「部下のやる気をアップさせる人事評価コメントとは、どういうものだろう?」
「自己評価って、何を書けばいいの?」
人事評価コメントの書き方に迷ったことはありませんか?特に上司は、自身のコメントによって部下のモチベーションを下げないよう気を遣うことも多いのではないでしょうか。
Job総研が公表した「2023年 人事評価の実態調査」[1]では、人事評価でモチベーションが下がった経験がある人の割合は、20~50代の男女758人のうち78.7%となっています。
従業員のモチベーションが下がれば、その後のパフォーマンスに多少なりとも影響するでしょう。最悪の場合、離職につながってしまう可能性もあります。
そのため上司は、部下が納得し、モチベーションを向上させる評価コメントの書き方や表現のコツを知っておく必要があるのです。
また、被評価者が自己評価を行う場合には、自身の成果や課題を正しく評価者に伝え、好印象を与えられるかが重要です。
本稿では、上司・部下(自己評価)、双方の人事評価コメントの書き方のポイントや注意点などを解説します。また、職種別のコメント例、企業事例も紹介します。
この記事がより良い人事評価コメントを作成する参考になれば幸いです。
「人事評価コメント」のほか、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」(無料)をご利用ください。
目次
1. 人事評価制度の概要
初めに、人事評価制度の概要を確認しましょう。
1-1. 人事評価制度とは
人事評価制度とは、従業員の成果や取り組みを、企業が設定した基準で評価するものです。評価内容は給与や昇進といった待遇に反映されるだけでなく、最適な人材配置の検討や、人材育成にも活用されます。
人事評価制度は評価制度・等級制度・報酬制度の3つの制度から成り、それぞれが連動して機能しています。
さらに、人事評価制度には能力評価・業績評価・情意評価という3つの基準があります。
能力評価は、従業員の持つ知識やスキルを評価するものです。企画力や実行力、判断力、指導力などを評価します。
業績評価は、一定期間における従業員の成果を評価するものです。売り上げや成約率、KPI(目標の達成度合いを観測するための定量的な指標)の達成率などを評価します。
情意評価は、従業員の業務への姿勢を評価するものです。意欲や責任感などが評価対象です。
人事評価制度の詳しい内容は、以下の記事で解説しています。
1-2. 人事評価・人事考課・人事査定の違いは?
企業によっては、人事評価を「人事考課」や「人事査定」と呼ぶ場合もありますが、3つの言葉に明確な違いはなく、ほぼ同義と捉えるケースが多く見られます。なお、使い分ける場合は、それぞれ以下のような意味合いで用いられる傾向にあります。
人事評価
従業員の育成や能力開発などの判断基準にするため、成果やスキルなどを評価するものです。人事評価には、人事考課・人事査定も含まれ、より広い意味で使用されます。
人事考課
給与や役職を決める根拠とするために従業員の勤務態度や業務実績、スキルなどを評価するものです。評価基準は企業が定め、評価によって昇給・昇進の可否などを判断します。
人事査定
従業員の勤務態度や業務実績、スキルなどを数値化したり、ランク付けしたりしたものです。多くの場合、その数値やランクを給与などの待遇に反映することを含みます。
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2. 人事評価シートには何を書く?
人事評価を行う際、評価内容を記録する人事評価シートは欠かせません。具体的にどういった内容を記入するのか見てみましょう。
2-1. 人事評価シートとは
人事評価シートとは、従業員の目標や実績、能力、業務への姿勢など、評価に必要な情報を記入するための書類です。「人事考課表」と呼ばれることもあります。
人事評価シートには、能力評価・業績評価・情意評価や、企業が定めたその他の評価の基準・項目が記載されます。それに沿って評価を行うことで、客観的かつ公平な評価が可能になります。
人事評価シート作成時のポイントは、以下の3点です。
- 職種や業務内容に最適な評価項目か
- 公平性が保たれているか
- フィードバックを行いやすいか
一般的に、人事評価シートには評価基準・項目に加え、「人事評価コメント」を記入する欄が設けられます。人事評価コメントは、上司などの評価者が記入する他、被評価者自身が自己評価をして記入するケースもあります。
なお、人事評価のために得た情報は、従業員の待遇や人材配置の検討などにも活用可能です。
2-2. 人事評価コメントとは
評価者または被評価者が人事評価シートの所見欄に記入する、評価内容に基づいた意見や考えを人事評価コメントといいます。
一般的には上司が評価者となり、部下の成果や課題などについてコメントを記入します。自己評価の場合は、自分自身の努力や成果、課題などについて振り返り、評価するコメントを記入します。
