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学びを身近にする参加型イベント JTBの「学びのSummer Festival2022」に潜入!

ライトワークスの顧客企業で実施されている、キャリア開発や人財開発の取り組みを紹介する連載企画、記念すべき第1回目は、株式会社JTB(以降、JTB)の「JTBユニバーシティ 学びのSummer Festival2022(以降「学びのサマフェス」)」をご紹介します。

「学びのサマフェス」は、JTBグループの人財開発のミッションを担うJTBユニバーシティが、2021年度より開催している社員参加型の「学び」のイベントです。2回目の開催となる今年のコンセプトは、「未来のジブンをみつける夏~みんなでつくるサマフェス~」。「DX」や「サステナビリティ」、「チャレンジ」、「One JTB」、「The JTB Way」、「フリーテーマ」の6つのテーマに沿った、全部で69のプログラムを8月15日(月)~26日(金)の2週間に渡りグループ全社に向けて配信。「いつでも、どこでも、誰でも」、興味のある番組をラジオ感覚で視聴するくらいの手軽さで、学びのきっかけや気付きを得てもらおうというものです。

この記事では、「学びのサマフェス」の企画運営を行ったJTB 人財開発チーム所属(2022年9月当時)の秋元智絵様へのインタビューを交えて、「学びのサマフェス」の内容や企画背景、目的、効果など、詳細を掘り下げていきます。


1. 「学びのサマフェス」番組紹介

まずは、「学びのサマフェス」全69番組の中から、いくつかを簡単にご紹介します。番組は短いもので15分、長いもので1時間半。ライブ配信もしくは事前に収録した動画を配信する形でした。

1-1. いのうえじゅく サマフェス特別版「2030年DXが実現する未来」

今年から人財開発チームに所属しJTBユニバーシティでDX基礎セミナー「いのうえじゅく DXはじめの一歩」を開講する井上拓也氏による番組。AI・5G・量子コンピュータなど、指数関数的に発達し、セカイを変えるスゴイ技術=エクスポネンシャル・テクノロジーにより、2030年の暮らしや旅行や買い物はどのように変化するのか?私たちの雇用は奪われるのか?ただミライを恐れるのではなく、DXによって変わるミライを知ることの楽しさ・重要性を感じられる内容でした。

1-2. 時刻表制作とそれに携わる社員たちのちょっとディープな日常

株式会社JTBパブリッシング発行の月刊誌『JTB時刻表』の第18代編集長による、時刻表の制作過程と編集部で働く個性的な「〇鉄」たち(乗り鉄・きっぷ鉄・模型鉄など)を紹介する番組。編集長が担う毎号の表紙写真決定、鉄道各社・各支社から届く膨大なダイヤ情報、そしてそれらを突き合わせてデータ化し、季節の臨時列車などを軸にレイアウトしていく時刻表編集の流れ。次に本屋で『JTB時刻表』を見かけたら、思わずチェックしそうです!

1-3. 【世界の今を知る!現地から生中継】オーストラリア編

世界中に海外支店のあるJTBならではの番組。現地に滞在している社員の皆さんによる、JTBシドニー支店とシドニー市街の目抜き通り、ケアンズにあるスーパーマーケット、ゴールドコーストのビーチ前からの中継で、「オーストラリアの今」や最新の日豪間旅行業の状況、コロナ対応などが伝えられました。
「学びのサマフェス」ではオーストラリアの他に、シンガポール、韓国、グアムからの生中継番組も配信されました。

1-4. サステナブル・ツーリズム国際認証Travelife Certified取得への取り組みについて

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベルの社員の方から、2022年3月に同社が日本の旅行会社としては初めて取得した「Travelife Certified」というサステナブル・ツーリズムの国際認証についてのお話がありました。「Travelife」の3段階の認証制度の中でも最も厳しい「Travelife Certified」取得に向け、271項目もの基準と実監査をクリアするための取り組みの様子は、旅行業だけでなくSDGsを掲げる他業種の企業にとっても参考となるものでした。
また、実際のサステナブル・ツーリズムの例として、ゼロ・ウェイスト・タウンとして注目を浴びる徳島県上勝町への視察団誘致が紹介されました。

