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同一労働同一賃金とは メリットやデメリット、導入方法、事例を解説

同一労働同一賃金とは メリットやデメリット、導入方法、事例を解説

「同一労働同一賃金は格差是正につながるというが、具体的なイメージが持てない。何が課題で、どこから手を付ければよいのだろうか?」

2020年4月に大手企業から順次施行となった同一労働同一賃金は、これまでもたびたびメディアに取り上げられてきました。しかし、議論の内容が複雑で、自分自身との関わりはよく分からないという方も多いのではないでしょうか?

同じ労働に対して同じ賃金を支払うというこの考え方は、欧米では以前から広く浸透しています。一方日本では、終身雇用・年功序列といった日本型雇用システムによって、正社員の立場が強く守られてきました。

実際、欧米の非正社員の賃金は正社員の8~9割であるのに対し、日本では6割以下といわれており、正社員と非正社員の経済格差の広がりが問題となっています。

同一労働同一賃金の施行によって、日本はどのように変わり、企業はどのような対応を求められるのでしょうか。本稿では、同一労働同一賃金とは何か、具体的内容やメリット・デメリット、企業の対応について解説します。

ぜひ、参考にしてください。

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1. 先進国では当たり前! 同一労働同一賃金とは

同一労働同一賃金とは、事業主が守るべき雇用に関するルールの一つです。本制度の下では、雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしている従業員同じ水準の待遇でなければなりません。

例えば、正社員と非正社員[1]で業務内容や責任の範囲が同じ場合、賃金や福利厚生、教育訓練の実施も同じにする必要があります。

正当な理由なく、正社員と非正社員で基本給が2倍違う、正社員にのみ家族手当を支給している、正社員が受けている外部研修を非正社員は受けることができない、などは法律違反となる場合があります[2]

同一労働同一賃金制度はパートタイム・有期雇用労働法に基づき、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されます。

1-1. 同一労働同一賃金の目的・背景

同一労働同一賃金の目的は、正社員と非正社員の経済格差を是正することです。2017年現在、日本の労働者の約4割が非正社員であり、その内1割は家計を支える世帯主・単身者です。しかし、非正社員の賃金は正社員の6割弱にとどまります。

一方、同一労働同一賃金が普及しているドイツやフランスなど欧州各国では、非正社員であっても正社員の8~9割の賃金を得ることができます。

「雇用形態の違い(正社員か非正社員か)=所得の違い(経済格差)」とならないよう、日本もまずは非正社員の賃金を欧州同様、正社員の8割の水準に近付けることを制度の狙いとしています。

1-2. 同一労働同一賃金の内容

同一労働同一賃金制度の下では、以下の3点が企業に義務付けられます。

(1) 均等待遇

事業主は、従業員の雇用形態にかかわらず、職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)が同じ場合は待遇(賃金・福利厚生・教育訓練)も等しくしなければなりません。

例えば、同じ企業の同じ営業部で同じ職務に当たる正社員と契約社員がいたとしましょう。正社員には交通費を全額支給し、契約社員には一部のみ支給する、という状況は法律違反になります。

(2) 均衡待遇

事業主は、従業員の雇用形態にかかわらず、職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)が異なる場合は、その差分に見合った待遇(賃金・福利厚生・教育訓練)を用意しなければなりません。

例えば、同じ企業の同じ販売店に総合職の正社員と勤務地限定のパート社員がいたとしましょう。2人は同じ販売の仕事をしていますが、正社員はパート社員と比べてより求められる成果のレベルが高く、全国転勤もあります。

この場合、正社員に対してパート社員よりも高い基本給を支払っていても、法律違反にはなりません。責任の程度や配置転換の範囲に差があり、職務の違いに応じて賃金を支払っているためです。

ただし、職務は大きく変わらないのに賃金が5倍違うなど、職務と賃金のバランスが取れていない場合は、法律違反となる可能性があります。

(3) 待遇差の内容・理由に関する説明

事業主は、非正社員から求めがあった場合、正社員との待遇差について合理的な理由を説明しなければなりません。待遇差を説明する際には以下のような資料を活用しながら、口頭で具体的に説明することが基本です。

説明書モデル様式
~短時間・有期雇用労働者から説明を求められた場合~
説明書モデル様式 ~短時間・有期雇用労働者から説明を求められた場合~
(出典:厚生労働省 不合理な待遇差解消のための 点検・検討マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001010522.pdf

