自社では、どのようなHR Techを使っていますか?
機能や操作性には満足しているでしょうか。テクノロジーの進化は日進月歩です。知らないうちに新しい技術が生まれて、競合企業の人的マネジメントはもっと効率化されているかもしれません。
今使っているシステムに満足していても、最新技術の情報や今後業界が進む方向性を把握しておくことは、自社の将来に向けて体制を考えたり、今使っているシステムのベンダーとコミュニケーションをとったりする際に役立ちます。
もちろん、ベンダーは世界のトレンド情報を追っているでしょう。しかし、クラウドサービスというのはユーザーからのニーズを受けて進化していくものです。ユーザー企業がベンダーに提案をしたり、要望を述べたりすることは珍しいことではありません。
そこで今回は、世界のHR Techのトレンド情報として、HR Technology Conference & Exposition® のレポートをお届けします。
HR Technology Conference & Exposition® とは、HRテクノロジーや最新トレンドに着目した世界最大のHRカンファレンスです。HR業界のエキスパートによる基調講演や、HRテクノロジー製品・サービスの紹介が行われます。
2020年は10月27日~30日の4日間、オンラインで無料配信されました。本来ならラスベガスで実施予定でしたが、新型コロナウイルス拡大の影響でオンラインへと変更になりました。
本稿の前半部分では、HRアナリストであるジョシュ・ベルシン氏によるカンファレンス基調講演で紹介された、2020年のHR Tech業界やHR Tech市場の変化を紹介します。また、タレントマネジメントやキャリア、従業員体験など8項目にわたって、具体的に2020年のトレンドを解説します。
さらに後半では、Top HR Products 2020を受賞したHR Tech企業16社のうち、7社の製品について紹介します。
もちろん、HR Tech自体は以前から進化を続けています。しかし、世界を襲った新型コロナウイルスの影響により、人々のライフスタイルは激変しました。これを受けて、HR Techの在り方も変化の時期を迎えています。
「世界のHR Techの最新の課題は何なのか」「これからどのような方向に進んでいくのか」「我が社の人事戦略や生産性にメリットをもたらす技術はあるか」、ぜひ、このような視点で読んでみてください。
なお、HR Techについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「HR Tech企業」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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目次
1. 【基調講演まとめ】2020年のHR Tech市場と企業-最新トレンド
カンファレンス初日のキックオフとして、HR関係者向けアカデミー「Josh Bersin Academy」の代表であるジョシュ・ベルシン氏の基調講演が行われました。ベルシン氏は、約20年間にわたってHR全領域におけるテクノロジーアナリストであると同時に、教育者でもあります。
本章では、ベルシン氏が基調講演で語った、HR業界のニューノーマルや、HR Techの最新トレンドについて解説します。
1-1. 新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた、HR業界とHR Tech市場の変化
2020年に起こったパンデミックは、HR業界に新たな展開をもたらしました。ベルシン氏はそれを「大きなリセット」と呼んでいます。
特にワークプレイス、つまり職場に関する概念を一度リセットする必要に迫られました。コロナ禍において新しい働き方が求められる中、企業のHR部門は組織内で最もレジリエンス(=逆境から素早く立ち直り、成長する能力)や適応力が求められています。
実際、多くの企業のHR担当者は、クロスファンクショナル[1]の設立、安全な職場環境の整備などの対応に追われています。
また、従業員がリモートで働く機会が増えたことから、「どのようにして普段の生活の中で仕事をこなしていくのか」ということが注目される時代になりました。
それにより、HR Tech市場に関しては「HR担当者向けのHR Tech」から、「従業員を軸にしたWork Tech」への変化がこれまで以上に求められています。つまり、HR担当者がタレントマネジメントをするという視点から、従業員のワークフローを支援するという視点へと移り変わってきました。
例えば、ワークフローをスムーズにするためのコミュニケーション、スケジューリング、プロジェクト目標設定ツールなど、従業員の業務の質を高めるシステムが必要とされています。
このように、パンデミックはHR業界に大きな変化をもたらし、HR Tech企業に求められる製品・サービスも変わってきたと、ベルシン氏は述べています。