人事評価コメントは、被評価者が評価内容に納得し、また自身の課題を理解し、改善に向けて前向きに取り組めることを目的に記載します。従業員が次の目標に向けてモチベーションアップできるかは、人事評価コメントの内容次第といえるでしょう。
3. 人事評価コメントの書き方のポイント
人事評価コメントは、モチベーションや、上司と部下との信頼関係などに影響する重要なものです。書き方のポイントを押さえ、モチベーションアップや成長につながるコメントを作成しましょう。
3-1. 上司(評価者)の場合
上司が部下に対する人事評価コメントを記入する場合は、以下の4点を意識しましょう。
- 客観性、具体性を持ってコメントする
- 良い点、改善点の両方を記載する
- 主観が入らないよう注意する
- 新入社員は、当たり前のことができているかを中心に評価する
客観性、具体性を持ってコメントする
客観的かつ具体的な内容を記載しましょう。売上額や商談数といった部下の定量的な実績を示す際は、具体的な数値を用いて根拠を明確にします。
一方、事務職のように実績の数値化が難しい職種では、日々の業務への姿勢や、業務改善への取り組みなど、具体的な行動について評価するとよいでしょう。
良い点、改善点の両方を記載する
部下の業務への姿勢や目標達成度によっては、評価が厳しくなってしまうこともあります。しかし、コメントがネガティブな要素ばかりになってしまうと、モチベーションやエンゲージメントの低下につながりかねません。そのため、改善点だけでなく、良い点を見つけて記入することが大切です。
反対に、高評価で良い点ばかりになりそうなときは、状況をより良くするための改善策を示します。いずれにしても、部下のモチベーションや今後の成長を考慮し、偏りのないコメントを心掛けましょう。
主観が入らないよう注意する
主観的なコメントは避けましょう。評価者の一方的な思い込みを反映させると、公平性に欠けた評価になってしまいます。そのような評価は、部下との信頼関係に悪影響を及ぼすでしょう。それだけでなく、部下が企業に不満や不信感を持つ可能性もあります。
特に、意欲や業務への姿勢、勤務態度などを見る情意評価は、評価者の主観が入りやすいので注意したい項目です。
新入社員は、当たり前のことができているかを中心に評価する
入社間もない新入社員は、評価の対象となる具体的な成果が出せない場合もあります。そのため、「当たり前のことができているか」を中心にコメントをしましょう。
例えば、以下のような項目です。
- 社会人のマナーやルールが守れているか
- 業務への姿勢は誠実か
- 協調性を持って取り組もうとしているか
組織の一員としてふさわしい振る舞いができているかに注目しましょう。
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3-2. 部下(自己評価)の場合
人事評価シートは、被評価者が自己評価をしてコメントを記入する場合もあります。その際、書き方で押さえておきたいポイントは以下の通りです。
- ポジティブな表現を意識する
- 失敗や問題点を分析する
- 客観的に成果を評価する
- 簡潔に分かりやすく書く
ポジティブな表現を意識する
コメントがネガティブな内容ばかりだと、評価者は良い評価を付けようという気持ちになりにくいでしょう。評価者に自分の成果を正しく理解してもらえるよう、できるだけポジティブな表現で伝えましょう。
例えば、突発的な業務が多いときに、通常業務に手が回らず後回しになってしまったことがある場合、状況をそのまま伝えてしまうとマイナス評価につながりかねません。
そこで、「優先度の高い業務から順に進めました。通常業務までこなすことはできませんでしたが、優先した業務が評価され、売り上げアップに貢献しました」のようにコメントします。
すると、「通常業務がこなせなかった」というネガティブな面よりも、「業務の優先度を見極め、さらに成果につながった」というポジティブな面が注目されやすくなります。
失敗や問題点を分析する
ポジティブな印象を与えるコメントを意識することは大切ですが、評価が下がるのを懸念し、良いことばかり書くことは避けましょう。良い点と併せて、自身の失敗や取り組みの中での問題点も記載すると、「自己分析ができている」と評価されやすくなります。
「問題点は何か」という現状の分析に加え、「改善するために今後どのような取り組みをするとよいか」など、成長につながる内容も記入すると、自身のステップアップに役立つのはもちろん、評価者にポジティブな印象を与えられるでしょう。
客観的に成果を評価する
自己評価でも、客観的な視点や具体的な数値は重要な評価ポイントとなります。独りよがりの自己評価を避け、スキルや実績、課題などを客観的に分析するとコメントに説得力が生まれ、評価者が正しい評価を行いやすくなります。
さらに、売上やミス発生率などを具体的な数値で示せば、日々の取り組みと自己評価の整合性を証明でき、説得力が増すでしょう。
