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人材育成の効率的な進め方 企業に役立つ手法,プログラム,ツール紹介

議事録は廃止?無駄をなくす有名グローバル企業の会議の効率化策5選

AppleやGoogleは会議も違う! 無駄をなくす超有名企業の効率化対策5選

「この会議、無駄だな……」

働いていたら、誰もが一度はこのように思ったことがあるのではないでしょうか。ダラダラと続く会議、話が脱線する会議、何も決まらない会議、偉い人だけが喋っている会議、非効率的な会議の例は枚挙にいとまがありません。

しかし、業績が伸びている企業の会議は違います。自社の価値観や企業風土を踏まえたユニークな手法で、会議でも効率的に結果を出しているのです。その背景には、会議の参加者が会議の目的をしっかりと認識し、目的を達成するためのプロセスを徹底的に追求する姿勢があります。

会議は業務時間の中で大きな割合を占めるため、効率的に進められれば仕事全体の生産性向上につながります。

そこで今回は、各事業分野で時代を切り開き、大成功を収めているApple Inc.やGoogle LLCなどグローバル企業5社で行われている会議の手法をご紹介します。

それぞれの企業は、どのような考え方に基づき、どういう手法で効率的な会議を実現しているのでしょうか。自社の会議に取り入れられるものはないか、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

1. Apple Inc.:会議は「イノベーションの場」

Apple Inc.:会議は「イノベーションの場」

Apple Inc.(以下、Apple)の会議はイノベーションの場です。会議の参加者には、議論を戦わせ、全員で力を合わせてブレイクスルーを達成することが求められます。会議を、単なる顔合わせやコミュニケーションの場とすることは許されません。

イノベーションを実現するために、Appleではどのような手法で会議をしているのでしょうか。早速、見ていきましょう。

1-1. できるだけ参加人数を少なくする

Appleの会議は常に最小限の参加者で開催されます。スティーブ・ジョブズ氏は、会議の参加人数が多くなるとさまざまな意見が交錯し、雑然とした議論となるため、良い結論が生まれないと考えていました。Appleの強みであるシンプルで洗練されたデザインは、会議のデザインとしても支持されていたのです。

人数の多い会議は大統領からの依頼でもNG!

 

スティーブ・ジョブズ氏はあるとき、オバマ大統領(当時)から有識者会議の出席を打診されました。しかし、会議の参加者があまりに多いという理由で依頼を断ったといわれています。それくらい彼の哲学は徹底していたのです。

1-2. 会議に参加する理由のあるメンバーのみを参加させる

スティーブ・ジョブズ氏は、会議に必要のないメンバーと判断すれば、会議中にも容赦なく退席させていたといわれています。会議に必要なメンバーとは、「関係者」ではなく「当事者」です。

メンバーにとっては厳しい状況かもしれませんが、本当に必要なメンバーのみで徹底的に議論を行うことで、最高の結論を追求していたのです。

1-3. 会議で決められた決定事項には必ず「責任者」を指名する

Appleの会議では、会議の終わりに必ずその会議で決まった事柄をおさらいし、各決定事項に必ず「責任者」を指名しますその責任者は、社内ではDRI(Directly Responsible Individual:直の責任者)と呼ばれています。

Appleでは会議のアウトプットとして必ずアクションプランが作られ、それぞれのアクションの横には必ずDRIの氏名が記載されます。会議後はDRIが各アクションプランの進捗に責任を持ち、次の会議で状況を報告します。

責任者を指名することで、会議の時間を費やして決めた事柄が宙に浮かないように工夫しているのです。

AppleのiPodチームからFlipboardの製品チームのリーダーとなったグロリア・リンは、この手法の有効性を次のように評価しました。

急成長している企業では、とにかくやることが多すぎて、せっかく会議で議論したことも放置されてしまうことが珍しくありません。それはメンバーが無責任だからではなく、彼らが本当に忙しいからです。でも、DRIにアサインされてタスクが我が子のように思えたら、タスクがどうなっているのか気になって仕方なくなりますよ。

