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〔ポジティブ心理学〕成功を引き寄せる「ポジティブ感情」とは

〔ポジティブ心理学〕成功を引き寄せる「ポジティブ感情」とは

ポジティブだから成功したのか。
成功したからポジティブなのか。

ポジティブ心理学において、常に提起される「鶏が先か、卵が先か」的な疑問点です。 

ポジティブな感情は、人生の成功や幸せの、あるいはもっと身近な意味では仕事における高パフォーマンスの起因となるものでしょうか。それとも結果なのでしょうか。

結論から言えば、ポジティブな感情は成功の起因になると考えられています。

ノースカリフォルニア大学チャペルヒル校の心理学者、バーバラ・フレデリクソン教授によると、ポジティブな感情を持っていれば、思考や行動が積極的になって、より成功しやすくなり、成功すれば、当然ながら喜びや達成感といったポジティブな感情が増し、次の成功に向けた行動への意欲につながるのです。

ポジティブ心理学第二弾の「仕事の幸せ度を上げる方法」でご紹介した「意図的行動」と相まって、ポジティブ感情は、能動的なポジティブスパイラルを創り出す源泉となるということです。

ポジティブ感情は、ポジティブ心理学第一弾でご紹介したマーティン・セリグマン教授の「幸せを構成する5つの要素(PERMA)」の冒頭に挙げられている要素でもあります。
セリグマン教授やフレデリクソン教授をはじめ、多くの心理学者がポジティブ感情についての研究を重ねています。

ということで、ポジティブ心理学第三弾の今回は、ポジティブ感情の意味と成功につなげる秘訣やテクニックについて、おもしろいデータを示しながら紐解いていきます。

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1. ポジティブ感情が組織に与える影響

ポジティブな感情は、組織にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは企業活動の中で集計された具体的なデータを基に、その影響を紐解いていきます。

1-1. データが語る事実

最初に、企業組織におけるポジティブな言葉の使用頻度について、興味深いデータをご紹介します。

英国の大企業10社が全社的変革プロジェクトを推進した際、ケース・ウェスタン・リザーブ大学(米国)の研究者が、各社のスタッフ会議や個別インタビュー、会社のホームページなどさまざまなソースからピックアップした52,687個の単語、2,256個の引用句について、ポジティブ(P)かネガティブ(N)かを区分けし、その比率(P/N比)を分析しました。その結果、業績の高い企業・中くらいの企業・低い企業の間で、P/N比に明らかな差異があったのです。

表1<ポジティブな言葉:ネガティブな言葉の割合> 
表1<ポジティブな言葉:ネガティブな言葉の割合>
※合計=インタビューデータ・会議データ・HPデータの合計

企業の顔とも言えるホームページ(HP)にポジティブな美辞麗句がたくさんあるのは当然でしょうが、その表看板でさえ、低業績の会社は好業績な会社に比べてネガティブな言葉が多いことがわかります(思わしくない業績の対外発表文のせいかもしれませんが)。
ましてや、社内の本音が遺憾なく吐露される(?)会議では、高業績企業に比べた低業績企業のネガティブ発言の多さは歴然ですね。

こうしたP/N比の研究は、この英国10企業のみならず、世界中のさまざまな組織やプライベートな人間関係においても広く行われてきました。
その結果、健全な関係が成立しているときのP/N比は、31121であることがわかっています。これを、発見者である米国ミシガン大学出身の心理学者、 マルシャル・ロサダ博士の名をとって「ロサダ比」と呼んでいます。ネガティブ発言1つに対してポジティブ発言が3を下回ると会話が批判的で険悪なモードになり、逆に12を超えると、対立回避のための取ってつけたようなやりとり、あるいはおべんちゃらばかりで本音が出ていない、というわけです。

ちなみに、夫婦関係の研究で有名な米国の心理学者のジョン・ゴットマン教授によると、夫婦の間の場合は、1つネガティブなことを言ってしまったら、5つポジティブな言葉をかけないと関係が悪化するそうです(つまりP/N比は51)。通常の人間関係よりも、意識してポジティブな会話を交わすことが夫婦円満の秘訣。「言葉に出さなくてもわかるだろう」という日本男児的な(?)考え方は、ゴットマン教授には通用しないようですね。

1-2. なぜ組織の中でネガティブ発言が多くなるのか

ポジティブなほうが気持ちがいいことは誰でもわかっているはずなのに、なぜ職場ではネガティブな発言が多くなるのでしょうか。
「業績が悪いんだから、当たり前じゃないか」
「歯の浮くような台詞ばかりでは、部下がつけ上がるだけだろう」
そのような会社の特殊事情やコワモテ上司の個人的信念もあるかもしれませんが、実は遺伝子レベルで見ると、人間はポジティブなものよりネガティブなものにより多くの注意を割くよう、設計されているのです。

