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ベーシックインカムのメリットを検証 海外の最新の実験や議論を紹介

ベーシックインカムのメリットを検証 海外の最新の実験や議論を紹介

「ベーシックインカムって夢みたいな話、実現可能なのかな?」

ベーシックインカムは生活に最低限必要な所得が、すべての人に対して社会的に保障される仕組みのことです。

これだけ聞くと「安心、嬉しい!」と思う方と、「財源はどこから?税金がバカ高くなるんじゃない?」と不信感を持つ方、両方がいらっしゃると思います。

21世紀に入り、私たちの住む世界はグローバル化、デジタル化によって急速に大きな変化を遂げました。

さらにAI技術の発達によって、これまで人材を必要とした多くの分野での雇用が消滅するとも言われています。

そんな中にあって近年、活発化しているのがベーシックインカムをめぐる論議です。

さらに2020年、長引く新型コロナウイルス禍による経済・労働市場の問題に対する答えとして、ベーシックインカムの可能性は大きく注目されています。

誰もが不安に思っている「ウィズコロナ」・「ニューノーマル」時代の経済格差や社会問題に対して、ベーシックインカムは果たしてどのような解決策をもたらしてくれるのでしょうか。

本稿では、ドイツ在住の著者が、ベーシックインカムとは何か、メリット・デメリット、諸外国での実験例、ベーシックインカムの今後の展望を丁寧に解説します。

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1. ベーシックインカムとは

ベーシックインカム(basic income, BI)とは、日本語では「基本所得」または「基礎的所得」と訳されます。

労働することによって得る対価ではなく、存在することで得られる対価という発想であり、人間が存在し、生活していくために保障される「基本的人権」が経済制度の形を取っている、と言えば分かりやすいかもしれません。

この章では、その定義と歴史、そしてなぜ今注目を浴びているのかについて見ていきたいと思います。

1-1. ベーシックインカムの定義

ベーシックインカムは、すべての人に最低限の健康で文化的な生活をするための「基礎的所得」を給付するというものです。

それだけを聞くと生活保護と似ているような気がしますが、生活保護とベーシックインカムとの明確な違いは、ベーシックインカムの支給が所得や私有財産の有無・多寡にかかわらず、無条件にすべての人に対して一律に行われるという点にあります。

1-2. ベーシックインカムという発想の歴史と今注目を浴びている理由

「国家が国民の所得を直接保障すべき」という考え方はすでに古くからありました。

また「すべての人に、暮らせるだけの所得を支給することで貧困問題が解決できる」というベーシックインカムの根本にある考え方も、「家族手当」や「救貧法」などの形で試みられてきた歴史があります。

17世紀の英国で、それまで教会の役割だった「社会的弱者救済」を国家が制度として引き受けた「エリザベス救貧法」(1601年)は、近代社会福祉制度の出発点になったと言われています。

しかし実際に国家政策としてベーシックインカムを導入した国はまだありません。

英国で産業革命が起こった18世紀後半~19世紀前半を境に社会の経済構造は大きく変化しました。

19世紀にはドイツで宰相ビスマルクの下、近代的な健康保険、老齢年金などの社会保障制度が整備され、これをモデルに日本の社会保障制度は作られました。

しかし医療や技術の発達にともない、人類は当時よりもはるかに長生きできるようになりました。

さらに21世紀に入り、世界全体でデジタル化・グローバル化が進み、社会は急速に変化しました。先進国を中心に人々の生活は豊かになりましたが、一方で新たな経済格差が生まれ、紛争の火種となっています。

また、いかに技術革新が進んでも、予測不可能な自然災害や感染症などを完全に抑え込むことはできません。温暖化も心配です。

今、人類は自ら進化させてきた技術と自然の間で、新たな不安に苛まれていると言えるでしょう。具体的には以下のようなものが挙げられます。

・将来、どんな災害や事故、病気に見舞われるか分からない
・デジタル化、AIの発達によって労働市場が変化し、多くの雇用が消滅すると言われている
・高度に技術が発達した現代社会での生活を享受し続けると、地球環境を破壊することにつながる
・経済のグローバル化に伴う金融危機などへの不安
テロや紛争の脅威

身近なトピックとしては、2020年に入って世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)が流行し、3月には世界保健機構(WHO)がこれをパンデミック(世界的流行)と認定。

11月半ば時点で5000万人以上の感染者、100万人以上の死者を出している(WHO発表[1]現状において、世界中で社会生活制限にともなう経済活動の停滞が起こっています。

新型コロナウイルスに起因する失業や経済的困難に対して、かつてない大規模な補償金や支援金の拠出が各国で必要となっており、これに対して起こっているのが「補償ではなくベーシックインカムを」という声です。

コロナ禍で人々は社会生活制限を余儀なくされ、それによって特にレストランなどの飲食業、ホテルや航空会社および観光業、そして芸術・エンターテイメント部門が壊滅的な打撃を受けています。

長期化するコロナ禍の中で、多くの人が先行きの見えない状況に不安やストレスを感じており、経済的な問題と合わせて心理的な問題も高まっています。

このため、一時的な休業補償ではなく、継続的なシステムとしてのベーシックインカムが導入されることの意義は大きいと見られています。

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2. ベーシックインカムのメリットとは何か?

