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自然治癒しない糖尿病 知っておくべき予備軍の実態と初期症状とは

自然治癒しない糖尿病 知っておくべき予備軍の実態と初期症状とは

年に1回か2回行われる、社内の定期健康診断。その結果表の数値の横に「H」の印がついていて、「ドキッ!」としたことはありませんか?

さらに、問診の際に医師からいろいろと手厳しい注意を受けたり、再検査を命じられたりして、冷や汗を流したことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

どの数値が悪くても、それなりに原因と理由があるわけですが、今回注目するのは「血糖値」、つまり糖尿病についてです。

「タレントの○○さんが糖尿病なんだって」「母方の叔父さん、糖尿病らしいよ」「糖尿病って尿が甘くなるってホントかな」などと、どこか他人事に考えてしまいがちな病気です。しかしあまくみているととんでもないことになってしまう、ホントはとても怖い病気なのです。

今回は、「成人4人に1人」が患うとも言われる糖尿病の症状について、まず知っておきましょう。

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1. 糖尿病とはそもそもどんな病気なのか

糖尿病は、健康番組などメディアで幅広く取り上げられやすい病気のため、すでにご存じの方も多いと思いますが、簡単に復習しましょう。

体を動かすためのエネルギーとなる三大栄養素が「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」です。そのうちの炭水化物はブドウ糖となり、血液に乗って(この状態が血糖)体内で消費されるのですが、まれにブドウ糖が過剰になる場合があります。原因は後述しますが、血糖値が過剰になって体に障害が発生する病を糖尿病といいます。

一定量の血糖は常にあるわけで、その値がとても高くなることがいけないのです。通常は空腹時の測定で60~110㎎/dlが標準とされ、それを超えると血糖値が高めと判定されます。

正常に体が機能している場合、血糖値が高くなるとすい臓から分泌されるインスリンというホルモンで血糖値を下げてバランスを整えますが、過剰な糖分の取り過ぎやインスリンの分泌機能低下などによって、血糖値は高くなってしまいます。

すい臓のインスリン分泌機能が低下した場合、治療で元に戻すことはほぼ不可能です。そのため、インスリン不足から糖尿病になった場合、インスリン注射やその他の薬物の服用などで治療するか、食事制限などによって血糖値が上がらないようにするしかありません。これを一生しなければならないと考えると、結構鳥肌の立つ思いになりませんか?

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2. 「糖尿病予備軍」の実態と原因

糖尿病がどんな病気かについては、ここまでの説明で把握していただけたかと思います。それでは、その病気がどれだけ私たちの身近に迫っているかを見ていきましょう。

2-1. 糖尿病に悩まされているのは2000万人以上!?

国際糖尿病連合(IDF)によると、世界の糖尿病患者は2017年現在で4億2500万人と報告されています。また厚生労働省の2016年「国民健康・栄養調査」では、日本で「糖尿病の疑いのある人」が初めて1000万人を超えました。さらに「糖尿病の可能性を否定できない人」も1000万人以上に上ることがわかりました。

また、2017年の厚生労働省の「主な傷病の総患者数」調査によると、糖尿病患者はおよそ330万人。糖尿病に悩まされている人数(自覚していない人も含めて)は、合わせて2500万人程度となります。日本国民のうち成人は約1億人ですから、すなわち大人4人に1人が糖尿病をすでに患っているか予備軍かに該当するわけです。

なお予備軍の内訳を見ると、「糖尿病が強く疑われる者」は男性16.3%、女性9.3%で男性が多いのですが、「糖尿病の可能性を否定できない者」については男性 12.2%、女性12.1%でほぼ同数とされています。

糖尿病には、1型と2型という2つのタイプがあります。1型は免疫異常などで生まれつきインスリンの分泌ができにくく、子供の頃から生涯インスリン注射を余儀なくされる糖尿病です。ただ、その割合は圧倒的に低く、全糖尿病患者の3%以下と言われています。