1-2. HR Tech各領域における最新トレンドと注目すべきHR Tech企業
続いてベルシン氏は、HR Techにおける8つの最新のトレンドを紹介し、それぞれの先端企業を解説しました。
(1) コアHCMの機能統合化
HCM(Human Capital Management:人的資本マネジメント)領域では、コアとなる機能の統合化が進んでいます。
特にHCMの大手ベンダーは、必要な機能の独自開発や対応は難しいと考えているため、以下の分野で小規模ベンダーと提携する重要性を感じているようです。なお、講演において、具体的な企業名の提示はありませんでした。
・COVID-19の対応と報告
・コンプライアンス
・業績管理の強化
・新しい学習プラットフォーム
・AIを活用した採用
・ウェルネス、フィットネスアプリ
・ダイバーシティとインクルージョン製品
・チーム管理ツール
・キャリアマネジメント
・従業員の経験
・Slack、ワークプレイス、G-Suiteとの統合
など
(2) タレントマネジメントの進化
従来のタレントマネジメントシステムは、評価システムを採用したトップダウン形式が主流でした。
しかし現在では、多くのプロジェクトに関わる従業員、クロスファンクショナルな役割、ジョブシェアリング、世代を超えたチーム、多様なキャリアパス、健康や安全など、さまざまな要素を考慮する必要があります。
あらゆるニーズに応えるために、タレントマネジメント市場の競争はさらに激しくなっていくでしょう。企業がどのツールを選ぶべきかは、方針や従業員の使いやすさによって大きく変わります。
さらに、人材獲得市場も成長が期待されます。パンデミックでややスローダウンしましたが、HR業界ではAIの活用が最も期待される市場です。
タレントマネジメントの1つである人材獲得と配属は、かつて別々に考えられてきました。しかし、社内の人材を活用するコストは新たな人材を獲得するよりも低いことから、両者は同じ文脈で捉える必要があります。
また、2020年は人種や性別に関する公平性、多様性、包括性の重要性が訴えられた年でもありました。
タレントマネジメントにおいても、それらに取り組むベンダーが出てきています。
参考)タレントマネジメントに関するHR Tech企業
・eightfold.ai(https://eightfold.ai/)
・Avature(https://www.avature.net/)
・pymetrics(https://www.pymetrics.ai/)
・Phenom People(https://www.phenom.com/)
いずれもAI搭載のタレントマネジメントプラットフォームで、非常にインテリジェントなマッチング最適化システムを提供。組織が多様性に対してどのような戦略を取ればよいか、現状と対策についてレポート機能を使ってサポートする。
関連記事:タレントマネジメントとは 能力の見える化で適材適所への人材配置を
(3) 従業員プラットフォーム
パンデミック前の「従業員体験(Employee Experience)」[2]は、福利厚生や勤務時間の柔軟性などが魅力の1つでした。
トレーニングや健康保険、ボランティアやフリーフードの提供といった従業員体験を通して、生産性を上げることに焦点が当てられていたのです。
一方パンデミック後は、場所にとらわれず、安全かつ効率的に働くことが重要視されるようになりました。例えば、在宅ワークへの対応や孤独対策などが挙げられます。
このような新しいニーズに応えるために、今後は従業員体験市場も伸びていくことが予想されます。
そもそも従業員体験市場の歴史は、マネジメントに着目した、年に一度のエンゲージメント調査から始まりました。次に、数日や月単位でフィードバックが来るパルスサーベイが導入され、調査結果からデータを抽出しマネジャーに行動計画を提案する機能が活用されました。
しかし、パンデミックが起きた現在では、今までよりも継続的かつ迅速に実行できるプラットフォームが求められています。そして、従業員が新たに直面した問題を解決するために、適切な担当者を、適切に配置することが重要です。
これは、「家にパソコンがないからIT担当者と話がしたい」「コロナ感染が拡大したときは直接人と話したくない」「LMSが機能していないから人材開発部と連絡を取りたい」など、過去に見られなかった声が上がると予想されるためです。
また、従業員体験を向上させるためには、HR部門だけでなく役員やIT部門、法務部などが協力して対応する必要があります。
HR担当者は従来の年に一度のエンゲージメント調査、パルスサーベイ、位置情報の確認、パフォーマンス評価などの機能を統合して管理する必要があるでしょう。
企業が従業員のデータをいくつものリソースから入手する流れができつつあるために、パフォーマンスマネジメント、チームマネジメント、エンゲージメントアナリティクス、従業員評価などの従業員体験市場も、M&Aなどを通じて統合する動きが出てきています。
