「自社の従業員に向けてSNS対策をしていますか?」
「バカッター」「炎上」「謝罪会見」SNSによる炎上事件が毎日のようにネットニュースを賑わせています。従業員の何気ない一言から騒ぎが大きくなり、企業が責任を追及されることも珍しくありません。
「うちの会社は公式SNSアカウントを持っていないから大丈夫」「うちのSNS運用担当者はしっかりしているから大丈夫」と思っていませんか?
実は、従業員の個人アカウントの炎上事件であっても、企業は無関係ではいられません。
個人情報漏えいによる炎上の場合、企業には個人情報保護法に基づいた監督責任があるため、法的責任が追及されます。悪ふざけや差別発言などによる炎上の場合でも、従業員の教育不足やコンプライアンス違反などを理由に、企業は社会的責任を追及されるのです。
例えば、大手不動産仲介企業の女性従業員が芸能人夫妻の来店をTwitter(現X)に投稿した事件で使われたアカウントは従業員個人のものでした。
しかし、過去の投稿や写真などから女性の個人情報が特定され、勤務先や店舗名、さらにその芸能人夫妻の検討していた物件情報までもがインターネット上に晒される事態となりました。同企業は謝罪文を掲載し、企業の信頼は大きく損なわれました。
企業の公式SNSアカウントなら企業がコントロールできます。しかし、従業員個人のSNSアカウントによる炎上リスクにはどのように対処したらよいのか、危機感はあっても何をするべきか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、自社のSNS炎上を防止するために、企業がやるべき3つのSNS対策をご紹介します。公式SNSアカウントを持っていなくても、これらの対策を講じることはとても大切です。この記事を読んで、自社のSNS対策の参考にしてみてください。
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目次
1. ソーシャルメディアポリシーの作成
企業でやるべきSNS対策の1つ目に挙げるのは、ソーシャルメディアポリシーの作成です。ソーシャルメディアポリシーとは、XやFacebookなどのSNSを利用する際の企業方針を定めたガイドラインを指します。
1-1. ソーシャルメディアポリシーの目的
ソーシャルメディアポリシーの目的は、企業の利益を守り、SNS上で起こり得るさまざまなトラブルを回避することです。
ソーシャルメディアポリシーの作成は、全ての企業でSNS対策として行うことをおすすめします。
なぜなら、たとえ企業の公式アカウントを持っていなかったとしても、従業員の個人アカウントも企業にとってはSNSトラブルのリスクとなり得るからです。少なくとも従業員の個人利用のためのソーシャルメディアポリシーは制定し、従業員に理解と順守を求める必要があるでしょう。
1-2. ソーシャルメディアポリシーに入れるべき内容
ソーシャルメディアポリシーの内容は、「やってもよいこと」と「やってはいけないこと」を明確に示します。例えば、以下のような項目を分かりやすい表現で含めるようにします。
No | 項目 | 内容 |
1 | 基本方針 | 企業としてSNSをどう捉えているのか、どのようにSNSと向き合っていくのかという姿勢を説明する。 |
2 | 機密情報の保護 | 自社の経営情報や非公開情報、個人情報、企業に知的所有権がある情報などは、SNS上で発信しない。 |
3 | 第三者の権利の保護 | 著作権、肖像権、商標権など、第三者の持つ権利を尊重する。 |
4 | 顧客や取引先の情報の保護 | 自社だけでなく、顧客やビジネスパートナーなどが特定されるような情報、あるいは彼らの機密情報などをSNS上で発信しない。 |
5 | 誹謗中傷の禁止 | 国や民族への蔑視や個人の侮辱、わいせつなど、特定の個人や集団に対する攻撃的・差別的・性的・排他的な発言を行わない。 |
6 | 真偽不明な情報の取り扱い | 真偽不明な情報を安易にSNS上で発信しない。 |
7 | 自社に関する情報発信 | 自社商品や自社キャンペーンなどに関する情報発信の際の注意点(例:発信のタイミング、商品名の表記方法など)を順守する。 |
8 | 個人の責任の説明 | 従業員個人のSNS上の投稿やコメントは全て本人に最終的な責任があることを宣言する。 |
1-3. ソーシャルメディアポリシーの例
ソーシャルメディアポリシーの作成を検討する際は、同業者の公開するソーシャルメディアポリシーなどを参考にするとよいでしょう。
公開されているソーシャルメディアポリシーの例
■日本コカ・コーラ株式会社 「ソーシャルメディアガイドライン」
■株式会社資生堂 「ソーシャルメディアポリシー」
■東海大学 「学生を対象としたソーシャルメディア活用ガイドライン」
※掲載場所は企業情報やニュースリリースの中、独自の場所を設けているなど、さまざまです。
