新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、オンライン上で会議をすることも増え、プレゼン資料を作成する機会が多くなったのではないでしょうか?
2022年に行われた調査では、プレゼン資料を作る上で最も負担に感じる作業工程の第1位が「伝えたいメッセージの整理」、次いで第2位が「デザイン作成」でした。
そこで今回は、パワーポイントを例に、資料作成における負担を軽減するコツををご紹介します。
ゴールは「作成手順や見せ方を標準化し、誰もが簡単にわかりやすいプレゼン資料を作れるようにする」ことです。
「わかりやすい・見やすい資料」を効率的に作れれば、作業時間の短縮や手戻りの削減につながるだけでなく、それを用いたプレゼンテーションも効果的かつスムーズに行えるようになるでしょう。
ぜひ参考にしてみてください。
「パワーポイント」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
⇒ダウンロードする
目次
1. フォーマット化がもたらすメリット
資料作成の効率化を図るために最も効果的なのは、資料の構成やレイアウトをフォーマット化することです。フォーマット化することで、個々人が毎回ゼロから資料作成を行う手間を省き、かつ一定レベルの品質を保つことができます。
より具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。
1-1. 時間と手間の節約
資料作成を行う際、最初の関門となるのが「考える作業」です。どの情報をどこに配置するのか、どのようなデザインでスライドを作り、どのようにして伝えるか……。こうした考える作業は、あらかじめ考えるべき事柄やレイアウトを定めておくことで効率化できます。
例えば、プレゼン資料で説明すべき内容や順番が決まっていれば、作業者は必要な情報をその型に則って整理するだけで済みます。
同様に、スライド内に配置する情報の並べ方についても、あらかじめデザインやレイアウトのルールが決まっていれば、ゼロから考えたり類似の資料を探して調べたりする必要がなくなるので、大幅に作業時間を圧縮できます。
また、資料作成に時間を要する原因の一つが「手戻り」です。せっかく作った資料が却下になり、最悪の場合はイチから作り直しということもあるでしょう。
こうした問題の解決策は、何が正解なのかを最初から明確にしておくことです。つまり、それをフォーマットとして共有することで「全部やり直し」といった厳しい手戻りを減らすことができるのです。
1-2. 意思決定のスピードアップ
誰かのプレゼン資料を見聞きしていて、「何を言っているのかわからない」「どれが重要な情報なのかわからない」と感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。
こうした問題は、作業者によって作り方が違ったり、資料全体に統一感がなかったりするために起こります。このようなバラバラな資料を次々と見せられたら、読み手はどこに何があるのかいちいち読み込む必要があるので、内容の把握に時間がかかり、迅速に良し悪しの意思決定をすることもできません。そのため、例えば上長チェックやプレゼンの場での確認や質問に時間がかかり、余計なタイムロスが発生してしまいます。
このような問題も、フォーマット化によって解消されます。社内・部内で作り方が統一されれば、誰が作成したものでも、どのような種類のプレゼン資料でも、「いま何を説明しているのか」「どれが重要な情報なのか」が明確になるため、理解がスムーズになり、意思決定も素早く行えるようになります。その結果、事前の上長チェックや発表に要する時間の大幅な圧縮が期待できます。
以上のように、プレゼン資料の作成に統一されたプロセスとフォーマットを導入することで、作り手と読み手双方の作業効率の改善と、それによる長時間労働の是正が期待できます。
人事に関する注目トピックを毎週お届け!⇒メルマガ登録する
2. わかりやすさを追求するための2つのポイント
「準備八割」とは何かといわれるところですが、プレゼン資料の作成でも同じことが言えます。実際に作りこんでいく前に、じっくりと情報を整理し、考えることが必要です。
ここでは、わかりやすいプレゼン資料を作るために「何をどんな順番で考えればよいか」を解説します。
プレゼンテーション能力を身につけるにはeラーニングによる学習が効果的です。⇒プレゼン力を上げるeラーニング教材を見てみる
2-1. 資料作成の目的を整理する
