休み方改革とは、働く人が休みやすい環境を整えるための官民一体の取り組みです。
「有給休暇はあるけれど使っていない」「休みたいけど休めない」、従業員からこのような不満が漏れる職場になっていないでしょうか。
2019年4月から全ての事業主に対して、年10日以上有給休暇が付与される従業員への年5日の有給休暇取得が義務付けられます。休める職場環境を整えることが、求められているのです。
本稿では休み方改革について、具体的な施策や導入のポイントをご紹介します。
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目次
1. 休み方改革とは
休み方改革とは、政府の主導で始まった、労働者が休みやすい環境づくりのための取り組みです。
休み方改革が求められるようになった大きな要因は、低調な有給取得率です。Expedia Inc.(エクスペディア)の調査[1]では、2017年の日本の有給取得率は50%と世界30カ国の中で最下位でした。加えて労働時間も長いため、「働きすぎ」の状態は改善されていません。
そこで、働き方改革で長時間労働の是正を図るとともに、休み方改革として労働者が休みやすい環境を整える取り組みが始まりました。
休み方改革には2本の柱があります。一つ目は全国の小中学校を対象に、夏休みの一部を分散して大型連休を作る「キッズウィーク」の導入、二つ目は有給休暇の取得促進です。次章で具体的な施策を見ていきましょう。
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2. 休み方改革の具体的な施策
休み方改革の具体的な施策として、次のようなものがあります。
2-1. キッズウィーク
2018年4月から始まった取り組みで、地域ごとに学校の夏休みといった長期休暇の一部を分散し、別の月に連休を作るものです。
政府は、「大人と子どもが向き合うため」としていますが、法定の大型連休とは別に新たに連休を設定することで、休暇を利用した旅行など消費の喚起も狙いとしています。
参考) 厚生労働省「キッズウィークについて」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/sokushin/kidsweek.html |
2-2. 有給休暇の計画的付与制度
有給休暇として付与する日数のうち5日間以外の日数について労使協定を締結することで、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。言い換えれば、事業主は労働者が自ら取得できる有給休暇を最低5日は残す必要があります。
複数の労働者が同時多発的に休暇を取ると操業が滞ってしまう職場もあるでしょう。このような職場では個人の意思では休暇申請がしづらくなるため、この計画的付与制度を取り入れる企業も増えてきています。
付与の方式は以下の3種類があり、各企業の実態に応じて選択することができます。
一斉付与方式
全ての労働者に対して、同じ日に有給休暇を付与する方式です。製造部門のように、操業を止めて全労働者を一斉に休ませることができる部門で活用されています。
交代制付与方式
グループ別に交代で有給休暇を付与する方式です。一斉休業が難しい職場で活用されています。
個人別付与方式
個人別に有給休暇を付与する日を決める方式です。
厚生労働省の調査では、この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも有給休暇の平均取得率が高いという結果が出ています。
2-3. プラスワン休暇
土日や祝日の前後、飛び石連休の間の平日に有給休暇を取得し、連続休暇にすることを促す取り組みです。
2-4. 年5日間の有給休暇の取得義務化
2019年4月から事業主には、有給休暇を付与した日から1年以内に時期を指定して年5日の有給休暇を労働者に取得させることが義務付けられました。ただし、労働者が自ら取得した日や労使間の協定で計画的付与をした日があれば、その日数は5日分から差し引かれます。
【例】
・労働者が自ら5日取得 → 事業主による時期指定は不要(不可)
・労働者が自ら3日取得+計画的付与2日 → 事業主による時期指定は不要(不可)
・計画的付与3日 → 事業主は2日を時期指定
◆対象者
年10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者が対象です。
◆方法
事業主は、時期指定について労働者の意見を聴取し、労働者の希望に沿えるように努める必要があります。
◆管理
事業主は労働者ごとに年次有給休暇管理簿を作成し、3年間保管する必要があります。
◆就業規則
休暇に関する事項は就業規則の絶対的記載事項と定められています(労働基準法第89条)。したがって、時期指定の対象となる労働者の範囲や指定方法などについて、就業規則に記載しなければなりません。
◆罰則
