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ADDIEモデルで企業教育の効果・効率を上げる!その実践ポイントとは

ADDIEモデルで企業教育の効果・効率を上げる!その実践ポイントとは

「研修を作って推進していくに当たり、活用できるフレームワークはないだろうか?」

2020年1月に発表された日本経済団体連合会(経団連)の人材育成に関するアンケート調査結果によると、368社中80.5%の企業が人材育成施策の見直しの中で「人材育成の方針や戦略の見直し」について、具体的に取り組んでいるもしくは検討中である、と回答しています[1]

特に近年は、集合研修やeラーニングの教材を社内で内製化し、自社に合わせた教育内容にするため教育担当者が教材を検討、開発しているという企業も増えてきています。

教育計画や教育内容を検討する際に手順を知っていると、遠回りをせず、効率的に効果のある教育を実施することができます。本稿では、その手順の一つである「ADDIEモデル」の概要と、具体的な進め方、さらには実践する際に意識するとよいポイントについて紹介します。

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1. ADDIEモデルとは?

ADDIEモデルとは、PDCAサイクルのような改善手法を、教育という枠組みで考えたものです。

ADDIEモデルが編み出された背景には、教育をより効果的、効率的、魅力的にしていくための手法である「インストラクショナルデザイン」[2]の存在があります。

1-1. インストラクショナルデザインとの関係性

教育のように目には見えないものを一つのプロセスとして捉え、体系化して考えることをインストラクショナルデザインといいます。

このインストラクショナルデザインの中で、教育全体の計画や教材を開発するときに、どのような手順で検討していけばよいのかをプロセスとして示したものを「IDプロセス」と呼びます。

ADDIEモデルは、そのIDプロセスの代表的なモデルです。

1-2. ADDIEモデルで教育のブラッシュアップを

通常、業績向上や業績目標の達成ために、PDCAサイクルを回しながら業務を改善していく、ということはよく聞く話ではないでしょうか。

このやり方と同様に、教育という枠組みの中で、よりよい教育を行っていくためにADDIEモデルを使用します。

PDCAがPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の頭文字を取っているように、ADDIEモデルもAnalysis(分析)、Design(設計)、Development(開発)、Implementation(実施)、Evaluation(評価)の頭文字を取ったものです。

このプロセスに沿って継続的に教育計画や教材内容を組み立て、見直しながらブラッシュアップしていくのです。

 

ADDIEモデル

参考)森田晃子 著『ー改訂版ー魔法の人材育成』幻冬舎2019年p.57 図表5を基に作成

1-3. ADDIEモデルの活用で、安定した教育を実践

教育計画や教材内容を新しく検討したり、見直したりする際、今までの経験を基に「なんとなく」行っていないでしょうか。

もちろん経験は非常に貴重な財産ではありますが、「なんとなく」で進めてしまうと、二度手間、三度手間の無駄な時間が発生する可能性が高くなります。

例えば、何から手を付けるか迷って時間がかかってしまったり、実施したものの、現場から効果が感じられないといった不満が挙がり、その対応が発生したりするなどが考えられます。経験の少ない人になると、なおさらその可能性は高まるでしょう。

ADDIEモデルは、まずは何から手を付ければよいのか、手順が明確です。また、各手順で具体的にどのようなことをすればよいか決まっているので、経験が少ない人もより効果の高い教育内容を導き出せるようになります。

つまり、ADDIEモデルを活用すれば、教育計画や教材内容をより安定して効果的、効率的な内容にしていくことができるのです。

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2. ADDIEモデルプロセスの具体例

では具体的に、各手順でどのようなことをしていけばよいのか、詳細を見ていきます。イメージをしやすくするために、以下のような事例で確認していきましょう。

<A社の事例>
A社では最近、営業担当者のマナーが良くないというクレームが顧客から入ることが問題視されていました。クレーム対象になるのは、若手~中堅の営業担当者が多いようです。経営陣は、クレームを減らすために何か教育をしなければ……と考えています。

STEP1. Analysis(分析)

教育のニーズを分析し、学習目標を明確にします。分析する際は、以下のようなポイントを意識しましょう。

・教育の必要性の明確化:なぜ教育が必要とされているのか
(例)顧客からクレームがきている、クレームが原因で売り上げが下がっている……など

・問題の明確化:問題が起こっている原因は何か
(例)若手営業担当者、中堅営業担当者の対応に問題がある、顧客へのフォローができていない……など

・理想とする状態の明確化:理想はどのような状態で、現状とどのように違うのか
(例)顧客からのクレームをゼロにすることが理想。現状はクレームが多い。クレームをゼロにして、さらには顧客からの信頼向上につなげたい……など