フロリダ州立大学の社会心理学者であるロイ・バウマイスター教授は、単刀直入に「Bad is stronger than good」と表現しています。人間は、目前に迫るリスクに目を向けるほうが生き残りの確率が高かったため、進化の過程で、よい出来事より悪い出来事、ポジティブよりネガティブなものに、より敏感に反応するようになったというのです。
現代の保守的な企業にありがちな「減点主義」や、ポジティブな言葉で部下を褒めて育てるより部下の欠点や短所を指摘して矯正させる社員教育も、ネガティブ優位な遺伝子の発現のせいかもしれません。

しかし、現代社会は、生きるか死ぬかという文字通りの生命の危険に日々さらされていた昔とは大きく環境が異なります。ビジネスの場面では、ネガティビティに敏感になり過ぎて萎縮し、チャンスを見送ってしまうよりも、あえて新たなことに挑戦することのほうが、生き残れる確率がむしろ上がることもあります。様々なことにチャレンジできる環境が整ってきているにもかかわらず、減点主義的で保身ばかりを考えるのは、もったいないことです。

上述のロサダ比が示す通り、私たちは意識してポジティビティを高め、さまざまなことにチャレンジしていく必要があるのです。

1-3. 組織の命運を左右するリーダーのポジティビティ

さらに言えば、よりポジティブな発言や感情を心がけなければならないのは、組織の上に立つリーダーです。

人間の脳にはミラーニューロンという人の表情を真似る機能があるそうです。ゼロ歳児でも、大人が微笑みかけると微笑み返す、あの行為を促すものです。赤ちゃんや子供はもちろん、大人でも実はこの習性が残っているのです 
5人のグループに、上機嫌あるいは不機嫌な人がたった1人いるだけで、グループ全体の雰囲気が変わること、しかも、特に地位の高い人から低い人に伝染する(たった7分でチーム全体に広まるそうです!)ことが、実験でも明らかになっています。
明るい気持ちのリーダーが率いるチームは、そうでないリーダーのチームよりパフォーマンスが高いという実験結果もあります。

私がソニーに勤めていた頃、当時会長だった大賀典雄氏の御前会議で事業部長がプレゼンをする場に居合わせたことがあります。オペラのバリトン歌手という異色の経歴を持つ大賀会長は、よく通る声と大きな身体で、誰をも圧倒するオーラを放っておられました。
会議冒頭、PCプロジェクターのスクリーンの前に緊張の面持ちで直立している事業部長を一瞥した大賀会長が、開口一番こう一言。
「アンタんとこは、葬式出すとき『エサシケケ』って看板出すのか」
スクリーンに映し出されていたのは、プレゼンする事業部長の「江刺家(えさしか)」という珍しい苗字でした。
葬儀場で見かける「○○家」という黒枠看板、この名前だと確かに「江刺家家」
当の江刺家氏も含め、一同大爆笑。張りつめていた空気が一気にほぐれました。
隣に座っていた先輩に「会長、さすがですね。ああやって発表者の気持ちを和ませるんですね~」とささやいたら、「いや、あれは会長がただの天然なんだよ」と返されました。
天然でもなんでも、上に立つ者のユーモアのセンスや、あっけらかんと明るいポジティブな態度は、組織のムードやパフォーマンスに必ずやプラスの影響を及ぼします。

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2. 現代の組織にポジティブ感情が不可欠な理由

組織において、さまざまなプラスの影響を及ぼすポジティブ感情ですが、その具体的な効用と、特に現在の日本の組織にとっていかに重要か、について考えていきましょう。

ポジティブ感情を持っていると、物事を前向きに捉えて積極的になり、「思考や行動」の幅が「拡張」します。実際にいろいろと考えたり、行動したり、より多くの経験をすることで、知識を習得したり、人間関係が拡がったり、自分にとって有用なさまざまな「リソース」が「形成」されます。
これを、冒頭でご紹介したフレデリクソン教授は「拡張形成理論」と名付けました。
「思考と行動」の「拡張」、そしてさまざまな「リソース」の「形成」、これがポジティブ感情の具体的な効用なのです。

2-1. ポジティブ感情はクリエイティビティの原動力

ポジティブな感情は、文字通り私たちの視野を広げ、ゆったりリラックスして思考が柔軟になり、クリエイティビティを高めてくれます。
クリエイティビティやイノベーションが企業の成長戦略の決め手といわれる今日、ポジティブ感情を活用しない手はありません。