1-4. 課題に徹底的に向き合わせる

スティーブ・ジョブズ氏は形式的なプレゼンテーションを嫌い、自由奔放なフリーディスカッションを好みました。そのため会議では、メンバーの出すアイデアに常に疑問を呈し、メンバーにその場で自分のアイデアの正しさをしっかりと主張することを求めました。

そうすることで、メンバーが自分のアイデアを徹底的に考え抜き、確固たるベースを基にした洗練されたアイデアとして提供できるようにしたのです。

「みんなが思考する代わりにプレゼンテーションツールを使うのが大嫌いなんだ。」

 

スティーブ・ジョブズ氏は、彼の自伝を執筆したウォルター・アイザックソン氏にこのように話したといいます。

 

毎週水曜日の午後、彼はマーケティングチームとアジェンダのない会議を開催していましたが、そこではプレゼンテーションツールの使用は一切禁止でした。彼は、メンバーがツールなどの技術に頼らず、情熱的に議論を戦わせ、批判的に考え抜くことを求めたのです。

 

「みんな、プレゼン資料を作ることで課題に取り組んだ気になってしまうからね。僕は会議でたくさんのスライドを見せられるより、メンバー全員で課題にどっぷり浸かってあらゆる角度から徹底的に議論してほしいんだ。しっかり考え、意見を持っている人にはプレゼンテーションツールなんて必要ないんだよ。」

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2. トヨタ自動車株式会社:本音で語り合う

トヨタ自動車:本音で語り合う

プリウスなどに代表される高品質なもの作りの技術や、「かんばん方式」と呼ばれる改善手法など、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)といえば品質と合理性を徹底的に追求する企業というイメージが強いのではないでしょうか。

意外に思うかもしれませんが、豊田章男社長は「本音で語り合うことをとても大事にしています。現場従業員とのコミュニケーションについては、メンバーに次のように語り掛けました。

頑張っていることはもちろん聞きたい。それ以上に訊きたいのは今、困っている事。困りごとを本音で語り合い、皆で良くしていくことこそ、もっといいクルマづくりにつながっていく。だから、どんなことでも遠慮せず話してほしい。

豊田社長は、代表権を持つ副社長らが集まるトップミーティングでさえも「本音で語り合う場」と定義します。数値を追ったり効率を求めたりするのではなく、自由な意見交換を促すための手法を会議に取り入れているのです。早速、トヨタ自動車のトップミーティングの手法を見ていきましょう。

2-1. 本音で語り合う環境をつくる

トップミーティングは、上座や下座のない円卓で行われています。そうすることで、参加者が「本音で語り合う」にふさわしい、対等な立場で自由にディスカッションできる環境をつくっているのです。

参加者からさまざまな意見を引き出すためには、意見を言える環境づくりが大切だということです。

2-2. 話し合うテーマを事前に決めない

会議の議事進行にも、マンネリ化を防ぐための工夫があります。緊急の課題以外は話し合うテーマを事前に決めず、参加者それぞれが気になる話題をその場で挙げて、都度その場で共有すべきテーマを選択してフリートーク形式で議論を交わすのです。

重苦しい雰囲気にならないよう、進行役や議長なども指名しません。ここからも、「本音で語り合う」ことが徹底的に尊重されていることが分かります。

2-3. 会議に資料を持ち込まない

トップミーティングの原則は「資料を持ち込まない」ことです。これは、資料があることによってあらかじめ議論の方向性が決められ、自由な意見交換に歯止めがかけられてしまい、「本音で語り合う」という目的の達成の阻害要因になると考えられているからです。

また、資料を持ち込むということは、その資料を作成するための人と時間が必要ということでもあります。その点において、内部報告のための資料作りは企業に何も生み出さないから無駄という合理的な考えもうかがえます。


3. Google LLC:「スマート・クリエイティブ」を引き付ける企業であるために

Google LLC:「スマート・クリエイティブ」を引き付ける企業であるために

Google LLC(以下、Google)は、技術のイノベーションが著しい現代において、真に生き残れるのは「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる人材を引き付け、魅力的で優れた製品を世に送り出せる企業だけだと考えています。

