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仕事の休憩時間に20分の昼寝 「パワーナップ」で仕事効率アップ!

仕事の休憩時間に20分の昼寝 「パワーナップ」で仕事効率アップ!

休憩時間を過ぎた昼下がり、会議のとき、経理や資料作成など入力作業のときに、ついうつらうつらしてしまうことはありませんか? そうなると、作業は進まないし、ミスも連発、おまけに上司にでも見つかったら注意されることは間違いないでしょう。

また日常的に長時間労働を続けていると、「睡眠負債」が蓄積し、常に睡眠不足の状態にあります。体は眠たいと声を上げているのに、周りの状況がそれを許してくれず、仕方なく仕事をすることになり、仕事効率や意欲も低下します。

この眠気を何とかしたい、と考えている方も多いと思います。そこで、ここでは職場での昼寝の良し悪しについて考えてみましょう。

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1. 昼間に眠くなるのには理由がある

お昼など、休憩時間に食事をして戻ると、どうしても眠くなる人が多いようです。しかし、周りの手前、デスクで寝ることもしにくいものです。食事の時間が決まっていればよいですが、それぞれずらして休憩を取っており、周りで仕事をしている人たちが仕事をしている中で、自分一人だけが「休憩時間だから」とデスクで伏せ寝をしているわけにはいかないでしょう。

しかし、こうした眠気を午後中耐え抜くことは、とてもつらいはず。誰でも一度は経験しているのではないでしょうか。

1-1. 世界レベルで圧倒的に睡眠時間の足りない日本人

長時間労働が当たり前のような、「24時間戦う」時代はもう終わりました。

2019年4月から「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が施行され、「長時間労働の是正」が進められるようになりました。とはいえ、それは「表向き」という企業も多いようで、仕事の持ち帰りや、部下を早く退社させるために上司が残務処理に追われるなど、弊害も起きています。

OECD(経済協力開発機構)の調査でも、欧米の平均睡眠時間は8.3時間に比べて日本人は約7.3時間しか寝ておらず、調査対象となった国では最下位の睡眠時間となっています。

働き方改革関連法についても、労働基準法で取り決められている労働時間との矛盾があり、企業によっては結局長時間労働が解消されない、という悪例もあります。そうなると、日常生活の睡眠不足は必然となり、「睡眠負債」が蓄積し、昼間に眠気に襲われてミスやトラブルが増えるのも無理ありません。

1-2. 人間が持つ機能も眠くなる原因に

人の体質にも原因はあります。人間には体内時計(概日リズム)を持っています。睡眠と覚醒の波を表しているもので、通常の生活をしていた場合、夜中の2~4時、昼間の14~16時にもっとも眠気が訪れます。普通に生活していてもこのように午後は眠くなるのですから、長時間労働が続いていれば、体内時計のリズムが狂った上に睡眠負債をため込み、慢性の寝不足となってしまうのです。

またお昼を食べた午後に、どうしても眠くなるのも人間の持つ体質のひとつです。ご飯や麺類など炭水化物をたっぷりと食べると、それは糖分となります。糖分が上昇すると血糖値を下げるためにインスリンが膵臓から分泌され、その際に眠気が襲ってくるのです。だから、午後にお腹いっぱいご飯などの炭水化物を食べてしまうと、その直後に眠くなるのは仕方ないことなのです。

こうした日常が続き、また運動する機会もほとんどないと、三大成人病のひとつである糖尿病への近道となってしまいます。

いずれにせよ、職場で眠くなる可能性は高く、致し方ないということなのです。

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2. 欧米で推奨される「パワーナップ」という仮眠の仕方とは

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眠くなるのは仕方ないとはいえ、仕事はしなければなりません。眠気を我慢するのではなく、適切な仮眠を取るほうがその後の仕事の効率を高めるという研究結果も出ています。では、適切な仮眠とはどういうことでしょうか。

2-1. 昼寝の効果は科学的に検証されていた

昼寝の効果についてはひと昔前から研究されていたようですが、たとえばNASA(米航空宇宙局)の研究では、パイロットや宇宙飛行士に26分の仮眠をさせてみると、寝起き後の認知能力が34%上昇し、注意力については54%向上したと発表しています。

