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寝だめでは解消できない睡眠負債を上手に「返済」するテクニック

寝だめでは解消できない睡眠負債を上手に「返済」するテクニック

「ああ、会社に行きたくない!!」

憂鬱(ゆううつ)な気分で渋々ベッドから這い出る月曜日の朝、忙しく働くビジネスマンなら誰しもこのような経験をしているのではないでしょうか。

平日の疲れを癒そうと週末をずっと寝て過ごしていたならなおさら、月曜日の早起きは苦痛で頭もボーッとしているはずです。

このような、月曜日朝の憂鬱状態は「ブルーマンデー症候群」と呼ばれています。「明日から仕事だ」と落ち込む日曜日夜の憂鬱、「サザエさん症候群」はひと昔前にも話題になりましたが、それとほぼセットになるといってもよいでしょう。

しかし、この月曜日朝の憂鬱は、心理的なものだけが原因ではありません。実は、睡眠不足による眠気や体のだるさも一因となっているのです。

睡眠不足は、その後きちんと解消することができなければずっと引きずり、脳に蓄積されていきます。これが最近よく耳にする「睡眠負債」です。

睡眠負債は、2017年度のユーキャン新語・流行語大賞のベストテンにもランキングされました。それほど多くの方を悩ませている問題だといってもよいのかもしれません。

睡眠負債が蓄積すると、ぼんやりとした状態が続くため、仕事の能率が落ち、ミスやトラブルなどの「ヒューマンエラー」が発生しやすくなってしまいます。もし営業活動などで車を運転するような方なら、交通事故につながる可能性も高めてしまうでしょう。

「寝不足の固まり」ともいえる睡眠負債、実は休日の寝だめでは解消できないものなのです。ということは、いったん睡眠負債を背負ってしまったら、二度と逃れることはできないのでしょうか。

いいえ、そのようなことはありません。睡眠負債を上手に解消する方法があるのです。しかしその答えはもちろん寝だめではありません。

今回は、そもそも睡眠負債とは何か、そしてどういう「返済方法」で負債をなくすことができるのか、睡眠負債の解消方法について、ご説明します。

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1. 今さら聞けない、「睡眠負債」とは何か

では、そもそも睡眠負債とは何なのでしょうか。

単なる睡眠不足は、その晩にたっぷり眠れば解消される一時的なものです。しかし、忙しい日々が続いて睡眠時間を十分確保できない場合、睡眠不足は連日のものとなってしまいます。

人は覚醒中、脳の中でプロスタグランディンD2という「睡眠物質」を生産しており、これが睡眠物質の一つであるアデノシンの分泌を促します。そしてアデノシンは、脳内の神経を鎮めるGABAという物質を増やし、脳を起こしておくヒスタミンという物質を抑制します。

これによって眠くなり、疲れた脳を休ませることができます。

睡眠物質は、必要な時間を眠ることによって分解され、起床後には脳がすっきりとした状態で活動し始めます。しかし、睡眠不足が続くと、睡眠物質の分解が途中で止まり、本来分解されるはずの分を残したまま、次の日を迎えることになります。このサイクルが連続すると、睡眠物質は毎日少しずつ蓄積されていくのです。

睡眠という状態が深部体温リズムと連動して起きることは、前回の『「寝る練習」で睡眠効率を上げて脳を活性化し、仕事のパフォーマンスを上げる方法』で紹介しました。この深部体温のリズムに逆らって夜ふかしをすると、前述の睡眠物質を分解しきることができず、残ったまま翌日を迎えることになります。覚醒・睡眠と睡眠物質量の関係
※「2プロセスモデル」を基に編集部で作成

フローニンゲン大学名誉教授で行動生物学者サージ・ダーン博士による概日リズムの研究で、深部体温と睡眠物質量の変化を示す「2プロセスモデル」が紹介されました。その図に睡眠不足の状態を書き加えたものが上の図です。睡眠物質が分解されず、脳内に残っている様子を示しています。

「寝不足が続いても、週末にたっぷり眠ったらよいはず」

誰もがそう思うでしょう。いわゆる、寝だめです。多くの方が寝だめをしたことがあると思いますが、ぜひ思い返してみてください。そして自分の体に聞いてみてください。

寝だめをして、1週間の睡眠不足が解消されましたか?

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2. 週末の寝だめでは解消できない理由

前回の記事で、最低限必要な睡眠時間を6時間としました。これについては、7時間と主張する研究者もいますし、個人差もあります。ただ前回と統一するために、基本的な睡眠時間は最低6時間とし、7時間取れればなおよし、という前提で説明します。

人間の体には「体内時計(サーカディアン・リズム=概日リズム)」があり、およそ25時間周期で1日を過ごすため、朝目覚めたときに太陽の光を浴びることによって、体内時計をリセットし、1日のスタートとする旨を説明しました。

これに加えて、もう一つ新たな事実が分かりました。それは、アメリカ科学振興協会の学術雑誌『Science』(2016年8月12日号)上で、ベルギー・リエージュ大学のグループが発表した研究報告によるものです。

