おすすめ記事

人材育成の効率的な進め方 企業に役立つ手法,プログラム,ツール紹介

働き方改革とは 始動の背景と企業が取り組むべき内容を丁寧に解説

「働き方改革」というと、残業規制、ワークライフバランス、賃上げ、テレワークなどのキーワードが浮かぶ方が多いのではないでしょうか。

いずれも、政府の指針や企業の取り組み例などに関連して耳にするものばかりです。働き方改革に関する報道は、目にしない日はないといっても過言ではないほどさかんに行われています。

20169月に打ち出され、政府主導で推進されている働き方改革。

すでに約半数の企業で完了または推進中という段階に来ています。日本オラクルの調査によると、取り組んでいる企業は約8割で、約半数が「効果を実感している」と答えています。一方で、「業務量が減らないのに就業時間ばかり早められている」といった嘆きの声も少なくありません。

単に時短にしたりツールを導入するだけにならないようにするには、そもそも働き方改革が社会をどう変化させるために打ち出されたのか、背景にある課題意識と「目的地」を理解することが重要です。

本稿では、働き方改革が打ち出された背景と目的、そして政府から公表されている企業が取り組むべき項目について「働き方改革実行計画」に掲げられた9つのテーマについて、わかりやく丁寧に解説しますしていきます。

無料eBook「人事用語事典」

ライトワークスブログに掲載された記事からピックアップした企業の人事に関連する163の用語が収録されています。

以下6つのカテゴリに用語を分類し、検索しやすいようまとめています。

  • 教育・育成
    …ARCSモデル、アクションラーニング など
  • 教育テーマ
    …アンコンシャスバイアス、サーバントリーダーシップ など
  • 採用・雇用
    …インフルエンサー採用、エンプロイアビリティ など
  • 人事企画
    …健康経営、従業員エンゲージメント など
  • 制度・環境の整備
    …インクルージョン、ピアボーナス など
  • 労務管理
    …がんサバイバー、36協定 など

ぜひ様々なシーンでお役立てください。


1. そもそも働き方改革が必要になった背景とは?

働き方改革の背景にあるのは、人口動態の変化による働き手不足という構造的な問題や、20年もの間、先進諸国の中で最低水準が続いている労働生産性といった問題です。

まず、これらの問題について、政府の取り組みの概要とあわせて説明いたします。

1-1. 労働人口の減少による、働き手不足という問題

働き手不足という問題は、総人口の減少や、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少など、人口動態の変化によって起こっています。

日本の出生数は2016年度に過去最低を記録しました。少子高齢化は加速し、2030年には3人に1人が高齢者65歳以上)になると言われています。子供が減り、高齢者の割合が増えていくため、当然、生産年齢人口と呼ばれる15歳以上65歳未満の人口は減少していきます。一方で、「人生100年時代」と言われるように、定年になっても働きたいと答える高齢者は7割に上ると言います。

従来、働き手の多くは2060代の男性でしたが、そこに女性や高齢者が進出し、相対的に若手男性は減ってきています。また、グローバル化の進展もあり、外国人材が増えてきました。実に多様な働き手が日本の経済を支えるようになっているのです。

女性や高齢者の労働や外国人材の増加により、働き手不足という問題は解決に向かうように思えますが…そううまくはいかないようです。それぞれの人に合った労務制度の整備が進んでいないため、女性が結婚・出産というライフステージの変化と共に引退を余儀なくされたり、働きたい高齢者も定年制度によって職場を離れざるを得ない、といった事態が発生しているのです。外国人労働者については、環境の整備不足や待遇問題、不法就労などの問題が浮上しています。

1-2. 長時間労働が原因? 労働生産性が低いという問題

近年、過労死や労働災害など、行き過ぎた長時間労働が命にかかわる事態に発展するケースが多発し、注目を集めていることはご存知かと思います。伝統的な日本企業では、残業することがよしとされる風潮があったため、長時間労働が当然のように行われてきました。

長時間労働は、労働生産性を下げるだけでなく、社員の健康を損ないます。また、仕事と家庭生活の両立を困難にするため、少子化の原因、女性のキャリア形成阻害、男性の家庭参加を阻む原因ともなっています。

日本の労働生産性は経済協力開発機構(OECD)加盟国でも最低水準。生産性が低いから長時間労働が必要なのか、長時間労働によって生産性が低下しているのか。「長時間労働が当たり前」という環境では、社員の士気も生産性も「下がって当たり前」なのではないでしょうか。「労働時間の適正化」のためには、この状況を早急に改善しなければなりません。

1-3. 働き方改革の背景にある問題に対して、政府の取り組みは?