それ以外の人は2型糖尿病で、全糖尿病患者の95%以上が該当します。圧倒的に後天的な病気だということです(以下「糖尿病」は2型糖尿病を指します)。ただ一部、身内に糖尿病の人がいるなど、遺伝的要素があるケースもあります。そのような方は糖尿病になりやすいので、特に注意が必要です。

2-2. 日本人に多いと言われる糖尿病の原因とは

糖尿病になる原因は、栄養バランスの悪さと運動不足です。まさに不摂生がたたった病気といっても過言ではありません。

特に日常生活で気になるのは、過剰な炭水化物の摂取。ラーメン大盛りにチャーハンのセットといった、「ほぼ100%炭水化物」の食事をしてはいませんか?アルコールをたっぷり飲んだ後に「シメ」として、ラーメンやお茶漬けなどといった炭水化物を食べていませんか?身に覚えのある方はわりと多いのではないかと思います。

アルコールは肝臓でブドウ糖となり、さらにグリコーゲンとさほどなって貯蔵されます。体質的にアルコール分解酵素が多く、お酒に強い人なら問題はありません。しかし、それほど強くないのに毎日好きで飲んでしまうという人は、分解と消費が追いつかなくなり内臓脂肪となって肝臓の外にこびりついてしまいます。これが、メタボの人が糖尿病になりやすい原因のひとつです。

また、日本人は世界的に見ても糖尿病になりやすい体質だということがわかっています。例えば米国やドイツなどの人は、派手にビールを飲んでいるイメージがありますよね。ロシア人がウォッカをラッパ飲みするようなシーンも見かけます。そんなお酒に強い傾向のある欧米人に比べて、日本人が糖尿病になりやすい理由は、日本人が欧米人よりインスリンの分泌量が半分程度しかないからです。

日本人はもともとインスリンの分泌量が少ないところに、高度成長期以降の食生活の欧米化があり、カレーライスやハンバーグなどの高カロリー食を日常的に食べるようになりました。また、偏食が増えてきたのもこの頃からと言われています。つまり糖代謝に体が追いつかない状態になってきたというわけです。

やや話はそれますが、どこかの国のエライ人が「糖尿病は贅沢病だ」と言ったとか言わなかったとか。ここにも勘違いがあります。日本人は、バブル崩壊後から給料がどんどん少なくなり、特に若い層や母子家庭などで貧困世帯が増えてきています。「給食がないと困る」という報道がときどき聞かれるように、「飢え」が現実として静かな社会問題になっているのです。

安上がりでお腹いっぱいにしたいとしたら、「米をたくさん食べる」という選択肢に行き着きます。幸か不幸かあちらこちらにコンビニがたくさんあり、安いお弁当(栄養バランスには「?」がつきます)やおむすびなどが、いろいろと売られています。

貧困家庭の人々や非正規雇用、さらに正規雇用でも不当に給与を抑えつけられている若い人たちは、炭水化物が中心の食生活になりがちです。

一般的に、糖尿病の発症は40代以降からが多いと言われていますが、現在、若い人たちの間で糖尿病が増えているのも事実です。肉体労働をメインワークとする人々は、体を使ってエネルギーを大量消費する分、食事もたくさん食べがちです。大盛りの食事の糖質は、次の仕事のエネルギーに変換されます。

しかしデスクワークの多い昨今、消費エネルギーの少ない人たちが炭水化物中心の食生活を強いられると、やがて糖尿病につながっていくことは自然な流れだと言えるでしょう。現代では、糖尿病は「貧乏病」でもあると認識されています。こうした現実を、上に立つ「大人」たちは理解しておくべきでしょう。


3. 糖尿病で本当にコワイのは合併症だ

先に述べたように、糖尿病はインスリンの分泌が悪くなって血糖値が下がらなくなる病気で、いったん血糖値が高くなる体質になると、二度と治ることはありません。あとは薬や食事、運動、生活の改善などによって血糖値を下げた状態に保つ「血糖値コントロール」を続けていく必要があります。