同グループは、健康的な若者33人に対して不眠状態での反応や注意力を調べる試験を実施しました。当然、不眠時間が長くなるほど注意力は落ち、反応も鈍くなっていく経過が数値として分かった一方で、「恒常的睡眠欲」が脳に及ぼす影響も同時に確認できたのです。

恒常的睡眠欲とは、起き続けていればいるほど、同じ分だけ長く眠っていたくなるという欲求で、その存在自体は知られていました。この研究グループは、若者たちの脳のMRI検査を行った結果、前述の体内時計と恒常的睡眠欲が、同時に脳の異なった部分で働いていることを確認したのです。

体内時計により、光に反応して睡眠と覚醒のサイクルをつくりながらも、光とは関係なく、起きていた分だけ眠りたくなる欲求があるということは、人間の体には相対する二つの時計が共存していることを意味します。

しかも、恒常的睡眠欲より体内時計の方が優先されることが分かりました。つまり、睡眠不足だからずっと眠っていたいと思っていても、体内時計が光に反応し、その欲求にブレーキをかけて起きてしまうのです。

これを週末の生活に置き換えると、連日夜ふかししていたから土日は寝だめするつもりだったのに、体内時計のせいで起きてしまうという状態です。無理して寝ていても浅い眠りになるため、睡眠の質は悪くなります。

つまり、「寝だめをしても効果がない」のです。それを科学的に証明したのが、この研究報告でした。

これを図にすると以下のようになります。必要な睡眠時間が6~7時間とすると、下の5時間は確実に1時間の不足です。また10時間寝だめをした場合、体内時計が25時間周期という誤差を考慮に入れても、質の悪い睡眠が2時間できてしまい、眠っている意味がありません。

寝だめと睡眠不足の比較図

では、この生活を1週間続けるとどうなるでしょうか。

1週間の寝不足と寝だめの失敗例
※菅原洋平著「あなたの人生を変える睡眠の法則」自由国民社.の返済モデルを基に編集部で作成

個人差があるので単純に計算はできませんが、あくまで分かりやすくモデルとして作成すると、上のような図になります。

土曜日に寝だめをすると、日曜日は土曜日の影響で寝付きにくくなります。仮に2時まで起きていたとして、日曜日も寝だめをすると、まず生活のリズムや体内時計のリズムが崩れます

そして月曜日1時に寝て、通常の起床時間である6時に起きると、前日の乱れたリズムの影響と睡眠時間の急な短縮により、1~2時間の寝不足状態に陥って月曜日の朝を迎えることになります。

そのまま火~金曜日まで、仕事などの影響で5時間しか眠れないとすると、睡眠時間は毎日1時間不足し、その分の睡眠物質が蓄積、最後の金曜日の段階で5~6時間の睡眠不足状態となってしまいます。

これに金曜日の日中の覚醒時間が加わるため、金曜日の18時の時点で、脳と体は実質23時と同じ状態になっています。

もし、また週末で寝だめ(睡眠の失敗)をして次の金曜日を迎えた場合、さらに上乗せされておよそ10時間の睡眠不足を抱えるので、金曜日の18時には一晩徹夜したのとほぼ同じような状態になるわけです。

1997年にDawson & Reidが「Nature」誌に発表した研究論文があります。これは、起床してから1時間ごとにある作業をしてもらい、その作業量を調査した結果と、同一被験者たちに対して別の機会に、アルコールを少しずつ飲みながら同じ作業をしてもらった結果を比較したものです。

それによると、朝9時からスタートして眠らずに作業をすると、21時を過ぎたころから作業量が落ち始め、翌5時が最も作業量が低くなりました。そのときの作業量は、アルコールを飲んで軽い酩酊状態になったときとほぼ同じでした。つまり過度な睡眠不足は、酔っ払った状態と同レベルであるということです。

1日の徹夜でこの結果が生まれるのですから、睡眠負債を多量に抱えた状態での仕事は、ヒューマンエラーを起して当たり前といえるでしょう。

日本で深夜バスの転落事故によって多数の死傷者を出した事件がありましたが、その原因はドライバーの超過勤務による疲労と睡眠不足でした。

睡眠不足に由来するヒューマンエラーを原因とする事故が発生しているのは、日本だけではありません。

例えば、1979年に米国スリーマイル島原子力発電所の炉心融解および放射能放出という大きな事故がありました。この事故の原因も、疲労と睡眠不足を抱えた担当者が機械の故障を見逃すというヒューマンエラーによるものだったことが、後の「米国議会睡眠障害Dement委員会報告書」で明らかにされています。

このように、睡眠不足は集中力や注意力を奪い、ときには取り返しのつかない事故につながってしまうのです。


3. 睡眠負債をきちんと解消する正しい方法

では、睡眠負債を実際に効率よく「返済」していくにはどうすればよいのでしょうか。

前述の研究で、恒常的睡眠欲よりも体内時計の方が優先されるという結果がありました。人間、規則正しい生活をすることが大切であるということを間接的に主張しているのかもしれません。

