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介護休業とは 法改正で取得しやすく 手続きと企業の対応について紹介

介護休業とは 法改正で取得しやすく 手続きと企業の対応について紹介

介護休業とは、労働者が要介護状態の家族を介護するための休業です。

少子高齢化を背景に、若年層が減少する一方で介護を必要とする人は増加し続けています。また、介護を理由に離職する、40~50代の「介護離職」の問題も深刻化しています。
このような状況を受け、政府は介護休業制度を改正し、より利用しやすいものにすることで仕事と介護の両立を促し、労働力人口の減少に歯止めをかけようとしています。
本稿では、介護休業の取得のしかたや企業が配慮すべきこと、介護給付金についてご紹介します。

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1. 介護休業とは

介護休業とは、労働者が要介護状態の家族を介護するための休業です。
1995年に「育児休業法」に盛り込まれ、「育児・介護休業法育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」としてスタートしました。しかし厚生労働省の調査によると、介護休業の取得率は2015年が1.3%、2017年度が2.0%と低い割合に留まる一方、以下の表からもわかるように、介護離職者の数は2013年の93,400人をピークに減少したものの、2016年は85,800人と依然として高止まりしています。

参考)厚生労働省 「平成29年度雇用均等基本調査(確報)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-29r/03.pdf

介護・看護の理由による離職者数

介護・看護の理由による離職者数

出典)内閣府「平成30年版高齢社会白書」
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/zenbun/s1_2_2.html

2017年1月1日施行の「改正育児・介護休業法」では、対象となる労働者や介護者の要件が緩和され、また介護休業を分割して取得できるようになるなど、柔軟な内容に変更されています。

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2. 介護休業を取得するには

介護休業を取得するには、一定の要件と手続きが定められています。

2-1. 介護休業を取得する要件

介護休業を取得するには以下の要件を満たす必要があります。

対象労働者

労働者(正社員、契約社員、派遣労働者など)

対象外となる労働者とは?

・日雇い労働者
・労使協定で対象外にしている労働者
 ①雇用期間が1年未満の労働者
 ②介護休業申し出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者
 ③ 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
・有期契約労働者が次のいずれかに該当するとき
 ①同一の事業主に継続して雇用された期間が1年未満
 ②介護休業取得予定日から起算して93日を経過後、6カ月以内に労働契約が満了し、契約が更新されないことが決まっているとき

対象期間と回数

対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割取得が可能。

対象となる家族

配偶者(事実婚含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

要介護状態とは

負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を言います。必ずしも要介護認定を受けている必要はありません。

常時介護を必要とする状態」とは、次のような場合です。
①介護保険制度で要介護認定を受けている場合は要介護2以上であること。
②評価表①~⑫のうち、
・2が2つ以上または3が1つ以上該当すること
・その状態が継続すると認められること介護 評価表出典)厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/34_07.pdf

2-2. 介護休業を取得する手続き

介護休業を取得する際の手続きは以下の流れです。

介護休業の手続きの流れ申し出は、書面だけでなくファックスや電子メールなど事業主が適当と認める方法で提出することができます。
労働者が2回連続して申し出を撤回した場合、事業主はそれ以降の申し出について拒否できます。また、事業主は労働者に対して要介護状態を証明する書類の提出を求めることができますが、労働者が提出を拒んでも、それを理由に介護休業の付与を拒否することはできません。


3. 企業の対応

介護休業(休暇)の申し出を事業主は原則として拒否することはできません。介護をする労働者から求められた場合、企業は以下のような配慮や措置をしなくてはいけません。 

所定外労働の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させてはならない。

時間外労働の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、制限時間(1カ月24時間、1年150時間)を超えて労働時間を延長してはならない。

深夜労働時間の制限

事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10 時~午前5時(「深夜」)において労働させてはならない。