いかに読みやすく見栄えの良い資料を作成できたとしても、プレゼンの目的を見誤っていたら何ら価値のない資料になってしまいます。
そのため、資料作成にあたっては毎回何のためにプレゼンを行うのか、プレゼンの目的を達成するためにどのような資料を作る必要があるのかを整理し、関係者全員で共有しておく習慣をつけましょう。
<プレゼンの目的>
ビジネスにおいてプレゼンを行うのは、相手にとって価値のある情報を提示することにより、相手の理解・納得・行動を促すためです。
いかに自分が良いと思う情報を提示し、わかりやすく説明したとしても、相手が価値や魅力を見出せないのであれば、そのプレゼンは失敗したのと同然です。まずは、そのことをしっかりと認識しておきましょう。
<プレゼン資料の位置づけ>
プレゼンの場では、発表者が主役であり、資料は説明をサポートするための脇役であるべきです。多くの会議やプレゼンの場で、文字でいっぱいの資料を読み上げているだけの状況を見かけますが、そのような発表を行うのであれば資料を配布して目を通してもらうだけで十分です。
そのため、資料を作成する際には、発表の場で説明する内容をわかりやすく効果的に補足することを心掛けることが重要です。
わかりやすく効果的に補足するとは「口頭では伝えきれない内容を補う」という意味です。その代表例として「キーワード」「イメージ」「データ」があります。
例えば、重要なメッセージを何度も誇張して表示したり、写真やグラフを用いて視覚的に説明したりするなど、口頭で説明するよりも伝わりやすい表現のことを指します。
2-2. 最初に全体の構成を考える
資料作成でまず最初に行うのは、全体の構成を考え、伝えたいメッセージを整理することです。
いきなりスライドの作り込みから始める人がいますが、それは非常に効率が悪い方法です。
構成が決まっていないうちに作成を始めると、説明すべき項目が抜け落ちてしまったり、全体の流れに問題が生じたりしてしまい、手直しのために余計な時間がかかってしまう可能性があります。
このような事態に陥らないためにも、資料作成の第一歩は構成を考えるところから始めます。
<構成を考えるための手順>
プレゼン資料の構成は、次の順に考えると効率良く作業を進められます。
② テーマの設定
③ 情報の整理
④ 構成の構築
⑤ 確認・修正
それぞれの内容を少し詳しく見ていきましょう。
① ゴールの設定
まず、プレゼンを通じて相手に理解・納得・行動を促したいものは何であるかを明確にします。
その際、なるべく「誰に何をしてほしいのか」という視点で考えることが大切です。とりわけ人物を明確に設定すると、次の「②テーマの設定」での切り口を考えやすくなり、作成すべきプレゼン資料の方向性を効率良く決めることができます。
② テーマの設定
プレゼンのテーマとは、①で定めたゴールに到達するための手段であり、プレゼンの主となるメッセージのことです。従って、ここでは自分がアピールしたいものではなく、訴求したい相手が魅力的に感じる具体的なメリットを設定することが重要です。
例えば、数字やデータを求める傾向の人に「新商品の特徴」を説明するのであれば、独自開発や最新技術などを主張するよりも「○円の利益率が実現可能」や「○パーセントのコストを抑制」などの具体的な数字のメリットを訴えたほうが、より相手に響くプレゼンになります。
③ 情報の整理
続いて、プレゼンに必要な情報を洗い出します。ここでは、②で設定したテーマに必要な情報を中心にピックアップすることが重要です。
先ほどの「新商品の特徴」を例に挙げれば、独自開発や最新技術を裏付ける情報よりも、利益率やコストの根拠を示すデータの収集・整理に注力することが求められます。
なお、調べて集めた情報は、「理由」「効果」「条件」という視点で分類しておくと、次の構成の構築で流れを組み立てやすくなります。
④ 構成の構築
ここでは、③で整理した情報をプレゼンで発表する順番に並べていきます。
この時、イントロ→ボディ→エンディング→アペンディックスという流れに振り分けます。この順番に情報が並ぶだけで、聞き手がストレスなく理解できる論理的な構成となります。
また、上記のイントロには相手が感じているであろう「課題と原因」を、ボディには「その解決策(提案するもの)と効果(メリット)」という流れで構成すると、より相手の共感が得やすく、納得感のある展開となります。以下に、その一例を提示します。
提案内容:新システム導入により業務効率20%向上を実現
・イントロ
課題・・・相手が感じている既存システムの問題点(不満)を指摘
原因・・・既存システムの問題点の原因がどこにあるのかを提示
