「ジョブ・カードを利用してみたい。うまく活用するには、どのようなポイントに気を付けて作成するべきだろうか?」
就職活動や今後のキャリア・プランニングに活用できる「ジョブ・カード」というツールをご存知ですか? ジョブ・カードとは、国が制定した「ジョブ・カード制度」の中で使われる書類のことです。2008年から実施されているものの、2021年度時点で内容まで理解している企業は25.3%[1]と低いため、知らない人も多いかもしれません。
ジョブ・カードを使うと、就職・転職活動において自身のスキルを明確にアピールできます。また、就職・転職のために1度使って終わり、ではなく、自身の価値観や希望を踏まえた、長期的なキャリア・プランニングにも活用できます。
本稿では、ジョブ・カードの書き方や作成する際のポイントについて説明します。ぜひ参考にしてください。
「ジョブ・カード」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
⇒ダウンロードする
目次
1. ジョブ・カードとは
ジョブ・カードとは、職歴や学歴、職業訓練の経験、免許・資格などをまとめて、就職活動やキャリア設計に活用するツールです。就職活動・転職活動に生かせるだけでなく、自身の経歴や能力についての整理や自己理解を深めることにも有効です。
もともとは正社員経験の少ない人を対象としたジョブ・カード制度の中で使われるものですが、ジョブ・カード自体は誰でも作成・活用することができます。
具体的な様式や記入例は第3章でご紹介します。まずは、ジョブ・カードを活用することのメリット・デメリットを見ていきましょう。
なお制度について詳しく知りたい方は、下記サイトをご参照ください。
● 厚生労働省HP
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/jobcard_system.html
● マイジョブ・カード
https://www.job-card.mhlw.go.jp/
参考)ジョブ・カードについて、厚生労働省は以下の機能を担うツールと提唱しています。
・生涯を通じたキャリア・プランニング
キャリアコンサルティング等の支援の前提となる個人の履歴や、支援を通じた職業経験の棚卸し、職業生活設計等の情報を蓄積し、訓練の受講、キャリア選択等の生涯のキャリア形成の場面において活用する「生涯を通じたキャリア・プランニング」のツール
・職業能力証明
免許・資格、教育(学習)・訓練歴、職務経験、教育・訓練成果の評価、職場での仕事振りの評価に関する職業能力証明の情報を蓄積し、場面・用途等に応じて情報を抽出・編集し、求職活動の際の応募書類、キャリアコンサルティングの際の資料等として活用する、職業能力を見える化した「職業能力証明」のツール
(引用:新ジョブ・カード制度推進基本計画|https://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/job_card01/dl/kihonkeikaku.pdf)
1-1. ジョブ・カードのメリット
求職者がジョブ・カードを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で確認していきましょう。
就職活動の質を高められる
自身がこれまで得たスキルや仕事に対する姿勢、今後どのような仕事がしたいかなどをまとめる過程で、それらを改めて自分の中で整理することができます。
これにより、新たな目標や応募する際に譲れない条件、仕事で大事にしたいことなどが見えてくるなど、より質の高い就職活動の展開が期待できるでしょう。
自己PRを作成しやすくなる
自身の強みや得意なこと、スキルをまとめることで、自己PRポイントを作成しやすくなります。
職業訓練の成果や職業能力を正当に評価してもらえる
ジョブ・カードを使用し、職業訓練などを受けることで、その成果を訓練実施機関や企業に記載してもらうことができます。それは国が発行した正式な職業能力証明の書類となります。
スキルを持つことを国を認めることとなるので、自信を持ってアピールすることができるでしょう。
職業能力開発に活用できる
自身の今の職業能力を見える化することで、今後どのような職業能力が必要か、また、それを習得するためにどのようなことをすればよいかを理解することができます。
自身の希望に沿ったキャリアの形成につながる
自身が大事にしたい価値観や興味関心、将来どのようなキャリアを積みたいかを理解することで、就・転職後の「こんなはずではなかった」を避けることができ、充実したキャリア形成につなげることができます。
1-2. ジョブ・カードのデメリット
ジョブ・カードにはメリットが多くありますが、以下のようなデメリットもあります。
応募書類として使えない企業もある
ジョブ・カードの認知度が低いため、応募書類として採用している企業は多くありません。職務経歴書で十分な場合もあり、せっかく作成しても活用しきれない可能性があります。
作成に時間と労力がかかる
ジョブ・カードは記入する項目がかなり多くあります。しっかりと記入すると、相当の時間と労力がかかります。
なお、書き方に迷う場合は自身に近い年代や職業の人のジョブ・カードを参考にしてみましょう。ジョブ・カードの検索は、下記サイトで行えます。
ジョブ・カードの検索はこちら
マイジョブ・カード|
https://www.job-card.mhlw.go.jp/guidance
人事に関する注目トピックを毎週お届け!⇒メルマガ登録する
2. 状況別:ジョブ・カードを上手に活用しよう
ジョブ・カードは、うまく活用すれば、あなたのキャリア形成や、それを支援する企業に対しとても有効に働きます。ただ、闇雲に作成するのではなく、状況によって効果的な活用の仕方をしましょう。
本項では、ジョブ・カードの活用法を状況別に紹介します。
2-1. 在職中の方の活用法|自身のキャリア・プランニングに活用
仕事をしていると、誰しも将来のことや仕事への向き合い方について考えることがあります。一方で、その考えを実際に書き起こしたことがある人は少ないのではないでしょうか?