簡潔に分かりやすく書く
コメントが分かりにくいと、評価されるべきスキルや実績があっても評価者に伝わらず、適正な評価を受けられない場合があります。人事評価コメントは「簡潔さ」や「分かりやすさ」を重視し、自分にとっても評価者にとっても使いやすい資料に仕上がるよう意識しましょう。
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3-3. 同僚を評価する場合
360度評価など、同僚を評価するケースもあります。年齢や勤続年数の近い同僚には、好き嫌いなど主観の入った評価をしがちです。そのため客観的な評価を意識し、同僚だからこそ書ける、業務への姿勢を中心にコメントするとよいでしょう。
例えば、以下のようなコメントが考えられます。
- 社内イベントに積極的に参加し、従業員同士のコミュニケーション活性化に貢献している。
- チームメンバーの特性をよく理解してサポートし、スムーズな業務遂行の力になっている。
- 不測の事態に1人で慌てて対応しようとするので、早めに周囲に相談し、落ち着いて対応するとよいと思う。
4. 職種別、人事評価コメントの書き方例
人事評価コメントは、書き方のポイントを意識するだけで読み手に伝わる内容に仕上げやすくなります。
ここでは、職種別に、人事評価コメントのポイント、上司(評価者)のコメント例、部下(自己評価)のコメント例をご紹介します。
4-1. 事務職
事務職は成果を数値で表しにくい職種です。そのため、評価項目は「どれだけ作業のスピードアップができたか」や「メールや電話、来客などの対応を効率良くこなせたか」などの定量的なものにすると分かりやすくなります。
また、業務の完成度を上げるためのプロセスにも注目し、細かな評価ポイントも把握した上で、モチベーションアップにつながるコメントをすることが大切です。
上司(評価者)のコメント例
- 新システムのマニュアル作成により、チーム全体の業務効率化に貢献した。
- 経費削減に率先して取り組み、部署だけでなく企業全体の利益に向けた問題解決意識の高さが感じられる。
部下(自己評価)のコメント例
- 前年度と比べて書類不備が20%減少した。目標達成のために書類のダブルチェックを欠かさず行った。
- 新規採用に向けて業務マニュアルを作成し、引き継ぎ業務の効率化に貢献した。
4-2. 営業職
成果を数値化しやすい営業職は、売上額や商談数、目標達成率などを具体的な数値で表します。加えて、その成果を出す過程でどのような取り組みを実施したかにも触れると、納得できる評価につながりやすくなります。
上司(評価者)のコメント例
- 前期よりも新規顧客獲得数が10%増加した。来期は既存顧客の解約率減少に向けた取り組みにも期待したい。
- 目標である契約数200件を達成し、チームのモチベーションアップに貢献してくれた。
部下(自己評価)のコメント例
- ・地道なアポ取りが功を奏し、成約率が前期と比較して10%増加した。
- 新規契約数は目標に届かなかったが、アフターサポートに注力してきた結果、既存顧客の解約率を15%削減できた。
4-3. サービス職
販売・接客など、実績を数値化しやすい場合は、営業職と同様に具体的な数値を用いてコメントしましょう。数値化しにくい場合は、顧客にどのようなサービスを提供できたか、施設をより良くするために行った工夫など、業務の質向上において心掛けたことを中心にコメントします。
上司(評価者)のコメント例
- 既存の顧客対応マニュアルの見直しや新人研修などを積極的に実施し、顧客からのクチコミ評価が1.5ポイント向上した。
- これまでの経験で培ったノウハウを生かし、自身の業務改善はもちろん後輩の育成にも貢献してくれた。
部下(自己評価)のコメント例
- セール商品のポップを店舗オリジナルで作成し、販売数10%アップに貢献した。
- リピーター獲得のための企画を本部に提案・採用され、リピート率が全店舗中10位だった前期に対し、今期は1位を達成した。
4-4. 企画・マーケティング職
企画・マーケティング職の業務内容には、数値化できるものとできないものがあります。具体性を持たせることが難しい場合は、チームやプロジェクトにおける役割を果たしたか、成果にどう貢献したかなど、業務への姿勢を分かりやすくコメントしましょう。
上司(評価者)のコメント例
- 新プロジェクトのサブリーダーとして、リーダーが円滑に進行できるようメンバーの能力分析や精神的なケアを積極的に行った。
- データ収集・分析のスキルを活用してプロジェクト難航時に打開策を提示、業務を遂行する上で重要な役割を果たした。
部下(自己評価)のコメント例
- スケジュールの遅れを取り戻すために業務効率化の方法を提案し、期間内の完了をサポートした。
- 商品プロモーションとして、新たにSNS運用を実施。併せてキャンペーンを企画し、フォロワー10万人超えのSNSからの流入で、売り上げ目標の達成に貢献した。