この制度には、以下の罰則が設けられています。
違反条項 | 内容 | 罰則規定 | 罰則 |
労基法第39条第7項 | 年5日の有給休暇を取得させなかった場合 | 労基法第120条 | 30万円以下の罰金 |
労基法第89条 | 事業主が時期指定をするに当たり、就業規則に記載しない場合 | 労基法第120条 | 30万円以下の罰金 |
労基法第39条 (第7項以外) | 労働者の請求する時期に有給休暇を与えなかった場合 | 労基法第119条 | 6カ月以下の懲役、または30万円以下の罰金 |
上司や同僚に気兼ねなく有給休暇を取得できるのが理想的ですが、「ためらいを感じる」という声が根強いのが現状です。このような場合、事業主が有給休暇の取得時期を指定するのは有効な手段でしょう。
また、毎年の基準日に有給休暇の取得計画表を作成して明示することや、計画的付与制度を活用することも年5日の有給休暇取得を確実にする方法です。
参考) 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」 https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf |
3. 「休める職場」にするためのポイント
実際に有給休暇を取りやすい環境を整えるためのポイントとして、以下の4点が挙げられます。
- 実態の把握
- 体制づくり
- 社内の意識付け
- 社内外への周知
実態の把握
有給休暇の取得状況や業務の進め方についてヒアリングをするなど、休み方・働き方の実態を把握します。
体制づくり
業務を属人化させず、誰かが休んでもチーム内でフォローし合えるような仕組みを整備することが重要です。
社内の意識付け
経営トップ、管理職、一般の従業員が、休むことの重要性や長時間労働と業務効率の関係などを認識できるよう学習の機会を設けます。
社内外への周知
経営トップは、有給休暇の取得促進が重要な経営課題の一つであり、徹底的に取り組んでいく姿勢を社内外に周知することが大切です。具体的に数値目標を設定して、経営計画に盛り込むことも取得促進つながります。
休んだことで、他の日に業務のしわ寄せがきて長時間労働になってしまったということが度々あれば、従業員は積極的に有給休暇を取る気になれないでしょう。企業側は日頃の業務を見直し、特定の個人や部門に業務の偏りが生じないような体制づくりが求められます。
そのためには、経営トップが「休むこと」の重要性を認識し、組織内にその意識を浸透させ、休める仕組みを整えることが重要です。
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4. まとめ
休み方改革とは、働く人が休みやすい環境を整えるための官民一体の取り組みです。主目的は有給休暇取得率の向上を図ることですが、有給休暇を使った連休中の消費喚起も含まれています。
休み方改革の具体的な施策は以下の通りです。
・キッズウィーク
地域ごとに、学校の夏休みといった長期休暇の一部を分散し、別の月に連休を作るものです。
・有給休暇の計画的付与制度
有給休暇として付与する日数のうち5日間以外の日数について労使協定を締結することで、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。
・プラスワン休暇
土日や祝日の前後、飛び石連休の間の平日に有給休暇を取得し、連続休暇にすることを促す取り組みです。
・年5日間の有給休暇の取得義務化
2019年4月から全ての事業主に対して、年10日以上有給休暇が付与される従業員への年5日の有給休暇取得が義務付けられます。
休みやすい職場にするためのポイントとして、以下のことが挙げられます。
・働き方や休み方の実態の把握
・体制づくり
・社内の意識付け
・社内外への周知
労働者が休みやすい環境をつくるためには、組織の全ての層が休むことの重要性を認識し、具体的な数値目標を立てて改革に取り組んでいくことが重要です。
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[1] Expedia「【世界30ヶ国 有給休暇・国際比較調査2017】日本の有休消化率、2年連続 世界最下位」, 2017年12月11日, https://www.expedia.co.jp/stories/%E3%80%90%E4%B8%96%E7%95%8C30%E3%83%B6%E5%9B%BD%E3%80%80%E6%9C%89%E7%B5%A6%E4%BC%91%E6%9A%87%E3%83%BB%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E6%AF%94%E8%BC%83%E8%AA%BF%E6%9F%BB2017%E3%80%91%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE/