メンタルヘルスとは、精神的な健康状態を指します。
社会生活をしていれば何らかの精神的なストレスはあるものですが、 近年はスマホが普及し、インターネットがより身近になったこともあり、情報との付き合い方や人間関係が一昔前とは別の形で複雑になっています。
あふれかえる情報の中で自分を見失ってしまったり、SNSでたくさんの人とつながっていることに疲れてしまったりするなど、情報社会ゆえの精神的なストレスを感じる人が多くなってきました。
2013年に厚生労働省が発表した「第12次労働災害防止計画」[1]では、職場のメンタルヘルス対策が重点施策の1つとして掲げられており、国全体でメンタルヘルス対策に力が入れられるようになりました。
本稿ではメンタルヘルスとは何か、また、支障をきたす要因と対策の重要性について解説します。
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1. メンタルヘルスとは
メンタルヘルスとは、精神的な健康状態を意味します、「メンタルヘルス対策」や「メンタルヘルスケア」といった精神面のケアを指す言葉として、耳にしたことがある方も多いでしょう。
メンタルヘルスに悪影響を及ぼすものとして「ストレス、悩み、精神的な疲労」などが挙げられます。
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2. メンタルヘルスの悪化による影響
仕事には集中力が必須ですが、メンタルヘルスが悪化すると集中力や適正な判断力などが低下します。自分では大丈夫と思っていても、些細なミスが増え、それが積み重なって仕事に不安を抱いて、さらにストレスを抱えてしまうという悪循環に陥ることも考えられるでしょう。
また、過度にストレスが蓄積し、メンタルヘルス不調になってしまうと、下記のような精神疾患を患う可能性も高まります。
- うつ病
- 自律神経失調症
- 睡眠障害
- 摂食障害
- パニック障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- アルコール依存症
健康だった人が急に精神疾患を患い、仕事に来なくなって入院してしまうケースは決して他人事ではありません。どの程度ストレスを抱えているか、自分自身ではなかなか判断しにくいものです。
メンタルヘルスに悪影響を及ぼす要因の早期発見には、第三者の支援が必要です。企業には、従業員の精神的な疲労、ストレス、悩みなどの蓄積を軽減するサポートやメンタルヘルス対策が求められています。
3. メンタルヘルス不調の要因
メンタルヘルス不調の要因には、企業に対する不満や対人関係での悩み、成果主義による業務へのプレッシャーなどが考えられます。
業務内容や給与面などで、従業員が自分の適性や能力、成果に合っていないと感じることがあれば、企業への不満につながるでしょう。
対人関係での悩みは多くの職場で起こり得ることですが、パワハラ、セクハラなどのハラスメントも懸念されます。例えば「部下を必要以上の長時間にわたり、繰り返し叱責する」「不必要に体に触ったり、しつこく食事やデートに誘ったりする」などはハラスメント行為に該当します。
また、成果主義によるプレッシャーもあり得ます。周囲は結果を出している、自分はどうか?といった不安がストレスとなり、メンタルヘルスを低下させる要因となるのです。
このようなストレスは、たとえ一つ一つは些細な内容であっても、他のストレスを誘引したり、どんどん蓄積されていったりすることもあるため、早めのフォローや改善が重要です。時には業務内容や配置の変更、待遇の改善といった、組織的な対応が必要になることもあります。
4. メンタルヘルス不調への対策
厚労省では2015年12月より、従業員50人以上の事業所でストレスチェックを義務化しました 。従業員がどれだけストレスを抱えているか把握することと、個人にストレスの状況を気付かせること、そして結果的に従業員のメンタルヘルスが悪化するのを防ぐことが期待されています[2]。
メンタルヘルス不調への具体的な対策法を4つご紹介します[3]。
(1)セルフケア
メンタルヘルスを良好に保つには、従業員自身がストレスやメンタルヘルスの正しい知識を得て、セルフチェックを行い、自身のストレスの状況を把握して改善・解消のための行動を取れることが重要です。
企業はそれをサポートするために、研修を実施したり、学習機会を提供したりすることが求められます。
(2)ラインケア
マネージャーなどの管理監督者が、部下に対して行うメンタルヘルス対策です。例えば、以下の取り組みが挙げられます。
- 職場環境などの把握と改善
- 従業員から相談対応
- 職場復帰への支援
(3)職場内産業保険スタッフなどによるケア
社内の産業医や保健師、人事労務管理者などが行うメンタルヘルス対策です。セルフケアおよびラインケアが効果的に実施されるよう、管理監督者を含め従業員のサポートを行います。
その他、メンタルヘルスケアの実施に関する企画を立案したり、社外の専門機関と連携を図ったりすることも職場内産業保険スタッフなどによるケアに含まれます。
(4)事業外資源によるケア
都道府県産業保健総合支援センターや医療機関など、社外の専門機関を活用して行うメンタルヘルス対策です。
専門的な知識や情報が必要な場合や、従業員が職場内での相談を希望しない場合などでは、社外の専門機関から必要な情報提供や助言を受けるなど、社内外で連携して対応する必要があります。スムーズに連携が取れるよう、事前にネットワークを形成しておくとよいでしょう。
メンタルヘルス対策は、不調になる前に予防することが重要です。対応が後手になればなるほど、状況は複雑化し、回復に時間を要したり、精神疾患や事故を招き労働災害になったりする可能性が増します。
ストレスチェックを行い従業員のストレス状況を把握し、4つのメンタルヘルス対策を適宜行うことで、より効果的に予防できるでしょう。
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5. まとめ
メンタルヘルスとは、精神的な健康状態を指します。
従業員のメンタルヘルスの悪化は集中力やモチベーションを低下させ、結果として企業の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。企業は従業員が業務に集中できるよう、ストレスを軽減させなければなりません。
また、過度にストレスがたまってしまいメンタルヘルス不調に陥ると、以下のような精神疾患を患う可能性があります。
- うつ病
- 自律神経失調症
- 睡眠障害
- 摂食障害
- パニック障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- アルコール依存症
メンタルヘルス不調の要因には、企業に対する不満や対人関係での悩み、成果主義による業務へのプレッシャーなどが考えられます。
社会生活を送る上で、何らかのストレスは誰しもが抱えていることでしょう。それを就労後や休日で発散できている場合は問題ありませんが、ストレスを知らない内に抱え込み、自分でも気付かないほど深刻化しているケースも多く見られます。
ストレスチェックを行うことで企業と従業員がストレス状況を把握し、要因を探りながら積極的にフォロー、解決していくことが大切といえるでしょう。本稿では以下の4つの具体的なメンタルヘルスケア対策を紹介しました。
(1)セルフケア
(2)ラインケア
(3)職場内産業保険スタッフなどによるケア
(4)事業外資源によるケア
メンタルヘルス対策は国を挙げて行われています。その重要性を企業全体で認識していくことが大切です。
[1] 厚生労働省「第12次労働災害防止計画(平成25年度~29年度)」,https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei21/dl/12-pamph.pdf
[2] 厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」,http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/
[3] 厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」,https://www.mhlw.go.jp/content/000560416.pdf
参考)
http://kokoro.mhlw.go.jp/
http://www.japan-who.or.jp/event/2015/AUTO_UPDATE/1507-4.html
http://www.mana-biz.net/2017/06/post-219.php