4-5. コンサルタント職
顧客のさまざまな悩みを解決するコンサルタント職では、「顧客にどのような提案をできたか」や「顧客に提示されたノルマなどに対する成果はどうだったか」などについてコメントします。
日々の顧客対応や業務への姿勢などで良くできた部分があれば、具体的な行動を挙げて成果や成長を評価することも大切です。
上司(評価者)のコメント例
- 顧客の要望に応えるため、自発的に学ぶことはもちろん、先輩にアドバイスを求めるなど真剣に案件と向き合っていた。
- リサーチや分析を入念に行い、複数の提案を用意する姿勢は顧客からの評価が高く、プロジェクト成功、ノルマ達成など、成果にもつながっている。
部下(自己評価)のコメント例
- 今期は顧客の要望をくみ取れず、指摘を受けてしまうシーンがあったが、指摘を踏まえて改めてリサーチを重ねたところ、新たな提案とその成果に満足いただけた。
- 以前の取り組みを評価していただいた顧客から、「今回もぜひ〇〇さんで」とお声掛けいただき、新規の提案にも感謝の言葉をいただけた。
4-6. 技術職
建築業や製造業などにおける技術職は、業務効率化やコストダウンなど、企業の課題解決や目標達成に貢献した具体的な実績を中心にコメントします。
具体的な数値で評価しにくい場合は、作業スピードやミスの少なさ、協調性、責任感など、能力評価や情意評価を中心にコメントを考えるとよいでしょう。
上司(評価者)のコメント例
- テスト時の不要な工程の指摘と新たなテスト項目・手法の提案により、テストにかかるコスト削減に大きく貢献した。
- 営業担当と共に顧客へヒアリングし、直に要望を聞いて顧客満足度向上に向けて積極的に取り組む姿勢は評価に値する。
部下(自己評価)のコメント例
- 納期遅れ防止のため進捗管理方法を見直し、ミーティングも定期的に実施した。結果、今期は全ての案件において、納期遅れが生じなかった。
- 目標のコスト10%削減に向けて見直しや提案を行ったが、結果は5%削減にとどまった。来期はさらに細かな分析や見直しを実施し、目標達成に努めたい。
4-7. ITエンジニア職
ITエンジニア職は、ITに関する知識や技術、そして顧客に交渉や提案を行ったり、チームワークを高めたりするためのコミュニケーション能力が求められます。
システムのユーザー数増加や顧客の売上アップといった具体的な数値を用いて評価するのが難しい場合は、業務を通した企業への貢献についてコメントするのがよいでしょう。
上司(評価者)のコメント例
- 次のプロジェクトまでの空いた時間を活用して専用ツールを作成し、5部署の作業効率20%アップを実現した。
- オンライン会議ツールを活用し、社内外問わず密にコミュニケーションを図り、スムーズな業務遂行を心掛ける姿勢が見られる。
部下(自己評価)のコメント例
- 開発したシステムのユーザーが100万人を突破した。今後もチームメンバーと協力し、より使いやすいシステムに進化させていきたい。
- 新システムのリリース後に顧客から不具合の指摘があったため、開発中のコミュニケーションを大切にし、高品質のシステムの納品を心掛けたい。
4-8. クリエイティブ職
デザインや編集などのクリエイティブ職は、顧客のニーズに応えた作品を納品できたか、納期は厳守できたかなどが評価ポイントとなります。また、チームへの貢献度や、顧客との円滑なコミュニケーション、スキルアップのための取り組みなども、評価の対象です。
上司(評価者)のコメント例
- トレンド分析などを行う勉強会を自発的に実施するといった積極的な自己研さんが、人気ゲームのキャラクターデザイナーに抜擢されるなどの成果として現れている。
- 制作中にも必要に応じてクライアントへのヒアリングを実施し、修正の依頼が前期より25%減少した。
部下(自己評価)のコメント例
- 納期管理のために活用しているツールを他の従業員とも共有し、納期遅れを前期よりも15%減少させた。
- クライアントの要望を適切にくみ取れるよう尽力するだけでなく、自らのアイデアの提案も行った結果、自身の案を採用してもらうことができた。
4-9. 管理職
管理職の場合、主な評価対象は担当するチームや店舗の実績です。コメント内容は具体的な成果やチーム目標の達成度が中心になります。その他、個々の業務への取り組みやマネジメント能力、部下の育成なども評価のポイントです。
上司(評価者)のコメント例
- 部下の営業成績アップのため月に1度は商談に同行し、営業ノウハウの指導を行いながらサポートに尽力したところ、部下は目標数を超える契約を取ることができた。
- 毎週1回のランチミーティングで、業務進捗状況の共有とともにコミュニケーション促進を図った結果、メンバー間の助け合いが増え、目標売り上げを達成した。
部下(自己評価)のコメント例
- 以前より問題視されていたチーム全体の残業時間改善のため、マニュアル整備を実施。月平均30時間だった残業時間を20時間に削減することに貢献した。