週末の朝、空が晴れていると何となく明るくポジティブな気分になって、散歩のひとつもしたくなりませんか? 「積読」していた本を手にスタバに向かい、テラス席でコーヒー片手にページをめくれば、満員の通勤電車での読書とは比べものにならないほどすらすらと中身が頭に入ってきて、仕事へのインスピレーションもわくというもの。
ふと目線を上げた先にいた若いカップルを見た瞬間、新商品のアイディアがひらめく、などということも、大いに起こり得るでしょう。

最近、新興のIT企業などでは、オフィス内にカラフルな家具を配置したリラックススペースや無料のおやつコーナーを設けることが少なくないようです。これは、社員向けの福利厚生の一環というより、クリエイティビティや生産性の向上を狙った巧みな戦略だと思います。

ネガティブ感情は、生き残り確率を上げるため、身の危険を感じたときに私たちが敏速に対応するよう促すシグナルの役割を果たします。恐い、不安、といった感情が起こると、危険の元凶を注視すべく視野がぐっと狭まります。アドレナリンを放出して体の筋肉を緊張させ、リスクが現実になった瞬間にアクションが取れるよう、態勢を整えます。
リスクをできるだけ回避する慎重な意思決定をしたり、注意力を集中させてやるべき業務をきちんとこなすためには、ネガティブ感情は非常に有用です。
しかし、今の企業がより必要としているのは、視野を広く持ってさまざまな可能性を創造し、自由に追求する行動力、その原動力となるポジティブ感情のほうではないでしょうか。

2-2. モチベーションアップを図る細やかなテクニック

しかしながら、リーダーの立場にある方々の多くは、上述のようにどうしてもネガティブ発言が多くなったり、部下のマイナス面にばかり注目する発想に偏りがちです。

私自身、新入社員の頃は「叱られてなんぼだと思え」と先輩から厳しく育てられました。「巨人の星」や「アタックナンバーワン」などの根性ものアニメを見て育った昭和世代は、ネガティブアプローチが通用した最後の世代、前世紀の遺物といってもいいかもしれません。

ところが、ミレニアル世代が立派な中間管理職になりつつある今日、若い世代をやる気にさせるには「褒めて育てる」アプローチのほうが重要になってきています。
とはいえ、褒められて育てられた経験のない人間にとって、部下を褒めるのはなかなかハードルが高いもの。

一方で、ポジティブな感情を持つと、モチベーションはもちろん生産性自体も上がることが、研究の結果明らかになっています。
チームメンバーがポジティブな感情を持つように仕向ける、というだけなら、舌を噛みそうになりながら慣れない褒め言葉を口にする必要はありません。

ある実験では、被験者の内科医がキャンディをもらっただけで、診断困難な肝疾患の症例の診断精度が、キャンディなしの内科医より3倍も高かった、という結果が出ました。
また、面白いストーリーを読む、ポジティブな言葉を口に出す、などでポジティブ感情を高めたあとで、創意工夫を要する工作の課題を出されると、被験者の解決力が上がった、という研究結果もあります。

甘い物、楽しい話、ポジティブな言葉遣い、もっと言うと、ただ微笑みを浮かべるだけでも、職場のポジティビティが上がり、メンバーのモチベーションに好影響を及ぼすのです。


3. ポジティブ感情を高めるエクササイズ

ポジティブ感情を上げるだけで、個人も組織もいいことづくめでなのです。
しかも、ポジティブ感情をアップする方法は、あっけないほど簡単だったりします。その方法を、いくつかのエクササイズとして紹介しましょう。ただしエクササイズには個人的に向き不向きがありますので、ご自分自身、自分の部署に効き目のありそうなものを選び、ご自分なりに加工応用して、独自の「ポジティブ感情向上法」を編み出してみてはいかがでしょうか。

3-1. 「ストローで笑顔」エクササイズ

拍子抜けするほど簡単ですが、やったとたんにポジティブな気持ちになれる、即効性のあるエクササイズです。

<やり方>
1. 何か気の滅入る出来事があったり面倒な仕事を片付けなくてはならないなど、とにかくポジティブな気分になれないとき、コンビニやカフェでもらうストロー(もし手近になければ、できるだけ細いペンをティッシュできれいに拭いて)を横にして、口にくわえます。
2. 自然とあなたの口角が上がって「笑い顔」に見えます。
3. ストローを加えたその表情のまま、仕事に取り掛かってみます。ただし、あまり長い間くわえていると、変な趣味を持った人と思われるかもしれません。また書類の上によだれがたれてしまうこともあるので、筋肉が笑顔に慣れて来たら、適当なところで外しましょう。