同一労働同一賃金のルールに違反した場合、現行の法律では罰則はありませんが、事業主に対して「勧告」「指導」が行われる可能性があります。また、勧告・指導後も改善が見られない場合は、企業名公表の対象となるため、企業はしっかりと順守することが大切です。

一方で、違反した場合は従業員から損害賠償請求(差額請求)を受ける可能性があります。実際、過去には裁判で不合理な待遇差が認められ、企業に損害賠償が命じられたケースもあります。

なお、同一労働同一賃金は行政ADR(裁判外紛争解決手続)の対象のため、万が一訴訟に発展した場合は無料・非公開での労使間交渉が可能です。

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2. 同一労働同一賃金の導入に伴う企業のメリット・デメリット

「企業に従業員の処遇改善を義務付けた」と聞くと、企業に対して一方的に負荷がかかるようにも思われる同一労働同一賃金ですが、実際に導入することでどのような影響があるのでしょうか。

ここでは、同一労働同一賃金の企業のメリット・デメリットをご紹介します。

2-1. 同一労働同一賃金のメリット

同一労働同一賃金を導入するメリットとしては、以下の三つが挙げられます。

(1) 非正社員の労働意欲アップ
(2) 人材不足の解消
(3) 非正社員の能力向上

(1) 非正社員の労働意欲アップ

同一労働同一賃金を導入すると、非正社員のモチベーションがアップします。待遇が改善されると、賃金に対する納得感が高まるからです。賃金に対する納得感は仕事・組織に対する納得感にもつながり、エンゲージメントの向上も期待できます。

(2) 人材不足の解消

同一労働同一賃金の導入で不合理な待遇格差が是正されると、正社員と非正社員のどちらであっても労働に見合った納得感のある賃金が得られるようになります。また、業務量や働く時間帯によって業務を分担できるようにもなります。

これにより、個人のライフスタイルに合わせた働き方を今まで以上に選択しやすくなるでしょう。

その結果、自社に必要なスキルを持つハイレベル人材や、結婚・出産・子育てなどで一線を退いていた主婦層など、求職者・未就労者の就職意欲を高め、雇用につなげることができます。また、離職防止・定着率アップも期待できます。

(3) 非正社員の能力向上

同一労働同一賃金で議論される待遇には、賃金や福利厚生の他に、教育訓練も含まれます。正社員と同じ教育訓練を受けることで、非正社員の知識やスキルレベル、生産性などの向上が期待できます。

2-2. 同一労働同一賃金のデメリット

同一労働同一賃金のデメリットとしては、以下の三つが挙げられます。

(1) 人件費の高騰
(2) 人事制度の見直し
(3) 待遇差についての説明責任

(1) 人件費の上昇

同一労働同一賃金の導入により、従業員一人一人に正当な賃金が支払われるようになると、人件費が高くなる可能性があります。

(2) 人事制度の見直し

正社員と非正社員の間に不合理な待遇差があった際、その待遇差をなくす手段として人事制度の見直しを行う場合があります。抜本的改革が必要な場合もあり、相応の時間・工数がかかります。

(3) 待遇差についての説明責任

同一労働同一賃金の導入後も正社員と非正社員で待遇差が残る場合、事業主は合理的な理由を説明・立証しなければなりません。立証が不十分の場合は賠償責任を問われる可能性もあるため、導入に当たっては入念な準備・対応が求められます。

2-3. メリットとデメリットのバランスをどう捉えるか 

このように、同一労働同一賃金の導入は、企業にとってはメリット・デメリットの双方があります。しかし、一度体制が整えば、格差の是正のみならず、健康経営の実現、エンゲージメントや生産性の向上、優秀な人材の確保などの効果が期待できます。

それは、一人一人の職務を精査し明確にすることで仕事を分配しやすくなったり、評価・処遇を適正化することで従業員のやる気や能力をアップさせたりできるからです。

実際、4章でご紹介する先行事例においても、同一労働同一賃金を取り入れた効果として、離職率の低下や従業員のパフォーマンスアップなどが報告されています。

パートタイムであっても、フルタイムと同等の責任ある仕事、高度な仕事ができる人、そしてそれを希望する人は一定数います。

例えば、やる気と能力があっても、育児や介護など時間的な制約があり、パートタイムでしか働けないという事情を抱える人々や、就職氷河期に正社員になれず、パートタイム枠でコツコツスキルアップしてきた人々などです。

