慮義務に違反する可能性があると覚えておきましょう。
6. 企業に求められるカスハラ(カスタマーハラスメント)対策
ここまで見てきたように、企業は適切なカスハラ対策を講じる必要があります。近年では、以下のようにカスハラ対策に取り組んでいる企業の事例も増えてきました。
・任天堂株式会社:カスハラがあれば交換・修理を断ることがあると「修理サービス規定/保証規定」に明示[6]
・freee株式会社:カスハラがあればサービスやサポートの提供を断る場合があると「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」に明示[7]
それでは、企業はどのような取り組みを行うと良いのでしょうか。具体的にどのような対策方法があるのか紹介します。
6-1. カスハラ対応の準備
万が一カスハラが発生した際、適切に対応できるよう組織体制を整えておくことが重要です。具体的には、以下のような取り組みを行うとよいでしょう。
- カスハラに関する研修の実施
- カスハラの判断基準の明確化と周知
- 相談窓口の設置
- 現場での初期対応のマニュアル作成
特に、研修の実施は効果的です。
日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」[8]では、カスハラの被害を受け「仕事をやめた・変えた」という人のうち、企業がカスハラ対応に関する研修を行っていたのは8.5%、研修を行っていなかったのは67.6%と、59ポイント以上の差がついています。
カスハラ対策の研修を受けた従業員が離職する割合は、受けていない従業員と比べて非常に小さいと言えるでしょう。
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6-2. カスハラが起こった後の対応
もしカスハラが発生してしまった後は、以下のような対応が必要です。
- 被害者のケア
- 警察や弁護士への相談
- 事例共有や勉強会などによる再発防止
これ以外にも、必要と思われるカスハラ対策の取り組みを従業員からヒアリングして追加していくとよいでしょう。
7. まとめ
カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為を言い、暴言・暴力のほか、土下座の強要や性的・差別的な言動も該当します。
セクハラやパワハラなどのさまざまなハラスメント行為が社会問題となる中でカスハラも問題視されており、カスハラの被害は増加傾向にあります。
日本労働組合総連合会が2022年12月に公表した調査結果では、調査回答者が受けたことのあるカスハラ行為の上位は以下のようになっています。
- 暴言:55.3%
- 説教などの権威的な態度:46.7%
- 同じクレーム内容の執拗な繰り返し32.4%
- 威嚇・脅迫:31.9%
- 勤務先への不当な苦情、投稿:23.9%
カスハラが増えている背景には、以下の要因があります。
- スマートフォンの普及
- さまざまなハラスメントの表面化
クレームとカスハラを区別する基準として、以下のポイントを意識しましょう。
- 要求内容の妥当性
- 手段・態様の社会通念上の相応性
この2点を基準に、自社に合った判断基準を設けておくことで、現場が混乱せずに対応できます。
カスハラ対策をしない場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
- 生産性の低下
- 従業員の休職・離職
- 業績の悪化
また、カスハラの定義や対策を定めた法律は2023年6月15日現在で存在しないものの、以下の資料や指針、法律によってカスハラ対策の必要性が示されています。
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」
- 厚生労働省「パワハラ指針」
- 労働契約法第5条「安全配慮義務」
カスハラ対策としては、以下のような方法が挙げられます。
カスハラ対応の準備
- カスハラに関する研修の実施
- カスハラの判断基準の明確化と周知
- 相談窓口の設置
- 現場での初期対応のマニュアル作成
カスハラが起こった後の対応
- 被害者のケア
- 警察や弁護士への相談
- 事例共有や勉強会などによる再発防止
カスハラが増加している今、こうした対策によって従業員の安全を守る必要性が高まっています。
この機会に、自社におけるカスハラとクレームの判断基準を確認し、カスハラ対策の内容を見直してみてはいかがでしょうか。
カスハラとはどういう意味ですか?
カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略称で、顧客・取引先からの著しい迷惑行為を言います。要求の内容に妥当性がなく、社会通念上の正当性がない手段・態様のものを指します。
カスハラの具体例は?
カスハラの具体例は、暴行や傷害などの身体的な攻撃、脅迫や暴言などの精神的な攻撃、土下座の強要、居座りや監禁などの拘束的行為、不当な言動(威圧的、差別的、性的)などの行為です。
カスハラの判断基準は?
カスハラとクレームの判断基準は「要求内容の妥当性」と「手段・態様の社会通念上の相応性」です。業種や企業文化などによって判断基準が異なるため、自社で独自の基準を設けておくことで、現場が混乱せず対応できます。
カスハラ 何罪?
度を超えたカスハラは、暴行罪、脅迫罪、強要罪、侮辱罪、業務妨害罪、不退去罪など、刑法の犯罪に該当します。また、企業がカスハラ対策を行っていない場合、従業員の心身の安全を確保できていないとして、労働契約法の「安全配慮義務」違反となる場合もあります。
[1] 交運労協「「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」レポート」, http://www.koun-itf.jp/publics/index/43/ (閲覧日:2023年5月29日)
[2] 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」,https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf (閲覧日:2023年4月16日)
[3] 交運労協「「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」レポート」, http://www.koun-itf.jp/publics/index/43/ (閲覧日:2023年5月29日)
[4] 日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」,https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf?32 (閲覧日:2023年4月16日)
[5] e-GOV「労働契約法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128 (閲覧日:2023年5月9日)
[6] 任天堂株式会社「修理サービス規程/保証規程」,https://www.nintendo.co.jp/support/repair/eula/repair_policy.html (閲覧日:2023年4月16日)
[7] freee株式会社「カスタマーハラスメントに対するfreeeの考え方」,https://corp.freee.co.jp/news/20230209freee_customer_harassment.html (閲覧日:2023年4月16日)
[8]日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」,https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf?32 (閲覧日:2023年5月25日)
参考)
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」,https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf(閲覧日:2023年4月18日)
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」,https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000783140.pdf(閲覧日:2023年4月18日)
日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」,https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20221216.pdf?32(閲覧日:2023年4月18日)
池内裕美「なぜ「カスタマーハラスメント」は起きるのか-心理的・社会的諸要因と具体的な対処法」,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkg/70/10/70_486/_pdf(閲覧日:2023年4月18日)
厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】」,https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000605661.pdf(閲覧日:2023年4月18日)
e-GOV「労働契約法」,https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=419AC0000000128 (閲覧日:2023年5月9日)
香川総合法律事務所「カスハラとは?カスタマーハラスメントとクレームの違いをわかりやすく図解」,『カスハラ対策相談ナビ』, https://customer-harassment.com/kasuhara-claim-distinction/(閲覧日:2023年4月18日)
ロア・ユナイテッド法律事務所「カスハラとは何か?会社が気をつけることは?」,https://www.loi.gr.jp/law/law_qa-3831/(閲覧日:2023年4月18日)
弁護士法人ALG&Associates「カスタマーハラスメント対応について解説」,『弁護士による企業経営に役立つ労働コラム』,https://xn--alg-li9dki71toh.com/column/customer-harassment/(閲覧日:2023年4月18日)
TOKYO MX+「SNSでカスハラ増…スマホ利用のモラルどう植え付ける?」,https://s.mxtv.jp/tokyomxplus/mx/article/202208010650/detail/(閲覧日:2023年5月23日)