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「紹介予定派遣」とは メリット・デメリットを企業・求職者の側から検証

「紹介予定派遣」とは メリット・デメリットを企業・求職者の側から検証

紹介予定派遣とは、派遣社員が派遣先企業で直接雇用されることを前提に、一定期間、派遣労働者として従事する形態の人材派遣のことです。

新しく誰かを雇用したい……となった際に、求めている人材がすぐに見つかり、従業員側も会社と相性が合えば、何の問題もないものです。しかし、面接ではよかったものの、いざ雇ってみたら思ったよりも技術的な面で足りなかった、人柄が社風に合わなかったなど、ずれがあることで現場から不満の声が出ることがあります。場合によっては、せっかく雇ったのに辞められてしまうといったことが問題となることもあります。

そういった問題の対応策の一つとなり得るのが「紹介予定派遣」です。本稿では、この制度の特徴について紹介するとともに、企業側と求職者側それぞれのメリットやデメリットについてご説明します。

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1. 紹介予定派遣とは

紹介予定派遣は、派遣会社の登録社員が、一定の期間(6カ月以内) 派遣労働者として企業に派遣され[1]、労働に従事したのち、その契約期間後に企業側、派遣社員側双方の合意があれば契約企業に直接雇用されるということを前提に実施されます。

厚生労働省のデータ[2]によると、2014年度の調査において派遣労働者を雇い入れている事業所の割合は 10.8%とされています。同データで、企業側が派遣社員を受け入れる理由には、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」といった項目が多く挙げられています。また、企業としては、派遣社員を「一時的な人材の補充」という目的で受け入れていることが多いこともわかります。

一般的な人材派遣の仕組みは、企業で働き手が必要となったとき、労働者を抱えている派遣会社に相談。希望にかなった労働者を選定し、雇用期間を決めて契約の上、業務に従事してもらう、というものです。契約期間が満了すれば、派遣社員の就業もその時点で終了します。現在の法律では、通常最長3年です。

一方、紹介予定派遣の場合、大きく次の3つの特徴があります。

派遣契約の仕組み

派遣社員を迎え入れる時点で、派遣期間の終了後、その派遣社員を企業が直接雇い入れることを前提に契約を交わします。

派遣期間

派遣社員としての就業する期間は3~6カ月が一般的です。

雇用の仕組み

派遣期間終了後は直接雇用になりますが、必ずしも正社員とは限りません。まずは契約社員から、という形式をとっている企業もあります。

この3つの特徴からご理解いただけるように、紹介予定派遣は通常の派遣と大きく目的が異なり、一時的な人員増員のためではなく、その後長きにわたって「直接雇用」をすることを目的にしています。

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2. 企業側のメリット・デメリット

人材を採用するとなった時に、自社のサイトに採用情報を掲示する、求人広告を使用する、求人サイトやエージェントを活用するといったやり方をするなどさまざまなやり方があります。そういった採用方法の一つが、人材派遣会社を介した紹介予定派遣です。紹介予定派遣を検討するにあたり、企業側にどんなメリット、デメリットがあるかを見ていきましょう。

2-1. メリット

企業側のメリットは主に次の3つです。

人材採用に関わるコストと時間が抑えられる

通常、企業が人材を直接採用する場合、広告費や応募書類の確認、面接の調整などをする必要があり、それなりのコストと時間がかかります。さらに時間とお金をかけて内定を出したにもかかわらず、辞退されてしまうというリスクもあります。紹介予定派遣の仕組みを使うと、派遣会社主導で人選、紹介、面談が進められるため、時間もコストも抑えることができます。

採用時のミスマッチが防げる

時間とコストをかけて一般的な採用活動をしてようやく採用できても、実際雇用してみると求めていたスキルが足りない、人間性が社風に合わないなど、ミスマッチが起こるというリスクがあります。紹介予定派遣の場合は実際に働いてもらい、現場の意見を聞きつつ最終的に採用するかどうかを決められるため、ミスマッチを防ぐことができます

事前に面接、履歴書の確認ができる

通常の派遣の場合、派遣社員の履歴書等を提示することや事前面接といった行為は禁止されています。[3]しかし、紹介予定派遣の場合は将来的な雇用を見据えているということで、事前に面接や履歴書の確認ができるため、派遣社員の特性を確認してから契約・就業してもらうことができます。

このように、ミスマッチを防ぐだけでなく、採用活動にかかる労力を抑えることができます。

2-2. デメリット

通常の採用と比較した場合、そのリスクを下げられるというメリットがある紹介予定派遣ですが、一方で当然デメリットもあります。

紹介手数料がかかる

一般的に、紹介予定派遣であっても派遣社員として従事している期間は派遣料金以外に追加の手数料はかかりません。しかし、実際に直接雇用に合意した場合、紹介手数料が求められます。その費用は派遣会社によりますが、一般的に理論年収×手数料率です。採用コストと比較して、どちらがより抑えられるかは事前に検討する必要があるでしょう。