こうした人々は、「パートタイム労働=安価で簡易的な仕事」「フルタイム労働=高価で高度な仕事」という既成概念で固定化されてしまった仕組みの中では、能力を十分に発揮できません。

そもそも従来日本企業には職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)を作成する習慣がなく、各職種や個人の職務内容や評価基準が曖昧な状態でビジネスが行われて来た事実があります。

基準がないと評価はできません。つまり、たとえ正社員と非正社員の間に不合理な待遇差があったとしても、それを主張するための確たる根拠がないことになります。一方、自分でも気付かないうちに既得権益を手に入れた正社員の方には不満は生まれにくいので、問題は顕在化しにくくなります。

結果、「なんとなくそういうもの」として社会に定着してしまったのです。

同一労働同一賃金の導入は、この「なんとなく」をなくし、「パートタイム労働=安価で簡易的な仕事、フルタイム労働=高価で高度な仕事」という既成概念を打ち崩す作業につながります。

なぜなら、導入の過程で職務内容や評価基準を明確にしていくことで、正規/非正規の雇用区分ではなく、自ずと労働者一人一人の能力・スキルに焦点が定められるようになるからです。

昨今注目されているタレントマネジメントという考え方も、正社員だけではなく非正社員も含めて導入することで、この課題に取り組むための一助となるでしょう。

現状、同一労働同一賃金で是正対象となっているのは手当や福利厚生が主で、賃金の大部分を占める基本給の差については、合理的であるとして実質不問となるケースがほとんどです。

真の格差是正という意味では、日本の同一労働同一賃金はまだ道半ばではありますが、勤続年数が長いか短いか、就労時間が長いか短いかにかかわらず、労働者本人のやる気や能力次第で高い報酬を得たり、活躍の幅を広げられたりする、機会均等への道を開く制度だといえるでしょう。


3. 同一労働同一賃金施行で企業が取るべき対応

同一労働同一賃金の導入のステップとしては以下の5点が挙げられます。

(1) 雇用形態・契約内容を確認する

まずは、全従業員の雇用形態を確認します。非正社員については、一人一人契約内容もチェックします。

(2) 正社員と非正社員の待遇差を確認する

正社員に支給されている賃金項目(各種手当や賞与、退職金など)のうち、非正社員には支給されていない項目や、計算方法や支給額が異なる項目がないかを確認します。福利厚生教育訓練についても、正社員と非正社員で違いがないか、同様に確認します。

(3) 待遇差がある場合はその理由を確認する

正社員と非正社員で待遇に差があった場合は、その差がそれぞれの職務に見合った合理的な差であるか、差を設けている理由を一つ一つ精査します。

(4) 不合理な待遇差があった場合は改善する

精査の結果、待遇差の理由に合理性がない項目について改善をしていきます。具体的な方法は、以下の2つです。

● 職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)の差を明確にする方法
正社員と非正社員の職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)の差を明確にし、それぞれの役割をはっきりと区別する方法です。役割の差が明確になれば、待遇の違いが不合理ではないことが説明できるようになります。

これを「均衡待遇」といいます。均衡待遇とは、従業員の雇用形態にかかわらず、職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)が異なる場合は、その差分に見合った待遇(賃金・福利厚生・教育訓練)を用意することです[3]

均衡待遇では、例えば以下のような対策を検討することになります。

・非正社員の業務内容や責任の程度を正社員よりも軽くする
・非正社員と正社員で転勤の範囲や職務内容の変更の範囲明確に分ける
・正社員と同じ職務に就く非正社員を正社員に登用する

● 既存の賃金制度を見直す方法
賃金制度を見直し、正社員と非正社員の待遇差を解消する方法です。これを「均等待遇」といいます。均等待遇とは、従業員の雇用形態にかかわらず、職務(業務内容、責任の程度、配置転換の範囲)が同じ場合は待遇(賃金・福利厚生・教育訓練)も等しくすることです[4]

均等待遇では、例えば以下のような対策を検討することになります。

・正社員のみに支給している賞与、手当、退職金などを非正社員にも支給する
・正社員のみに支給している手当、退職金などを廃止する

(5) 賃金規程、就業規則を改定する

待遇差の改善と並行して、賃金規程や就業規則も見直します。具体的には、以下の2点を検討します。

● 賃金規程に手当の趣旨を明記する
正社員にのみ支給し非正社員には支給しない手当を残す場合は、その手当の趣旨を賃金規程に明記しておきます。例えば、正社員は全国転勤があるため住宅手当を支給し、転勤のない契約社員は不支給とした場合、賃金規程には住宅手当の趣旨として「転勤による住宅費の負担を補填する手当」と記載しておきます。