(4) ラーニングプラットフォームの新時代
従業員の学びに関して、今の私たちに必要なのは、仕事をしながら学んでもらうことと、能力アカデミー(Capability Academy)を構築するということです。
仕事をしながら学ぶと、業務を実践する中で必要なスキルや知識が身に付けられます。
一方、能力アカデミーでは、人材開発担当者が企業にとって必要な能力を時代の流れを読んでリサーチし、従業員に提供することで学びの場をつくります。
ラーニングプラットフォーム市場は競争が激しく、たくさんのベンダーが参入しています。市場はとても複雑ですが、以下のカテゴリーに統合化が見られるのが特徴です。
A. ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP):適切な学習を見つけるためのプラットフォーム
B. プログラム・デリバリー・プラットフォーム:オープンな学習プラットフォーム
C. マイクロラーニング・プラットフォーム:2分以下のビデオまたは記事形式の学習ツール
最近では、「マイクロラーニング」の分野が急成長しています。さまざまな企業への調査によると、企業研修の40%がマイクロラーニングで、60%が従来の研修であるマクロラーニングであることが分かりました。
さらに、ハードスキルだけでなく「共感性」「チームワーク」「客観性」といったヒューマンスキルが学べるコンテンツが求められています。
また、VRを使った研修も急成長を見せており、ベルシン氏はSTRIVRという企業に注目しています。同社は、ウォルマートのトレーニング時間を8時間から15分へ短縮するなど、企業研修に革命をもたらしています。
・Microsoftのラーニングアプリ(https://www.youtube.com/watch?v=kmroqY6VGWU)
新入社員だけでなく既存の社員のスキルも向上できる
・STRIVR(https://www.strivr.com/)
VRを使った没入型学習を提供する企業
関連記事:LXPとは?LMSとの違いやメリットは?人材育成の最新トレンド紹介
関連記事:マイクロラーニングで自律学習を促進!人材育成への活用方法も解説
(5) キャリア(人材配置の変化)
興味深い変化として、人材配置の方法がヒエラルキー型ではなくマーケットプレイス型になっている点が挙げられます。
マーケットプレイス型とは、市場のように需要と供給で人材配置が決定されることを意味します。
パンデミック後の社会では、仕事の流動性が今までよりも高まっているはずです。例えば、ギグワーカー[3]といった社外の人材を採用し、スキルベースで人材配置を推進する動きが出てきています。
また、ドイツでは「この仕事は70%だけやり、30%は他の人に任せる。自分の残りの30%は他の仕事をする」というようなジョブシェアリングも活用され始めています。
(6) ウェルビーイングと従業員体験
ウェルビーイング[4]はHR業界における大きなマーケットの1つです。460億ドルの市場が毎年4.8%成長しています。
従業員の給与の32%が福利厚生に使われるようになり、過去8年間で19%増加しました。
パンデミックを機に、環境的な不安、健康的な問題や心理的なストレスを抱える人が増加しているため、さらに成長する可能性が高いと考えられます。
企業は従業員のウェルビーイングについて今までよりも考える必要が出てきています。福利厚生を担当するHR部門だけでなく、企業の役員レベルでも考慮に入れるべき項目といえるでしょう。
健康でいること、ストレスを減らすこと、集中できる環境を提供すること、望むキャリアを支援することは、組織全体の生産性や従業員の定着率などに関わってくるからです。
・Virgin Pulse(https://www.virginpulse.com/)
健康、ウェルビーイング、コンディション管理、福利厚生ナビなど全てのジャンルを統合し、効果を分析するツールを開発。ベルシン氏が特に注目しているベンダー。
サービス紹介動画:https://www.youtube.com/watch?v=jaII5FMv9G8
(7) ピープルアナリティクスは必然に
ピープルアナリティクス[5]は必要不可欠です。現在アナリティクスを使ってビジネスの成果を予測している企業の割合は、34%にもなっています。
ピープルアナリティクスは、特にコロナ禍において、レジリエント人事(回復力をもたらす人事)として重要な役割を果たすことになるでしょう。
たくさんのベンダーがツールを出していますが、AIなどのテクノロジーの技術力よりも、注目すべきはベンダーのコンサル力です。自社と同等規模でのデータの活用経験などがあるかどうかを必ず確認するようにしましょう。
・Nokia(https://www.nokia.com/ja_jp/)