こうした問題に対し、国はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

政府が20173月に公表した「働き方改革実行計画」には、「日本経済の再生を実現するためには、投資やイノベーションの促進を通じた付加価値生産性の向上と、労働参加率の向上を図る必要がある。そのためには、誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できる社会を創ることが必要である」とあります。

これを読み解くに、現時点での働き方改革の“目的地”は、「誰もが生きがいを持って、その能力を最大限発揮できるようにすること」と考えることができそうです。そこに至れば、「付加価値生産性の向上、労働参加率の向上」がついてくるというわけです。従業員を早く帰宅させる、モバイルワークできるインフラを整える、といった施策は手段であり、目的ではないのです。

また、実行計画には「改革の目指すところは、働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにすることである。多様な働き方が可能な中において、自分の未来を自ら創っていくことができる社会を創る。意欲ある方々に多様なチャンスを生み出す」とあります。

この目的地に到達するために挙げられているテーマは9つあります。2章で詳しく見ていきましょう。


2. 企業の取り組みに関係する項目

「働き方改革実行計画」には、具体的な取り組みとして以下の9つのテーマが掲げられています。

  1. 非正規の処遇改善(同一労働同一賃金など)
  2. 賃金引き上げと労働生産性向上
  3. 長時間労働の是正
  4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
  6. 外国人材の受入れ
  7. 女性・若者が活躍しやすい環境整備
  8. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、格差を固定させない教育の充実
  9. 高齢者の就業促進

13はすでに具体的な指針が出ていますが、4以降は検討中の段階です。

本章では、それぞれの項目について、現段階の「働き方改革実行計画」を要約する形でご紹介します。それぞれのゴールとそれを目指すための手段をできるだけ分かりやすくまとめましたので、自社が今後「働き方改革」に関連して行っていくべき取り組みを検討する際の参考にしていただければと思います。

また、25節でご紹介する「両立支援コーディネーター」のように、働き方改革を進める中で、これまでにない人材やポストが必要になったり、新たなビジネスが生まれたりすることもあるかもしれません。そのようなヒントとしてもぜひお役立てください。

2-1. 非正規雇用の処遇改善(同一労働同一賃金など):見るべきは雇用形態ではなく「働き」

2-1-1. 目的と方向性

「非正規雇用の処遇改善」で政府が目指しているのは、正社員と非正規社員の処遇差をなくし、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられるようにすることです。多様な働き方を自由に選択できる体制を作り、労働人口を増やすことが狙いです。

具体的な対策は、有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者と、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)との間に潜在する賃金や手当、福利厚生などに関する不合理な待遇差を解消することです。

このために各事業者が取り組むべきガイドラインと、法改正の方向性が具体的に示されています。以下にご紹介します。

2-1-2. ガイドライン

「働き方改革実行計画」には、事業者に求められる対応の指針(ガイドライン)が示されています。「非正規雇用の処遇改善」については、①基本給、②各種手当、③福利厚生と教育訓練の待遇差を解消すること、④派遣労働者の扱い、4つの項目が設けられています。以下、抜粋してご紹介します。

(1) 基本給の均等・均衡待遇の確保

基本給・昇給が、実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める。 

 

(2) 各種手当の均等・均衡待遇の確保

賞与は、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を。役職手当も、同一の役職・責任には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を。各種手当は同一の支給を求める。

※「正社員と非正規社員には将来の役割期待が異なるため、賃金の決定基準・ルールが異なる」という説明がよくされるものの、これでは足りないとしており、「職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情の客観的・具体的な実態に照らして、不合理なものであってはならない」としています。 

 

