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マイナンバー制度とは 改正法や企業の取り扱い注意点などをご紹介

マイナンバー制度とは、住民票を有する全員に対し12桁の個人番号(マイナンバー)を付与し、社会保障・税・災害対策の3分野について、個人情報を共通番号で管理する制度です。

行政の効率化や利便性の向上などを目的として創設された制度ですが、改正により預貯金口座へ付番が開始されるなど、個人の資産管理への利用が進められています。

本稿では、マイナンバー制度とは何か、そのメリットや企業がマイナンバーを取り扱う際の注意点などをご紹介します。

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以下6つのカテゴリに用語を分類し、検索しやすいようまとめています。

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  • 採用・雇用
    …インフルエンサー採用、エンプロイアビリティ など
  • 人事企画
    …健康経営、従業員エンゲージメント など
  • 制度・環境の整備
    …インクルージョン、ピアボーナス など
  • 労務管理
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ぜひ様々なシーンでお役立てください。


1. マイナンバー制度とは

マイナンバー制度とは、住民票を有する全員に個人番号を付与して、行政機関ごとに持っている個人情報を共通番号で管理する制度です。対象は「住民票を持つ全員」なので、外国籍の人にも与えられます。原則として、この番号は変更することができません。生涯にわたって同一番号を使用します。

長期にわたる議論の末、2013年に成立したマイナンバー法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)を根拠とする制度で、2015年9月に改正されました。

制度施行前は、住民票コード、基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、それぞれの番号で個人の情報を管理していたため、機関をまたいだ情報のやりとりでは、氏名、住所などで個人の特定をしなければならず、時間と労力を費やしていました。共通の番号を導入することで、複数の機関に存在する個人の情報が同一人物の情報であることが確認できるようになり、個人の特定を確実かつ迅速に行うことが可能になります。

次に、マイナンバー制度のメリットを見ていきましょう。

参考)
内閣府「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」 
http://www.cao.go.jp/bangouseido/law/revision.html


2.マイナンバー制度のメリット

マイナンバー制度によって、何が良くなるのでしょうか。そのメリットは次の通りです。

・行政の効率化
個人情報の特定・確認作業に要していた時間や労力が削減されます。複数の機関で連携できるため、作業の重複もなくなります。

・利便性の向
各種の行政手続きの際に必要だった添付書類が削減されたり、オンラインで手続きができるようになったりと、利便性が向上します。
具体例として、全国のコンビニエンスストアで住民票や印鑑登録証明書などの証明書を発行できることや、マイナポータルの利用が挙げられます。

・公平、公正な社会への制度設計が可能
個人の所得を把握しやすくなるため、税金逃れや不正受給を防止できるようになります。
また、所得に応じて医療保険の自己負担割合を変えるなど、柔軟できめ細かい社会保障制度の設計が可能になります。

このようなメリットの反面、「個人情報が守られるのか」という懸念もあります。政府は制度面、システム面で以下のような対策を講じています。

◆制度面
・法律に規定があるものを除き、マイナンバーを含む個人情報の収集や保管を禁止する
・第三者機関の「個人情報保護委員会」が、マイナンバーが適切に管理されているか監視・監督する
・法律に違反した場合の罰則を従来より強化する
・マイナンバーを提供する際はマイナンバーの確認と身元の確認を義務付け、本人になりすまして手続きができないようにする

◆システム面
・個人情報を一元管理せず、従来通り、年金の情報は年金事務所、地方税の情報は市区町村というように各機関に分散して管理する
・行政機関の間で情報のやりとりをするときも、マイナンバーを直接使わず、専用の符号を用いる
・システムにアクセスできる人を制限し、また通信の際には暗号化する。

制度面やシステム面での万全の安全対策とともに、人的ミスを防ぐための教育や意識の徹底も求められます。

参考)
内閣府 「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」
http://www.cao.go.jp/bangouseido/seido/index.html
内閣府 「マイナンバー制度における罰則の強化」
http://www.cao.go.jp/bangouseido/pdf/faq5_2.pdf