スマート・クリエイティブとは、自身が持つ専門性を無限のアイデアや手法と掛け合わせ、複雑な問題を解決に導くことができる人材です。彼らは分析志向で実行力があり結果主義、そして誰よりもユーザー目線で物事を見ることができます。

スマート・クリエイティブは伝統的な知的労働者とは違い、職務や組織構造に束縛されません。企業自身が魅力的でないと、彼らはその企業から離れてしまいます。

Googleはそのようなスマート・クリエイティブたちを引き付ける企業で在り続けるためにさまざまな施策を打っており、会議も彼らを引き付けるものでなくてはならないと考えています。

つまり、会議は「最も効率的にデータや意見を発表し、問題を議論し、判断を下すことができる場」でなくてはならないということです。その実現のためのルールはとてもシンプルで合理的です。早速、その中身を見ていきましょう。

3-1. 意思決定を会議まで待たない

Googleでは、会議は意思決定の場ではなく、人と人とが顔を突き合わせて話し合うための場であると考えています。

会議の設定には複数のメンバーのスケジュール調整が必要となるため、意思決定をわざわざ会議まで待っていてはスピーディーな決断ができず、決断を待つ人たちの時間を無駄にすることになってしまいます。

議論の果てに意思決定がなされることは重要ですが、単なる意思決定のためだけに会議を開催するのは無駄です。

会議を待たずに決断できることはどんどん決断し、意思決定のために議論が必要と判明した時点で速やかに会議を設定する、という考え方でスピーディーな意思決定を可能にしているのです。

3-2. 会議の規模はコンパクトにまとめる

Appleでも同様のことが行われていますが、会議の規模をできる限りコンパクトにすることはGoogleでも会議の基本です。会議の傍観者が時間を無駄にしていることはもちろんですが、意欲的な参加者だとしても人数が多過ぎると議論の質が下がると考えられています。

そのためGoogleでは会議の参加者は最大8人とし、その会議からベネフィットが得られるであろう人たちには速やかに議事録を送付することとしています。

3-3. 会議の「意思決定者」を指名する

Googleの会議では、その会議における意思決定者を明確にして参加者に周知します誰に最終決定を下す責任があるのかを明確にすることで、「何も決まらない会議」になることを防止し、会議の目的が確実に達成されるようにしています。

また、会議の意思決定者には、その会議を主宰する責任があります。会議の目的を設定し、参加者を決め、できれば会議の24時間前までには参加者にアジェンダを送付することが望ましいとされています。

アジェンダをしっかり活用することで会議の目的に沿って集中した議論を行うことができ、生産性の高い会議を実現することができます。そして、会議の最後には会議で決まったことを取りまとめ、決定事項およびアクションプランを48時間以内に関係者に送付することが求められます。

3-4. データに基づいて議論する

会議のアウトプットを最大化するために、Googleの会議は全てデータに基づいて議論されます。

決定事項の裏には必ずその根拠となるデータがあり、いわゆる政治的な駆け引きや「声の大きい人の意見が通る」といった会議は行われません。

3-5. 会議時間を5分・10分単位で設定する

Googleでは5分・10分単位の会議でも会議として認められ、スケジュール化されています。こうすることで隙間時間も有効活用できるようになり、特に多忙なマネジャー層の時間の融通が利きやすくなります。

意思決定者が多忙でスケジュール調整ができず意思決定が遅れることは、それだけで仕事のボトルネックになってしまいます。隙間時間の会議を認めることで速やかな意思決定が可能となり、仕事が効率化されるのです。

長い会議はブレークダウンする

 

Googleでは、議題が多く所要時間の長い会議は議題をブレークダウンして小さな単位で会議を設定することを奨励しています。そうすることで参加者は一つ一つの議題に集中することができます。また、議題ごとにメンバーを適宜入れ替えることで、それぞれの議題に最適なメンバーで議論できるようになるのです。

