リーダーシップというのは持って生まれた才能だ、と考えていませんか?
リーダーというと日本代表のキャプテン、企業のトップ、軍隊の長など、英瞬豪傑を思い浮かべがちですが、実はリーダーシップというのは「性質」ではなく「スキル」であり、学習や経験を積むことで身に付けることができるものです。
その証拠に、世界では時代によってさまざまなリーダーシップ論が確立され、実践の仕方が探求されてきました。リーダーシップの理想的な在り方は時代のニーズによって変化し、それに合わせた人材育成が行われてきたのです。
本稿では職場におけるリーダーシップについて、時代ごとに展開された理論の概要とその変遷をご紹介します。
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目次
1. リーダーシップの定義
「リーダー」とは、「他者を正しい方向に進ませる人」を指します。チームリーダーのように指揮を取る人に使用されます。
「リーダーシップ」という言葉の定義は、個人や組織が、他の個人やチーム、組織全体をleadする能力、つまり「他人や組織を導く能力」です。リーダーシップは能力を表しているため、リーダーでなくてもリーダーシップを発揮することは可能です。
アメリカの学術的観点では、リーダーシップを「共通の仕事や課題を達成するために、他人の協力を得ることができる社会的な影響力」と定義しています。より広義には、課題達成を導くだけでなく、他人が力を出せるように導くという意味も含まれています。
つまりリーダーシップとは、他者に影響を与え、力を引き出し、共通の目標を達成する能力ということができるでしょう。
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2. リーダーシップ論の変遷
リーダーシップ論は1900年代ごろから活発に議論されるようになりました。その理由は、企業の成長や変革、軍隊の強化など、時代背景によってさまざまです。それでは実際の変遷を追っていきましょう。
2-1. 特性理論(~1940年代)
特性理論はリーダーシップ論の中でも最も古典的なものです。リーダーは生まれながらにして持っている特性によってリーダーシップを発揮していると考え、リーダーと非リーダーを特性(性格や資質)で区別しようと研究が行われました。
具体的に、リーダーシップを発揮する者としない者では以下のような特性に違いがあるとされました。
参照: eba「Trait Theory of Leadership and Its Key Characteristics」,
http://www.educational-business-articles.com/trait-theory-of-leadership/
しかし、優秀なリーダーを分析しても特性は必ずしも同じにはならないため、リーダーを区別するためには特性理論だけでは不十分とされ、別の方法が研究されるようになっていきました。
2-2. 行動理論(1940年代~1960年代)
行動理論とは、優れたリーダーと非リーダーの行動に注目し、両者の違いを研究することにより、リーダーシップを発揮する者の行動を類型化しようとした理論です。
「リーダーシップは生まれもった資質で発揮される」と考えてきた特性理論とは対照的に、行動理論では「リーダーシップは天性のものではなく、行動によって発揮される」と考えます。
優れたリーダーの行動を見いだし非リーダーに模倣させることにより、リーダーを育てあげるための理論として活用されました。
代表的な理論として三隅二不二(みすみ じゅうじ)が提唱した「PM論」というものがあります。この理論ではリーダーシップを、「課題達成機能(Performance)」「人間関係・集団維持機能(Maintenance)」の2つ能力のマトリックスで定義しています。
課題達成機能は集団に目標や課題を達成させることに関する機能であり、人間関係・集団維持機能は集団の人間関係を良好な形で維持する機能を指します。
図:PM理論
参照:トーマツイノベーション編著(2017)『人材育成ハンドブック』眞崎大輔,ダイヤモンド社
課題達成機能と人間関係・集団維持機能、どちらも有している人は、図のエリアで表すとPM型となり、理想的なリーダーシップを発揮できる人ということになります。
pM型とPm型の人材を組ませるは、課題達成機能と人間関係・集団維持機能のうち、どちらかの機能が低い状態です。そこで、低い方の機能を教育によって補い、理想のリーダーに育てるための教育が行われました。これが「リーダーシップ教育」の始まりです。
それまで、リーダーシップは生まれ持った特性と考えられていたため、リーダーシップを教育するということは画期的な考え方でした。
また、pM型とPm型を組ませることでお互いを補完し、バランスの良いリーダーシップを実現するといった工夫も行われました。
行動理論は汎用性が高く、現在でも部分的に活用されることがありますが、PM型リーダーの行動を模倣するだけでリーダーシップが身に付くわけではないことが明らかになったため、次の理論へと推移していきました。
2-3. 条件適合理論(1960年代~1980年代)