3. マイナンバーカードとは

マイナンバーカードは、希望者が申請することによって付与され、身分証明書としても使用できるカードです。

3-1. 通知カードとの違い

住民票を持つ全員に付与されるマイナンバーが記載されたカード(通知カード)とは次のような違いがあります。

通知カードマイナンバーカード
概要 マイナンバーを通知するためのカードマイナンバーを記載した身分証明書
対象者住民票を有する全員希望者
交付方法住民票の住所に郵送市区町村の窓口で本人確認が必要
仕様紙製プラスチック製、ICチップ搭載
顔写真の記載なしあり
身分証明書不可
有効期限なしあり(成人10年、未成年5年)
交付開始 2015年10月2016年10月

マイナンバーカードが付与されると、通知カードは市区町村に返納する必要があります。

3-2. マイナンバーカードのメリット

マイナンバーカードによって以下のことが可能になります。

・公的な身分証明書として利用
・コンビニなどでの公的証明書の取得マイナンバーカード
・「マイナポータル」を始めとする各種オンライン行政サービスの利用

マイナンバーカードの活用で利便性が高まる一方、懸念されるのがセキュリティの問題です。

3-3. セキュリティ対策

個人情報の漏えいや他人によるなりすましなどに対して、以下の対策を講じています。

・ICチップの情報を確認する際には暗証番号の入力が必要。一定回数間違えるとカードがロックされる
・ICチップにはプライバシー性の高い個人情報は記録されない
・カード本体やICチップに偽造対策を施す

なお、2018年6月時点でのマイナンバーカード交付率は全国で11.5%と低い値です。全国で普及促進の活動がされていますが、普及しているとは言い難い現状です。

参考)内閣府 「マイナンバー制度における安全対策について」
http://www.cao.go.jp/bangouseido/case/individual/security.html


4. マイナポータルとは

政府が運営する、マイナンバー(カード)を利用したオンラインサービスです。行政機関が保有している自分の個人情報の確認や、オンラインでの申請などができます。

マイナポータルの主なサービス
・行政機関同士でやりとりされた自分の個人情報の履歴を確認できる
・行政機関が保有している自分の個人情報を検索・確認できる
・行政機関や民間企業からのお知らせを受けることができる
・子育てに関するサービスの検索やオンラインでの申請ができる
・ネットバンキングやクレジットカードを利用して公金決済ができる
・登録することで外部サイトへもログインできる

このサービスを利用するためには、マイナンバーカードの他に、パソコン・カードリーダーまたは対応スマートフォンが必要です。

マイナポータルのサービス内容は地域によって異なり、全ての地域で同じサービスが利用できるわけではありません。地域を指定して利用する必要があります。

参考)
内閣府「マイナンバー(社会保障・税番号制度)」
http://www.cao.go.jp/bangouseido/myna/index.html
マイナポータル公式サイト
https://myna.go.jp/SCK0101_01_001/SCK0101_01_001_InitDiscsys.form


5. マイナンバーと企業

企業では、従業員の税務上の手続きをする場合にマイナンバーが必要です。このような場合の個人番号の利用については、個人情報保護法に定められています。

マイナンバー利用時の注意点

  • 利用目的の明示
    マイナンバーを何のために使用するのか、従業員に理由を伝えることが必要です。「源泉徴収票作成のため」など具体的に伝えます。

  • 本人確認
    ①マイナンバーカード
    ②通知カード(または番号付き住民票)および運転免許証(またはパスポート)など
    ①または②によって確認します。通知カードのみでは不十分のため注意が必要です。

  • 利用制限、提供制限
    個人番号を利用目的以外に使用してはいけません。また担当者以外に情報を提供することも禁止されているため、たとえ上司から提供を求められても提供してはいけません。

  • 安全管理措置
    特定個人情報の漏えいなどを防止するために、適切な管理をしなければなりません。これは取り扱い担当者のみではなく、事業者が組織として取り組む必要があります。

  • 保管の制限
    マイナンバーを利用する必要がなくなった場合は、速やかに廃棄・削除しなければなりません。理由なく保管することは禁止されています。例えば、退職者などの情報を正当な理由なく保管しておくことはできません。

参考)総務省 自治行政局 住民制度課長「マイナンバー制度について」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000405143.pdf