(3) 福利厚生や教育訓練の均等・均衡待遇の確保

福利厚生施設、転勤者用社宅、慶弔休暇、勤務免除・有給保障、病気休職、法定外年休については同一の付与を求める。教育訓練については、同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を求める。

 

(4) 派遣労働者の取り扱い

派遣元事業者は派遣労働者に対し、派遣先の労働者と職務内容、職務内容・ 配置の変更範囲、その他の事情が同一であれば同一の、違いがあれば違いに 応じた賃金の支給、福利厚生、教育訓練の実施を求める。

2-1-3. 法改正の方向性

待遇差が改善されなければ、最終的には裁判で解決することも想定されます。このために根拠となる法を整備したり、裁判のハードルを下げる制度を整備したりします。

また、派遣労働者に関する法整備では、派遣先が変わるたびに賃金が変わり不安定になることが想定されるため、派遣労働者の待遇が十分に守られていれば同一労働同一賃金の適用を除外するとしています。以下、抜粋します。

(1) 労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備

現行制度では非正規労働者の均等・均衡待遇について規制が整っていないため、法改正で均等・均衡待遇を求める法改正をする。

 

(2) 労働者に対する待遇に関する説明の義務化

現行制度では、事業者には待遇差について非正規労働者に説明する義務がないため、説明義務を課するようにする。

 

(3) 行政による裁判外紛争解決手続の整備

待遇差の是正を求める労働者が裁判に訴えることができるよう、裁判外紛争解決手段(行政ADR)を整備し、無料で利用できるようにする。

 

(4) 派遣労働者に関する法整備

派遣元事業者が派遣先事業者の待遇に関する情報を得られるように、提供義務の規定を整備する。ただし、同一労働同一賃金の適用により、派遣先が変わるごとに賃金水準が変わることで不安定となり、派遣元事業者による段階的・体系的な教育訓練等のキャリアアップ支援と不整合な事態を招くこともありうる。このため、ドイツの例に倣い、次の3要件を満たす場合は、派遣先との均等・均衡待遇を求めない。

 ① 同種業務の一般の労働者の賃金水準と同等以上であること。
 ② 派遣労働者のキャリア形成を前提に能力を適切に評価して賃金に反映させていくこと。
 ③ 賃金以外の待遇について派遣元事業者に雇われている正規雇用労働者の待遇と比較して不合理でないこと。

2-2. 賃金引上げと労働生産性向上

この項目の目的は、賃上げによって労働分配率を上昇させ、経済を好循環させることです。このために最低賃金の引き上げ生産性向上に取り組む企業を優遇する制度を作っていくとしています。

(1) 最低賃金の引き上げ

最低賃金を、年率3%程度をめどに引き上げていくとしています。また、下請け企業に不利な取引をする、いわゆる「下請けいじめ」をなくすため、下請法の運用基準を改定。下請け取引の条件改善を厳格に進めるとしています。

 

(2) 生産性向上に取り組む企業を支援

賃上げに積極的な事業者を税額控除の拡充で後押しするほか、生産性向上に資する人事評価制度・賃金制度を整備し、生産性向上と賃上げを実現した企業への助成制度を創設するとしています。

2-3. 長時間労働の是正:心身共に健康的に働けることで生産性UP

働き方改革について話される時、世間の関心が最も高いのは「長時間労働の是正」ではないでしょうか。残業時間の上限を何時間に設定するのか、「過労死ライン」という言葉と共に注目されています。

この項目の目的は、長時間労働を是正することで、以下を実現することです。

① 仕事と子育ての両立ができるようにすること
② 労働者の健康を確保すること
③ 単位時間当たりの生産性を上げること
④ ワークライフバランスの回線により女性や高齢者が働きやすいようにすること

労働者の健康を確保するという目標も含まれているため、労働時間管理の厳格化だけでなく、パワハラ対策メンタルヘルス対策も同時に進める検討をするとしています。 

現行の労働基準法では、36協定によって労使が合意すれば上限なく時間外労働をすることが可能になっています。時間外労働の上限を原則として月45時間以内、かつ年360時間以内と定めているものの、罰則がなく強制力がないためです。