労働条件の周知

介護休業中の待遇、賃金、配置その他の労働条件に関して、就業規則などにあらかじめ定め、周知するするように努める。

また、労働者が介護していることを知った場合に関連制度の周知に努める。

勤務時間短縮などの措置

介護休業の利用開始から3年以上の間で2回以上の利用を可能とする措置を講ずる。

・短時間勤務の制度

・フレックスタイム制

・始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ

・介護サービスの費用の助成などの制度

労働者の配置に関する配慮

家族の介護の状況に配慮するように努める。

不利益取り扱いの禁止

申出をしたこと、または取得したことを理由とする解雇や、その他不利益な取り扱いをしてはならない。

家族を介護する労働者に関する措置

介護を必要とする期間、回数などに配慮した必要な措置を講ずるように努める。

 一部の企業では、93日を超えて休業期間を設けるなど、法定期間よりも手厚く制度を設定しています。介護離職を減少させるためにも、企業は適切な対応をしていくことが求められます。


4. 介護休暇とは

 「育児・介護休業法」に定められた制度に、「介護休業」とは別に「介護休暇」制度があります。
介護休暇とは、要介護状態にある対象家族の介護およびその他の世話をするために取得する休暇のことです。その他の世話には、通院付き添い、介護サービス利用のための手続き代行などが含まれます。
基本的な考え方は介護休業と同じですが、以下の点が異なります。

対象外となる労働者

労使協定で対象外にしている労働者
①雇用期間が6カ月未満の労働者
②1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
介護休業よりも対象外の範囲を狭め、取得しやすくなっています。

日数

1年に5日まで。ただし、対象家族が2人以上の場合は10日まで。

取得方法

1日または半日(所定労働時間の2分の1)単位で取得ができます。
ただし、以下の場合、事業主は1日単位でのみの取得に限定できます。
①1日の所定労働時間が4時間以下の場合
②半日単位での取得が困難な業務の場合(労使協定が必要)

介護休暇は一日、または半日単位で取得できるため、例えば、介護休業から復帰後に、家族の通院の付き添いなど、必要に応じて介護休暇を利用するというような使い方ができます。
介護休業と違い、介護休暇に対して介護休業給付はありません。事業主も賃金を支払う義務がないため、介護休暇の賃金が無給になる場合もあります。


5. 休業中の補償

介護休業期間中は事業主に賃金の支払い義務はありません。就業規則で賃金の何割かを支払う制度を設けている企業もありますが、いずれにせよ休業中は通常の場合より少なくなるか無給になります。そこで、雇用保険では介護休業給付の制度を設けています。

受給対象者

介護休業をした雇用保険の一般被保険者で、介護休業開始日前の2年間に12カ月以上の被保険者期間がある者

受給対象外となるのは

・介護休業終了後に離職することが予定されている場合
・有期契約労働者が次のいずれかに該当するとき
①同一の事業主に継続して雇用された期間が1年未満
②介護休業取得予定日から起算して93日を経過後、6カ月以内に労働契約が満了し、契約が更新されないことが決まっているとき

受給額

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

作業開始時賃金日額とは、介護休業開始前6カ月間の総支給額(賞与は除く)÷180日
で算出される額です。

申請方法

対象労働者は社内の担当課に申請し、担当課がハローワークに支給申請書やその他必要書類を提出します。介護休業給付金は休業期間の収入減を補うものです。申請書の提出には期限があるため、一回の介護休業終了後速やかに手続きをする必要があります。

参考)
厚生労働省「Q&A~介護休業給付~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158665.html
厚生労働省ほか「介護休業給付の内容及び支給申請手続きについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001129234.pdf

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6. まとめ

介護休業とは、労働者が要介護状態の家族を介護するための休業です。

「育児・介護休業法」に定められている労働者の権利であり、対象となる労働者が申し出た場合、事業者は拒むことなく休業を許可しなければなりません

しかし、介護休業の取得者数は一桁台にとどまる一方、介護離職者は8万5000人超と高止まりしているのが現状です。40、50代の介護離職は、企業にとっては貴重な人材を失い、企業経営を悪化させることにつながるだけでなく、社会にとっても労働力の減少、収入減による経済活動の低迷などの影響を及ぼします。また労働者本人にとっての精神的、経済的負担の増加も看過することはできません。

政府は、介護休業制度だけでなく、雇用保険法にも改正を加えて介護休業の利用を促しています。
今後、介護休業制度が活用され、労働者が仕事と介護の両立できるようになるには、政府と企業双方の支援が必要でしょう。

参考)
厚生労働省「育児・介護休業制度ガイドブック」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf
厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

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