また、マイナンバーを利用・保管する場合は、安全管理措置を講じる必要があります。
以下をご参照ください。

安全管理措置
基本方針、取扱規定などの策定基本方針を策定し、マイナンバーの取扱規定を記載した業務マニュアルなどを作成する。
組織的安全管理措置・責任者、事務担当者の決定
・業務日誌の作成および運用
・チェックリストの利用など
人的安全管理措置事務担当者に対して必要かつ適切な監督・教育をする。
物理的安全管理措置・壁や仕切りなどを使用して、情報が覗き見されないような工夫
・書類の盗難を防ぐための措置(保管庫に施錠するなど)
・電子媒体などを持ち出す場合の安全対策
技術的安全管理措置・パソコンの利用において、ユーザーアカウント制御などを使用して、担当者のみが利用できるようにする(利用者のパスワード管理)
・ウィルス対策ソフトの導入など、外部からの攻撃に備える
・データの暗号化を行うなど

マイナンバーを利用する業務を委託する場合においては、委託先に対しても必要かつ適切な監督をする義務が生じます。

参考)特定個人情報保護委員会事務局「はじめてのマイナンバーガイドライン」
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/270414chusho.pdf


6. 改正マイナンバー法

2015年の改正により、マイナンバーの利用範囲が拡大されました。

・預貯金口座へのマイナンバーの付番
預金保険機構などによるペイオフのための預貯金額の合算において、マイナンバーの利用ができます。
社会保障給付などのために地方自治体や年金事務所が金融機関に求める資力調査や税務調査で、マイナンバーが付された預金情報を効率的に利用できます。

このため、金融機関は、預貯金口座と名義人のマイナンバーを紐づけて管理する義務を負います。

また、個人がマイナンバーを銀行に告知することは、現在は任意とされていますが、2021年を目処に義務化されることが検討されています。

・医療などの分野における利用範囲の拡充
健康保険組合による特定健康診査の情報について、被保険者が転職などによって健康保険組合を変えた場合、マイナンバーを利用して引き継ぎができます。

また、引っ越しをして転居した場合、地方公共団体における予防接種履歴について転居前後の地方公共団体間で問い合わせ(情報連携)ができます。

・地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充など
特定優良賃貸住宅の管理の事務でマイナンバーが利用できます。また、条例によって定める事務で情報提供ネットワークシステムが利用できます。

マイナンバー制度の利用範囲はさらに広がることが見込まれます。今後の動向に注意する必要があるでしょう。

参考)
内閣府 「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年9月9日法律第65号)」概要
http://www.cao.go.jp/bangouseido/pdf/hokaisei_gaiyou.pdf
BUSINESS LAWYERS 「改正マイナンバー法への対応で押さえておくべき3つのポイント」
https://business.bengo4.com/category3/article3

「マイナンバー制度」をeラーニングで社員教育


eラーニング教材:よくわかる!「マイナンバー制度」のポイント

マイナンバーを適切に取り扱うために必要な知識を身につける

この記事にあるように、事業者がマイナンバーを取り扱うにあたっては、特定個人情報の漏えいなどを防止し、適切な管理のために必要かつ適切な安全管理措置を講じなければなりません。
本教材では、マイナンバーの概要と利用方法について理解したうえで、制度導入により生まれる新たなリスクを把握し、その対処方法を学びます。

本教材をeラーニングとして配信することで、効率的に「マイナンバー制度」の社員教育をすることが可能です。


7. まとめ

マイナンバー制度とは、住民票を有する全員に12桁の個人番号(マイナンバー)を付与し、社会保障・税・災害対策の3分野について、個人情報を共通番号で管理する制度です。

この制度のメリットは、
・行政の効率化
・利便性の向上
・公平、公正な社会への制度設計が可能
な点です。

マイナンバー法成立の2年後の2015年には改正マイナンバー法が公布され、以下が追加されました。
・預貯金口座へのマイナンバーの付番
・医療などの分野における利用範囲の拡充
・地方公共団体の要望を踏まえた利用範囲の拡充など
特に、預貯金口座のマイナンバーの付番により、銀行は預金情報に紐づけられたマイナンバーを管理する義務を負うことになります。

マイナンバーの利用範囲はさらに拡大されることが見込まれます。政府は、制度面、システム面において、セキュリティ対策を講じているため個人情報の漏えいや悪用は防げるとしていますが、人的ミスによる漏えいの可能性は否定できません。官公庁、企業を問わず、情報の管理には担当者のみに限らず、組織的に安全管理を講ずることが重要です。

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