- 今期目標の定期的な面談による個々のサポート・ケアを十分に実施できなかったため、来期は面談の回数や内容を見直し、個々に合わせた適切なサポート・ケアを行いたい。
4-10. 看護師
医療機関で患者やその家族をサポートする看護師は、成果を数値化するのが難しい職種です。患者に対してどのような配慮や対応を行ったか、スキルアップのために何を実践したか、医師や他の看護師・スタッフとの連携などを中心にコメントを作成しましょう。
上司(評価者)のコメント例
- 安全対策マニュアル基づき、院内の環境整備に尽力した。自身が手本となり実践することで、部下、後輩の安全への意識が高まっている様子が見て取れる。
- 担当患者とその家族に寄り添い、積極的に声掛けをするなど精神的なケアにも努めている。
部下(自己評価)のコメント例
- 気になる患者には個々に声掛け、ヒアリングを行い、情報を医師や他の看護師と共有するよう心掛けたことで、患者の症状進行を防ぐことができた。
- 有志の勉強会にも積極的に参加し、常に知識やスキルの向上に努めている。
4-11. 介護職
介護職も看護師と同様、具体的な数値での評価がしにくいため、施設利用者のための環境整備への取り組みや介護スキルの高さ、他スタッフとの連携などを中心に評価します。資格取得や社内検定合格など、具体的な成果がある場合は積極的にコメントに反映させましょう。
上司(評価者)のコメント例
- 日々の業務に真剣に取り組みながら、リスクマネジメントに関する研修にも自主的に参加し、利用者の安全確保と快適な施設利用の両立に貢献している。
- トイレのコールの適切な使用法について、利用者が楽しく理解できるレクリエーションを提案・実施。環境整備や紙パンツの消費量削減を実現するだけでなく、利用者からも高評価を得た。
部下(自己評価)のコメント例
- より良いサービス提供のため、社外の介護研修に月1回以上参加し、得た知識を生かした介助やサービスの提案を行っている。
- 今後は利用者の総合的なサポートも視野に入れ、幅広い研修や勉強会に参加し、介護福祉士の資格取得に向けてますます努力したい。
4-12. 保育士
保育士も数値による成果の評価がしにくいため、現場での安全確保、子どもたちが快適に過ごせる環境づくりへの貢献度についてコメントします。事故防止に努め、子どもが楽しみながら成長できる遊びや行事を工夫する姿勢はもちろん、課題解決のための提案も評価ポイントです。
上司(評価者)のコメント例
- 日々、担当する子どもたちの生活の様子に目を配り、一人一人に合った接し方を心掛けている。その姿勢は保護者にも評価されており、厚い信頼を得ていることが伝わる。
- 目の前の業務を着実にこなすことはもちろん、年間行事の準備も率先して取り組んでいる。子どもたちの成長目安に合わせて作成した指導要領は、ぜひ他の保育士にも共有してほしい。
部下(自己評価)のコメント例
- 子どもの変化にすぐ気が付けるよう、個々の様子をメモできるノートを作成した。その結果、子どもたちの好きなものなどもよく分かるようになり、お迎えの際の保護者とのコミュニケーションも円滑に行えた。
- 運動会など園全体での行事についてはまだ先輩に指示を仰いでいる状態だが、来年度に生きるよう準備から当日の流れまでをまとめたマニュアルを作成している。
4-13. 教員
日々の授業はもちろん、行事への取り組み、クラブ活動や委員会の顧問など、教員が担う業務は幅広く、かつ具体的な数値で成果を表すことが困難です。さまざまな業務における目標の達成度、授業や行事などへの姿勢などを詳しく把握し、コメントに生かしましょう。
上司(評価者)のコメント例
- 昨年度より導入したタブレットをさまざまな授業で活用し、生徒たちの興味・関心を深めた。一方でデジタル機器の扱いに関しても正しく指導を行い、現代の子どもが抱えるゲームやスマホへの依存、視力低下などの深刻さを子どもたちに伝えている。
- サッカークラブの顧問に立候補し、自身の経験を生かした指導でチーム全体のレベルアップに貢献した。県大会では3回戦出場と、本校初の快挙を成し遂げた。
部下(自己評価)のコメント例
- 登校が難しい生徒に向けて、授業を録画・共有したり、タブレット端末を利用したオンライン学習をサポートしたりした。クラスの様子が分かる動画やメッセージも届けたところ、徐々に登校する日が増えてきた。
- 全国テストの成績を踏まえ、学力向上が学校全体の課題となっていた。授業や宿題の内容やボリュームを見直すなど、子どもたちが積極的に学ぶ姿勢づくりに尽力し、2学期は1学期よりも平均点が5点上がった。
4-14. 公務員
役所の窓口などの行政系から警察官や消防士などの公安系まで、公務員の仕事は多岐にわたります。公務員の仕事は非営利のため、業務効率化やコスト削減は注目すべき観点です。数値で成果を表すのが難しい業務の場合は、ミス削減などの具体的な成果、市民対応におけるコミュニケーション能力や部下の育成といったスキルを中心に評価するとよいでしょう。