● 賃金制度の見直しを賃金規程に反映する
例えば、皆勤手当を合理的な理由なく正社員のみに支給し、契約社員には支給していなかった場合、賃金制度を見直すのと同時に、契約社員の賃金規程にも皆勤手当を支給する旨を追加します。


4. 同一労働同一賃金の企業事例

一筋縄ではいかない同一労働同一賃金について、先行企業ではどのように対策・実現したのでしょうか。ここでは3社の事例をご紹介します。

4-1. 株式会社イトーヨーカ堂

まずは、大手総合スーパーを展開する株式会社イトーヨーカ堂の取り組み事例です。約6800人の正社員と、約2万7千人のパートタイム労働者・有期雇用労働者が在籍しています(2019年2月時点)。

改善前の状況
【正社員転換】
正社員転換制度がなく、非正社員は途中で正社員になることはできなかった。

【基本給】
正社員は評価に応じて役職登用を実施し賃金を決定していたが、非正社員は働きぶりに応じて時給を改定するのみで、評価に応じた役職登用・賃金アップの機会がなかった。

【手当】
通勤手当は正社員・非正社員ともに同じ基準で支給していたが、役職登用がない非正社員にはその他の手当は支給していなかった。

取り組み
【正社員転換】
パートタイム労働者を対象に、職務遂行能力と個人のキャリアプランに合わせて順次「レギュラー」、「キャリア」、「リーダー」へステップアップしていくステップアップ選択制度を導入。リーダーは、本人の希望と上長の推薦で、契約社員を経て正社員に転換することができる正社員登用制度も整備した。また、フルタイムの契約社員の場合は、原則1年以上の勤務で正社員転換試験を受験できるようにした。

【基本給】
正社員と非正社員でそれぞれ異なっていた評価制度を一本化。ステップアップ給を新設し、ステップアップするほど、昇給率や賞与の算出係数が上がるようにした。また、非正社員についても評価に応じて役職登用を行い、役割相応の賃金が支給されるよう改定を行った。

賃金(時給)項目を構成する要素

(出典:パート労働者活躍企業好事例バンク 厚生労働省
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/koujirei-bank/list/1012)

【手当】
 役職登用の実施に合わせて、非正社員にも正社員と同水準の職責手当を支給するようにした。

改善後の変化
パート社員として入社した従業員が正社員登用制度を利用して正社員となり、店長にキャリアアップするケースが出てきた。

4-2. エフコープ生活協同組合

次は、福岡県で約50万人の組合員が加入しているエフコープ生活協同組合です。約1300人の正社員と、約1680人のパートタイム労働者・有期雇用労働者が在籍しています(2020年2月時点)。

改善前の状況
【基本給】
 正社員は職務給+職能給であるのに対し、パートタイム労働者は勤続年数に応じた賃金を支給していた。

【賞与】
 正社員には年度末賞与を支給していたが、パートタイム労働者には支給していなかった。

【手当】
 正社員には通勤手当や子育て手当、役付手当などを支給していたが、パートタイム労働者は支給の対象外だった。

【退職金】
 正社員には退職慰労金を支給していたが、パートタイム労働者には支給していなかった。

【休暇・休職制度】
 正社員には配偶者出産休暇などを適用していたが、パートタイム労働者には適用していなかった。

【教育訓練】
 パートタイム労働者は現場でのOJTのみだった。

取り組み
【基本給】
 パートタイム労働者の人事制度を改定し、パートタイム労働者の基本給についても担当する職務に応じた職務給+正社員と同じ評価基準(業種、態度、能力)に基づく職能給とした。

【賞与】
 正社員と同様にパートタイム労働者にも年度末賞与を支給した。

【手当】
 正社員と同様の支給基準で、パートタイム労働者にも通勤手当、子育て支援手当、役付手当を支給した。

【退職金】
 正社員と同様にパートタイム労働者にも退職慰労金を支給した。

【休暇・休職制度】
 配偶者出産休暇をはじめ、正社員と同様の休暇・休職制度をパートタイム労働者にも適用した。

【教育訓練】
 OJTの実施に加え、全従業員を対象にOFF-JTを用意した。

改善後の変化
離職率が15 %(2006年度)から6 %(2018年度)まで減少。人材の定着と教育内容の蓄積により、利用者満足度の向上やスタッフの意識変革が図られ、業績も好転した。