ジョブ・カードには、職業経歴や免許・資格だけでなく、興味を持っていること、強み、将来取り組みたいことなど自身について記入する項目が多くあります。自分の考えをあえて書面に記し、見える化することで、違った視点・新しい視点が得られるでしょう。
例えば、以下のようなことが挙げられます。
- 現在の自分の能力
- 従業員として将来あるべき姿
- 自分の本当にやりたい仕事
- 今後自分に必要な能力は何か、そのために何をすべきか
- 今後キャリアを積むにはどうしたらよいか
上記のようなことを理解することで、今後の仕事への姿勢や転職のタイミングなどを考えるきっかけになるでしょう。このように、ジョブ・カードは自身のキャリア・プランニングのために有効活用することができます。
2-2. 求職中の方の活用法|職業訓練や就職活動に活用
ジョブ・カードは本来、企業が行う雇用型訓練やハローワークが行う職業訓練を受ける前に必要な書類です。ジョブ・カードを提出し、これらの訓練を受けることで、国から正式に訓練での成果を証明するシートを発行してもらうことができるのです。
求職中の方は、訓練を受けるためにジョブ・カードを作成するのも活用法の一つです。
また、訓練を受けない場合でも、ジョブ・カードの作成を通して自身の能力や今後のキャリアプランを整理することで、就職活動での企業選びや企業での面接対策に活用できます。
2-3. 企業の方の活用法
企業側がどのように活用するのか把握することで、作成する際のポイントをつかむことができます。求職者は、企業の活用法を理解してジョブ・カードの作成に臨みましょう。
企業の方がジョブ・カードを活用する方法は3つあります。
(1)採用の際に追加資料として活用する
企業の方は、履歴書や職務経歴書に加えてジョブ・カードを活用することで、応募者の職業能力がどのような経緯で得られたものなのか、能力をどのように生かせるのかなど、より詳しい情報を得ることができます。
また、応募者がどのような職務が得意か、どのような職務に就きたいかなども見える化されているため、採用後にミスマッチが生じるのを防ぐこともできます。
(2)従業員のキャリア・プランニング
従業員にジョブ・カードを作成させることで、キャリアの目標や目標達成のためにすべき取り組みなどを明確にすることができます。
従業員にとってはモチベーションアップにつながりますし、上司や教育担当者は、従業員一人一人に寄り添った細やかなアドバイスが可能になります。そのため、企業全体の活性化と職場への定着率向上が見込めます。
また、ジョブ・カードを活用して従業員の実務成果、職業能力を評価し、一定要件を満たした場合助成金を受けられます。
(3)雇用型訓練を実施して採用活動に生かす
企業が雇用型訓練を実施する際には、必ずジョブ・カードを使用しなければなりません。
雇用型訓練とは、正社員経験の少ない人を対象に企業が行う実践的訓練です。訓練を受ける人(求職者)が作成したジョブ・カードに記載されている内容を参考に実施することで、より充実した訓練となるでしょう。
また、一定要件を満たしていれば、国からの助成金が受けられます。
助成金についてはこちら
厚生労働省HP|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122460.html
3. ジョブ・カードの書き方とポイント
ジョブ・カードの様式は「キャリアプランシート」「職務経歴シート」「職業能力証明シート」の3種です。さらに、それぞれ職業経験の有無、職業訓練実施団体などに分かれ全12パターンあります。
サイト「マイジョブ・カード」にて、それぞれの記入例が紹介されています。本項では作成の際のポイントを紹介します。
3-1. 様式1 キャリアプランシート
キャリアプランシートには以下のような項目があります。
- 価値観、興味、関心事項等
- 強み等
- 将来取り組みたい仕事や働き方等
- これから取り組むこと等
- その他(自己PRや相談したいことなど)
上記の項目からも分かるように、キャリアプランシートは価値観や、仕事への姿勢などを理解するために「自身の思い・考え」をまとめるものです。
就業経験のある方は、「今の仕事で何が楽しいか」「どのような経験や思い、強みが仕事に生かせていたか」「どのようなことに興味があり、どのような趣味があるか」を思い起こしながら書くことで、自身のキャリアを見直すことができます。
就職活動に利用したい場合でも、アピールのためというよりは、自分自身の価値観、考えをまとめて整理することに重点を置いて書くのがよいでしょう。
■キャリアプランシートダウンロード
▶就業経験のある方
▶就業経験のない方、学卒者等
(出典:マイジョブ・カード|
https://www.job-card.mhlw.go.jp/guidance/download_blank)
3-2. 様式2 職務経歴シート
職務経歴シートには、これまでの職歴とその職務の中で学んだことや得た知識、技能などを記載します。
シートは2面になっていますが、自身で記入するのは第1面のみです。第2面は勤務した企業、雇用型訓練を実施した企業が第1面の内容を確認したことを証明する欄となっています。
なお、証明を受けると就職活動の際に職務経歴証明書として活用することができます。