1-5. 「まなび上手さんになろう!Learning Hacker &まなびプレミアムのひみつに触れる旅」

実はライトワークスも番組を1つ持たせていただきました。「学びは大事。」わかってはいるけれど、続かない。そんな人はきっと多いはず。「まなび上手さん」=「自ら学ぶひと、学びを楽しむひと」を作るために開発されたコンテンツシリーズ「Learning Hacker」から、とっておきの「学びのハック」のひとつ「グリーンマイクロブレイク」をご紹介しました。


2. 担当者インタビュー

ここからは、JTB 人財開発チーム(2022年9月当時)の秋元智絵様へのインタビューで、「学びのサマフェス」についてさらに深堀していきます。

2-1. 目的と背景:楽しく参加できる学びの機会をつくる!今だからこそ生まれた手づくりの社内イベント

「学びのサマフェス」は昨年スタートしたイベントだそうですね。イベントの企画背景を教えてください。

秋元様:JTBユニバーシティでは、社の目指すべき人財像「自律創造型人財」の育成・開発に向けて、「学び合い、学び続ける組織」の風土醸成が重要だと考えています。コロナ禍の影響で人財開発に関わる予算が大幅に縮減された中、お金をかけずに「何か社員の学びを止めないために取り組めることはないか」と知恵を絞り、当チーム主導で始まったのが「学びのサマフェス」です。従来より冬に「ダイバーシティ・ウィーク」という社内イベントを実施していて、夏は「学びのサマフェス」をやってみよう、ということで企画がスタートしました。

―「ダイバーシティ・ウィーク」の流れで「学びウィーク」とするのではなく、「フェス」というのが良いですね。どういう経緯で「フェスにしよう」となったのでしょうか?

秋元様:コロナで会社の経営状況も悪化して、ネガティブに考える社員も多かった時期でしたので、「こんな時だからこそ楽しくやろうよ」という思いでアイデアを出した記憶があります。現場で必死に頑張っている社員からは「サマフェスなんて楽しそうなこと、今やってる場合じゃないよ」みたいな声も上がるかなという心配もありました。でも結果としては、フェスにして良かったと思います。

2-2. 開催2年目の進化:社員参加を促すための「手挙げ制」導入と目玉コンテンツの企画

-今年は2回目の開催ということで、昨年の「学びのサマフェス」を踏襲したところ、変えたところを教えてください。

秋元様:昨年から引き続きMicrosoft Teamsを活用したオンラインでの実施は踏襲しました。その上で今回は、社員自身が講師となって発信するプログラムを公募するなど、「社員参加型」にこだわりました。昨年はどちらかというとスモールスタートな形で、ユニバーシティからの発信がメインだったのですが、今年は社員が日頃取り組んでいる学びや全グループJTB社員に向けて共有したい事例など、手挙げ制で企画を募集しました。「サマフェス」のコンセプトにもあるように、「みんなでつくるサマフェス」にすることで、「学びの自分ゴト化」へつなげる狙いがありました。

秋元様:また、昨年にはなかった基調講演も企画しました。普段なかなか聞くことのできない講演を目玉企画として用意することで、「学びのサマフェス」に興味を持ってもらうのが狙いです。とはいえ予算はほとんど掛けられないので、JTBグループ所属のオリンピアン・パラリンピアンのインタビューや、役員の講演など、既存のコネクションの中で6本の基調講演を用意しました。また、聴覚障害を持つ社員の番組なども用意し、多様性を重視した内容も意識をしました。これらの基調講演、社員の手挙げによる番組、その他JTBユニバーシティで企画・依頼した番組を合わせて、番組数としては昨年の3倍の全69番組、期間でいうと昨年の倍の2週間(10営業日)となりました。

―2年目にしてすごい進化ですね!イベントを終えて、今の率直なお気持ちはいかがですか?

秋元様:昨年と比べて大幅にバージョンアップしたので小さなトラブルはいろいろありましたが、手作りでつくり上げたイベントを無事に終えることができて、安心している気持ちが一番大きいです。また、周りからの反響も思っていた以上に大きくて、「学びのサマフェス」の番組をきっかけとしてミーティングの場が設定されたりとか、JTBグループ内で会社を超えて新たなコミュニケーションが発生したりといった事例を、たくさん聞いたので、やって良かったなと心から思っています。

-「学びのサマフェス」に向けた事前準備や当日運営についてお聞きしたいのですが、企画や運営は全てJTBユニバーシティの皆さんでされたのでしょうか?