ベーシックインカムが導入されると、私たちにどのようなメリットがあるのでしょうか。

この章では、現行の社会保障制度に対する、ベーシックインカムの具体的なメリットを見ていきます。

・無条件で受給でき使い道も自由
・生活の不安からの解放、自由な人生の選択
・起業や自由な開発の後押し
・行政コストの削減

無条件で受給でき使い道も自由

ベーシックインカムと、各種補償や生活保護との大きな違いの1つは、受給条件が「無条件」であることです。

補償や生活保護の場合、それを受給する権利があったとしても自ら積極的に申し込み、審査を経て認可され、給付されるというプロセスを踏まなければなりません。

社会的ネットワークに参加できていない情報弱者や、またはうつなどの精神疾患を患っている人たちにとっては、これらは大きなハードルとなります。

一方でベーシックインカムは、無条件にすべての人に、所得や私有財産の有無・多寡に関係なく一律に支給されるため手続きが簡素化され、制度へのアクセスが容易になるというメリットがあります。

またベーシックインカムは使い道に制約がなく、臨時収入が入ったとしてもそれに対してベーシックインカムが減ることはないため、受給者の行動の自由度が高くなります。

さらに、補償や生活保護を受けることへの恥(スティグマ)がベーシックインカムでは解消されるところに、心理的に大きな意味があります。

生活の不安から解放される

ベーシックインカムによって生活の最低限の補償が得られるのであれば、生活の不安から解放され、労働条件の悪い仕事に我慢して就く必要はなくなり、さらに資格取得や進学といった自分自身への投資もより可能になります。

個々の人生の選択の自由度が上がることは、社会全体の幸福度を押し上げることにもつながっていくと見られています。

起業や自由な開発が促される

デジタル化やAIの発達により、より少ない生産コストや労働力で社会を維持できるようになれば、従来の雇用および労働市場が大きく変化するのは必至です。

時流に合った新しい発想や、雇用に代わる起業、自由な開発がより求められるようになる世の中で、そういった生き方を後押しする効果がベーシックインカムにはあると指摘されています。

また、ベーシックインカムを導入することによって企業を社会保障負担から解放することができれば、低賃金で不当に長時間労働を強いるブラック企業は存在することが難しくなり、そのような働き方も軽減できるようになると期待されています。

行政コストが削減できる

先述したたようにベーシックインカム受給手続きが簡素化されれば、これまで社会保障費支給にかけてきた人員や労働力を大幅に削減することができ、これがコストの軽減にもつながるとされています。

個人が得るベーシックインカムのメリットは、「不安の解消」とそれによる「自由」に集約できそうです。


3. ベーシックインカムのデメリットとは?

良いこと尽くめに見えるベーシックインカムですが、各国で導入が進まないのには理由があります。ベーシックインカムを実際に制度として導入するのは、なぜ難しいのでしょうか?

ここでは、問題として指摘されるポイントを以下で見ていきましょう。

・就労意欲が低下するリスクがある
・財源の確保にハードルがある
・所得の再分配機能の低下

就労意欲が低下するリスクがある

ベーシックインカム導入論に対して最も多く聞かれる反対論が、「無条件にもらえる収入があれば、人々は働かなくなる」という考え方です。

ベーシックインカムには、2章でご紹介したように、労働条件全体の改善を促すメリットがあります。

一方で、それならば「望まない仕事を我慢する必要がない」として労働を拒否する人が出てくる可能性もある、まさに同じコインの裏のようなデメリットが考えられます。

ただしこれに対しては、

ベーシックインカムはあくまでも「最低限の生活が営める」金額が設定されるものであること
・ほかの収入が増えることによってベーシックインカムの金額が減るものではないこと
・人は仕事をすることで収入を得るだけでなく、社会的アイデンティティを確立する必要性を持っていること

などからも、この反論には必ずしも正当性がないとする意見もあります。

財源の確保にハードルがある

ベーシックインカムを導入するためには、ばく大な財源が必要となります。

ベーシックインカムをすべての社会保障政策に代替するものと位置付ければ、年金、失業保険、生活保護などに充てられる社会保障をベーシックインカムの財源として流用することができますが、これでは十分ではありません。