法改正の方向性としては、この原則となる「月45時間かつ年360時間」の上限時間に強制力を持たせるために罰則をつけること、労使が合意していても上回ることのできない上限を設定することです。

具体的には、労使の合意があっても上回れない時間外労働の上限時間は、年720時間(月平均60時間)とされています。さらに、①26カ月の平均で80時間以内(休日労働含む)であること、②単月では100時間未満とすること、③「月45時間かつ年360時間」の原則を超えるのは年6回までとすることとされています。

ここまでの項目ではすでに具体的な方針が示されていますが、以降の項目はまさに検討中のため、今後の議論が注目されます。ここでは明らかになっている範囲のことをお伝えします。

2-4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備:ダイバーシティの許容範囲拡大

「柔軟な働き方がしやすい環境整備」を行う目的は、以下の3つです。

①テレワーク導入により時間・空間の制約にとらわれることなく働けるようにし、子育て・介護と仕事を両立する手段とすること
②多様な人材の能力発揮を可能にすること
③副業・兼業では新しい技術開発、オープンイノベーション、起業の手段とすること

「テレワーク」「副業・兼業」もホットなキーワードの一つになってきましたので、関心のある方も多いのではないでしょうか。いずれも、生活スタイルに合わせた柔軟な働き方を実現するものですが、長時間労働を招く危険性が伴うため、ガイドラインの整備が待たれます。

以下では、それぞれの働き方の検討状況について解説します。

2-4-1. テレワーク

テレワークには、雇用契約をしている労働者が遠隔で働く形態の「雇用型テレワーク」と、クラウドソーシングなど雇用契約を介さない「非雇用型テレワーク」があります。

雇用型テレワークは、従来は在宅勤務形態のみが想定されていましたが、最近はサテライトオフィス勤務やモバイル勤務という形態も増加しています。従来の在宅を前提としたガイドラインに、これらの新しい勤務形態も追加されます。

このような多様な働き方は、働く時間帯や場所に制約のある方にとって魅力的ですが、自由度が高い分、長時間労働につながる恐れがあるため、労働時間管理を適切に行う必要があります。また、さまざまなICT利用環境を利用するためセキュリティ面での対応も必至です。これらの具体的なガイドラインについては現在整理が進められています。

一方の非雇用型テレワークでは、雇用契約がないということもあり、過重労働や報酬などを巡るトラブルがすでに顕在化しています。このため、働き手を保護するための法律整備や、セーフティネット整備教育訓練などの支援が検討されています。発注者向けのガイドラインも改定される見込みです。

2-4-2. 副業・兼業

現状、副業・兼業を認めている企業は少ないですが、今後は、合理的な理由なく副業・兼業を制限することができなくなります。つまり、副業・兼業が容認されるようになります。

これについては20171219日にガイドラインが取りまとめられており、労働時間の把握や、健康管理、秘密の漏洩を防ぐために届け出をさせることなどが盛り込まれました。20181月には周知されるようです。

経団連は長らく「推奨できない」としてきたものの、201712月に容認の方向に転換。取り組みが遅れている大企業でも、今後は容認に向かう動きが予想されます。

2-5. 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進:個人事情の尊重

病気の治療や子育て・介護などが理由で仕事ができない状況を改善すること、また、障害者が希望や能力、適性を十分に生かし、障害の特性に応じて活躍できること、共生できるようにすることを目指します。いずれも、事業者側の体制の整備に重きが置かれています。

個別に見てみましょう。

2-5-1. 病気の治療と仕事の両立

病気を治療しながら働く人は労働人口の3人に1人を占めると言います。

しかし、病気を理由にやめざるを得なかったり、職場の理解が乏しかったりと、事際の両立には困難が伴います。キャリアを失うことを恐れて周囲に言えないまま働いているケースや、倦怠感やうつ症状などの副作用を周囲に理解してもらえず、必要以上に頑張ってしまい、体を壊して退職に至るケースもあります。