1-4. ソーシャルメディアポリシーを守るために
ソーシャルメディアポリシーは、ただ作成し企業ホームページに公開すればよいというものではありません。その内容が従業員に理解され、順守されてこそ意味のあるものです。
以下のアクションを組み合わせてソーシャルメディアポリシーを従業員に周知し、順守を徹底させてください。
No | アクション | 内容 |
1 | 社内配布 | 作成したソーシャルメディアポリシーを従業員に配布する。 |
2 | 読み合わせ | ソーシャルメディアポリシーを、部署ごと、店舗ごとなど各組織で読み合わせする。組織全体としてソーシャルメディアポリシーを順守する環境を醸成する。 |
3 | 誓約書 | ソーシャルメディアポリシーの内容を順守する旨の誓約書を作成し、従業員に署名させる。ソーシャルメディアポリシー順守への意識を高める。 |
4 | 研修 | 従業員研修の中にSNS教育を組み込み、自社のソーシャルメディアポリシーについても教育する。 |
従業員への研修については、次章で詳しく取り上げます。
また、ソーシャルメディアポリシーを守るためには、ソーシャルメディアポリシー自体が形骸化しないような工夫も大切です。例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 復習の機会を設ける
(誓約書を毎年書かせる、研修や理解度テストを定期的に行う、など) - ソーシャルメディアポリシーの内容を定期的に見直す
(その時々のSNSのサービス内容や従業員の利用実態に即した内容になるようにする)
このような取り組みを行い、従業員が自社のソーシャルメディアポリシーに関心を持ち続けられるようにしてください。
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2. 従業員へのSNS対策研修
企業のSNS対策として、従業員にSNS対策研修を行うことは非常に有効です。研修を行うことで、ソーシャルメディアポリシーをより早く、深く、正確に従業員に浸透させることが期待できます。
パートタイマーやアルバイトを多く採用している流通・小売・飲食などの業種では、SNS対策研修は特に重要です。なぜなら、これらの業界は人の回転が速く、ソーシャルメディアポリシーに限らず、企業の経営理念や経営方針などが全従業員に浸透しづらいからです。
また、この業種はB to Cの事業形態なので、トラブルの影響が直接的なダメージにつながってしまいます。
2-1. SNS対策研修の内容
SNS対策研修の内容には、次のようなものが考えられます。
(1)自社で定めたソーシャルメディアポリシーの理解
(2)SNSの仕組みや特性の理解、SNSとの上手な付き合い方
(3)情報セキュリティに関する理解と日ごろ気を付けるべきこと
(1)が教育の範囲が最も狭く、(2)→(3)の順で広がります。単に自社のソーシャルメディアポリシーへの理解を深めるだけでなく、SNSの仕組みや特性を理解させれば、従業員はより自律したSNSの付き合い方を身に付けることができます。
さらに、情報セキュリティ全般を教育すれば、仕事用PCのセキュリティ管理やサイバー攻撃への対策などを身に付けることができ、企業の信頼性向上につながります。
また、SNS対策だけの研修を新たに作るのではなく、コンプライアンス教育の一環としてSNS教育を取り入れるといった方法も考えられます。新入社員研修やアルバイトの就業時研修など、従業員として初めて受ける研修には必ずSNS教育を盛り込むようにしましょう。
SNS対策研修のポイントは、「全ての従業員」を対象に実施することです。管理職や役員も例外ではありません。彼らによって「炎上」が発生してしまった場合、そのダメージは甚大です。責任のある立場にいる人ほど、SNSの扱いには特に注意してもらう必要があるのです。
関連記事:情報セキュリティ研修を成功させるには?eラーニングでの実施事例も紹介します
2-2. SNS対策研修の形式
従業員研修の形式には以下のような種類があります。それぞれの形式のメリット・デメリットを理解して、自社の環境に最適な形式を選びましょう。
No | 形式 | 内容 | メリット | デメリット |
1 | 集合研修 | 学校の授業のように従業員を1カ所に集めて研修を行う。講師は自社の管理部門が務める、または外部から招く。 | ・グループディスカッションなど受講者同士で理解を深めることができる | ・従業員を1カ所に集める必要があるため、スケジュール調整が必要 |
・疑問点があったらその場で質問できる | ・移動時間や交通費などのコストがかかる | |||
・講師によっては講義のカスタマイズが可能 | ||||
2 | eラーニング | 講義や学習教材をインターネットで配信し、PCやスマートフォンなどを用いて学習する。 | ・時間や場所に縛られず学習できる | ・PCやスマートフォンなど、受講できる環境が必要 |