パンデミック直後、ピープルアナリティクスを迅速に活用。地域、移動スケジュール、年齢、家族、単身世帯、親と同居している人の割合などを可視化し、ストレスが多い項目を特定する試みを実施。HR部門だけでなく、マネジャーや従業員が必要な情報を獲得するために使えるようになった点が、注目すべきポイント。
(8) 従業員中心のHR Techの枠組みづくり
(1)~(7)の内容を要約すると、「複雑性を排除し、いかに従業員がシンプルに働きやすい環境をつくるか」の一点に絞られると思います。
つまり、無駄なプロセスを排除して、危機的状況に対して迅速に対応できるツールが必要とされているのです。
HR担当者は技術力の高さを判断軸にしてツールを購入するのではなく、従業員にヒアリングし、直近で解決すべき問題を洗い出すことが先決です。
そこから浮かび上がってきた問題を、最も効率良く解決できるツールを導入できるよう検討する必要があるでしょう。
・Pepsi(https://www.pepsi.co.jp/menu.html)
ペプシはパンデミック時に、働きやすくするために何を変革する必要があるかと従業員にヒアリングするというプロジェクトを実施。これにより「パフォーマンスマネジメントプロセスが複雑で、従業員を働きづらくしている」ということが判明。その後、プロセスを簡略化するために時間を割いた。
1-3. まとめ-これからのHR Tech企業に必要なこととは
上記のように、ベルシン氏は講演において、HR Tech業界や市場の変化、HR Tech企業のトレンドについて紹介してきました。
今やHR業界は、AIによるルーティンワークの自動化に加えて、パンデミックや多様性に対応するためのHR Techを必要としています。
従業員の働き方、新しい信頼関係や安全性の構築、ウェルビーイングプログラムの提供、自宅でのリモート作業といった、かつてないほどの対応力が企業に求められているのです。
デジタルトランスフォーメーションが早急に実施され、企業は適応力の高いHR Techを望むようになっていくでしょう。この大きな変化に対して、レジリエンスをもたらしてくれるHR Techが必要とされていることが分かります。
今後、HR Tech企業は包括的な機能を備えた柔軟性の高い製品を提供するために、他の企業と統合する流れになっていくと考えられます。
さらに、今後は柔軟性だけでなく、従業員からのニーズをヒアリングして分析し、従業員の使いやすさを重視したツールを提供するHR Tech企業が生き残るといえるでしょう。
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2. 【Top HR Products 2020受賞企業まとめ】2020年の海外最先端HR Tech企業
最新のテクノロジーを業界にもたらしたHR Tech企業を選出する「Top HR Products 2020」では、約110社もの応募の中から16社が選出されました。基準としては、革新性や付加価値があるか、ユーザーが直観的に操作できるかなどが考慮されています。
受賞企業のうちの7社が今回のオンラインカンファレンスで紹介されたので、1つずつ解説します。
2-1. Top HR Products 2020を受賞したHR Tech企業7社の先端技術
ここでは、社内公募、給与支払い、従業員多様性、従業員経験など、時代のニーズに応えるHR Techを提供する企業を紹介します。
(1) 社内業務の公募、応募、選考を一元化する「Opportunity Marketplace」(Oracle Corporation)
図)Oracle Cloud HCMのデモ画面
引用元:Oracle Japan,「Oracle Cloud HCM 2020年秋の製品アップデート」,https://www.oracle.com/jp/human-capital-management/hcm-product-update.html(閲覧日:2021年1月5日)
Oracle Corporationは、顧客企業が社内で募集している業務を従業員に公開し、応募や選考まで包括的に管理できる「Opportunity Marketplace」というプラットフォームを提供しています。従業員は興味のある部署のポストに応募できるだけでなく、ギグと呼ばれる単発や短期業務にも挑戦できます。
カンファレンスでは、単発のギグワークが例として紹介されました。ギグワークにはスキルレベルやバックグランドを問わず応募可能です。担当者は応募者のプロフィールを比較して、適任者を選出し、業務を依頼します。
従業員はプロフィールページに職歴、スキル、興味関心、専門分野を入力すると、内容に沿ったギグワーク情報が届きます。従業員にとって、新しい仕事に挑戦するチャンスが広がりモチベーションが高まるだけでなく、企業にとっても内部の人材を発掘し活用できるというメリットがあります。
(2) 給与管理システム「Next Generation Payroll」(ADP, Inc.)