職務の内容は、誰が読んでもその職務について分かるように書きましょう。「職務の中で学んだこと、得られた知識、技能等」の欄は、自身の能力を伝えるためにも、自身で改めて理解するにもとても大切な項目です。
「どのような実務のなかで」「どのような経験をして」「どのようなことを学んだ/どのような知識・技能を得た」かを明確に、また、具体的にまとめましょう。
■職業経歴シートダウンロード
(出典:マイジョブ・カード|
https://www.job-card.mhlw.go.jp/guidance/download_blank)
3-3. 様式3 職業能力証明シート
職業能力証明シートには、学歴、所持している免許・資格、職業訓練歴を記入します。免許・資格を記載する際には極力免許・資格取得を証明する書類などの添付が必要です。
■職業能力証明シートダウンロード
▶免許・資格 【様式】
▶学習歴・訓練歴 【様式】
▶訓練成果・実務成果 【様式】 【記入例】
(出典:マイジョブ・カード|
https://www.job-card.mhlw.go.jp/guidance/download_blank)
eラーニング教材:部下の成長を後押しする「キャリアデザイン」
部下のモチベーションを高めるには?
企業が終身雇用を維持することが難しくなった現在、若手社員のキャリアに対する意識は、シニア世代よりも格段に高くなっています。若手社員のキャリアの相談に乗ることは、マネジャーにとって非常に大事な仕事です。本教材では、キャリアデザインとは何かを理解するとともに、仕事を通じて自身のキャリアをデザインする方法を学びます。また、若手社員のキャリアデザインのサポートとモチベーションの向上を通じて、組織のパフォ-マンスアップを実現します。
本教材で、効率的に「キャリアデザイン」の社員教育をしてみませんか?
4. まとめ
ジョブ・カードとは、「生涯を通じたキャリア・プランニング」、「職業能力証明」の機能を持つツールで、職歴や学歴、職業訓練の経験、免許・資格などを一覧化して記載します。
就職活動・転職活動に活用できるだけでなく、作成することで改めて経歴・能力を整理することにも有効です。
現在の能力や、やりたい仕事、今後のキャリア希望などの整理、就職活動や雇用型訓練などの職業訓練を受ける際の資料として活用することができます。
また、企業が従業員に作成させることによって従業員のモチベーションアップを図ることができます。
ジョブ・カードには以下のようなメリットがあります。
- 自身のスキル、職業意識を整理できる
- 自己PRポイントの整理ができる
- 職業訓練、職業能力の評価に活用できる
- 職業能力開発に活用できる
- キャリア形成に活用できる
一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 応募書類として使えない企業もある
- 作成に時間と労力がかかる
- 職務経歴書で十分な場合も多い
ジョブ・カードは就職活動に使われるものと思われがちですが、在職者にも有効です。作成する過程で、違った視点・新しい視点が得られるでしょう。
また、企業がジョブ・カードを活用することにより、従業員の職業能力やキャリアへの目標理解を深めることができ、組織の活性化にもつながります。
今後は、テレワークや遠隔での業務が普及し、職務や勤務地を限定して人材を募集するジョブ型採用が広まることが予想されます。求職者の職業能力が明確に分かるジョブ・カードを活用する企業が、より増加するでしょう。
作成に時間と労力はかかりますが、一度自分のキャリアを見直すために作成してみるのはいかがでしょうか?
社員教育や人材開発を目的として、
・eラーニングを導入したいが、どう選んだらよいか分からない
・導入したeラーニングを上手く活用できていない
といった悩みを抱えていませんか?
本書は、弊社が20年で1,500社の教育課題に取り組み、
・eラーニングの運用を成功させる方法
・簡単に魅力的な教材を作る方法
・失敗しないベンダーの選び方
など、eラーニングを成功させるための具体的な方法や知識を
全70ページに渡って詳細に解説しているものです。
ぜひ、貴社の人材育成のためにご活用ください。
プライバシーポリシーをご確認いただき「個人情報の取り扱いについて」へご同意の上、「eBookをダウンロード」ボタンを押してください。
[1] 厚生労働省「調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-03b.pdf
参考)
ジョブ・カードとは|ジョブ・カード制度総合サイト|厚生労働省
https://jobcard.mhlw.go.jp/job_card.html
雇用型訓練とは|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122460.html
ジョブ・カード制度|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/jobcard_system.html
ジョブ・カードとは?作成方法や様式を解説【記入例あり】|転職Hacks
https://ten-navi.com/hacks/article-403-31953