「越境学習」とは、ビジネスパーソンが所属する組織の枠を越えて、実際に業務をしながら学ぶことを意味します。普段と違う組織と交流し、実際に働くことで学びを得るという特徴があります。
越境学習はビジネスパーソンが個人的に業務時間外で活動するケースが多く見られますが、近年は企業が人材育成の目的で導入するケースも増えています。なぜ、個人の学びを企業が支援するのでしょうか。
本稿では、越境学習とは何か、企業が導入する上でのメリットや注意点を交えながら解説します。
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目次
1. 越境学習とは
「越境学習」とは、ビジネスパーソンが自主的に所属する組織の枠を“越境”し、実際に業務をしながら学ぶことを意味します。
社内研修とも自宅学習とも違い、第三の場所、“サードプレイス”で普段と違う組織と交流する点が特徴です。働きながら社外の勉強会やワークショップ、NPO法人の活動に参加するなど、具体的な行動は多岐にわたります。
近年では、越境学習を導入する企業も増えています。例えば、株式会社電通とソフトバンク株式会社は共同で「越境ワーカー」と称したプロジェクトを実施しています。これは、相互に従業員を受け入れて企業が設定した議題を解決するものです。
また、株式会社では、希望する従業員が他社で一定期間働くことができる「社外留学制度」を導入しています。
ビジネスパーソンにとっては、普段と違う環境に身を置くことによって、仕事の成果や意味、チームの在り方や他者との関わり方、スキル・専門性の価値などを考え直す良い機会になるようです。
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2. 越境学習が注目される理由
製造業からサービス業へと産業構造がシフトし、知識やサービスのような知的生産物の創造が重要視されるようになりました。 このような社会では、個人をベースにした知識や知恵が企業の競争力を左右するようになるため、従業員一人一人が学び続ける必要があります。
しかし、一企業の閉じた環境で同じ業務をしているだけでは学びや成長は限定されたものになり、せっかく優秀な人材がいても、その能力を発揮しきれないことになりかねません。
厳しい環境の変化に対応していくには、企業が従業員に積極的に学びの機会を与えることで、従業員の成長を促し、組織力を高める必要があります。
その取り組みの一つが越境学習なのです。所属する企業の業務だけではなかなか体験できない環境を与えられることによって従業員は新しい視点や能力を得る、その経験が企業にイノベーションをもたらす機会になるのではないかと近年注目されています。
3. 越境学習のメリット
企業は越境学習を導入することによって、具体的にどのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここではそのメリットを、企業側、従業員側に分けて解説します。
3-1. 企業側のメリット
企業側のメリットとして次のことが挙げられます。
- 効率的に情報が得られる
- 従業員の離職を防ぐ
- リーダー育成につながる
効率的に情報が得られる
新しいサービスやイノベーションはアイデアを出すことから始まりますが、同じ職場・同じメンバーで過ごしていると、徐々に視野が狭くなる可能性があります。その点、越境学習では違う価値観に触れる機会が多いので、新しい視点や情報を得やすくなります。
また、自社を客観的に見ることができ、優れた点や課題点が浮き彫りになることもあるかもしれません。それらが、今後のサービス向上や新しいイノベーションにつながることが期待できます。
従業員の離職を防ぐ
社外での学びや活動は、従業員のキャリア形成に重要な役割を果たします。しかし、しかしキャリア形成を個人任せにすると、転職による離職のリスクが高まってしまうでしょう。
そこで企業としては、越境学習を自社の人材育成として活用し、他の企業で働いてみたいという従業員を支援する環境を整えることで、優秀な従業員を自社にとどまらせることが期待できます。
リーダー育成につながる
大きな組織では、若くしてプロジェクトのリーダーとなる経験や、ゼロから事業を立ち上げる経験をすることは困難ですが、越境学習では可能です。普段と異なる環境で成果を出すという経験は従業員に自信をもたらし、これからの時代を切り開くリーダーとしての大切な原体験となるでしょう。
企業は越境学習を導入することで、自社内だけでは得られない視点や情報を得た従業員を確保でき、サービス向上につなげることができます。また、優秀な従業員の離職を防いだり、リーダーとしての経験を積ませることができたりするといったメリットも期待できます。