上司(評価者)のコメント例
- 担当業務に関するマニュアルを一新し、窓口に訪れる人の待ち時間削減に貢献した。また、新たなマニュアルにより部署内でも業務効率化が実現できている。
- 新部署での業務に慣れない部分も多い印象だったが、地道な努力で日常業務を1人で難なくこなせるまでに成長した。来期は新入社員の指導にも尽力してほしい。
部下(自己評価)のコメント例
- 今期は後輩、部下への指導ができる人材を目標として、業務内外で積極的にコミュニケーションを取った。部下が抱える仕事の悩みや改善点を共に分析したり、一人一人に合った業務を分配したりしながら、部署全体のモチベーションアップに努めた。
- 書類ミスが起こらないよう作成したチェックリストが部署内で活用され、ミスの軽減に貢献した。効率的なチェック方法の実践は、作業時間短縮にもつながっているように感じる。
5. 人事評価コメントの書き方の注意点
人事評価コメントの書き方の注意点として、以下の5つが挙げられます。
5-1. ポイントを絞って書く
人事評価コメントは、「あれも書きたい」「この内容も入れておきたい」とボリュームが多くなりがちですが、相手への伝わりやすさを意識し、ポイントを絞って簡潔にまとめることが重要です。
上司(評価者)であれば、部下の成果や今後の課題が明確になっているか、自己評価であれば、成果をしっかりアピールできているかを考慮しながら、コメントを作成しましょう。
5-2. 結論→理由の順番で書く
結論がコメントの途中や最後にあると、読み手が情報を把握するのに時間がかかる可能性があります。人事評価コメントはまず結論を記載し、補足的な説明や理由は後から書くことがポイントです。
結論が最初にあると、自分が最も伝えたいことを読み手に印象付けられます。結論が後になると、伝えたい内容が埋もれてしまい、特に自己評価の場合は期待する評価を得られない可能性もあるので注意が必要です。
5-3. 今後の目標は具体的かつ実現可能なものにする
人事評価コメントでは、課題解決に向けた取り組みや次に達成すべき目標についても言及しましょう。
目標設定のポイントは「高過ぎず低過ぎない」ことです。低過ぎる目標は、達成できてもモチベーションアップしにくいでしょう。反対に高過ぎる目標は達成が難しく、モチベーションを下げてしまう可能性があります。さらに、達成度でも良い評価を得にくいため、「実現可能」という点が重要です。
例えば事務職の場合、「ダブルチェックを取り入れてミスを減少させ、今月20時間だった残業時間を15時間にする」というように、具体的かつ、少し頑張れば実現できる内容を意識すると、最適な目標が立てられます。
なお、一定の目標や基準をクリアした従業員を対象とする社内表彰制度を導入している企業もあります。社内表彰によって得られる称賛は、従業員のモチベーションアップに有効です。
5-4. AIチャットツールを使用しない
昨今はAIチャットツールが急速に発展しています。「人事評価コメントの作成が大変だ」と感じた場合、AIチャットツールによるコメント作成を検討するケースもあるでしょう。
しかし、無償で公開され、自由に利用できるAIチャットツールは、第三者が入力した情報を学習データとして利用するケースもあるため、情報漏洩のリスクがあります。
人事評価コメントには企業名や個人名、売り上げ・ノルマといった具体的な数値など、重要な情報が含まれているため、AIチャットツールの利用はしないようにしましょう。
5-5. 不適切なコメントは避ける
人事評価コメントには、避けた方がよい内容や表現もあります。特に上司(評価者)は次のようなコメントをしないよう注意しましょう。
- 他者と比較するコメント
- 人格否定や性格・身体的特徴に言及するコメント
他者と比較するコメント
「○○さんをお手本に」「○○さんにアドバイスをもらうとよい」など、部下の成長につながるコメントは問題ありません。
しかし、「同期の○○さんよりもスキル不足である」といった、優秀な他の従業員と比較した評価やコメントは避けましょう。部下のモチベーション低下や自信喪失につながりかねません。
なお、評価の低い従業員と比較して高評価コメントをすることも不適切です。誰とも比較せず、個人の成果や改善点に着目してコメントしましょう。
人格否定や性格・身体的特徴に言及するコメント
人事評価は、従業員の「業務」に対する姿勢や成果を評価するものです。個人的な感情から被評価者の人格を否定したり、被評価者の性格や身体的特徴など、評価対象外の内容に言及したりするコメントは避けましょう。
業務への姿勢など、数値化しにくい要素を対象とする情意評価は、主観が入りやすいため特に注意が必要です。勤務態度が思わしくない場合も、「頭が悪い」「役立たず」など人格否定につながるような表現を使用しないよう意識してください。人格否定は、パワハラに該当する場合もあります。