<ヒント>
人間は、笑顔を浮かべると、それだけでポジティブな気持ちになります。おもしろいこともないのに笑えるか、と思うかもしれませんが、わざわざ「笑おう」としなくても単にストローをくわえて「笑い顔」をつくるだけで、読む本が余計におもしろく感じられることが、心理学の実験で検証されています。

役員会議の場などでは、ストローやペンを口にくわえることはおろか歯を見せてにやにや笑うわけにいきませんが、ただ口角を上げてみるだけでも効果があります。

筆者は、なんとなく気分が落ち込むと、家の中やオフィス、電車の中、あるいは道を歩いていても、きゅっと口角を上げてみます。すると、見知らぬ人から道を尋ねられる回数が激増します。眉間にしわを寄せている人より、親切そうに見えるのでしょう。
見知らぬ人さえそうなのですから、あなたの部下や上司も、あなたが和やかな表情を浮かべていれば、話しかけやすいはず。そうやって会話がはずみ、クリエイティブなアイディアが飛び出し、人間関係も緊密になる、というスパイラルを、ぜひ生み出してみましょう。

3-2. 「甘いモノに甘い言葉」エクササイズ

ビジネスパーソンにとって、次から次へとスケジュールを埋めてしまう会議は、避けて通れない苦行(?)。以下は、会議をポジティブな雰囲気にして、生産性を上げるエクササイズです。

<やり方>
1. 会議の冒頭に、出席者全員にキャンディまたはチョコレートを配って、みんなで食べます。心理学の実験結果が正しければ、上述の「キャンディをもらった内科医」のように、より的確な意思決定ができ、生産性も上がるはずです。
2. 会議のたびにキャンディやチョコレートを食べていたら、さすがに健康に悪いので、その代わりに穏やかな音楽を流したり、あまりきつくないお香やアロマスティックを会議室の入り口に置いたりしてもいいでしょう。聴覚や嗅覚もポジティブ感情を高めるのに役立ちます。
3. もっと直接的な上級編のテクニックになりますが、甘いモノではなく甘い言葉を用いる、という方法もあります。 会議の冒頭に必ずポジティブな発言をするようにするのです。月次の定例営業会議で、前月の業績が良かったときにトップがそれを祝福するのはもちろんのこと、悪かったときでも、叱責・糾弾ではなくまず頑張った人を褒めてみましょう。あるいは、失敗もポジティブに捉え、こんな学びがあった、という発言に変えてみましょう。トップとしてポジティブなことが何一つ思い浮かばなかったときは、「先月以来、今日までに起こった一番よい出来事は?」とメンバーにポジティブ発言をさせます。

<ヒント>
甘党でない人もいらっしゃるとは思いますが、押しなべて甘い物は人の気持ちを和ませます。糖分が脳を活性化させることも関連しているかもしれません。

またぞろソニーの話で恐縮ですが、出井伸之氏が社長だった頃、社長室の会議机には、いろいろな味の飴が詰まった大きなガラスボトルが必ず置いてありました。
社長室内の会議というと、機密性の高いクリティカルな議題が多いのですが、そういうとき、社長自らボトルのふたを開けて、出席者に「ほら」と差し出しておられました。辛党の相手も、社長に差し出されたら有難く押し戴かざるを得ず、でもそれがある意味、場をやわらげていたと思います。
出席者が話す間、社長が飴を噛む(舐めておられませんでした)ガリガリという音が、ちょっぴり恐かったこともありますが(笑)。

管理職の人は、たとえ自分が甘い物好きでなくとも、デスクの上に「キャンディボトル」を用意しておくと、ポジティブな職場づくりに一役買うかもしれません。
また、会議をポジティブな発言で開始する習慣は、ぜひ実践することをお勧めします。

3-3. 「よいこと共有」エクササイズ

「仕事の幸せ度を上げる方法」の記事でご紹介した「3つのよいこと」エクササイズのチーム版です。個人の幸せ度はもちろん、チーム全体のポジティブ度が上がり、チームワークもパフォーマンスも向上します。

