人事システムとは、人事業務を効率化するためのITツールです。
人事の業務は、勤怠管理、採用、育成・教育、人事評価、人事配置など多岐にわたります。
人事システムでは、これらを関するデータを一元管理して効率化するだけでなく、そのデータから優秀な人材を発掘したり、人材の配置や育成などする際にそのデータを重要な判断材料として活用したりすることが可能です。
本稿では、人事システムとは何か、どのような機能や種類があるのか、導入のメリット、その際の注意点を解説します。
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目次
1. 人事システムとは
人事システムとは、人事業務の効率化を図るためのITツールです。
人事業務は多岐にわたりますが、大きく以下の2つに分類できます。
- 勤怠管理や給与計算、労務管理などの業務
- 人事評価や育成などの人材マネジメント業務
人事システムを導入する場合は、業務の種類によって必要な機能が異なることを理解しておきましょう。
1-1. 人事・給与システム
人事・給与システムは、勤怠管理・給与計算などの業務をサポートするものです。
勤怠管理
従業員の出退勤の記録、休暇の取得状況を管理でき、その後の給与計算や人事評価のプロセスの簡素化につながります。
給与計算
一人一人の給与、所得税、社会保険、年金関連、年末調整が一括管理できます。
労務管理
従業員の個人情報、制度や福利厚生の利用に関わる申請・手続き・承認などを一括管理できます。
これらの業務は定型業務であり、システム化することで作業の効率化やコスト削減が図れます。
1-2. 人材マネジメントシステム
一方、人材マネジメントシステムは、従業員の業務や研修・学習の履歴、評価などを管理するものです。従業員一人一人のスキルや能力を把握して、配置や育成に役立てることを目的としています。
採用管理
応募者や選考の管理、採用スケジュールなど採用活動の業務を一元管理できます。また、リファラル採用やタレントプールの構築などにも活用できます。
人事評価
業務の成果や取り組む姿勢などの評価を従業員ごとに蓄積することができ、査定や人材配置の決定、ポジション管理に役立ちます。
人材育成
企業の人材育成計画に合わせて、短期・長期で育成管理することができます。教育、研修、eラーニングの実施状況の他、従業員ごとに進捗や成果の確認、分析も可能です。
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タレントマネジメント
従業員一人一人の才能、スキル、実績などを集積・整理するデータベースとなり、人材の適正配置やスキル管理などに活用することができます。
関連記事:タレントマネジメントとは 能力の見える化で適材適所への人材配置を
人材育成やマネジメントの業務は人事部だけでなく、その他の部門も関係してきます。したがって人事システムは各部門で情報共有できるものが求められます。
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2. 人事システムの種類
人事システムには、いくつかの種類があります。自社ニーズに合うものを選ぶことが必要です。
2-1. 導入方法 「パッケージ製品」「スクラッチ開発」
人事システムには、ベンダー側ですでにシステムが構築されているパッケージ製品と、クライアントの要望に応じて新たにシステムを構築するスクラッチ開発があります。
スクラッチ開発で一から自社独自のシステムを作れば、自社特有の部分にも対応できるため理想的なものになりますが、その分、時間もコストもかかる点がデメリットです。
初期費用を抑えて短期間で導入したい場合は、パッケージ製品が便利でしょう。近年はパッケージ製品も、カスタマイズや他のシステムとの連携が可能な拡張性の高いものが増えています。
2-2. システム構築・運用方法 「オンプレミス型」「クラウド型」
自社サーバーに人事システムを構築する「オンプレミス型」、自社サーバーを使わず、インターネットを介してベンダー側が管理・提供するシステムを利用する「クラウド型」があります。両者の比較を下表にまとめました。
| オンプレミス | クラウド |
管理 | 自社 | ベンダー |
セキュリティ | 自社レベルに設定可 | ベンダーに依存 |
コスト | 高い | 低い |
オンプレミス型、クラウド型各々、一長一短があります。自社の規模や目的、予算などに合わせてどちらにするか検討しましょう。クラウド型の場合はベンダーの選択も重要です。
3. 人事システムの導入のメリット
人事システムを導入するメリットは、以下の点が挙げられます。
- 作業の効率化で重要業務の時間が増やせる
- 統一基準での選定や評価が可能になる
- シンプルに可視化でき、正確かつ即座に状況把握ができる
- 国内外の事業所・部署間における情報共有が容易かつ迅速になる
- 高精度な分析により人事業務の質が上がる
作業の効率化で重要業務の時間が増やせる
IT化により作業が簡素化、効率化されます。担当者は作業量が減り、自分のコア業務により時間と労力を注ぐことができます。
統一基準での選定や評価が可能になる
採用や人事評価などでは、人事システム内に基準を登録しておけば、それを基に公平な選定や評価が可能になります。属人的にならない、一貫性のある意思決定ができるでしょう。