これに対して、経営者や管理職の意識改革と、社内制度の整備が重要視されています。さらに、「主治医」と「会社・産業医」と、両者をつなぐ「両立支援コーディネーター」の3者からなる「トライアングル型支援体制」を構築するとしています。また、労働者の健康管理や相談支援機能を強化するため、産業医・産業保健機能の強化が図られます。

2-5-2. 子育て・介護

待機児童解消に向けてはすでに取り組まれていますが、いまだ改善が待たれている状況です。保育も介護も、まだまだ受け皿の拡大が必要であるため、職員の処遇改善キャリアアップの仕組みづくりが進められています。

また、育児・介護の負担が女性に偏りがちな現状を踏まえ、男性の育児参加を促す取り組みも進められています。

2-5-3. 障害者就労の支援

障害者の就労には、雇用状況だけでなく、社内理解や作業内容の改善などの課題があります。対策として、20184月からまずは法定雇用率を引き上げるとしています。また、障害者の受け入れを進めるために、実習による受け入れ支援ノウハウを学べる研修障害者雇用に知見のある企業OBなどの紹介・派遣などをするとしています。

また、発達障害も含め、障害の特性に応じた修学・就労支援ができるよう、教育・福祉・医療などの機関と企業が連携する体制を構築。さらに、在宅就業や就農などを促進するため、企業支援制度などを整備するとしています。

2-6. 外国人材の受入れ:イノベーションのための開国と選んでもらうための環境整備

この項目の目的は、イノベーション創出を通じて国の経済全体の生産性を向上させることです。そのために高度な技術・知識を持った外国人材を積極的に受け入れるとしています。

高度外国人材を受け入れるためには、就労環境への不満をなくし、魅力的な環境を整備する必要があります。就労環境への不満とは、例えば、職務の不明確さ評価システムの不透明さ求められる日本語能力の高さなどです。企業においては職務を明確にし、公正な評価・処遇を整備する必要があります。

政府は、高度外国人材が長く日本で活躍してもらうために永住許可申請にかかる在留期間を現行の5年から1年に短縮するとしています。

2-7. 女性・若者が活躍しやすい環境整備

この項目の目的は、育児で離職した女性、就職氷河期世代に非正規のまま就業している人、高校中退者など、働き手として十分に活躍しきれていない人材を生かすことだと言えます。教育支援や復職支援の制度を拡充する方向です。

個別に見てみましょう。

2-7-1. 女性

女性の就労を巡る問題には、様々な要素があります。
例えば、出産・育児をきっかけにいったん離職した女性が、復職・再就職の際に過去の経験や職業能力を活かせないケースが多くなっています。このため、リカレント教育(労働などの活動と教育を交互にすること)を受ける機会を拡充するとしています。

教育訓練給付の上限額と給付期間を引き上げるほか、土日・夜間、eラーニングなど教育講座を開拓する、特に、高度なIT分野を中心に今後需要が見込まれるスキル受講を支援します。

また、女性活躍に向けた企業の取り組みについても促進を図ります。女性活躍推進法が強化され、労働時間、男性の育休、女性の管理職比率などの個別の企業情報が公表されるようになる見込みです。

この他にも、配偶者控除や配偶者手当を受ける際の配偶者の収入に制限を設けたり、復職制度を持つ企業の情報公開を推進し、復職に積極的な企業を支援する助成金を創設するなど、女性を就労に導くための施策が検討されています。

2-7-2. 若者

就職氷河期に卒業した人の中には、正社員になれず非正規で働いている人が多く、格差の固定化・拡大が懸念されています。若者の活躍を促進するためには、こうした傾向に歯止めをかける必要があります。

また、離転職を繰り返すフリーターの正社員化に向けた支援なども検討されています。

2-8. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、格差を固定させない教育の充実

産業や階層を超え、社会における人の流動性を高めようとするものです。少々背景が異なるので、「雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援」「格差を固定させない教育」の2つに分けてご紹介します。

2-8-1. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援

この項目の目的は、以下を実現することです。

① 労働者が自分に合った働き方を選択してキャリアを自ら設計できるようにすること
② 急速に変化するビジネス環境の中で、企業が必要な人材を速やかに確保できるようにすること