条件適合理論とは、リーダーシップを発揮する優秀なリーダーは、特定の特性・行動様式を持っているのではなく、内的および外的環境の条件によって、リーダーシップスタイルを変化させているという理論です。
代表的な理論として、ハウス(R.House)が提唱した「パス・ゴール理論」があります。ハウスは、リーダーシップを「個人が目標(ゴール)を達成するために、その道筋(パス)に影響を与えること」と定義しています。
「パス・ゴール理論」において、ハウスはリーダーを取り巻く状況を、タスク構造、権限体系、ワークグループといった環境要因と、メンバーの自立性、経験、能力といった部下の要因の2つの側面から分析しました。
そして、リーダーの行動を4つに分類し、環境要因および部下の要因により、適したリーダーシップスタイルは変化すると示しました。
図:ハウスのパス・ゴール理論
参照:https://culccaferiu.wordpress.com/tag/situational-leadership/
パス・ゴール理論は、現在でもマネジメントの領域で広く活用されているリーダーシップ理論です。この理論を代表として、条件適合理論はさらに発展していきました。
2-4. コンセプト理論(1980年代~現代)
コンセプト理論とは、条件適合理論を基に、集団やビジネス環境におけるさまざまなケースでのリーダーシップのとり方を研究したものです。よって、環境や状況ごとにさまざまな理論があります。
ここでは、代表的な4つのリーダーシップ論をご紹介します。
変革型リーダーシップ(1980年代~現代)
変革型リーダーシップ理論は、アメリカ経済の長期低迷により、激しく変化する経営環境の中で、組織を変革的に発展させるリーダー行動に焦点を定めた理論です。
このタイプのリーダーは経営危機に陥った際に非常に重要で、ビジョンや戦略などを積極的に変えようとしたり、組織内に危機感を醸成したりすることで、組織に変革をもたらそうとします。それにより、危機的状況からの脱却が期待できるのです。
サーバント・リーダーシップ(1980年代~現代)
サーバントとは「奉仕者」という意味で、リーダーは部下に奉仕し、支援する者であるという理論です。
サーバント・リーダーの特徴として、「自身を支援者として認識する」「第一に傾聴する」「説得と対話を通じて業務を進める」「組織のコミュニティを形成しようとする」などがあります。これは、従来のみんなを引っ張っていくようなリーダーシップとは反対の特徴といえるでしょう。
オーセンティック・リーダーシップ(2000年代~現代)
エンロン事件をきっかけに、アメリカ全体でコーポレートガバナンスが問われるようになり、リーダーには高い倫理観や道徳観が必要とされました。オーセンティックとは「本物の」などの意味があり、直訳すると「本物のリーダーシップ」となります。
オーセンティック・リーダーの特徴としては、「道徳的判断」「公平な人間関係」などが挙げられます。
トランザクショナル・リーダーシップ(1990年代~現代)
トランザクショナル・リーダーシップでは、組織の管理と課題達成に重点を置き、リーダーは報酬と罰を与えることで、部下を管理、統率します。変革型リーダーとは違って、トランザクショナル・リーダーは未来を変えようとしているわけではなく、保守的な考えを持っているケースが多く見られます。
上記の理論以外にも「Eリーダーシップ」や「トランスフォーメーションリーダーシップ」など、さまざまな環境・状況下におけるリーダーシップ論が存在しています。
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3. まとめ
リーダーシップとは、「他人や組織を導く能力」を指し、リーダーではなくてもリーダーシップを発揮することは可能です。
リーダーシップについては時代によってさまざまな考え方があり、以下のように変遷してきています。
~1940年代
特性理論:優秀なリーダーは共通する特性(性格や資質)を持っていると仮定し、リーダーと非リーダーを特性で区別しようとした
1940~1960年代
行動理論:リーダーシップを発揮している人に共通する行動を分析して行動様式を定義し、モデル化を試みた
1960~1980年代
条件適合理論:優れたリーダーに共通した特性・行動はなく、組織や集団の置かれた環境条件によってリーダーシップのスタイルを変化させていると考えた
1980~現在
コンセプト理論:条件適合理論を前提としながら、さらにビジネス環境や組織・メンバーの状況に応じて、細分化したパターンでのリーダーシップのとり方を、具体的に研究した
コンセプト理論にはさまざまなリーダーシップ論がありますが、本稿では代表的な以下の理論を紹介しました。
・変革型リーダーシップ
・サーバント・リーダーシップ
・オーセンティック・リーダーシップ
・トランザクショナル・リーダーシップ
時代は環境によって変化することからも分かるように、リーダーシップの在り方に一つの答えはありません。企業では、これらの理論を参考に、自社のその時々の環境下において求められるリーダーシップ像を明確にし、育成や配置の工夫をしていく必要があるでしょう。
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