・ボディ
解決策・・新システムの紹介と導入の提案
効果・・・業務効率が向上する具体的な根拠(事実)と条件面の提示
⑤ 確認・修正
以上の流れで構成したものを最後に確認・修正します。全体を通して情報の過不足や論理的に矛盾がないかをチェックしてください。
ポイントは、聞き手の立場になって、もし自分が同じプレゼンを受けたら理解・納得・行動につながるかを考えてみることです。
3. 見やすさを追及するための2つのポイント
せっかくわかりやすい構成とストーリーが実現できていても、デザインやレイアウト、文章の体裁が整っていないとプレゼンテーションの効果は下がってしまいます。
ここでは、実際にスライドを作成する際のポイントをご紹介します。
3-1. 資料作成の5つの原則を守る
見やすいプレゼン資料を作成するためには、情報を効率よくスライドに配置することが大切です。「効率よく」というのは、聞き手にとって情報の「モレ・ムダ・ダブり」がないことです。
難しく聞こえますが、以下の5つの原則を実践することで実現可能です。
② スライド内の文字数はできるだけ少なくする
③ 聞き手の興味や関心を促す見せ方を意識する
④ 本当に必要なことだけを飾らず過不足なく伝える
⑤ 常に聞き手の視点で考える
それぞれの内容を見ていきましょう。
① 1スライドで主張するメッセージは1つに絞る
1枚のスライドで複数の内容を一覧できたほうが効率的に感じがちですが、1枚にキーワードを詰め込みすぎると各メッセージのインパクトが弱まり、結果としてどれも聞き手の印象に残りにくくなります。
② スライド内の文字数はできるだけ少なくする
スライド内に文字がたくさん詰まっていると、聞き手は文字を読むことに集中し、話し手の話が耳に入ってこなくなります。そうした事態を避けるためにも、スライド内の文字数はできるだけ少なくすべきです。
ポイントは、下記の例のようにできるだけ不要な部分を削除し、必要なものは体言止めなどを活用して文章を単純化することです。
③ 聞き手の興味や関心を促す見せ方を意識する
興味や関心を促す見せ方を意識すると、相手の感情を刺激する資料になります。
例えば、「売上が大きく増えます」というメッセージを打ち出したい場合、そのまま記載しても具体性がなくインパクトも弱く感じます。しかし、これを「売上が3倍に!」というように数字を具体化すると飛躍的にインパクトが強くなり、印象にも残りやすくなります。また、文字色や画像を効果的に利用すると、よりメッセージの印象は強まります。
同様に、「質問」も感情を刺激する効果的な手段です。
聞き手は質問をされることで話を聞くという受け身の姿勢から、自分で考えるという主体的な姿勢に変わります。その結果、プレゼンの内容を「自分事」として捉え、話に意識が向きやすくなります。
④ 本当に必要なことだけを飾らず過不足なく伝える
プレゼン資料を美しく見せようと細部まで凝って作る人がいますが、そこまで注目してみている人はほとんどいません。そのようなことに時間をかけるよりも、もっと内容のブラッシュアップに時間を割きましょう。
一方で、シンプルにしようと聞き手にとって必要な情報までそぎ落としてしまったら、書かれている内容が理解されません。聞き手から「手抜き」だと思われる可能性もあります。
従って、スライドを作成する際は、余計な装飾はそぎ落としつつ、初めて見る人でも簡単に理解できる程度の情報を過不足なく盛り込むことが大切です。
⑤ 常に聞き手の視点で考える
これは、相手の状況や理解度によって伝えるべき情報は異なるということです。
例えば、初めてシステムの導入を検討中の人に対して「コスト削減」というスライドを見せたら、システムのことを知らなくても自分にメリットがあることがわかり、その後の話に興味を持って頂けるかもしれません。
しかし、過去に別のシステムを導入している人であれば、このような話は知っているので、興味を持たない可能性があります。そのため、相手の状況や理解度に応じた内容でプレゼンを実施することが大切になります。
3-2. レイアウトの基本を守る
内容や構成が良い資料でも、レイアウトがおかしいと見栄えが悪くなるばかりか、理解の妨げになる恐れがあります。ここでは、資料作成の際に守るべきレイアウトの基本を5つご紹介します。
② 統一ルールを設ける
③ 文字や図形などの色使いにも注意する
④ 余白を残す
⑤ 文字や図形は整列させる
それぞれの内容を見ていきましょう。
① Zの法則に沿って配置する
人の目は対象物の全体像を把握するためにZの形で動くといわれ、これを「Zの法則」といいます。