原田泰(ゆたか)氏は日本の例として、「20歳以上人口の1億492万人に月7万円(年84万円)、20歳未満人口の2260万人に月3万円(年36万円)ずつ給付すると、年に96.3兆円の予算が必要になる」としています[2]

そして、これを拠出するために、以下の案を提唱しています。

・上記の社会保障をベーシックインカムの財源とする
・所得控除をやめてベーシックインカムに置き換える
・ベーシックインカム以外の所得に課税する

この場合、所得への課税率は一律30%に引き上げられることになります。

所得の再分配機能の低下

ベーシックインカムは高所得者に対しても同様に支給されるため、富の再分配機能が低下すると言われています。

新自由主義の経済学者ミルトン・フリードマン(1912~2006)はこれに対して、所得の低い人に対してのみ給付を与えるとする「負の所得税」という、ベーシックインカムとは別の社会保障制度のあり方を提唱しています。

これは、一定以上の所得の人が税金を納めるのに対して、所得が低い人に対しては「負の税金」つまり所得が政府から給付されるというものです。

ベーシックインカムとの違いは、所得の多寡によって給付額が異なるという点です。

ベーシックインカムのデメリットは、「痛み分け」とそれによる「不平等」のリスクと考えることができそうです。

またベーシックインカムの導入は、既存の社会福祉制度や税制を根本的に変えることになるため、未知の制度への不安も大きな要因となっていると言えます。


4. ベーシックインカムの実験例

ここまで見てきたように、ベーシックインカムには大きなメリットがありますが、さまざまな問題も抱えています。

もしベーシックインカムの導入が実現すれば、どのような結果になるのでしょうか。

この章では、これまで、実際に行われてきたベーシックインカムの実証実験と、地域規模で実施されているベーシックインカムの例を見ていきます。

4-1. フィンランドのケース

フィンランド政府は2017年から2年間、失業手当を受給している25~58歳の市民の中から無作為に2000人を選び、月額560ユーロ(約7万円)のベーシックインカムを支給するという給付実験を行いました。

この結果、雇用においてはベーシックインカム給付を受けた2000人と、それ以外の失業者の間に大きな差はなく、ベーシックインカムの受給が雇用促進には結びつかなかったという結果が出ました。

ただしこれは同時に、「BIを受給した人が働かなくなるわけではない」という立証にもなりました。

一方で、健康やストレスにおいてはベーシックインカム給付を受けたグループの方が肯定的な数字が出ており、全体的な幸福度は上がったという分析がなされています。

(出典)
Olli Kangas, First results from the Finnish basic income experiment, European Social Policy Network, March 2019

4-2. 米アラスカ州のケース

アラスカ州では、1976年に「アラスカ永久基金」が設立され、同州の石油から得た収益の25%以上がここに納められています。

1982年以降、同基金はこのうちの半分を「配当」として地元住民に給付する制度を実施しており、1人当たり年間約1000ドル(約11万円)が給付されています。

ちなみにアラスカ州は州独自の税金や社会保障費の額が、米国内で最も低い州のひとつで、2002年までは独自の所得税も存在していませんでした。貧困率や社会的格差も米国内で最も低いと報告されています。

アラスカ・アンカレッジ大学の社会経済研究所の調査によると、「アラスカ永久基金があることで、貧困層に陥らないですんでいる人の割合は25%になる」とされており、配当が始まった1982年以降にアラスカの出生率が急激に上昇したことと、ベーシックインカムの因果関係を指摘する声もあります。

(出典)
山田敏弘,「ベーシック・インカムを取り入れた米アラスカ州で出生率が激増していた」,『クーリエ・ジャポン』,2020年2月15日,https://courrier.jp/news/archives/191199/(閲覧日:2020年11月19日)
Matthew Berman, Random Reamey(Institute of Social and Economics Research, University of Alska Anchorage), Premanent Fund Dividends and Poverty in Alaska, November 2016

4-3. ドイツで2021年から予定されているケース

ドイツでは、コロナ危機を受けて、補償に代わる可能性としてベーシックインカムへの注目が高まり、2021年からベーシックインカムの実証実験が開始されることになりました。

同プロジェクトは、ドイツ経済研究所(IW)とNPO法人「マイン・グルントアインコメン(MG)」の共同によるもので、月1200ユーロ(約15万円)のベーシックインカムを3年間、抽選で選ばれた120人に支給します。