3-2. 従業員側のメリット
一方、従業員側のメリットは以下の通りです。
- 新しい挑戦ができる
- 普段の業務を再考するきっかけになる
- 保有スキルや企業文化の再認識につながる
新しい挑戦ができる
個人的に越境学習をするとなれば、業務時間外での活動に制限されてしまいます。経験したい業務があっても、場合によっては転職しか方法がないことも考えられるでしょう。企業に越境学習の制度があれば、転職せずとも新しい挑戦をすることが可能です。
普段の業務を再考するきっかけになる
越境学習では、普段所属している組織では体験できない環境に身を置くことができます。例えば小さなプロジェクトのリーダーを務めることや、貧困問題の解決に向けた社会的な取り組みに関わることなども可能です。
多様な経験を積むことで、自分の仕事と社会のつながりや、自社が社会に与える価値などを具体的にイメージしやすくなります。それを踏まえ、働く意味や組織の在り方についても深く考えられるようになるでしょう。
保有スキルや企業文化の再認識につながる
プレゼンテーションや情報整理など、今まで自分が社内で培ってきたことを他社からも認められることで、自分の持つスキルを具体的に認識できます。
また、他社の情報を得ることで、例えばタレントマネジメントについて自社は先進的であったというような、これまで当たり前だと思っていた企業文化を再認識する機会にもなります。
企業の越境学習制度を利用すれば、他社で業務に従事することも選択肢の一つとして可能になります。転職せずに新しい挑戦ができることは、従業員にとって大きなメリットでしょう。また、普段の業務や自分のスキル、自社の企業文化について改めて考える機会を得ることもできます。
関連記事:タレントマネジメントとは 能力の見える化で適材適所への人材配置を
4. 越境学習の注意点
越境学習を導入する上で注意すべき点は以下の通りです。
- 成果を求める
- 参加理由を見極める
成果を求める
普段と違う環境での活動は、目的を持たなければ単なる交流体験で終わります。越境学習の成果を出すには、従業員を随時フォローしながら進捗を確認することが必要です。
「違う環境での居心地悪さ」と「成果を求められるプレッシャー」から逃げずに働くことが、従業員にとって良い挑戦の機会となり、新しい視点と自信の獲得につながるでしょう。
参加理由を見極める
越境学習は、どの従業員でも成果に結び付くとは限りません。大切なのは、従業員が越境学習に参加する真意を企業側が見抜くことです。例えば、キャリア形成や成長のためかもしれませんし、本業のきつい仕事や不本意な状態からの逃避かもしれません。
どの程度の情熱で越境学習を希望しているのか、面談や勤務態度などから見極めることが必要です。
目的を持たなければ、越境学習は単なる交流で終わってしまいます。越境学習の効果を高めるには、従業員に成果を求めること、参加する従業員を見極めることが大切です。
5. まとめ
越境学習とは、ビジネスパーソンが自主的に所属する組織の枠を“越境”し、社外で業務をしながら学ぶことを意味します。
社内研修とも自宅学習とも違い、第三の場所、“サードプレイス”で普段と違う組織と交流する点が特徴で、近年は、人材育成の一つとして越境学習を導入する企業も増えています。
一つの企業ではなかなか体験できない環境に一定期間身を置くことによって、従業員が新しい視点と能力を得る機会になるのではないかと注目されています。
越境学習のメリットは以下の通りです。
◆企業側のメリット
・効率的に情報を得られる
・従業員の離職を防ぐ
・リーダー育成につながる
◆従業員側のメリット
・新しい挑戦ができる
・普段の業務を再考するきっかけになる
・保有スキルや企業文化の再認識につながる
越境学習の注意点は以下の通りです。
・成果を求める
・参加理由を見極める
既に多様な人材育成プログラムを実施している大企業でも活用されるほど、越境学習は企業・従業員の双方に利益をもたらします。新たな人材育成の手段として、越境学習を導入してみてはいかがでしょうか。
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リクルートワークス研究所 機関紙Works NO.116 『社員の放浪、歓迎』
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ソフトバンク株式会社 プレスリリース2018年
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2018/20180731_01/