そのために、転職・再就職など新卒以外の採用機会を拡大し、転職が不利にならない柔軟な労働市場や企業慣行を確立することなどが求められています。こうした環境を整備するため、受け入れ企業への支援や、就職支援体制強化などが促進されるよう、助成制度の創設が検討されています。

2-8-2. 格差を固定させない教育

親の経済事情が子どもの学力成績や進路に影響を及ぼしていることは、調査で明らかになっています。この項目の目的は、家庭の経済事情にかかわらず、希望するすべての子どもたちが進学できる環境を整えることです。

このため、返還不要の奨学金制度創設や、幼児教育の無償化などの制度が整備されつつあります。

2-9. 高齢者の就業促進

この項目の目的は、以下を実現することです。

①65歳で定年になってもまだ働きたい高齢者が年齢によってではなく職務能力評価によって働けるようにすること
②多様な技術・経験を持つシニア層が一つの企業にとどまらず、幅広く社会貢献できる仕組みを作ること

そのために、定年延長に取り組む企業への支援や助成制度を創設し、2020年まで集中的に推進するとしています。

また、2-4の副業・兼業や、2-8の転職・再就職の推進が、高齢者になってからの就業の幅を広げる布石にもなります。


3. まとめ

ここまで、働き方改革の具体的な指針を確認してきました。

人口動態の変化や長時間労働による弊害などを課題として始まった働き方改革。取り組みは9つに分けられていますが、それぞれの取り組みは有機的につながっています。すべては、1人ひとりがどんな働き方を選んでも、生きがいをもって能力を発揮できるようになることが目標です。

  1. 非正規の処遇改善(同一労働同一賃金など)
  2. 賃金引き上げと労働生産性向上
  3. 長時間労働の是正
  4. 柔軟な働き方がしやすい環境整備
  5. 病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
  6. 外国人材の受入れ
  7. 女性・若者が活躍しやすい環境整備
  8. 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、格差を固定させない教育の充実
  9. 高齢者の就業促進

一連の項目の内容を総括すると、「日本人の生活観の改革」ともいえそうです。長年培われてきた価値観を覆すには時間がかかるものですが、新しい時代に合った新しい価値観こそが、その時代を幸せに生きるカギなのかもしれません。

ぜひあなたの会社の、そしてあなた自身の今後の働き方の参考にしてください。

参考)
・マイナビニュース(2017/11/2)「働き方改革の取り組みで最もうまくいっているのは『残業時間の削減』」
https://news.mynavi.jp/article/20171102-a180/
・ZDNet Japan(2017/11/2)「8割が働き方改革に着手、ICTの積極活用は7%–日本オラクル調査」

https://japan.zdnet.com/article/35109745/ 
・政府資料:働き方改革実行計画(2017年3月28日)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/pdf/honbun_h290328.pdf 
・産経ニュース(2017/12/18)「経団連、副業・兼業容認へ転換 年初にも方針 働き方改革の一環で各社に検討促す」
http://www.sankei.com/economy/news/171218/ecn1712180006-n1.html 
・YOMIURI ONLINE(2017/12/25)「『10歳の壁』から貧困家庭の子どもを救え」
http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20171222-OYT8T50029.html 
・日本経済新聞(2017/11/27)「幼児教育無償化、来夏までに詰め 衆院予算委で首相」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23928630X21C17A1EAF000/

無料eBook「人事用語事典」

ライトワークスブログに掲載された記事からピックアップした企業の人事に関連する163の用語が収録されています。

以下6つのカテゴリに用語を分類し、検索しやすいようまとめています。

  • 教育・育成 …ARCSモデル、アクションラーニング など
  • 教育テーマ …アンコンシャスバイアス、サーバントリーダーシップ など
  • 採用・雇用 …インフルエンサー採用、エンプロイアビリティ など
  • 人事企画 …健康経営、従業員エンゲージメント など
  • 制度・環境の整備 …インクルージョン、ピアボーナス など
  • 労務管理 …がんサバイバー、36協定 など

ぜひ様々なシーンでお役立てください。

プライバシーポリシーをご確認いただき「個人情報の取り扱いについて」へご同意の上、ダウンロードボタンを押してください。