図)Next Generation payrollのデモ画面
引用元:ADP. Payroll, https://www.adp.com/what-we-offer/payroll.aspx (閲覧日:2021年1月5日)
次に、ADP, Inc.より「Next Generation Payroll」という給与管理システムが紹介されました。
同システムでは、例えば条例改正により給与額や控除額などに変更が生じた場合、給与管理担当者は該当する従業員へ一斉通知することが可能です。さらに従業員は、変更後の金額を簡単に計算することができます。
また、従業員が住所変更をした場合の税金額の増減や、給料への影響を算出する機能も搭載されています。
そのため、給与管理担当者と従業員の双方にとって、透明性が高い給与管理システムといえます。
(3) 社員の多様性等についての情報収集・分析「Pluto」(Pluto)
図)Plutoのデモ画面
引用元:Pluto. https://pluto.life/ (閲覧日:2021年1月5日)
Pluto社は従業員の多様性について調査および分析できるプラットフォームを提供しています。
従業員は多様性、包括性、公平性、新型コロナに関連する項目について意見を含めて入力し、匿名で送信します。
管理ページには全ての匿名メッセージが表示され、担当者は個別返信が可能です。
データを集積した分析ページでは、LGBTQや人種、障がいなどタイプ別の割合が把握できます。また、今後どのような対策が必要か、意思決定をするのにデータを活用できます。
(4) Microsoft Teamsと協同したオンライン面接システム「iCIMS」(iCIMS, Inc.)
図)iCIMSのデモ画面
引用元:iCIMS. iCIMS for Microsoft Teams Live Demo, YouTube, https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=VLfq6QrurD0&feature=youtu.be (閲覧日:2021年1月5日)
iCIMS, Inc.は、オンライン面接システムを提供しています。これはMicrosoft Teams[6]と共同で開発されたツールです。
画面横に評価項目が表示され、面接担当者はオンライン面接をしながら即座に評価入力が可能です。
また、スケジューラーを活用することで面接希望者と少ないやりとりで面接日時の調整ができるようになり、面接までのプロセスや評価集計が効率化されました。
(5) 急な欠勤にもリモートで対応できるシステム「Paychex Flex Remote Workforce Enablement」(Paychex, Inc.)
図)Paychex Flex Remote Workforce Enablementのデモ画面
引用元:PAYCHEX, https://www.paychex.com/human-resources (閲覧日:2021年1月5日)
Paychex, Inc.より、新型コロナウイルスに感染したなど、欠勤を余儀なくされた場合でもリモート対応できるシステム「Paychex Flex Remote Workforce Enablement」が紹介されました。これは、プラットフォーム上で、上司や人事担当者とスムーズに連絡が取れるシステムです。
病欠申請もプラットフォームで可能で、動画では「新型コロナ陽性の判定を受けたため2週間欠勤する必要がある」といった欠勤理由を送信する例が取り上げられました。
プラットフォーム上で従業員とメッセージのやりとりができる機能も備わっており、ドキュメントにサインが必要な場合は電子署名が使えます。その他、カレンダー機能も利用できます。
(6) 「従業員の経験」に焦点を当てたプラットフォーム「Workday People Experience」(Workday, Inc.)
図)Workday People Experienceのデモ画面
引用元:Workday, https://www.workday.com/en-us/products/human-capital-management/employee-experience.html (閲覧日:2021年1月5日)
Workday, Inc.からは、従業員経験を重視したプラットフォーム「Workday People Experience」の紹介がありました。従業員ごとにカスタマイズされた機械学習搭載のプラットフォームで、社内外を問わずどこからでもアクセスできます。
同プラットフォームは、新型コロナウイルス拡大の影響で欠勤していた従業員に対して、復職に向けた情報提供ツールとして活用されました。
さらに、Workday AssistantというAIチャットによって、給与額、休暇申請、新型コロナウイルス情報について回答する機能も利用できます。
(7) 職務の内容変更、新規職務の作成などができるシステム「WorkVue」(Willis Towers Watson Public Limited Company)
図)WorkVueデモ画面
引用元:Willis Towers Watson, https://www.willistowerswatson.com/en-us/Solutions/products/work-vue (閲覧日:2021年1月5日)
Willis Towers Watson Public Limited Companyからは、既存の職務の内容変更や新規作成ができるシステム「WorkVue」が紹介されました。
どの業務にどれくらいの時間を配分するか、細かく設定できます。また設定する際には、各職務に必要となるコストの概算額が表示されます。