シンプルに可視化でき、正確かつ即座に状況把握ができる
入力した項目は、リアルタイムに反映されます。入力情報を基に自動的に集計や分析されるものも多く、見やすい状態での現状把握が可能です。自動反映のため、集計ミスなども減り、正確な情報がスピーディーに手に入ります。
国内外の事業所・部署間における情報共有が容易かつ迅速になる
企業内の各部署はもちろん、国内外全ての拠点で人事システムの情報を共有できます。正確な情報が素早く、かつ簡単に入手できるため、あらためて情報を収集したり集計したりする必要もありません。
高精度な分析により人事業務の質が上がる
精度の高い分析をスピーディーに得ることができ、経営に生かせる人事戦略を練ることも可能です。結果的に組織の質向上につながるでしょう。
4. 導入に当たっての注意点
市場には多種多様な人事システムがありますが、導入すればそれでよし、というわけにはいきません。利用経験のある他社の評価などを参考にしつつ、「自社基準」という軸を持って選択することが大切です。
では、導入の注意点を具体的に確認していきましょう。
4-1. 使いやすさは前提条件
多機能=良いシステムとは限りません。複雑過ぎてうまく使いこなせないなら、システムの導入は単なる経費の無駄遣いで終わってしまいます。自社の導入目的に照らし、必要な機能がもれなく備わっていることが大切です。
ユーザーは人事担当者だけではなく、他部署の従業員や経営者、さらに求職者もあり得るので、分かりやすくシンプルなUI(ユーザーインターフェース)であることは重要なポイントです。
また、勤怠管理や採用、教育に関連する業務ではマルチデバイス対応が可能なシステムの方がよいでしょう。
4-2. 将来の制度や法律の改正に対応する柔軟性も考慮
人事業務の多くは、税制や法律に左右されます。また、社内で新しい制度が導入されたり、変更や修正が生じたりすることもあるでしょう。将来的な改正や変更に対応できる柔軟性があることも重要です。
カスタマイズや他ツールとの連携の可否など、どの程度拡張性があるかは導入前に確認しておきましょう。
自社の人事の現状を把握し、課題を洗い出した上で、どのような人事システムが自社に必要か、または適正か十分検討することが重要です。
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この記事にあるとおり、どのような人事システムが必要か、または適正かについては、人事の現状を把握し、課題を洗い出した上で、十分検討することが重要です。
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5. まとめ
人事システムとは、人事業務を効率化するためのITツールです。以下のような業務がシステム化できます。
- 勤怠管理
- 給与計算
- 労務管理
- 採用管理
- 人事評価
- 人材育成
また、タレントマネジメントにも活用することが可能です。
人事システムには、いくつか種類があります。
◆導入方法
「パッケージ製品」
ベンダー側ですでにシステム構築が完了しているソフトウェア(パッケージ製品)を利用します。短期間・低コストで導入できますが、備わっている機能・サービスしか利用できません。
「スクラッチ開発」
自社に合わせたシステムを新たに構築します。一から自社独自のシステムを構築できますが、時間とコストがかかります。
◆運用方法
「オンプレミス型」
自社サーバーに人事システムを構築し、自社で管理します。セキュリティレベルなどを自社基準で設定できますが、コストが高い傾向があります。
「クラウド型」
インターネットを介してベンダー側が管理・提供するシステムを利用します。コストは抑えられますが、セキュリティレベルはベンダーに依存します。
自社の状況や目的に合わせ、導入コストやランニングコストなどを確認して選定する必要があります。
人事システムを導入するメリットとして次のようなことが挙げられます。
- 作業の効率化で重要業務の時間が増やせる
- 統一基準での選定や評価が可能になる
- シンプルな可視化で正確かつ即座に状況把握ができる
- 国内外の事業所・部署間における情報共有が容易かつ迅速になる
- 高精度な分析により人事業務の質が上がる
ただし、導入の際は以下の点に注意する必要があります。
- 使いやすいこと
- 制度や法律の改正に対応する柔軟性を備えていること
人事システムは、人事業務を効率化させるだけではありません。さまざまなデータが1つのシステムに集約されることで、データの可視化や分析がしやすくなり、人材の適正配置や必要な施策を講じるための判断材料に活用することができます。
人事システムを最大限に活用していくことで人事業務の質が向上すれば、組織全体にも良い影響をもたらすでしょう。
自社の人事業務が、人事システムの導入や見直しで改善する可能性があるか検討してみてはいかがでしょうか。
参考)
日本の人事部「人事システム」
https://jinjibu.jp/f_it_system/
ダイレクト・ソーシングジャーナル 「日本で独自の進化を遂げるHR Tech。グローバルとは異なるトレンドに」
https://www.dodadsj.com/content/180202_hrtech/