糖尿病になってから後悔してももう遅いということです。そして、最大の恐ろしさは、糖尿病自体よりも、そこから引き起こされる合併症にあるのです。ここでは糖尿病が引き起こす、合併症の怖さを説明します。

3-1. まずは自分が「糖尿病予備軍」だと気付くことが大切

糖尿病の初期段階では、痛みや嘔吐感のような気持ち悪さなど、体感できる明らかな症状はまったくありません。ただ血糖値が高くなるだけで、特に調子も悪くありません。そんな理由からこそ気付かないでいる「予備軍」が大勢いるとも言えるでしょう。

糖尿病は「無言」のまま静かに進行していきます。この間、食後血糖値(食事直後に測定した血糖値)が次第に高くなってきます。もし気付くきっかけがあるとすれば、食後にとても眠くなること。インスリンが過剰に分泌されて逆に低血糖になると、強烈な眠気が襲ってきます。これは、過剰にインスリンが分泌されなければ血糖値を下げられないほど上がっている、ということです。

食後だけでなく、平常時でも血液中に糖があふれてくるようになると、そろそろ自覚症状が現れ始めます。例えば、喉がやたらと乾く、トイレ(尿)が近くなる、汗を大量にかくなどです。これは、体内の糖を外部に排出しようという機能が高まるからです。また、軽い倦怠感や、風邪を引いたような咳の増加などが出てくる場合もあります。

さらに進行していくと、手足などの指(特に足の指が多いよう)のかゆみやしびれ、むくみ、痛みなどが現れたり、目が霞んで見えにくくなってきたりすることもあります。こうなると、もうかなり糖尿病は進行している状態で、場合によってはもはや「予備軍」ではなく正式な「戦士=患者」になっている可能性が非常に高くなります。

3-2. 足の切断、心筋梗塞、認知症も

糖尿病自体は、食事を中心とした食生活の改善などで血糖値をコントロールできれば、(大変とはいえ)通常の生活を送ることができます

しかし、もし血糖値のコントロールを無視したり、油断したり、放っておいたりし、血糖値コントロールに失敗していると、日常生活だけでなく命に関わってきます。その理由が、合併症の併発です。

糖尿病における三大合併症とされるのは、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害です。糖尿病になると、代謝低下で血管に不純物がたまり、体中にある毛細血管がもろくなっていくと考えられています。それが、これら3つの合併症につながります。

まず尿病網膜症から。目の一番奥の眼底には網膜があります。これが視力の要となっていますが、ここには毛細血管や神経がたくさん集まっています。その毛細血管がもろくなってしまうと、視力が落ち、網膜剥離や緑内障、白内障、さらには失明にまで至ってしまうのです。

同様に、糖尿病腎症では毛細血管の塊のような構造になっている腎臓の機能が低下し、タンパク尿、排尿の低下、それによる尿毒症などを引き起こし、最悪は人工透析が必要となります。

そして、もっとも多いのが糖尿病神経障害です。前述の手足の指のしびれや多汗、さらに下痢と便秘の繰り返しなど、多様な症状は、この神経障害に由来します。厳密には、なぜ神経障害を起こすのか、根本的な原因は突き止められていません。ただ、高血糖から血管が傷つき、末梢神経への栄養補給が回らなくなって代謝機能を低下させ、そこから何らかの症状が発症するのではないかと推測されます。

もう少し詳しく説明しましょう。毛細血管のつまりで足の先などに血液が回らなくなると、手足のむくみや痛み、勃起不全症候群(ED)、高血圧、不整脈などが起きやすくなります。血管が詰まると組織が壊死するため、足の切断などを余儀なくされることも。

また、糖尿病は生活習慣病のひとつなので、特に中高年に患者が多く、年齢を経ているために動脈や静脈など太い血管もしなやかさを失っています。こうしたところに血栓が詰まると、例えば脳卒中や脳梗塞、心筋梗塞、さらに脳に影響を及ぼす可能性が高いことから、認知症の発症にもつながると考えられています。