・受講対象者の明確化:受講対象者は誰か
(例)若手営業担当者、中堅営業担当者……など

・学習目標の明確化:その教育を行ったことで受講者にどういった行動変容を期待するか
(例)顧客に対するフォローを行い、クレームではなく顧客の信頼を獲得して受注へとつなげる……など

・評価基準、合格基準の明確化:何が評価のポイントになるのか、合格の基準になるのか
(例)受講直後の理解度テスト、アンケート、行動目標の設定と現場での振り返り……など

・教育期間の明確化:長期的な教育が必要か、短期的な教育が必要か
(例)営業担当者のマインド育成が必要(長期的)、製品知識を深めることが必要(短期的)……など

分析の手順で大切なのは、自身の思い込みだけではなく、客観的なデータや複数人へのヒアリングなどを基に「本当に何が問題なのか」を明確にすることです。ここでしっかりと分析をしていれば、教育内容がその問題解決に対して大幅にずれる可能性は低くなります。

STEP2. Design(設計)

SREP1で分析した内容を基に、教育内容の全体像を作成していきます。

分析結果が出たからと、いきなり教材内容の作成に取りかかる前に、全体像を設計しておくと教育の目的を見失わずに教材作成を進めることができます。設計の際は、以下のようなポイントを意識しながら進めましょう。

・学習目標の具体化:その教育を受講した際の学習目標を決める
(例)顧客からのクレームの対応方法を理解し、実際のクレーム対応に生かす、顧客満足度を上げる方法を習得し、現場で実践する……など

・評価基準、合格基準の具体化:学んだ内容の理解度をどのように評価するか
(例)学習終了後、テストで理解度を測る、受講半年後にクレーム件数を確認し、現状から8割減少していれば合格……など

評価基準は、教育終了直後の理解度の確認と、現場に戻ってから実際に行動変容しているかという時間をおいてからの確認の両方を考えておくとよいでしょう。

・学習対象者の具体化:対象層、人数を決める
(例)中堅営業担当者リーダークラス10人、若手営業担当者20人全員……など

・学習期間の具体化
(例)2日間研修、半年後にフォローアップ……など

・教育内容の具体化:どのような内容をどのような目的、順番、手法で構成するか
(例)導入→講義「研修への意識付け・クレームとは何かを理解する」→ペアワーク「クレームを言う相手の心理を学び、具体的に想像する」→……など

どのような手法を使うかというよりも、何を目的に学んでほしいのかに重点を置いて構成を考えていきましょう。

STEP3. Development(開発)

STEP2で描いた設計図を基に、具体的な教育教材の作り込みや環境設定をします。

集合研修であれば、会場の準備、教材作成、外部講師に依頼する場合は外部講師の手配など、eラーニングであればシステムの導入など、教育の実施に向けて具体化していくのがこのタイミングです。

(例)集合研修に向けてのパワーポイントを使ったテキスト作成、集合研修内でのワークにおける素材準備、受講後のテストやアンケートの準備……など

STEP4. Implementation(実施)

STEP1~3までで準備したことを実施します。実施の前に、テスト運営、リハーサルといった事前練習をしておくと安心です。

STEP5. Evaluation(評価)

STEP3で具体化した評価基準・合格基準の達成具合や受講後のアンケートなどを基に、教育内容を見直していきます。

以下のような内容を意識して評価をするとよいでしょう。

・受講者の教材、講師への満足度
(例)受講後のアンケート評価……など

・受講者の理解度
(例)受講後のテスト、講師からの受講者に対する印象のフィードバック……など

・学習目標の達成度
(例)評価方法に基づく顧客のクレーム対応履歴の確認、半年後のクレーム件数変化……など 

この評価を基に、さらにADDIEモデルを回しながら教育内容の見直しをしていきます。


3. ADDIEモデルを推進する際に意識するポイント

2章で、ADDIEモデルの具体的な手順についてお伝えしました。しかし、ただステップ通りに進めるだけでよいわけではありません。この章では、実際にADDIEモデルを推進していく中で、さらによい内容にしていくために意識しておきたいポイントについてお伝えします。

本当に教育が必要なのかを改めて考える

教育する、ということは、何かしら解決したい問題があるということでしょう。例えば、2章で挙げた例では、「顧客からのクレームが増えている」という問題があります。

ADDIEモデルのステップ1(分析)をする以前の大前提として、「本当にそれは教育で解決できる問題なのか」を調査し、考えることが何よりも重要です。もしかしたら、人事制度を変えないと解決しないかもしれませんし、店舗改革をしないと解決しないかもしれません。

仮に教育で解決できるという結論にたどり着いても、集合研修で解決するのか、eラーニングなのか、その両方のブレンディッドラーニングなのか、ということも考える必要があります。まずは、教育ありきではなく、問題を大きな枠組みで捉えて考えることが重要です。