一方で受給していない1380人も比較調査対象として選ばれます。財源は、一般の寄付から拠出されます。

実証実験への参加資格は、ドイツに住民票のある18歳以上の市民で、ドイツ国籍の有無は問われません。2020年8月18日の募集開始から2週間で、180万人もの応募が殺到しました[3]

MGは2014年から、クラウドファンディングを利用してベーシックインカムを支給するプロジェクトを実施してきました。

これまでに、同プロジェクトで半年~1年間ベーシックインカムを受給した人の人数は669人に上ります。

代表のミヒャエル・ボーマイヤー氏は、ベーシックインカムの意義について、以下のように語っています。

ベーシックインカムを受給することによって人は自分自身の存在価値を認識し、経済の不安を取り除くことができる。そうすれば、人生における判断や選択の基準は大きく変わってくるはず

これに対し経済専門家らからは、120人を対象にした実験では信ぴょう性に乏しいことや、ベーシックインカム導入によって「就労意欲の低下を招く」とする負の可能性、実際に全国民に実施する場合の財源などの理由から、国としての導入は非現実的だとする声が挙がっています。

一方で、ドイツでベーシックインカムの論議と合わせて話題になっているのが、「貧困危機層」の増大です。

相対的貧困率が、全体の平均収入の半分に満たない人の割合を指すのに対し、「貧困危機層」は60%に満たない状態にある人たちの割合を指します。

ドイツではこれが1人世帯の場合、可処分所得が月1074ユーロ(約13万円)を下回っている場合を意味し、2019年にはこの割合が15.9%に上昇しました。

また、子どもの5人に1人が貧困状態にあると報告されており、コロナ危機でこれらの数値はさらに深刻化すると見られています。

ドイツにおけるベーシックインカムへの取り組みは、主要先進国の中では一歩進んでいると言え、2021年以降の実証実験が世界に先駆けての新たな社会保障モデルとなるかどうかが注目されます。

(出典)
Pilotprojekt Grundeinkommen,
https://www.pilotprojekt-grundeinkommen.de/?name=mge-start(閲覧日:2020年11月19日)
Michael Bohmeyer, Claudia Cornelsen,
Was würdest du tun?, Econ


5. ベーシックインカムの今後の展望

2014年から6年間、ドイツでベーシックインカムの民間実証実験を行ってきたNPO法人MGが、ベーシックインカム導入の意義について最も強調している点は「人生の選択の自由度」の向上です。

ひとりひとりの「人生の選択の自由度」を押し上げることは、社会全体の幸福度を上げることにもつながっていきます。

国連が毎年実施している世界幸福度調査では、国民一人当たりのGDP、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由度、寛容さ、腐敗の認識を評価基準にして総合幸福度が割り出されます。

2020年の1位はフィンランド、2位はデンマーク、3位はスイスと、欧州諸国が上位を占めています。ドイツは17位、日本は62位でした。

この中で注目すべき点は、1位のフィンランド、17位のドイツ、62位の日本の国民一人当たりのGDP(対数)がほぼ同じであることです。しかし総合ランキングの結果は、「人生の選択の自由度」の差とほぼ連動しています[4]

国家が、何を目的として所得再分配を行うのか?また、国家が何のために存在するのか?
ベーシックインカム導入をめぐる論議は、経済的効率や生産性を追求するだけでなく、国民ひとりひとりの幸福を追求することと密接にかかわっていると言えそうです。


6. まとめ

ベーシックインカム(basic income、 BI)とは、日本語では「基本所得」または「基礎的所得」と訳されます。

労働することによって得る対価ではなく、存在することで得られる対価という発想であり、人間が存在し、生活していくために保障される「基本的人権」が経済制度の形を取っている、と言えます。

2020年に入って世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)が流行し、失業や経済的困難に対して、かつてない大規模な補償金や支援金の拠出が各国で必要となっています。

これに対して起こっているのが「補償ではなくベーシックインカムを」との声です。

ベーシックインカムには、以下のようなメリットがあります。

・無条件で受給でき使い道も自由
・生活の不安からの解放、自由な人生の選択
・起業や自由な開発の後押し
・行政コストの削減

ベーシックインカムには、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。

・就労意欲が低下するリスクがある
・財源の確保にハードルがある
・所得の再分配機能の低下

諸外国では、ベーシックインカムの実証実験や地域規模での実施がされています。

・フィンランドのケース
・米アラスカ州のケース
・ドイツで2021年から予定されているケース

国連が毎年行っている世界幸福度調査では、国民一人当たりのGDP、社会的支援、健康寿命、人生選択の自由度、寛容さ、腐敗の認識を評価基準にして総合幸福度が割り出されます。