免疫力の低下も問題です。免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどにもかかりやすくなります。先日、新型コロナウイルス感染で亡くなった若い力士は、糖尿病を患っていたそうです。また歯周病、骨粗しょう症などを発症することもあります。

このように、糖尿病は、ここから派生する合併症を挙げるときりがないほど幅広く体に影響を及ぼし、どこに症状が現れるかは人それぞれです。しかも、なかなか発見されにくいので、気が付くともう手遅れというケースも少なくありません。糖尿病そのものよりも、この合併症が生死に関わってくるのです。


4. まとめ

人体に必要な三大栄養素は「炭水化物」「タンパク質」「脂肪」です。そのうちの炭水化物はブドウ糖となり、一定量が血液に乗って体内で消費されます。通常は空腹時の測定で60~110㎎/dlが標準とされていて、上限を超えると血糖値が高めと判定されます。

血糖値は本来、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンでバランス調整されています。しかし、過剰な糖分摂取や、すい臓の機能低下でインスリンが出にくくなると、バランスが崩れ、血糖値が高くなります。この状態がずっと続き、血糖値が高くなり過ぎると、糖尿病になります。糖尿病には生まれつき患っている1型糖尿病と、後から発症する2型糖尿病の2種類があります。1型の人はほんのわずかで、95%以上は不摂生などが原因となる2型糖尿病です。

糖尿病は静かに進行する病気なので、なかなか自覚症状を感じにくいのですが、糖尿病とその直前にあたる「糖尿病予備軍」の人は、全国でおよそ2000万人以上(2017年現在)いて、日本の成人およそ1億人の4人に1人が糖尿病に悩まされているということになります。おそらく現在では、もっと糖尿病とその予備軍の人数は増えていると推測できます。

糖尿病自体は、インスリン注射や日常生活におけるコントロールなどによって血糖値を低く抑えることができれば、普通どおりの生活が送れます

しかし、もし血糖値をコントロールできなければ、糖尿病が原因で、さまざまな合併症を引き起こしかねません。糖尿病の本当の怖さはこの点なのです。

糖尿病は、最初は静かに進行し、自覚症状がありません。だからといってそのまま放置していると、手足の指のしびれや痛み、倦怠感、大量の汗、喉の乾きなど、さまざまな自覚症状を感じるようになります。自覚症状を感じる段階になると、もうかなり糖尿病が進行している可能性が高くなります。

糖尿病の三大合併症として、網膜に障害が出て失明することもある糖尿病網膜症、腎機能の低下から人工透析に進展する可能性のある糖尿病腎症、末梢神経や血管が傷つく糖尿病神経障害などがあります。特に多いのが糖尿病神経障害です。

毛細血管がボロボロになると、血管に血栓ができ、また末梢神経への障害を引き起こします。血管が詰まっても放っておくと、組織が壊死し、場合によっては手足の切断が必要になります。また、血栓は動脈や静脈などに詰まると、心筋梗塞や脳梗塞、認知症などを誘発しやすくなります。

糖尿病は一度患うと完治しない病気です。一生涯付き合わなければなりません。現在、血糖値が高いとか、メタボになりつつあるといった人の多くは、もう糖尿病予備軍に入っているかもしれません。糖尿病にならないために、食生活など日常生活を見直し、運動不足を解消するなどして、改善に努めましょう

※ 改善の仕方の詳細については、次回改めて解説します。

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<参考>
・総監修・板倉弘重(2018)『血糖値をぐんぐん下げるコツがわかる本』永岡書店
・マルコ著 藤田紘一郎監修(2020)『うちの夫が糖尿病になっちゃった!』日本実業出版社
・総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
・厚生労働省 患者調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20-kekka_gaiyou.html
・国立国際医療研究センター糖尿病情報センター
http://dmic.ncgm.go.jp/
・日本生活習慣病予防教会
http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/2017/009436.php
・自然治癒しない病、症状が軽いうちに治療を(全日本民医連)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=7006
・日本神経学会
https://www.neurology-jp.org/public/disease/neuropathy_mh_detail.html

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