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高齢者活用とは 企業側と高齢者側で今から備えるべきこと

高齢者活用とは 企業側と高齢者側で今から備えるべきこと

高齢者活用とは、近年の少子化で減少している労働人口を補うため、定年を過ぎてもまだ働きたいと考える元気な高齢者を雇用することです。

少子化による若年層の労働人口減少には危機を感じる方も多いのではないでしょうか。この労働人口の減少に対して考えられたのが「高齢者の活用」です。近年高齢者の労働人口は増加傾向ですが、政策によるところが大きく、企業が高齢者の採用に対してそれほど積極的ではないという現状があります。

しかし今後、日本社会の人口構成が高齢者側にシフトすることは間違いありません。企業は高齢者活用の体制づくりをしていく必要に迫られていくでしょうし、高齢者も社会の中心的存在として社会に貢献するようなあり方を見つける必要があるでしょう。

本稿では、高齢者活用の現状と、雇用する企業側と雇用される高齢者で備えるべきことについてご説明します。

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1. 高齢者活用とは

とどまることのない少子化は労働人口の減少をもたらしています。この問題に対する解決策の一つとして考えられたのが高齢者の活用です。若年層の労働人口の減少を高齢者で補うということです。我が国の平均寿命は高く、60歳を迎えても元気な方がたくさんいらっしゃいます。そこで元気な高齢者を労働者として活用することが考えられたわけです。

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2. 高齢者活用の政策と現状

まず、労働人口の推移を見てみましょう。
1980年に約5600万人だった労働人口は2000年に6700万人を超えましたが、これをピークに減少を始めました、15~34歳の労働者が年々減少したためです。少子化が続いているので当然の結果ともいえます。

労働力人口の推移

このような状況に対し、高年齢者雇用安定法が2004年に改正(2006年施行)されました。

高年齢者雇用安定法 2006年施行内容

下記①~③のいずれかを選択すること 

①定年年齢を65歳へ引き上げ
②希望者全員を対象とした65歳までの継続雇用制度導入
③定年制の廃止

ただし施行された当時、②の継続雇用制度に関しては、労使協定で定めれば希望者全員を対象としなくても良いという例外措置も含まれていました。2012年の改正(2013年4月施行)でこの例外措置はなくなり、再雇用制度は希望者全員を対象とすることとなりました。この法改正の効果もあって、その後労働人口に占める高齢者の割合がさらに増加傾向となっています。

2016年の労働力人口は6673万人ですが、そのうち65~69歳の者は450万人、70歳以上の者は336万人で、労働力人口総数に占める65歳以上の割合は11.8%となっています。 また、65~69歳の人口の44%、70歳以上の人口の13.8%が労働をしているという結果になっています。


3. 高齢者の労働に対する意識

内閣府が行った「高齢者の日常生活に関する意識調査」(2014年)では現在仕事をしている60歳以上の人の42%が「働けるうちはいつまでも仕事をしたい」と答えています。「70~80歳くらいまで働きたい」という人も40%程度いて、前者と合計すると80%程度の人が「高齢者となっても仕事を継続したい」と思っており労働に対する意欲が高いことがわかります。

また、仕事を選ぶ際に最も重視する条件の調査では、次のような結果が得られています。

仕事を選ぶ際に最も重視する条件

・経験が生かせること
・体力的に軽い仕事であること
・収入
・年金が減額されないこと
・通勤時間

22.2%
19.7%
16.6%
8.4%
2.3%

2011年度 高齢者の経済生活に関する意識調査結果


4. 企業側(雇う側)の高齢者雇用に対する意識

高齢者のプラスの面として、高齢者の知識・経験、高い技能、真面目な勤務態度、責任感、人脈などをあげている企業があり、高齢者の雇用に積極的な企業の数も増えてきています。
しかし、一方では高齢者の雇用に対してマイナス面を感じている場合もあります。

高齢者雇用で企業が感じている印象

プラス面

マイナス面

・知識・経験がある
・高い技能がある
・勤務態度が真面目
・責任感がある
・人脈がある
など

・能力や体力に個人差がありすぎる
・新しい仕事に対する意欲や好奇心がない
・配置、処遇などが難しい
・作業能力や能率が低下する
・自分の能力や技術を的確に自己評価できない
・対人関係において協調性に欠ける面がある

参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構 「企業の高齢化諸施策の実態に関する調査研究 」

また実際に60歳以上の労働者の雇用を増やさない理由として、

企業が60歳以上の労働者の雇用を増やさない理由

・高年齢労働者に適した仕事がない
・体力・健康の面で無理がきかない
・若年・中年層の雇用が優先される
・人件費が割高である
・高年齢労働者に限らず採用の予定はない

参考:内閣府 2006年 国民生活白書

上記の内「人件費が割高である」という理由はさほど高くありませんが、それ以外の理由の占める割合が大きくなっています。


5. 高齢者が活躍するために

今後高齢者の労働人口をさらに増やすためには何が必要でしょうか?

