「分断勤務」とは、1日の所定勤務時間を分割して働くことができる勤務形態です。
「介護や育児で離職する人が増えているようだ。どうすれば引き留められるだろうか。」
勤務時間が固定されているために、家庭との両立が難しいという理由で優秀な人材が離職に至ってしまうケースはありませんか。それを防ぐ働き方として、一部の企業で「分断勤務」が導入されています。
本稿では、分断勤務とは何か、メリットや導入時の注意点、導入企業の事例を解説します。
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1. 分断勤務とは
「分断勤務」とは、所定労働時間を分けて働く勤務形態で、「分割勤務」とも言われています。通常の勤務形態は、昼休みを挟むものの「連続した8時間」ですが、分断勤務の場合、一日の所定労働時間を満たせば仕事を中断することもできます。中断している間は、私用に使えるので、柔軟な働き方を実現する勤務形態の一つとして注目されています。厚生労働省によると、仕事の中断は休憩時間の延長と解釈できるため、労働基準法上も問題ありません。
分断勤務が生まれた背景には、少子高齢化に伴い労働人口が減少しているにもかかわらず、育児や介護との両立が厳しく、離職せざるを得ない働き手が増えているという現状があります。この課題を解決するには、業務効率化による生産性の向上に加えて、柔軟な働き方を整えることが重要です。分断勤務はその手段のひとつです。
分断勤務のイメージは次の通りです。
例えば、1日8時間勤務の場合、オフィスで3時間勤務した後、私用を済ませて帰宅し、残り5時間は家で業務に取り組むというような時間の使い方が可能になります。このような柔軟な働き方により、育児・介護などさまざまなライフステージの中でも継続的にキャリアを形成していくことができるのです。
1-1. テレワークとの違い
テレワークとは、ICTを活用した時間や場所を選ばない柔軟な働き方のことです。テレワークには在宅勤務やモバイルワーク、サテライトオフィスでの勤務などいくつかの形態があり、分断勤務もそのひとつです。
>>テレワークについては、関連記事「テレワークとは 働き方改革でも注目 メリット・デメリットを紹介」もご参照ください。
1-2. 在宅勤務との違い
在宅勤務とは、ICTを活用して従業員が自宅で業務に従事する勤務形態のことで、テレワークのひとつです。分断勤務は勤務時間の使い方を定めたものであり、働く場所を指定していません。一方、在宅勤務は「自宅で勤務する」働き方であり、一日の勤務時間をどのように使うかについては言及していない点が異なります。
>>在宅勤務については、関連記事「在宅勤務とは 働き方改革で導入進めるメリット・デメリットを紹介」をご参照ください。
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2. 分断勤務のメリット
分断勤務を導入することによって、企業はどのような効果が期待できるのでしょうか。
生産性の向上
オフィス以外でもできる業務を洗い出すことで、削減可能な業務の特定や、業務の進め方の改善ができます。また、オフィスから離れた場所でも業務を円滑に進めるために、社内SNSなどの情報共有ツールを導入します。これら一連の業務改善が、生産性の向上に繋がります。
コスト削減
海外取引などで夜間業務が多い場合にも、分断勤務が有効です。海外のワークタイムに合わせると、WEB会議が夜間に始まることも多いですが、分断勤務であれば開始時刻まで待機させる必要はなくなるため、残業手当の抑制効果が期待できます。
人材の定着・確保
介護や出産・育児を理由とした離職が問題になっていますが、分断勤務で家庭との両立が可能になれば、離職率の低下につながります。また、家庭の都合で働くことができなかった優秀な人材の確保も期待できます。
企業のPRになる
柔軟な働き方を受け入れる姿勢を示すことで、働き方改革を積極的に実践する企業としてイメージアップを図ることができます。
分断勤務は、生産性の向上や、労働時間の短縮によるコスト削減を期待できることに加えて、人材の確保・定着や企業PRにもつながります。
3. 導入時のポイント
分断勤務を導入する上でのポイントは次の通りです。
終業時刻を定める
厚労省は2019年「勤務間インターバル制度」を企業の努力義務として規定し、労働者の十分な休息時間を確保するよう提言しています。分断勤務での終業が深夜に及ぶと、十分な睡眠時間が取れないため、従業員の健康維持を考慮して「勤務は遅くとも深夜22時までに終える」などの規定を設けるよいでしょう。
回数に制限を設ける
むやみに分断勤務を実施すると、労務管理の負担が増えます。実施にあたっては、「上長の許可を得た上で週1回まで使用可能とする」「業務を分断する回数は1回までとする」などの制限を設けるとよいでしょう。また、社内のコミュニケーションに影響が出ないように配慮することも必要です。
情報漏洩対策が必要
分断勤務でオフィスから離れた場所で業務をする場合は、書類やデータを持ち出すことになるので、情報漏洩のリスクが高まります。情報セキュリティに対する従業員の意識や知識を高めるための研修を実施したり、ウイルス対策ソフトを導入したりするなど、セキュリティ対策を万全にする必要があります。
従業員の健康を維持するために、分断勤務の実施要件について検討する必要があります。また、他のテレワーク同様に情報漏洩のリスクに備えましょう。
>>勤務間インターバル制度については、関連記事「勤務間インターバル制度とは 4月から努力義務化 導入企業には助成金も」をご参照ください。
4. 導入企業の取り組み
株式会社NTTドコモは、2017年より「分断勤務制度」を導入しています。対象者は本体を含むグループ会社の25,000人です。業務の特性上、深夜の突発的な保守工事や、海外の取引先とのやり取りなどなどで勤務時間が不規則になってしまうことを考慮して導入に至りました。会社で3.5時間勤務した後、自宅で4時間働くなど、テレワークと組み合わせて柔軟な働き方を後押ししています。
5. まとめ
「分断勤務」とは、所定労働時間を分けて働く勤務形態で、「分割勤務」とも言われています。柔軟な働き方を整えることで家庭との両立をしやすくし、育児・介護などを理由とした離職を防ぐ狙いがあります。
・テレワークとの違い
テレワークとは、ICTを活用した、時間や場所を選ばない柔軟な働き方のことです。分断勤務はテレワークのひとつです。
・在宅勤務との違い
在宅勤務はICTを活用して「自宅で勤務する」働き方です。一方、分断勤務は働く場所を指定せず、「勤務時間の使い方」について定めている点で異なります。
分断勤務導入のメリットは次の通りです。
・コスト削減
・生産性の向上
・人材の定着・確保
導入の際に注意すべき点は次の通りです。
・終業時刻を定める
・回数に制限を設ける
・情報漏洩対策が必要
株式会社NTTドコモは、2017年より「分断勤務制度」を開始しています。業務特性上、深夜の突発的な保守工事や、海外の取引先とのやり取りなどなどで勤務時間が不規則になってしまうことを考慮して導入に至りました。同社では、テレワークと組み合わせて柔軟な働き方を進めています。
分断勤務は、育児や介護などさまざまなライフステージの中で従業員が継続的に活躍する環境を整えることで、離職防止や人材確保に繋げる取り組みです。多様な働き方へのニーズが高まっている現在、選択肢の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。
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参考)
総務省 テレワークの意義・効果
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/18028_01.html
NTTdocomo ForONEs
https://www.nttdocomo.co.jp/special_contents/forones/articles/011.html
ITmedia NEWS ドコモが「分断勤務制度」導入 1日の勤務時間、自宅と社内で分割 (2017年04月21日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1704/21/news090.html