秋元様:はい。告知などの部分ではJTBユニバーシティ以外にも協力いただきましたが、基本は運営チーム4名中心で進めました。チーム内では、私が全体のまとめをしたり、デジタルに長けたメンバーがプロモーションビデオやホームページを作ったり、全体をフォローしてくれるメンバーがいたりと役割分担もありましたが、コンセプトやテーマのアイデア出し、進行確認など全員で取り組みました。

-昨年に比べて規模が拡大した分、事前の準備も大変だったのではないですか?

秋元様:そうですね。でも2回目なので、いつごろ何をやらなきゃいけないというのはわかっていて割とスムーズでした。準備を開始したのも昨年同様3月か4月あたりで、大きくは変わっていません。ただコンテンツ数も増えたので、やりとりする相手も増えましたし、全69番組を番組表としてパズルするのも結構大変だったので、そういった苦労はあったかなと思います。

-手挙げ制の番組企画募集について教えてください。手挙げに関しては、あらかじめ枠数を決めて募集を行ったのでしょうか?

秋元様:枠数は決めずに、まずは募集してみてという感じです。正直に言うと、もしかしたら手挙げが1件も来ないかもしれない、3件も来れば万々歳くらいに思っていました。全く応募が無かった場合を想定して、番組企画のストックを用意していたくらいです。実際には純粋な応募で約20件。それに加えて、こちらからちょっとお声がけしたものも含めると、最終的には24件が集まりました。結果的に、応募いただいた方全員に出ていただこうという話になったので、全番組のうち3割弱が手挙げでの番組ということですね。

-予想をかなり上回る数だったのですね!手挙げが全く来ないかもと思われていたのはなぜですか?

秋元様:昨年の「学びのサマフェス」の知名度がまだまだ低かったので、多くの社員からしたら「そもそも『学びのサマフェス』ってなんぞや?」みたいな状況で。そういうイベントに自ら手を上げて登壇するって結構勇気のいることだと思うので、本当に3件くらいだと思っていました。

2-3. リアルタイム視聴者数は延べ7272名、昨年の約5倍に!平均視聴時間3時間18分。1番組あたりの平均視聴者数は100名超え!

-ここからは、KPIや施策の効果などについてお聞きしたいと思います。
 まず視聴者数から教えていただけますか?

秋元様:アーカイブ配信を除く、リアルタイム視聴での延べ総視聴者数は7272人でした。昨年の約5倍、目標としていた3000人も大きく上回る結果となりました。一人あたりの平均視聴時間は3時間18分でしたので、平均して3~5番組程度を視聴いただいた感じですね。1番組あたりの平均視聴者数は105名で、これも昨年では考えられない数字です。視聴者数の日別推移を見てみると、期間中にじわじわとリピーターの比率が増えていっており、1回視聴して面白さを感じ、他も見てみようという形でリピーターが増えていったのかなと推測しています。

-それだけ視聴者数が伸びた要因は何だと思われますか?

秋元様:いくつかあると思うのですが、今年は告知に力を入れたことが1番大きいと思います。昨年の「学びのサマフェス」の振り返りで、社員へのイベント周知が課題としてあがっていたこともあり、今年は「鬼の告知部」を作り、社内のリソースを徹底的に活用して告知強化に努めました。具体的には、社内広報誌やメルマガに情報を掲載し、イントラのトップにもバナーを出し、ポスターをトイレや休憩室など、社内のさまざまな場所に掲示もしました。休憩室は一人で食事をしている社員も多い場所なので、壁のポスターのQRコードを読み込んで参加している人を何人も見かけたよという声もいただいて、地道な告知活動も大事だなと改めて実感しました。

秋元様:私たち運営チームの活動に加えて、全国個所に存在するインナーブランディング強化活動メンバーの「Smile委員」を「鬼の告知部」の特派員として巻き込み、「学びのサマフェス」の告知活動に協力いただきました。朝礼で話をしてくれたり、パブリックビューイングのようにずっと番組を流してくれたり、ぞれぞれのSmile委員が工夫しながら活動してくれました。

-定性的な面ではどのような反響がありましたか?