3-6. 会議に巨大なタイマーを持ち込む

Googleの会議では、全てのメンバーに「時間の経過」を意識させるために、参加者全員が見えるほど大きなタイマーを設置しています。タイマーがない場合はプロジェクターでタイマーを投影し、全員が見えるようにします。

ポイントは、誰かタイムキーパーを置くのではなく、参加者全員が嫌でもタイマーが視界に入るようにするということです。それによって全員が時間を意識して集中して議論に参加し、時間内に会議の目的を達成しようと努力することができるようになります。

また、会議後はダラダラと話し込まないように、全員が一旦その場を離れることを勧めています。そして予定より早く当初の議題が片付いた場合は、迷わず会議を終わらせることを推奨しています。会議は早く終わるに越したことはないのです。


4. Amazon.com, Inc.:Clear thinking(明晰な思考)を全ての根底に

Amazon.com, Inc.:Clear thinking(明晰な思考)を全ての根底に

「Think complex, speak simple(複雑に思考し、シンプルに発言せよ)」

Amazon.com, Inc.(以下、Amazon)のCEOジェフ・ベゾス氏は、この考え方を大いに支持しています。

シンプルに話すためには十分な準備が必要です。多くの発言者はダラダラと話しながら自分が何を言いたいのかを考えていますが、これは聞き手の時間を大いに無駄にします。そのため、ジェフ・ベゾス氏は会議の準備を重要視しています。

また、会議はブレーンストーミングのために使われるべきと考えるAmazonでは、綿密なアジェンダのある会議は好まれません。緻密なアジェンダは読み手に議論の方向性を示唆し、会議を心地の良い予定調和へと引っ張ってしまうため、クリエイティブな発想が生まれにくくなるからです。

複雑に思考しシンプルに発言すること、緻密なアジェンダは放っておくこと、Amazonの会議ではこの2点がイノベーションを推進するとされています。それでは、その会議の手法を見ていきましょう。

4-1. 会議は「30分の沈黙」から始める

Amazonの管理職会議では、会議の冒頭に30分の時間を取って各自が「meeting narrative(会議の解説書)」と呼ばれる書類を黙読します。これには、会議の目的を参加者全員に明確に示し、皆が同じスタートラインに立って議論に集中して参加するのを助ける目的があります。

Meeting narrativeはレポート用紙4~6枚で、次のような事柄が記載されています。

・会議の背景や参加者に向けた問い
・取り得るアプローチ方法
・会議の参加者のアプローチ方法
・次にやるべきことは何か

Meeting narrativeを作成するのは非常に骨の折れる作業です。プレゼンツールでの資料作成と違って、Meeting narrativeは普通の文章です。きちんとした文を書き、パラグラフを構成することが要求されます。

しかし、これを作成することでプレゼンターは議題を深く理解することができます。十分な準備の上で会議に臨むからこそ、時間を無駄にすることなく議論に入ることができるのです。

4-2. 会議は小規模にとどめる

AppleやGoogleと同様、Amazonでも会議は少人数で行うべきと考えられています。Amazonでは、会議に呼ぶべき人数の目安を大ざっぱに「2枚のピザで全員がお腹いっぱいになるくらいの人数」としているそうです。

4-3. 会議資料にパワーポイントは使用しない

「パワーポイントはあくまでもプレゼンテーション用のツールであり、プランニングの道具ではない」という考えに基づき、Amazonでは会議資料にパワーポイントは使用しません。会議資料はMeeting narrativeだけで十分なのです。

パワーポイント禁止令

 

2004年、ジェフ・ベゾス氏は従業員に向けて「No powerpoint presentations from now on at steam(今後の会議ではパワーポイントは使用禁止)」というタイトルのeメールを送りました。その中で、彼は次のように述べています。

 

“我々が求めているのは単なる文章ではなく、きちんと構成された解説書です。Wordファイルを作成したとしても、中身が箇条書きの羅列であればそれはPowerpointと同じくらい不十分な資料となります。

(中略)