「規則的か変則的か」「独立的か相互的か」「肉体的か精神的か」という3種類から業務の性質を指定すると、業務の特徴がカラフルな円グラフで視覚化されます。
例えば、人材獲得マネジャーは変則的な側面が強く、精神的な仕事であると示されました。
2-2. まとめ―2020年はリモート勤務や多様性に対応したHR Tech企業を評価
2020年は主に、「パンデミックで自宅勤務となった場合でもスムーズに業務ができる製品」を提供したHR Tech企業が評価されていました。
加えて、2020年は人種差別問題について改めて問われたため、従業員の多様性を尊重するセンシティブなHR Techも選出されています。
多様性への配慮は、これから外国人材が増えていく日本社会においても大切なことなので、今後注目すべきキーワードとなるでしょう。
統合型学習管理システム「CAREERSHIP」
クラウド型LMS 売り上げシェアNo.1 *
21年以上にわたって大企業のニーズに応え続けてきたライトワークスが自信を持ってご紹介する高性能LMS「CAREERSHIP」。これがあれば、「学習」のみならず人材育成に係る一連のプロセスを簡単に管理することができます。ぜひお試しください。
*出典:富士キメラ総研「2023 SX/GXによって実現するサステナビリティ/ESG支援関連市場の現状と将来展望」
学習管理システム(クラウド)2022年度金額シェア
3. まとめ
本稿ではまず、ベルシン氏による講演より、2020年のHR Tech業界やHR Tech市場の大きな変化や、それを受けてのHR Tech企業の8つのトレンドをご紹介しました。
そして、Top HR Products 2020を受賞した企業より、海外最先端HR Tech企業の商品・サービスを7つご紹介しました。
これらから分かるのは、HR Techはもはやルーティンワークの自動化だけではなく、コロナ禍によって広まったリモートワークという新しい働き方や、多様性への対応を求められている、ということです。
特にコロナ禍への対応においては、健康や安全面での不安が広がる中、企業は従業員の意見をヒアリングし、キャリアパスや学習、業務・労務管理、安全性の確保をテクノロジーでサポートしていく必要があります。
この活動こそが、結果的に従業員エンゲージメントの向上にもつながっていくでしょう。
企業による学習機会の提供とエンゲージメントの向上
株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査において、エンゲージメントが高いセグメントの回答者が勤務している企業で導入されている施策の第3位に、「自分の希望に応じ、特定のスキルや知識を学べる研修」が挙げられています。
参考)
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ「ワーク・エンゲージメントに関する実態調査」,2020年4月17日,https://www.recruit-ms.co.jp/press/pressrelease/detail/0000000299/(閲覧日:2021年1月15日)
第1章の(4)で紹介した、ラーニングプラットフォームも、従業員を学習面でサポートするテクノロジーの1つです。
コロナ禍により、実地型の集合研修の開催は難しくなりましたが、ラーニングプラットフォームを活用することで、従業員の継続的な成長を支援することができます。
例えば、当社が提供する学習管理システム(LMS: Learning Management System)である「CAREERSHIP®」は、eラーニングだけでなく集合研修やウェビナーの管理機能を搭載し、さらに従業員のスキルの保有状況と習得プロセスを可視化する機能を有した総合的な人材開発プラットフォームです。
日本国内には、学習管理システムだけではなく、さまざまな機能を持つHR Tech 商品やサービスが多く存在します。企業としては、HR部門だけでなくあらゆる部門が一丸となって従業員のニーズを見極め、それに応えるような柔軟性の高いHR Tech企業を選ぶ必要があるでしょう。
本稿での海外HR Tech企業の最新情報の紹介が、自社の良いパートナー選びの一助になれば幸いです。
社員教育や人材開発を目的として、
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[1] 部門を横断するチームのこと
[2] 企業とのあらゆる接点で発生する経験が従業員にもたらす価値のこと
[3] インターネット上のプラットフォームサービスを通じて単発の仕事を請け負う労働者のこと
[4] 身体的にも、精神的にも、社会的にも良好な状態のこと
[5] 人事・組織に関するデータを収集・分析して、課題解決に生かす手法のこと
[6] Microsoft Corporationが提供する、チャット・通話機能やビデオ会議機能などがあるコミュニケーションツール
参考)
第1章
Josh Bersin. Dealing with Disruption: How the New Normal Is Shaking Up the HR Technology Market, HR Technology Conference & Exposition®
2020年10月28日にオンラインにて公開。ジョシュ・ベルシン氏による基調講演。
第2章
Top Products for HR | Watch the Winners Unveil their Awesome New Technologies, HR Technology Conference & Exposition®
2020年10月29日にオンラインにて公開。各受賞企業の担当者が、各商品について説明する形で詳細を紹介。