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6. 人事評価制度・評価コメントの事例【企業・行政機関】
最後に、企業と行政機関における人事評価コメントの事例をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
6-1. GMOアドマーケティング株式会社(現:GMO NIKKO株式会社)
アドテクノロジー事業などを展開するGMOアドマーケティング株式会社の開発本部では、半期ごとにエンジニアの360度評価を実施しています。
もともと同社全体で、行動規範にのっとり、匿名・点数のみ・コメントなしの形式で360度評価を実施していました。しかし、より納得感が高く、行動の振り返りにもつながる評価にしたいという思いから、エンジニアに特化した360度評価の設計・導入が決定しました。
新たな360度評価では、点数だけでなく、実名でのコメントも付きます。従業員は半年間の取り組みを振り返り、自己アピールポイントをGoogleフォームから提出します。提出したシートは誰でも閲覧でき、実名でコメントの記載が可能です。
例えば、「コミュニケーションしよう―どれくらいできていると思いますか?」という項目に対し、「Slackの反応が良い」(マネージャー)、「Slackなどで話しかけてくれたり、気にかけていただいた」(後輩)など、実名で具体的なコメントをもらえます[2]。
このような360度評価を設計・導入し、フィードバックしやすい雰囲気づくりや、従業員のモチベーションや成長につながる運用を行いながら、自律的な組織づくりを進めています。
6-2. 内閣人事局・人事院
内閣人事局・人事院では、人事評価の概要やポイントをまとめた「人事評価マニュアル」を公開しており、評価者向けに「秀でている点(強み)・改善点(弱み)の記載例」を紹介しています。以下は記載例の一部です。
- 秀でている点(強み)の記載例
【確実な業務遂行】
事務処理を効率的に遂行することができる。○○手続の申請に対する処理において、事前に審査のプロセスや確認事項を整理することで、速やかな処理を行うことができた。今後は、より迅速な審査に向けて、プロセスの効率化への貢献を期待する。 - 改善点(弱み)の記載例
【スケジュール管理】
業務のスケジュール管理に改善を要する。○○事業について、事前に立てていたスケジュール通りに進めるための準備が不足している場面があった。それぞれの業務に必要な時間や作業を事前に把握し、余裕を持って遂行できるようになることを期待する。
引用:内閣人事局・人事院「人事評価マニュアル」, https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/r0309_hyouka_manual.pdf(閲覧日:2024年3月12日)
情報収集力や企画力、業務遂行力などの評価について、民間企業の人事評価コメントにも活用できる記載例となっています。
また、人事評価における面談の会話例も掲載されています。被評価者に伝える内容や、評価者の話し方・表現のポイントなどを知りたい場合に活用可能です。
7. まとめ
人事評価制度は、従業員の業務への取り組みや成果を、企業の設定した基準で適正に評価するものです。評価内容は給与や昇進などの待遇、適切な人材配置に活用される他、従業員の成長やモチベーション向上にも役立ちます。
人事評価制度は以下の3つの制度で構成され、それぞれ連動して機能しています。
- 評価制度
- 等級制度
- 報酬制度
さらに、人事評価制度には以下の3つの基準があります。
- 能力評価
- 業績評価
- 情意評価
また、人事評価は人事考課や人事査定と呼ばれる場合もありますが、いずれも明確な違いはなく、ほぼ同義と捉えるケースが多く見られます。
人事評価には、従業員の目標や実績、能力、業務への姿勢など、評価に必要な情報を記入する人事評価シートを使用します。その作成ポイントは以下の3つです。
- 職種や業務内容に最適な評価項目か
- 公平性が保たれているか
- フィードバックを行いやすいか
人事評価シートに、上司(評価者)がコメントを書く際に意識したいポイントは、以下の4つです。
- 客観性、具体性を持ってコメントする
- 良い点、改善点の両方を記載する
- 主観が入らないよう注意する
- 新入社員は、当たり前のことができているかを中心に評価する
自己評価コメントの書き方のポイントは、以下の通りです。
- ポジティブな表現を意識する
- 失敗や問題点を分析する
- 客観的に成果を評価する
- 簡潔に分かりやすく書く
また、360度評価などで同僚を評価する場合は、好き嫌いなどを抜きにした客観的な評価を意識し、業務への姿勢を中心にコメントするとよいでしょう。
人事評価シートの内容は職種によって異なり、コメントも職種の特徴に合わせて書き方を工夫する必要があります。本稿では、以下の職種のコメント例をご紹介しました。
- 事務職
- 営業職
- サービス職