Powerpointのような形式で作られたプレゼン資料は、なぜか問題を何となくいいようにごまかし、項目間の重要度の差を取り払い、複数のアイディアの関連性をなかったことにしてしまうのです。

 

ジェフ“

 

What I Learned from Jeff Bezos About Sales Management より翻訳
https://www.hirevue.com/build-blog/what-i-learned-from-jeff-bezos-about-sales-management

4-4. 会議室に空席を1席用意する

AmazonのCEO、ジェフ・ベゾス氏は、会議の場に必ず空席を1席用意します。この空席はAmazonの顧客、つまり同社にとって最も大切な存在を象徴するものです。

会議では常に顧客の意向を最優先に議論し決断を下すべきである、というAmazonの信念を表し、それを常に意識するよう会議の参加者に要求しているのです。


5. 日産自動車株式会社:経営危機からの抜本的な意識改革と「全体最適」の実現

日産自動車株式会社:経営危機からの抜本的な意識改革と「全体最適」の実現

日産自動車株式会社(以下、日産自動車)のカリスマ経営者カルロス・ゴーン氏は、1999年に資本提携先のGroupe Renault(ルノー)から日産自動車のCEO(最高経営責任者)に就任しました。そのころ、日産自動車は倒産寸前の経営不振に陥っていました。

しかし、スピード感のある大胆なコストカットや社内構造改革によってわずか1年で黒字化を達成し、2003年6月には、2兆円余りあった有利子債務を完済しました。

カルロス・ゴーン氏の行った改革は多岐にわたりますが、その一つに「会議の開発」があります。今では日産自動車グループ全体に浸透した「V-up」という会議の手法です。

実はこれはカルロス・ゴーン氏が日産自動車に持ち込んだ手法ではありません。彼の命令の下、日産自動車の社内関係者自身が自社の問題点を追究して開発したものなのです。

経営の危機に瀕していた当時の日産自動車において、大きな問題点として挙がったのは、意思決定スピードの遅さや責任を取る意識の希薄さ、縦割りの組織体制とセクショナリズムです。つまり、非常に「旧態依然とした日本企業」らしく、また非常に「官僚的」であるということでした。

そこで、会議の開発においても、これらの問題点を解消するための手法が数多く考案され、実行されました。

日産自動車における会議の開発は、単に会議を効率化しただけではありません。従業員の意識を変え、社内の構造を変え、そして従業員一人一人を戦力化する、日産自動車グループ全体の共通言語となったのです。それでは、その内容を見ていきましょう。

5-1. 議事録を作らない

「V-up」と呼ばれる日産自動車式の会議では、議事録を作りません

かつての会議では議事録を作っていましたが、部門間の対立のせいで議事録がなかなか完成しませんでした。議事録のドラフトを関係者に送付すると、発言の意図や内容の訂正、時には決定事項の修正要望までもが発生し、何のために会議を開いたのか分からなくなることもあったそうです。

V-upの会議の流れ

 

(1)会議の前に、参加者には会議のテーマや目的を通知する
(2)会議では大きな模造紙を貼り出し、大量の付箋を用意する
(3)会議の参加者は、無記名で付箋に自分のアイデアを簡潔に書く
(4)模造紙に付箋を貼り付け、それぞれの意見を基に議論する
(5)アクションプランを作成する
(6)模造紙をデジカメで撮影し、参加者全員および関係者へ配布する(議事録代わり)

この手法でも、写真を眺めれば、会議がどのようなプロセスで進行したかがすぐに分かります。また、議事録と違って解釈の入る余地がないため、訂正のための手戻りが発生しません

5-2. アイデアは付箋にまとめる

「V-up」の会議では、アイデアは小さな付箋に書かなければなりません。アイデアが簡潔になった結果、会議でさまざまな人が冗長に意見を述べ、あちこちに脱線するよりも効率的に意見を集められ、集中して検討することができるようになりました。