関連記事:集合研修のメリットとは?オンライン研修とのブレンドが効果的な人材育成のカギ

関連記事:eラーニングとは?システムやメリット、導入事例、費用について解説

教育で解決する範囲を明確化する

解決したい問題に対して教育が有効ということが判明したら、具体的に教育が解決できるのはどの範囲なのか、明確化しておきましょう。そうしていないと、教育への期待値だけが上がってしまいます。

過度な期待をされることで、本来であれば現場でフォローしなければならないことも「教育を受ければ解決するだろう」と見過ごされ、結果的に「せっかく時間を取って教育を受けさせたのに効果がなかった」といったクレームにつながる可能性があります。

現場を巻き込む

教育を実施する際は人事や教育担当者だけで進めずに、現場の管理職などを巻き込みましょう。例えば、人事や教育担当者だけの思い込みを基にADDIEモデルで教育を分析、実施すると、分析が甘く、現場のニーズからずれた内容になる可能性があります。

2章のA社の例で考えてみましょう。

顧客から営業担当者のマナーについてのクレームがあったとき、多くの場合マナーの悪い営業担当者に問題があるのでは、と考えてしまいます。それが合っていれば、営業担当者への教育だけでよいかもしれません。

しかし、現場へのヒアリングなどを行っていくと、営業担当者の上司がマネジメントをしっかりとしていなかったため、営業担当者が膨大な量の業務を抱え、顧客への対応にまで手が回らなくなっていた、という事実が明るみに出る……という可能性もあるのです。

その場合、教育の対象は営業担当者ではなく、その上司である管理職となってきます。大幅な路線変更となるわけです。このような事態を避けるためにも、現場の複数人から意見をヒアリングするようにして、客観的な情報を集めるようにするとよいでしょう。

また、教育を実施した後、現場に受講者を戻したときに、受講者である部下が何を学んできたか興味がない上司がいる、ということもよくあります。時間と費用をかけて教育したにもかかわらず、自分の部下が何を学んできたかも知らない上司がマネジメントをするとなると、効果があったか判断できません。

教育を実施する際は、関係者に説明を行い、企業全体で取り組むという意識を持ちましょう。

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4. まとめ

ADDIEモデルとは、効果的、効率的な教育を行うために進めるプロセスのことです。「ADDIE」 は、Analysis(分析)、Design(設計)、Development(開発)、Implementation(実施)、Evaluation(評価)の頭文字を取ったものです。

このプロセスを何度も回しながら、より良い教育へと改善していきます。教育計画、教育内容を見直す際に、ADDIEモデルを活用すれば、経験の少ない担当者もより安定して効果的、効率的な内容にしていくことができます

ADDIEモデルの具体的な手順は、以下の通りです。

STEP1. Analysis(分析)
教育のニーズを分析し、学習目標を明確にする
STEP2. Design(設計)
教育内容の全体像を作成する
STEP3. Development(開発)
具体的な教育教材の作り込みや環境設定を行う
STEP4. Implementation(実施)
STEP1~3までで準備したことを実施する
STEP5. Evaluation(評価)
設定した評価基準に基づき、実施した教育の効果を評価する

ADDIEモデルを効果的に実施するためのポイントは以下の通りです。
・本当に教育が必要なのかを改めて考える
・教育で解決する範囲を明確化する
・現場を巻き込む

多様性が求められる現代、従来の教育に対する見直しを考えている企業は少なくないでしょう。自社の教育をブラッシュアップしていくために、ADDIEモデルの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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[1]人材育成に関するアンケート調査(2020年1月21日付)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/008.pdf
[2] 鈴木 克明(2019)「インストラクショナルデザインー「学びの効果・効率・魅力の向上を目指した技法―」、通信ソサエティマガジン、電子情報通信学会、P110
https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/13/2/13_110/_pdf

参考)
・中原淳(編)、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭(2006)『企業内人材育成入門 人を育てる心理・教育学の基本理論を学ぶ』ダイヤモンド社.
・河村一樹(2009)『e-learning入門』大学教育出版.
・森田晃子(2019)『-改訂版―魔法の人材教育』幻冬舎.
・インストラクショナルデザインで「教え方」を体系的に考えよう(図書印刷株式会社)
https://www.tosho.co.jp/1815/
・IDとは(サンライトヒューマンTDMC株式会社)
https://www.slhtdmc.co.jp/labo/id/

・中原考子(2012)「インストラクショナルデザインによる人材育成の実践 研修~評価まで」国際文化研修2012冬、pp.24-31.
https://www.jiam.jp/journal/pdf/v74/tokushuu03.pdf

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