注目すべきは、2020年の1位のフィンランド、17位のドイツ、62位の日本の国民一人当たりのGDP(対数)がほぼ同じことです。

ベーシックインカム導入をめぐる論議は、経済的効率や生産性を追求するだけでなく、国民ひとりひとりの幸福を追求することと密接にかかわっていると言えそうです。

ベーシックインカム論議の前提にあるものは、現行の社会保障制度が不完全であり、本当に必要な人に行き届いていないという現実です。

また、かつて近代的な社会保障制度が確立された時と比べて、社会のあり方が大きく変化したことからも、時流に合った新たな社会保障制度の必要性が高まっています。

ドイツで、ベーシックインカムの論議と合わせて話題になっているのが、「貧困危機層」の増大です。

相対的貧困率が、全体の平均収入の半分に満たない人の割合を指すのに対し、「貧困危機層」は60%に満たない状態にある人たちの割合を指します。

ドイツではこれが1人世帯の場合、可処分所得が月1074ユーロ(約13万円)を下回っている場合を意味し、2019年にはこの割合が15.9%に上昇しました。

また、子どもの5人に1人が貧困状態にあると報告されており、コロナ危機でこれらの数値はさらに深刻化すると見られています。

格差拡大と貧困の問題に対峙する社会が、ベーシックインカムという新たな可能性をどのように取り込んでいくのか?
今後の行方が注目されます。

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[1] WHO, Coronavirus disease (COVID-19) pandemic,
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019(閲覧日:2020年11月22日)
[2]原田泰『ベーシック・インカム』,中公新書,2015, P117-118
[3] 見市知,「実験的ベーシックインカムに2週間で180万人が応募 ドイツ」,『NEWSSALT』,2020年9月1日 ,https://www.newssalt.com/32414 (閲覧日:2020年11月9日)
[4] John F. Helliwell, World Happiness Report 2020, P.25-26.

【参考資料】
原田泰『ベーシック・インカム』, 中公新書, 2015
Michael Bohmeyer, Claudia Cornelsen, Was würdest du tun?, Econ
Mein Grundeinkommen, https://www.mein-grundeinkommen.de/ (閲覧日:2020年11月9日)
Pilotprojekt Grundeinkommen,
https://www.pilotprojekt-grundeinkommen.de/?name=mge-start (閲覧日:2020年11月9日)
WHO, Coronavirus disease (COVID-19) pandemic,
https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019(閲覧日:2020年11月22日)
Olli Kangas, First results from the Finnish basic income experiment, European Social Policy Network, March 2019
Matthew Berman, Random Reamey(Institute of Social and Economics Research, University of Alska Anchorage), Premanent Fund Dividends and Poverty in Alaska, November 2016
John F. Helliwell, World Happiness Report 2020
Frankfurter Allgemeine, Ansturm auf das Grundeinkommen,
https://www.faz.net/aktuell/wirtschaft/arm-und-reich/diw-experiment-ansturm-auf-das-grundeinkommen-16916887.html (閲覧日:2020年11月9日)
「ベーシックインカムとは | 導入メリット・デメリット – 日本での影響は?」,『byond』,2020年5月15日,https://boxil.jp/beyond/a6985/(閲覧日:2020年11月9日)
見市知,「実験的ベーシックインカムに2週間で180万人が応募 ドイツ」,『NEWSSALT』,2020年9月1日 ,https://www.newssalt.com/32414 (閲覧日:2020年11月9日)
Netzwerk Grundeinkommen, Exportschlager Alaska Permanent Fund?
https://www.grundeinkommen.de/29/03/2011/exportschlager-alaska-permanent-fund.html(閲覧日:2020年11月9日)
山森亮,「フィンランド政府が2年間ベーシックインカム給付をして分かったこと」,『現代ビジネス』,2019年6月17日,https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64706 (閲覧日:2020年11月9日)
松岡由希子,「ベーシックインカムはどうだったのか? フィンランド政府が最終報告書を公表」,『Newsweek Japan』,2020年5月11日,
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93377.php (閲覧日:2020年11月9日)
山田敏弘,「ベーシック・インカムを取り入れた米アラスカ州で出生率が激増していた」,『クーリエ・ジャポン』,2020年2月15日,https://courrier.jp/news/archives/191199/ (閲覧日:2020年11月19日)
Was ändert 1200 Euro pro Monate?, Tagesschau,
https://www.tagesschau.de/inland/grundeinkommen-studie-101.html  (閲覧日:2020年11月9日)
Jeder Sechste an der Armutsgrenze, Tagesschau,
https://www.tagesschau.de/inland/armustrisiko-deutschland-gestiegen-101.html (閲覧日:2020年11月9日)

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