・講義や学習教材のカスタマイズが比較的容易 | ||||
・受講状況の把握や成績などの管理がしやすい | ||||
・後から講義を見直して復習することができる | ||||
3 | 通信教育 | 教材を受講者に郵送し、各自で学習する。 | ・時間や場所に縛られず学習できる | ・教材のカスタマイズはほとんどできない |
・比較的安価に実施できる | ・各従業員の学習状況を把握しづらいため、進捗の管理がしにくい |
関連記事:集合研修のメリットとは?オンライン研修とのブレンドが効果的な人材育成のカギ
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近年では「Blended Learning(ブレンデッドラーニング)」という形式も注目を浴びています。
これは、集合研修の前後にeラーニングで事前学習・事後学習を行い、集合研修の学習効果を高める方法です。集合研修ではグループディスカッションなど集合研修ならではの学習スタイルのみに時間を費やすことができ、それぞれの研修形式の利点を最大限に活用することができます。
Blended Learningの例
3. SNS投稿の監視
SNSには、日々膨大な量の投稿があります。その中から、自社に関する情報を拾いだすためには、SNS投稿を監視することが必要です。
3-1. SNS投稿の監視とは
SNS投稿の監視とは、自社を表すキーワードがインターネット上でどのような評価を受けているかを定期的にチェックすることです。
キーワードがインターネット上でどのように評価されているか、論調に変化がないかをいち早く検知することで、いわゆる「炎上」といわれる大きなトラブルを防ぐことが期待できます。
自社のキーワードには、企業名や代表者名、主力商品名、キャンペーン商品名、グループ企業名などが挙げられます。
投稿の監視の基本は、自社のキーワードをいくつか選定してGoogleやYahoo!などの検索エンジンで定期的に検索し、どのような情報が出てくるかを把握することです。把握した情報は、社内でしっかりと共有しましょう。
監視スキームの例
■いつ → 毎日(始業後、昼食休憩後、終業前の1日3回)
■誰が → 広報部で当番制
■何を → 自社キーワード「企業名」「社長名」「主力商品名」「キャンペーン商品名」
■どうやって → Googleで一語ずつ検索
■どうする → 注意すべき情報があれば広報部長および広報部全員に即座に報告する
より厳密なモニタリングを行いたい場合は、専門のツールを使用したり、プロの監視サービス業者に外部委託したりすることも可能です。
モニタリングツールの例
■株式会社ユーザーローカル「Social Insight」
http://social.userloca
■株式会社ホットリンク「e-mining」
https://www.hottolink.co.jp/service/emining
なお、投稿の監視は、食品製造業やサービス業など、消費者に身近な商品を提供する業種で特に有効と考えられます。なぜなら、消費者と商品の距離が近いほどSNSに投稿される機会が増え、また多くの人の関心を引いて反響を呼びやすいからです。
3-2. SNS投稿を監視するポイント
SNS投稿の監視は、「インターネット上の評価を一旦受け止め、きちんと見極めること」がポイントです。中には見当違いの評価もあるため、1つ1つの評価に過剰反応する必要はありません。
総じて良い評価を受けたサービスは強化し、批判の中からは自社の問題点を拾い上げることで、自社の改善につなげることができます。インターネット上の声を上手に拾うことで、トラブルを防ぐというSNS対策以上の効果を期待できるでしょう。
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4. まとめ
SNSの即時性と拡散性は他のツールの追随を許さず、もはや現代人の生活に不可欠な存在となっています。企業にとってもSNSは上手く使えば非常に強力なマーケティングツールとなる一方、不用意な投稿による炎上事件や情報漏えいも少なくありません。
企業公式SNSアカウントを持っていないからといって、SNSの炎上事件と無縁ではありません。従業員の不適切な投稿は、場合によっては企業が損害賠償請求を受けることもあり得ます。従業員個人の問題ですまされないケースを想定し、全ての企業がSNS対策に取り組む必要があるのです。
SNS炎上を防ぐために企業が取るべき対策として、3つご紹介しました。
(1)ソーシャルメディアポリシーの作成
(2)従業員へのSNS対策研修
(3)SNS投稿の監視
SNSを積極的に活用しつつ炎上事件には巻き込まれないよう、今一度、自社のSNS対策を見直してみてはいかがでしょうか。
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