秋元様:アンケートの自由回答では、「興味のある番組をたくさん見ることができて楽しかった」、「このような機会をたくさん設けてほしい」、「社長をはじめとした他の役員の話も聞いてみたい」、「来年は登壇したい」というようなポジティブなコメントをたくさんいただきました。ネガティブな意見もありましたが、動画の再生がされないとか、音が出ないとか、そういった技術的な話ばかりでした。そのような点についても「手作りで頑張っていますね」という応援メッセージをいただけたりもして。もちろん、技術的なトラブルが起きないように改善はしなければいけないのですが、想いは伝わったのかなと思いました。

-登壇した方々の反応はいかがでしたか?

秋元様:登壇した社員達も、大きな反響があって驚いているようです。今まで関わりのなかった人から声がかかったとか、番組でやった内容について問い合わせが来たとか。番組中もチャットでの交流が見られたのですが、番組配信後もいろいろと嬉しい反応がたくさんあったと聞いています。来年もぜひ出たいということで、「来年はZoom使えますか?」とか「有線LANが使える部屋でやりたいです」とか具体的な質問や要望を既にいただいているような状態です。実際に出演した社員は、ネガティブな印象を持っている方はいないのではないかなと思います。

-秋元さん個人として、何か発見はありましたか?

秋元様:今回やってみて、本当に社内に多様な人財がいると改めて実感しました。副業で私学教員として活躍している社員がいたり、SDGsに詳しくて自分で研究をしている社員がいたりとか、私自身の「気づき」も非常に多かったです。そのような社員ってもっと社内にいるはずですし、そういう人たちに光が当たって、それがどんどん広がっていくような組織風土・社内カルチャーになっていくといいなと感じました。

2-4. 次年度に向けて:「みんなでつくるサマフェス」のコンセプトを継続し、参加型イベントとしてさらなる進化を

ー今回の「学びのサマフェス」に点数を付けるとしたら100点満点で何点ですか?

秋元様: 今年度の目標に対して、という観点では「90点」ですかね。予算ほぼ0という状況で、昨年より期間も延ばし、これだけのコンテンツを集められたこと。2週間無事に終えられて、少なからず皆さんの気づきに繋がったというフィードバックをいただけているというところで、本当にやって良かったという達成感があります。ただ「学びのサマフェス」自体については「70点」でしょうか。まだまだできることはたくさんあると思っていて、チームとしてもっと大きな目標を持っているからです。外部の方を巻き込んだりだとか、更にグループ会社の皆さんを巻き込んで実施したりとか。社内での大きなムーブメントにするには取組むべきことは多く、それも私たちにとっては遣り甲斐の一つになっています。

-「巻き込む」というのがキーワードのようですね。

秋元様:そうですね。今回は「Smile委員」が関わってくれたことが大きいですが、①マネジメント層の視聴者をもっと増やすこと、②ファンを増やすことが、「学びのサマフェス」の進化はもちろん、JTBユニバーシティが推進する学びの風土改革のために重要だと思っています。

秋元様:①マネジメント層の視聴者層を増やすためには、やはり役員の後押しも必要だと思っています。今回、登壇した3名の役員からは、「登壇してみて『学びのサマフェス』はとても良いものだと感じた」というような言葉をかけられました。今後は役員層ももっと巻き込み、様々な発信をしてもらおうと思っています。

秋元様:②ファンを増やすということについては、今一番大切なことだなと感じていて。今回、「学びのサマフェス」を視聴した7272名の社員が、「『学びのサマフェス』って面白いよ」と身近な5人に伝えてくれたとしたら、また大きく広がりますよね。そういうアンバサダー的な社員を作っていくことも考えていきたいです。そうすることで、JTBユニバーシティも「真面目でしっかりとした研修を実施するところだよね」という今までのイメージから脱却し、JTBグループの全社員にとってより身近な存在に感じてもらえるような立ち位置に近づくのではと思っています。

-来年の「学びのサマフェス」に向けて何か具体的な構想はありますか?

秋元様:まだまだアイディアベースですが、メタバース空間でできたら楽しいねとか、大ホールを開放して、みんなで盛り上がれる感じでやれたらいいねとか、アワードを実施してみてはどうかとか、企画運営チームのメンバーで話をしています。また次回は、登壇だけでなく「学びのサマフェス」の企画段階から一緒に携わっていただく企画運営側のメンバーも手挙げで募ってみたいな、と思っています。私たちJTBユニバーシティ以外の発想や想いが加わることで、より一層面白いイベントにしていけたらいいなと思っています。

-来年の「学びのサマフェス」も楽しみですね。ありがとうございました。