結論から述べると、睡眠負債はその週の間にちょっとした早寝を繰り返して返済するしか方法がありません。

下記は、ちょっとした早寝を毎日続けて睡眠負債を返済するモデルです。これは菅原洋平著「あなたの人生を変える睡眠の法則」(自由国民社)の返済モデルを、もう少し単純化して作成したものです。数値も分かりやすくするために補足しました。

睡眠負債解消のモデル

※菅原洋平著「あなたの人生を変える睡眠の法則」自由国民社.の返済モデルを基に編集部で作成

例えば日~月曜日に、1~2時間睡眠不足になったとします。そこで睡眠不足を解消するために、火曜日(つまり月曜夜)に30分だけ早く眠りにつくのです。水~金曜日も同様に30分早く眠ると、平日前半でだいぶ体の調子が良くなってきて、後半では計算上、睡眠負債がほぼ解消されることになります。

そうなると、土曜日は無理に寝だめをする必要がなくなり、日曜日も同様に、適切な生活リズムで過ごすことができるわけです。

これはあくまで単純化したもので、個人差や環境の違いなどがあるため一概に決定付けることはできません。一つの解消パターンとして理解していただければよいと思います。

早寝もここでは30分としましたが、30分でなくても構いませんし、早く帰ってきて眠ることができる日が途中にあるならば、それに合わせて解消方法を再検討することもできます。

また、仕事の昼休みに仮眠を取れるなら、その点でも状況は異なります。どうしても週末に寝足りないときは、1時間程度の昼寝をしてもよいでしょう。

まずは睡眠負債をため込まず、その1週間のうちで解消していく、という週の生活リズムを適宜つくることが大切です。睡眠負債について、自分なりの「分割払い」のペースをつくっていくわけです。

こうした対策を習慣化すれば、ヒューマンエラーも減り、爽快な気持ちで毎日を過ごせるはずです。一方で、このような対策を施しても体調が優れない場合には、睡眠不足やその他の原因により別の病気が引き起こされている可能性があります。その際には、病院で診断を受けた方がよいでしょう。


4. まとめ

月曜日の朝は憂鬱で体もだるく、疲れが取れていないという状態を「ブルーマンデー症候群」と呼びます。これは、睡眠物質が脳内に残っていることが原因となって起こります。

睡眠不足が続く生活を送っていると、睡眠不足が蓄積されていきます。これが、睡眠負債です。

人間の体には25時間周期の体内時計と、恒常的睡眠欲という時計が備わっています。恒常的睡眠欲とは、起きていた分だけ眠っていたいという欲求です。

この2つが脳の中で拮抗した場合は体内時計の方が優位に働くため、寝だめをしようとしても眠いのに体は起きてしまう、もしくはずるずると浅く質の悪い睡眠を続けることになります。つまり、寝だめは科学的見地からしても効果がないことが証明されました。

もしそのまま睡眠負債がたまり続けると、仕事の能率が著しく低下し、人的ミス、いわゆるヒューマンエラーを起こしやすくなります。最悪の場合、大きな事故につながりかねません。

では、どうすれば睡眠負債を「返済」することができるのか。それは、平日の夜、数十分でもよいから時間を前倒して眠りにつくことです。平日の睡眠時間を少し伸ばすことによって、週末にはある程度の負債を返済することができています。

そこからは体内時計に従って、規則正しいリズムで週末を過ごせば、月曜日の朝にブルーマンデー症候群になることはほぼなくなるはずです。

人によっては、日中に短時間の仮眠を取ったり、週末に軽く昼寝をしたりするのもよいでしょう。自分の生活習慣や環境に合わせて睡眠時間を調整すれば、睡眠負債を背負うことなく快適な毎日を過ごすことができます。

睡眠負債については、「1週間で分割払い」を心掛けていきましょう。

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参考)
・厚生労働省(2014)「健康づくりのための睡眠指針2014」
<http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf>
・フミナーズ(2017)「休日の寝だめは効果なし!睡眠不足の正しい解消法とは」
<https://fuminners.jp/newsranking/7848/>
・世界睡眠会議(2016)「寝だめができない理由が科学的に判明!」
<http://suiminkaigi.jp/news/suimmernews20161130>
・公益財団法人労働科学研究所慢性疲労研究センター(2012)「健康,安全,生活の質から見た看護師の夜勤リスク」
<https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/document/report/pdf/kangokanri-1.pdf>
・粂和彦(2010)「奈良女子大学 基礎栄養学特別講義Ⅰ 生物リズム・睡眠と栄養」
<http://k-net.org/narajo1.pdf>
・航空医学研究センター(1998)「乗員の健康管理 サーキュラー」
<http://www.aeromedical.or.jp/circular/pdf/21go.pdf>
・菅原洋平(2012)「あなたの人生を変える睡眠の法則」自由国民社.
・白川修一郎(2016)「ビジネスパーソンのための快眠読本」ウェッジ.
・古賀良彦(2014)「睡眠と脳の科学」祥伝社新書.

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