4-3. 株式会社ブリヂストン

最後は、タイヤを中心としたゴム製品の製造・販売等を展開している株式会社ブリヂストンの事例です。約1万3500人の正社員と、約千人のパートタイム労働者・有期雇用労働者が在籍しています(2020年1月時点)。

改善前の待遇差
【手当】
 正社員には通勤手当の他、交替勤務手当、家族扶養手当、職務関連手当などを支給していたが、契約社員には通勤手当のみだった。

【休暇・休職制度】
 正社員には療養休職制度、法定を超える有給休暇、慶弔休暇(有給)を適用していたが、契約社員は適用していなかった。

取り組み
【手当】
 契約社員にも正社員と同水準の交替勤務手当を新設した。※家族扶養手当、職務関連手当などについても、今後正社員と同条件で支給する予定(2018年時点)

【休暇・休職制度】
 契約社員にも正社員同様の療養休職制度、法定を超える有給休暇、慶弔休暇(有給)を適用した。

改善後の変化
採用競争力向上、従業員数の増加につながった。

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5. まとめ

本稿では、同一労働同一賃金とは何か、具体的内容やメリット・デメリット、企業の対応について解説しました。

同一労働同一賃金とは、事業主が守るべき雇用に関するルールの一つです。本制度の下では、雇用形態にかかわらず、同じ仕事をしている従業員は同じ水準の待遇でなければなりません。

同一労働同一賃金制度はパートタイム・有期雇用労働法に基づき、大企業は2020年4月から、中小企業は2021年4月から適用されます。

同一労働同一賃金の目的は、正社員と非正社員の経済格差を是正することです。「雇用形態の違い(正社員か非正社員か)=所得の違い(経済格差)」とならないよう、日本もまずは非正社員の賃金を欧州同様、正社員の8割の水準に近づけることを狙いとしています。

同一労働同一賃金では、以下の3点が企業に義務付けられます。
(1) 均等待遇
(2) 均衡待遇
(3) 待遇差の内容・理由に関する説明

なお、同一労働同一賃金のルールに違反した場合、現行の法律では罰則はありませんが、事業主に対して勧告や指導が行われる可能性があるため、企業はしっかりと順守することが大切です。また、従業員から損害賠償請求(差額請求)を受ける可能性もあります。

同一労働同一賃金は行政ADR(裁判外紛争解決手続)の対象のため、万が一訴訟に発展した場合は、無料・非公開での労使間交渉が可能です。

同一労働同一賃金のメリットとしては、以下の三つが挙げられます。
(1) 非正社員の労働意欲アップ
(2) 人材不足の解消
(3) 非正社員の能力向上

同一労働同一賃金のデメリットとしては、以下の三つが挙げられます。
(1) 人件費の高騰
(2) 制度の見直し
(3) 待遇差についての説明責任

同一労働同一賃金の施行に当たり、企業がやるべき事は以下の5点です。
(1) 雇用形態・契約内容を確認する
(2) 正社員と非正社員の待遇差を確認する
(3) 待遇差がある場合はその理由を確認する
(4) 不合理な待遇差があった場合は改善する
(5) 賃金規程、就業規則を改定する

同一労働同一賃金の企業事例として、以下の3社を参考にすることができます。
(1) 株式会社イトーヨーカ堂
(2) エフコープ生活協同組合
(3) 株式会社ブリヂストン

同一労働同一賃金の導入は、なかなか手の出なかった自社の評価制度や賃金体系を見直すチャンスといえます。評価・待遇を最適化することは、仕事のやりがいやモチベーションアップにもつながります。企業・従業員双方にとってメリットが期待できるので、しっかりと対応していきましょう。

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[1] 有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者
[2] 正社員と契約社員で待遇に差がある場合は、その理由を合理的に説明する必要がある
[3]  均衡待遇の詳細は1-2をご参照ください。
[4]  均等待遇の詳細は1-2をご参照ください。

(参考文献)
「同一労働同一賃金」の目的は格差是正ではない 処遇差の「合理性」とは? 日本での導入が難しい理由 日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/report/15/261748/030100015/?P=1
不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル 厚生労働省
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/reform/pdf/all.pdf
同一労働同一賃金に向けた企業の取組事例 厚生労働省
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/douitsu/
パート労働者活躍企業好事例バンク 厚生労働省
https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/koujirei-bank/list/1012
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