- 企画・マーケティング職
- コンサルタント職
- 技術職
- ITエンジニア職
- クリエイティブ職
- 管理職
- 看護師
- 介護士
- 保育士
- 教員
- 公務員
人事評価コメントの書き方で注意したいポイントは以下の通りです。
- ポイントを絞って書く
- 結論→理由の順番で書く
- 今後の目標は具体的かつ実現可能なものにする
- AIチャットツールを使用しない
- 他者との比較や人格否定といった不適切なコメントは避ける
最後に、人事評価制度・評価コメントの工夫や書き方例として、2つの事例をご紹介しました。
- GMOアドマーケティング株式会社(現:GMO NIKKO株式会社)
- 内閣人事局・人事院
人事評価コメントは、評価内容を正しく反映し、公平性と透明性の高い人事評価を行うために欠かせない要素の1つです。上司が評価する場合も、部下が自己評価をする場合も、次の目標に向かって成長できるコメントを心掛けましょう。
貴社の人事評価制度のブラッシュアップに、この記事がお役に立てば幸いです。
人事評価で書くことは?
同僚を評価するときの例文は?
同僚を評価するときの例文は以下の通りです。
- 社内イベントなどに積極的に参加し、従業員同士のコミュニケーション活性化に貢献している。
- チームメンバーの特性をよく理解し、スムーズな業務遂行の力になっている。
- 不測の事態に1人で慌てて対応しようとするので、早めに周囲に相談し、落ち着いて対応するとよいと思う。
評価と査定と考課の違いは?
それぞれに明確な違いはなく、ほぼ同義と捉えられます。使い分ける場合、人事評価は「従業員の育成や能力開発などの判断基準」、人事考課は「給与や昇進の根拠となる、従業員の実績やスキルの評価」、人事査定は「従業員の実績やスキルのランク付け・数値化」を指します。
[1] 株式会社ライボ「Job総研「2023年 人事評価の実態調査」」,『JobQ Town』,https://job-q.me/articles/15313(閲覧日:2024年1月27日)
[2] GMOアドパートナーズ株式会社「自律組織へ、エンジニア360度評価の紹介」,『GOM AD Partners TECH BLOG byGMO』,https://techblog.gmo-ap.jp/2021/12/01/360-degree-feedback/(閲覧日:2024年2月16日)
参考)
寺崎 芳紀「人事考課とは?人事評価との違い、目的、導入方法をわかりやすく解説」,『リクルートエージェント』,https://www.r-agent.com/business/knowhow/article/8978/(閲覧日:2024年1月27日)
SmartHR Mag. 編集部「人事考課表の書き方、例文まとめ。評価業務の負担を減らす業種・職種別実例紹介」,『SmartHR Mag.』,https://mag.smarthr.jp/hr-management/evaluation/jinjikouka_kakikata/(閲覧日:2024年1月27日)
ITトレンド編集部「人事評価シートの書き方は?例文や自己評価の重要性も解説」,『ITトレンド』,https://it-trend.jp/merit_rating/article/sheet(閲覧日:2024年1月27日)
maneoマーケット株式会社「【2024年最新】人事評価の書き方を徹底的に説明!目的や例文、注意点についてもご紹介」,『ビジトラ』,media https://www.maneo.jp/saas/pe-personnel-evaluation-how-to-write/(閲覧日:2024年1月27日)
株式会社シーベース「人事考課表の適切な書き方とは?人事考課の書き方・例文について職種ごとに徹底解説!」,『CBASE』,https://www.cbase.co.jp/column/article182/(閲覧日:2024年1月27日)
ITトレンド編集部「人事考課コメント例文(本人・上司)と書き方を徹底解説!」,『ITトレンド』,https://it-trend.jp/merit_rating/article/evaluation_comment(閲覧日:2024年1月27日)
GMOアドパートナーズ株式会社「自律組織へ、エンジニア360度評価の紹介」,『GOM AD Partners TECH BLOG byGMO』,https://techblog.gmo-ap.jp/2021/12/01/360-degree-feedback/(閲覧日:2024年1月28日)
内閣人事局・人事院「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」, https://www.jinji.go.jp/jinjihyouka/img/r0406_hyoukasya_tyouseisya_tetsudeki.pdf(閲覧日:2024年1月28日)