まず考えられるのは、さらなる法的整備ですが、企業の努力も必要となります。そして重要なのは、高齢者自身の努力や意識改革でしょう。現在若年層として働いている人たちにも、今のうちから考え備えておくべきことがたくさんありそうです。

5-1. 企業の努力

高齢者活用を進めるためには、まずは環境の整備が必要です。さらなる法的整備が望まれますが、それと同時に企業の努力がまずは必要です。

高齢者ができる仕事は高齢者に任せられるようなシステムを作ったり、高齢者の体力やその日の体調で勤務時間を調整できる柔軟な体制を整えたりすることで高齢者を雇用する機会が増えるでしょう。定年前から再就職に向けての職業訓練を積極的に行って、高齢者の再就職のサポートをすることも有効であると考えられます。

このような行政、企業の努力も期待されるところですが、それ以上に今後の高齢者の努力・意識改革が必要であると考えられます。

5-2. 高齢者自身の努力

高齢者が雇用されにくい理由に、「適した仕事がない」というものがあります。これを解決するためには高齢者の側で努力し、さまざまな職種に適応できる能力を身に着けておく必要があります。さまざまな職種とは言っても高齢者には体力的に難しい仕事も増えてきますので、身体に過度な負担がかからない職種の能力を高めておくとよいでしょう。

60歳になるまでにいくつか資格を取得しておくのもよい方法です。資格があれば就職には有利となります。ます経験を活かせる資格を取得しておくとよいでしょう。

再就職に向けた資格の例

・中小企業診断士
ITパスポート
・マンション管理士
・行政書士
・社会保険労務士
・電気工事士
・電気主任技術者(電験三種)
・マイクロソフトICT検定
・クリーニング師
・簿記3
・危険物取扱者
・ウェブデザイン技能検定
2級ボイラー技士

FP技能士
・宅地建物取引士
・ビル管理技術者
DIYアドバイザー
・調理師
・あん摩マッサージ指圧師
・介護職員初任者研修
・介護支援専門員(ケアマネジャー)
・社会福祉士
CAD利用技術者
・医療事務
Webクリエーター能力認定試験
・フォークリフト運転者

資格があれば必ず就職できるというわけではありませんが、持っている方が有利となります。
体力に自信があり、人の世話が好きであれば、介護系の仕事は求人が沢山ありますので再就職の確率は高くなります。

また、近年テレワークが推進されていますし、ネットの活用も盛んになっています。ネットを介しての仕事も増えてきていますので、就職せずに(個人事業主として)、業務委託の仕事を受けるということも可能です。ネットでの仕事はプログラミング、ウェブ開発、ホームページ作成、ライティング(記事作成)、データ入力、ネットショップ運営、文字起こし(テープ起こし)などさまざまな仕事があります。選択肢が多いので自分の得意な分野で活躍できる可能性があります。パソコンとネット環境があればよく、身体的な負担が少ないので高齢者にも行いやすい仕事の仕方だといえます。

また高齢者の意識の改革も必要です。60歳(65歳)まで頑張ればいいという考えから、社会のためにも生涯現役を続けるという考えに変える必要があります。報酬については収入が下がることを当たり前と考えて、60歳までの収入と比較しないこと。プライドを捨てて、仕事を楽しむこと。60歳までは部下を持っていた方でも、再就職では人から使われる立場になることも多いです。これに対しても謙虚に受け入れ、若い世代ともうまくコミュニケーションをとることが重要でしょう。


6. まとめ

高齢化社会のわが国では今後さらに高齢者活用(活躍)が必要となるでしょう。現在ではまだ高齢者が活躍できる基盤が確立していません。今後、さらなる制度の改革などが求められています。また、高齢者が活躍するためには、高齢者自身の努力も必要です。生涯現役で働く意識をもち、さまざまな職種に対応できるように能力を高めておくことも重要となるでしょう。

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  • 教育・育成 …ARCSモデル、アクションラーニング など
  • 教育テーマ …アンコンシャスバイアス、サーバントリーダーシップ など
  • 採用・雇用 …インフルエンサー採用、エンプロイアビリティ など
  • 人事企画 …健康経営、従業員エンゲージメント など
  • 制度・環境の整備 …インクルージョン、ピアボーナス など
  • 労務管理 …がんサバイバー、36協定 など

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