<やり方>
1. 部署のメンバー全員で「3つのよいこと(11つでも可)」を実践します。
2. それを定期的に部署内でシェアします。毎日の朝礼で、順繰りに当番のメンバーが前日の「よいこと」を発表する、あるいはグループメールで「よいこと」を発信する。方法はなんでも構いません。
3. できれば毎日、誰かしらが「よいこと」を発信するようにして1カ月ぐらい継続してみます。期限がないと面倒くさくなってダレてくるので、一旦1カ月程度で切るのがよいでしょう。その結果、部署内の雰囲気がどう変わったか観察します。
4. Facebookや社内SNSを使う場合は、「いいね!」は押さない、というルールを徹底しましょう。そうでないと、「あの人は私に『いいね!』してくれたから、私もお返ししなきゃ」とか「彼の『よいこと』には『いいね!』が10個もついてるのに、私は3個」などという気遣いや比較衡量が働いて、かえってポジティブ感情が損なわれる恐れがありますから、ここでは発信オンリー。本当に「いいね!」と思ったら、直接顔を見て「今日の『よいこと』は素晴らしかったね」と声をかけましょう。
5. 「よいこと」のバリエーションとして、「ありがたかったこと」「新しいこと」も効果があります。

<ヒント>
3つのよいこと」エクササイズは、個人でやっても効果がありますが、それをほかの人たちとシェアをすると、幸せ度が増幅します。どんなエクササイズも、一人で黙々と続けるには少なからぬ自制心や辛抱強さが必要ですが、同志がいれば結構頑張れるものです。
また、他人とシェアすることは、それだけで大きなモチベーションになることも、最近のインスタ流行りを見ればよくわかりますね。

他人の「よいこと」を目にすることで、自分も幸せのお裾分けをもらったり、「そういうものの見方もあるのか」といった気づきにもつながります。
一定期間続けていくと一人一人の「よいこと探し」の感度がアップし、またチーム内の会話に自然と「よいこと」についてのやり取りが増えてきます。そのようにして、ポジティビティがチーム内から広がって企業文化として定着していけば、しめたものです。

真面目で保守的な職場なので、ちょっと無理……という場合は、職場ではないサークルを作って実践するのも一つの手です。

筆者は以前「Good New」というサークルに参加したことがあります。異業種のメンバー10数名で、毎日最低1つ、よかったこと、あるいは何か新しいことに取り組んでみたとか新しい発見をしたとか、メールを送り合うのです。
お互い仕事のつながりのないメンバーなので、気楽に発言できるのが一つのメリットでした。


4. まとめ

ポジティブな感情があると、成功しやすくなり、成功すれば、当然ながら喜びや達成感といったポジティブな感情が増し、次の成功に向けた行動への意欲がわいてきます。
「意図的行動」と相まって、ポジティブ感情は、能動的なポジティブスパイラルを創り出す源泉となります。

良好な人間関係を築くには、ネガティブ発言1に対してポジティブ発言を312も口にすることが必要といわれています。特に上に立つリーダーは、チーム全体への影響力が強いので、できるだけポジティブ発言をするよう留意しましょう。

ポジティブ感情は視野を広げ、思考や行動の幅を広げてクリエイティビティを向上させる効果があります。また、「叱るより褒める」ことが大切になってきている昨今、ポジティビティはメンバーのモチベーションアップにも貢献します。
組織全体のポジティビティが上がると、パフォーマンスが向上し、人間関係も良好になるのです。

組織のポジティビティをアップさせるエクササイズとして、以下の3つをご紹介しました。
 ①「ストローで笑顔」エクササイズ
 ②「甘いモノに甘い言葉」エクササイズ
 ③「よいこと共有」エクササイズ
ご自分やご自分の組織と相性のいいエクササイズをぜひ見つけて実践してみてください。ちょっとした変化が現れて、職場の雰囲気が良くなってくるはずです。

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<参考>
*マーガレット・グリーンバーグ、セニア・マイミン(2015)「ポジティブ・リーダーシップ」草思社
*John Gottmann(2007)「The Magic Relationship Ratio」YouTube 
https://www.youtube.com/watch?v=Xw9SE315GtA
*Roy F. Baumeister他(2001)「Bad Is Stronger Than Good」

http://assets.csom.umn.edu/assets/71516.pdf
*クリストファー・ピーターソン(2012)「ポジティブ心理学入門」(春秋社)

*マーティン・セリグマン(2004)「世界でひとつだけの幸せ」(アスペクト)
*マーティン・セリグマン(2014)「ポジティブ心理学の挑戦」(ディスカヴァー21)

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以下6つのカテゴリに用語を分類し、検索しやすいようまとめています。

  • 教育・育成 …ARCSモデル、アクションラーニング など
  • 教育テーマ …アンコンシャスバイアス、サーバントリーダーシップ など
  • 採用・雇用 …インフルエンサー採用、エンプロイアビリティ など
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