そのため、この導線の流れに沿って文字や図表を配置すると、読み手はスムーズに理解できます。また、スライド上部のAからBは、聞き手が最初に読む場所になるので、なるべく興味を引くものを入れるようにしましょう。
② 統一ルールを設ける
資料全体を通じてスライドごとに文字や画像の配置がバラバラだと、聞き手は何がどこにあるのか瞬時に判別できず、混乱してしまいます。
従って、次のように、最初にどの情報をどこに配置するのかを決めておきましょう。同じレイアウトのスライドに何度も目を通しているうちに、読み手もルールを認識し、内容理解がスムーズになります。
文字や図形といった素材の色やサイズなども、目的に応じて使い分けをします。最低限のものとして、以下に例示している項目は作り込む前に決めておきましょう。
③ 文字や図形などの色使いにも注意する
以下の例のように、1枚のスライド上に多くの色が混在していると、読みづらいうえに、品もなくなります。しかし、右の例のように色が少なすぎると、ポイントがわかりにくくなるばかりか手抜きに見えてしまいます。
従って、スライド上で使う色は、白系と黒系を含め、多くても5系統の色までにしましょう。
さらに色の使い分けが必要になった場合は、この5系統の色の濃淡を調節して追加してください。
④ 余白を残す
読みやすいスライドを作成するためには、十分な余白が必要となります。1枚のスライドに多数の要素がすき間なく詰め込まれていると、情報過多で読みづらくなります。
次の例のように、同じ情報量でも文字や図表のサイズを調整し、各要素の距離を離すなどして余白を生み出すことで、読みやすく見た目も良いスライドになります。
⑤ 文字や図形は整列させる
テキストや図表を配置する際は、それぞれの位置を整列させましょう。
位置や間隔がそろっていないスライドは、見た目が悪く、文字とイラストの関係性や、読む順番がわかりにくくなります。一方、きちんと配置されたスライドは、見た目が良くなるだけでなく、ストレスなく読めるので理解もスムーズです。
ライトワークスではeラーニングで学べる「Microsoft Office2019 PowerPoint」スキルアップコースを提供しています。パワーポイントの基本的な使い方から、わかりやすくきれいな資料をスピーディに作成する方法が学べます。
4. まとめ
これまで見てきたように、パワーポイントを使った資料作成をフォーマット化することで、2つの点で作業を効率化することができます。
・時間と手間の節約
・意思決定のスピードアップ
また、実際にフォーマット化する際は、「わかりやすさ」と「見やすさ」の観点から、それぞれ2つのポイントを押さえておくことが大切です。
◆「わかりやすさ」のために
・プレゼン資料を作る目的を明確にする
・最初に全体の構成を考える
◆「見やすさ」のために
・資料作成の5つの原則を守る
・レイアウトの基本を守る
この他にも、写真やイラスト、グラフや表、アニメーションの使い方なども詳細に決めておくことで、より効率的に作業を進めることができるようになります。
会社によって方針や考え方には違いがあると思いますので、より使いやすい方法にカスタマイズしていただいて構いません。
ぜひ、資料作成のフォーマット化を実践し、長時間労働の是正につなげましょう。
また、業務効率アップのためには全員のPCスキルを底上げすることも重要です。自分の知識不足に気付かず、非効率的な方法のまま作業をしている例も考えられるため、eラーニングや勉強会等の学習の機会を活用しましょう。
社員教育や人材開発を目的として、
・eラーニングを導入したいが、どう選んだらよいか分からない
・導入したeラーニングを上手く活用できていない
といった悩みを抱えていませんか?
本書は、弊社が20年で1,500社の教育課題に取り組み、
・eラーニングの運用を成功させる方法
・簡単に魅力的な教材を作る方法
・失敗しないベンダーの選び方
など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を
全70ページに渡って詳細に解説しているものです。
ぜひ、貴社の人材育成のためにご活用ください。
プライバシーポリシーをご確認いただき「個人情報の取り扱いについて」へご同意の上、「eBookをダウンロード」ボタンを押してください。
参考)
SENA株式会社,「『プレゼン資料の作成』が苦手な人の割合は全体の39.5%」,https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000075913.html(2023年11月16日)