また2015年に米ミシガン大学の研究チームによって発表された論文があります。これは8歳から50歳までの男女について昼寝が感情のコントロールにどれだけ影響するかを調査し、60分の仮眠を取るグループと取らないグループで比較したところ、問題解決力や忍耐力などに差が生まれ、仮眠を取ったグループのほうが感情のコントロールや集中力などで大きな効果があったとまとめています。

また、長時間睡眠を取らないでいると、ネガティブな感情を抑えることが困難になるともされています。こうしたことがうつ病につながっているのかもしれません。

さらにもうひとつ、2007年にギリシャのアテネ大学による研究では、30分間の昼寝を週に3回以上行うことで、心臓病で死ぬリスクが37%低下するとされています。

このように、短時間の仮眠を取ることは研究結果からも健康に良いことが証明されています。

2-2. 20分の仮眠が脳内を活性化させる

もし休日だったら、午後に何時間でも昼寝をすることはできますが、職場ではそうもいきません。また長時間昼寝をすると、起きたときにボーッとしてなかなか目が覚めない状態になりがちです。職場で適切に仮眠を取るにはどうすればよいのでしょうか。

ここで近年注目されてきたのが「パワーナップ」という仮眠法です。これは「パワーアップ」と昼寝を意味する「ナップ」を合わせた造語で、「ごく短時間の昼寝」のことを表します。前述のNASAの実験もNASA Napsと呼ばれていました。

パワーナップの特徴は、「短時間」という点。しかも15~20分、せいぜい30分弱の集中的な昼寝です。これを実践することによって、眠気解消だけでなく集中力や仕事効率をアップさせることができるのです。前述のNASAの研究を実用化したものだと考えればいいでしょう。

カリフォルニア大学の研究によれば、眠ってから15~20分で訪れる軽い睡眠レベルに達すると、脳内の「キャッシュ」がクリアされて、情報の整理や記憶、効率化など脳の働きが活発になるとのことです。パソコンのキャッシュをたまにクリアしないと動作が遅くなるのと同じ原理です。

ところが30分以上の眠りになると、今度は深い眠りに入ってしまい、目覚めたときに、眠りたりない状態で頭の働きが鈍くなってしまいます。こうした理由から、パワーナップは長くても30分以内、ベストは20分程度とされているのです。

では具体的にどのような効果があるのか、一般的に知られているものを以下に並べてみましょう。

・眠気や疲れが取れる
・ストレスが解消される
・脳の働きが活性化し、集中力が高まる
・リフレッシュしてやる気が出る
・発想力が豊かになる
・作業の優先順位をつけられて仕事の効率化が図れる
・心臓病など病気の予防につながる

こうしてその効果を並べてみると、いかにパワーナップが有意義なのかわかります。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」第8条において、「午後の短い昼寝で眠気をやり過ごし能率改善」と、昼寝(パワーナップ)の効果を認めています。また言い換えるなら、30分以上の長時間仮眠を取ると、上記のメリットと逆の状態に陥りがちになるということです。

人間には体内時計があると述べましたが、通常、太陽の光を浴びたとき、つまり朝にリズムがリセットされて、一日の覚醒と睡眠の波が始まります。その眠気が高まった14~16時のタイミングに近い休憩時間に仮眠を取ることで、体内時計を一時的にリセットできるのです。すると、午前中のように、爽やかな気分でまた仕事に取り組むことができるようになります。


3. 効果的なパワーナップの方法と目覚め方

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欧米でパワーナップの研究が始まってから、「では、どのような眠り方がよいか」「どんな環境が適しているのか」といった試行錯誤が始まりました。その結果、次のようなポイントがわかってきました。

a. どこで寝ても問題ないが、横になってはいけない

人に迷惑をかけないような場所であれば、会社のデスクでも公園でも、どこでも眠ってよいのですが、横になると、完全な睡眠状態になってしまいがちで、30分ではなかなか起きることができません。つまり、目覚めてもぼんやりした状態のままになります。