候補者が辞退する可能性がある

能力にも人間性にも問題なく、派遣期間を終えた時点でいざ直接雇用へ、という段階になった際に、派遣社員側がなんらかの事情で辞退をする、という可能性はあります。そうなると、また一から採用の準備を始めるということになり、それまでの数カ月が無駄になってしまうというリスクも想定されます。

派遣登録した人材に限られる

紹介予定派遣で募集をかけられるのは、当然ながら人材派遣会社に登録した人材に限られます。初めから正社員採用を希望している人材はこの採用フローからは確保できないということも念頭に置いておくとよいでしょう。

ミスマッチを避ける方策として使われるため、当然ながら、ミスマッチだった場合は辞退の可能性があります。


3. 求職者側のメリット・デメリット

派遣社員として働く求職者側にもメリット、デメリットがあります。一つずつ確認していきましょう。

3-1. メリット

主なメリットは次の3つです。

事前に職場の雰囲気が把握できる

面接では測りきれない職場の雰囲気を、派遣社員として従事している間に体験することで、直接契約を交わす前にその会社が自分に合うか合わないかを確認することができます。通常の採用の場合、その社風が合わなくて辞めたいと思っても、退職するにはハードルが高く感じるものです。紹介予定派遣の場合は、派遣期間終了後の直接雇用を辞退できるという点で断りやすいといメリットがあります。

仕事内容や求められているレベル感が把握できる

求められているスキルや仕事内容が、現在自分の持っているスキルでどれだけ対応できるかということを試すことができます。

未経験でも挑戦できる

通常の派遣や中途採用では、希望職種の経験者やスキルを持った人、という求人が多いものです。しかし紹介予定派遣の場合、数カ月間の派遣期間で経験を積むということもできるため、未経験でもポテンシャルがあればいいというケースもあり、未経験の業界や職種に挑戦できる可能性があります。

このように、企業と自分が合うかどうかを見極められるだけでなく、新たなチャレンジの入り口としても活用できることがわかります。

3-2. デメリット

主なデメリットは次の3つです。

直接雇用に企業側が合意しない可能性がある

仕事内容も合っており、会社の人間関係もよく、このまま直接雇用されることを派遣社員側が期待したとしても、企業側が何らかの事情で直接雇用を断わってくるという可能性があります。

必ずしも正社員雇用というわけではない

数カ月の派遣期間の後、あくまで派遣元を離れて「直接雇用」となるだけなので、必ずしも正社員で働けるというわけではありません。契約社員からのスタートという場合もあるため、事前に確認が必要です。

直接雇用になると条件が悪くなる可能性もある

派遣社員の際は時給で働いていることが一般的です。一方、直接雇用となった際に、月収という形に切り替えられることも多々あります。その結果、企業によっては、直接雇用になると給与が下がるという可能性もあります。また、派遣元から離れる際に、有給休暇などの条件も変わるため注意が必要です。

企業側のデメリットと同様、ミスマッチを防ぐ前提があるため、雇用に結びつかないこともあります。また、直接雇用と決まった場合の条件については、あらかじめ確認しておく必要があるようです。


4. まとめ

紹介予定派遣とは、直接雇用を前提とした派遣社員を受け入れる仕組みのことです。採用にかかるコストを抑えられ、企業側、求職者側の採用のミスマッチを未然に防ぐということができます。

企業側・求職者側のメリットとデメリットは、次のものが挙げられます。

企業側のメリット
① 人材採用に関わるコストと時間が抑えられる
② 採用時のミスマッチが防げる
③ 事前に面接、履歴書の確認ができる

企業側のデメリット
① 紹介手数料がかかる
② 候補者が辞退する可能性がある
③ 派遣登録した人材に限られる

求職者側のメリット
① 事前に職場の雰囲気が把握できる
② 仕事内容や求められているレベル感が把握できる
③ 未経験でも挑戦できる

求職者側のデメリット
① 直接雇用に企業側が合意しない可能性がある
② 必ずしも正社員雇用というわけではない
③ 直接雇用になると条件が悪くなる可能性もある

現在主要な人材派遣会社の多くがこの紹介予定派遣の仕組みを導入しています。通常の採用ではなかなかうまくいかないという悩みを抱えている場合、一度紹介予定派遣という形式での採用を検討してみてはいかがでしょうか。

[1]派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の18の(1)
[2]厚生労働省HP各種統計調査厚生 労働統計一覧 7.2.雇用構造 雇用の構造に関する実態調査(派遣労働者実態調査) 結果の概要 平成24年
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/haken/12/dl/haken12_1_01.pdf
[3]派遣法第 26条第7項

(参考)
テンプスタッフ 紹介予定派遣とは
https://www.tempstaff.co.jp/client/faq/0024.html
アデコ㈱ 紹介予定派遣とは
https://www.adecco.co.jp/about/employment_style/tp

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