また、自分の意見を小さな付箋に収まるように書くことは、自分の考えを簡潔にまとめるトレーニングになり、従業員のスキルアップにもつながりました。

5-3. アイデアは匿名化する

「V-up」の会議では、意見を出すときに自分の氏名は必要ありません。出される全ての意見の責任は会議のリーダーにあります。

これには、セクショナリズムを廃止し、従業員には自分がどの部署の誰の部下であるかにかかわらず、日産自動車全体に最も利益をもたらす「全体最適」なアイデアを考えてほしいという狙いがあります。

5-4. 意思決定者は会議に参加しない

日産自動車の会議では、意思決定者は会議の最初にその会議の課題、背景、目的を伝えて、会議室を出て行ってしまいます。そして会議の最後に再び顔を出し、参加者が導き出した結論やアクションプランに対してGoかNoかを判断するだけ、となっています。

意思決定者が会議に参加すると、参加者が委縮したり、意思決定者の意向が話の方向性に影響したりして、最良の結論を導き出す議論が難しくなってしまいます。また、意思決定者の話が脱線しても部下の立場では指摘しづらく、軌道修正が困難で参加者の拘束時間が無駄に増えてしまいます。

これらの観察を踏まえて、日産自動車では、「会議に意思決定者が出席することにはメリットよりもデメリットの方が大きい」と判断し、意思決定者を会議の議論から外しました。

このように、「V-up」には、会議の無駄や余計なリスクを徹底的に排除して時間を有効活用しようというカルロス・ゴーン氏と会議の開発者の強い思いが映し出されているのです。

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6. まとめ

業務時間の中で大きな割合を占める会議を効率的に行うことは、仕事全体の生産性向上に貢献します。

会議の手法に100%の正解はありません。同じ「成長している企業」でも会議の手法は全く異なります。スタンダードな手法を徹底的に効率化して成果を出している企業もあれば、他では見たこともないような手法で成果を出している企業もあります。

しかし、各社の会議の手法には共通点もあります。それは、どの企業も会議の参加者全員が「会議の目的」を真剣に考えているということです。そして、各社の仕事に対する姿勢や価値観を踏まえて、会議の目的達成のための最短距離を徹底的に追求した結果が、それぞれの会議の手法である、ということです。

ここでご紹介した会議の手法は、どれもシンプルで分かりやすく、どの企業でもすぐに取り入れることができるものばかりです。自社の会議で「無駄だな」と思うものはありませんか?会議の参加者が暇そうにしていませんか?

ぜひこの記事を参考に、「なぜこの会議をするのか」ということを真剣に考え、目的達成までの最短距離を追求してみてください。そして会議の手法を改善して、生産性の高い会議を社内に浸透させましょう。

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参考)
How to Run a Meeting Like Google, Apple, Amazon, and Facebook
https://www.getminute.com/how-to-run-a-meeting-like-google-apple-amazon-and-facebook/
3 ways Steve Jobs made meetings insanely productive — and often terrifying
http://www.businessinsider.com/steve-jobs-meeting-techniques-2015-8
Toyota President’s Office / トヨタ自動車社長室
https://www.facebook.com/ToyotaPresidentsOffice/
初公開! 豊田章男社長の「火曜朝イチ会議」
http://president.jp/articles/-/13683
5 Signs You’re Probably A Smart Creative That Google Wants To Hire
http://www.lifehack.org/313729/5-signs-youre-probably-smart-creative-that-google-wants-hire
Google Chair Eric Schmidt’s 8 Rules For Running A Great Meeting
http://www.businessinsider.com/googles-rules-for-a-great-meeting-2014-9
AMAZON STAFF MEETINGS: “NO POWERPOINT”
https://conorneill.com/2012/11/30/amazon-staff-meetings-no-powerpoint/
Why Amazon CEO Jeff Bezos hates meetings with tight agendas
http://www.cnbc.com/2016/06/01/amazon-ceo-jeff-bezos-hates-meetings-with-tight-agendas.html
なぜ日産は会議の議事録をつくらないのか
http://president.jp/articles/-/11082
「意思決定者を出席させない」ルールをつくった
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20120502/215998/?rt=nocnt

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