自分のデスクや休憩スペースなどで、座った状態でうつ伏せになるなどして寝るのがおすすめです。途中で崩れ落ちたりしない、安定した体勢で仮眠を取ってください。

b. 明かりや騒音は特に関係ない

体内時計の働きからすると、光を浴びて活動的な脳内ホルモンが発生するのですが、短時間の仮眠ですから、そこまで大きな影響は及ぼしません。音も意識することはありません。つまり、本人がちょっとでも寝られるような状況であれば、どうでもいいわけです。光が気になるときは、アイマスクをしたり、ジャケットなどをかぶったりすればいいでしょう。

c. なるべくリラックスできる服装で

体を拘束するようなものがあると、眠りにくくなります。できれば腕時計を外したり、靴を脱いだりして、服装も楽な状態にします。特に男性の場合には、ネクタイやベルトも少し緩めると、効果的です。女性は、髪を束ねるゴムやピンなども一時的に外すといいでしょう。

d. 夜もきちんと寝る

昼間に仮眠を取ったとしても、それはほんの一時的な脳の休息です。家で夜ふかししていては、意味がありません。夜もなるべく決まった時間に寝て、規則正しい生活を送る必要があります。

e. パワーナップから目覚める方法

基本的にパワーナップをしたあとは、スッキリした気分になっているはずですが、人によって違いがあります。目覚めてもちょっとぼんやりしている感じだったら、ストレッチをしてみるといいでしょう。血行がよくなり、脳に酸素が行き渡ります。またトイレに向かい、冷たい水で顔を洗うのも効果的です。


4. パワーナップを取り入れている企業、禁止の企業

ところが、こうした仮眠を実際に取り入れている企業があるのです。その一方で、「昼寝は禁止」と導入にはほど遠い企業が多くあるのも事実です。

4-1. Google、ナイキ、日本ではGMO

こうした仮眠を実際に取り入れている企業があります。NASAの研究から始まったこともあり、マイクロソフトやGoogle、ナイキなど欧米の企業がまず率先して制度としてパワーナップを導入しています。

パワーナップは、「シエスタ制度」とも呼ばれます。これは、スペインなどの日差しの強い国で、午後に一旦店を閉めたりするなどして、休みを取る「シエスタ」が由来です。日本でも、この「パワーナップ=シエスタ制度」を取り入れている企業があります。

たとえば有名なところではGMOインターネット株式会社です。社内風景をご覧いただければ一目瞭然ですが、12~20時の間、最大30分利用できる予約制の昼寝スペースを設置しています。ちなみに同社では専門のマッサージ師を置いたマッサージルームもあり、社員のリラクゼーションに力を入れています。

また「働き方改革」の実施とともに「シエスタ制度」を取り入れたのが、デジタルコンサルティング事業などを手掛ける株式会社Speeeです。もともと新しい企業なので、社員に対する自由度も高く、当初から空きスペースなどで仮眠を取る男性社員は多かったようですが、女性社員も増えたこともあり、思い切って増床し、男女に分けた仮眠スペースを設けることになったとのことです。

このほかにも、株式会社ビヨンド、株式会社サニーサイドアップなど、パワーナップを取り入れている企業がわずかながら増えてきています。

4-2. 「だらしない」「昼寝は禁止」という企業も

ただし、気になるのは、基本的にIT系など新しい企業や中小企業での導入が多いということ。いわゆる「重厚長大」な企業や伝統のある企業、さらに官公庁ではほぼ実施されていない点です。怠けているように見え、社員数も多いことから休憩スペースをつくれないなど、大きな改革が難しいことは理解できます。

しかし、それで長時間労働をしているのであれば、実に無駄の多い経営だとも言えなくもありません。

個人的に休憩時間に自分のデスクで寝ている人は多いと思います。しかし、それに対して上司から小言を言われたり、同僚から陰口を言われたりしているかもしれません。訪問客の目についてしまうと、体裁が良くないことも事実です。

今回、この記事を書くにあたってインターネットでも情報を集めた際、悩み相談で「上司から、休憩時間に寝てはいけないと言われた」という相談が目にとまりました。それに対する意見の中には、「休憩時間は何をしても自由、そこまで管理され、束縛される理由はない」というものもありました。これは、周りでまだ働いている人もいるなか、匂いを漂わせながら自分のデスクで昼食を食べてよいかどうか、といった問題とも通じるところがあります。

デスクで突っ伏して寝ても問題ない職場なら別ですが、その行為が評判を落とすようなことになるのであれば、仮眠は困難です。

仮眠を取る際には、休憩室などがあるならそこで、またないなら、どこかひと目のつかないところや、他人の迷惑にならない場所で仮眠を取ることがよいでしょう。肝心なのは20分で起きることです。


5. まとめ

昼寝は、脳の活性化を進め、寝不足解消だけでなく仕事効率のアップにつながる行為です。これはNASAの実験で証明されているものであり、欧米企業でも採用しているところが多々あります。

ただし、制限時間は15~20分。30分を超える仮眠は、睡眠につながってしまうので、寝覚めも悪く、かえって逆効果となります。休憩時間にちょっとだけ寝て、短時間にしっかり起きる。これが仮眠の秘訣です。

しかし、なかなか自分のデスクでは眠ることもできないという場合もあります。そんなときは、使用していない会議室など空きスペースを見つけて仮眠を取りましょう。そして目覚まし時計などをかけて30分以内ですくっと起きることが重要です。

この仮眠はパワーナップ、そして「シエスタ制度」などとも呼ばれますが、日本でも取り入れている企業が増えてきました。ただ、基本的に新しい企業や中小企業、IT系企業などに偏っているのも事実です。昼寝などとんでもないという方針の大企業もあります。

しかし、無駄に長時間労働をしても、仕事効率は向上しません。ただ社員たちが疲弊するだけです。「働き方改革」が動き始めたいま、社員の福利厚生面にも注目し、楽しく効率よく働いてもらう方法をさらに検討することが、これからの企業には必要なのかもしれません。

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参考)
・「あなたの人生を変える睡眠の法則」 菅原洋平著 自由国民社 2012年

・「ビジネスパーソンのための快眠読本」 白川修一郎 ウェッジ 2016年
・「睡眠と脳の科学」 古賀良彦 祥伝社新書 2014年
・江崎グリコ株式会社 栄養成分ナビゲーター エネルギー産生栄養素バランスとは
https://www.glico.co.jp/navi/e04.html

・ZAKZAK 仕事中の「30分の昼寝」で、パフォーマンスはどれほど変わるのか
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190815/dom1908150006-n1.html
・livedoorNEWS 職場で休憩中に昼寝 業務に支障がなければ問題なしと弁護士
https://news.livedoor.com/article/detail/10889710/
・厚生労働省健康局 健康づくりのための睡眠指針2014(2014年3月)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
・Somu-lier オフィスで昼寝もOK!? 生産性向上のための「シエスタ制度」とは
https://www.somu-lier.jp/goodstory/siesta-system/
・Newsphere 「オフィスで昼寝」は良いコトずくめ ナイキやグーグル、日本企業も導入…海外紙が推奨
https://newsphere.jp/entertainment/20140601-1/
・株式会社ビヨンド 【働き方改革】「シエスタ制度」始めました!
https://beyondjapan.com/blog/2018/07/siesta/
・株式会社サニーサイドアップ サニーサイドアップ 32の制度
http://www.ssu.co.jp/corporate/32rule/
・WORK&LIFE 仮眠で生産性向上!3社の取材から見えたパワーナップの取り組みと効果を徹底紹介
https://and-l.jp/magazine/power-nap/
・産経新聞 「昼寝」でリフレッシュ! 生産性向上…推奨企業も(2018年4月12日)
https://www.sankei.com/life/news/180412/lif1804120011-n1.html
・GMOインターネットグループ オフィス環境
https://www.gmo.jp/csr/partners/office/
・Sleep Styles 昼寝(パワーナップ)で業務効率アップ!|正しい昼寝の方法
https://www.sleepstyles.jp/about/archive/7406.html

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