インタビュー企画概要

ベトナムから日本に来ている留学生の数は、2019年5月1日時点で約7.3万人[1]。これは出身国別だと中国からの留学生に次いで二番目に多い数です。私たちは、ホスト国の一員として、また同じ社会の共生者として、彼らをもっと理解し、有意義な留学生活を送ってもらえるよう、支援をする必要があります。そこで、ベトナム人留学生理解の一助として、奨学金に焦点をあて、数名の留学生の方にお話を聞きました。奨学金の取得は、日本で学びたい、将来的に働きたいベトナム人が夢をかなえるための第一歩です。ぜひ参考にしてください。インタビュアーは同じくベトナム人留学生のホアン・ティ・トゥイ・ヴァンさんです。

[1] https://www.viet-jo.com/news/statistics/200428184924.html

ホアン・ティ・トゥイ・ヴァン
ハノイ国家大学人文社会科学大学卒
名古屋大学・日本法教育研究センター(ベトナム)日本語講師 (2009年~2021年)
茨城大学、専修大学、東京外国語大学への留学経験あり。
2021年10月株式会社ライトワークス入社。主にベトナム人留学生や日本で働くベトナム人材向けの支援プロジェクトを推進している。

ゲスト:ハさんのプロフィール

名前リュウ・カイン・ハ
所属大阪大学・人間科学部、4年生
奨学金の種類文部科学省国費奨学金
(大学推薦、G30 HUSプログラム)
受給期間4年間(2017年〜現在)

日本留学のために奨学金を探しているものの、どこからスタートすれば良いのか、必要な情報はどこに掲載されているのか、悩んでいる人は少くないでしょう。

そこで今回は、自分で奨学金や留学先を探して、日本留学の夢を実現させたリュウ・カイン・ハさんのリアルな体験を聞いてみました。ハさんは大阪大学に留学しています(2021年5月現在)。

―ハさんは、ベトナムにいるとき、自分で奨学金を探しましたね。どのように奨学金を探していましたか。

日本に留学しようと思い、日本の色々な大学を探しましたが、当時は日本語で留学できるレベルではなかったので、英語のみで受講できるコースがある大学を探していました。

すると、大阪大学のG30 HUSというプログラムを見つけました。大学のホームページを通じて、このプログラムに採用されたら、日本政府が運営している国費奨学金に応募するチャンスがあるとわかり、この大学に出願すると決めました。

そのときは奨学金についての情報が調べられるウェブサイトやフォーラムがほとんどありませんでしたが、現在ではそのようなサイトがたくさんあります。

日本留学の奨学金を探している皆さん、次のページをぜひ参考にしてみてください!

Scholarship Hunting with Alumni
Scholarship for Vietnamese studentsSăn học bổng cùng Alumni/ Scholarship hunting with alumniScholarship EZScholarship Planet – Hành tinh học bổng

写真)G30HUSプログラムの学生たち
参考)文部科学省,「国費外国人留学生制度について」,
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/06032818.htm

―この奨学金に応募するために、どういった条件がありますか。

国費奨学金に応募する際には、学校側から具体的な要件が決まっていないのですが、参考までに当時の私の成績を言いますと、IELTS[2]のスコアが 7.5でした。

高校での3年間の優秀なスコアを獲得しており、それに加えて、様々な社会貢献活動・ボランティア活動の経験を持っていました。

―奨学金に応募する方法と流れを教えてください!

面接の前に、書類審査がありました。審査に通ると、面接に進むことができます。

面接は2段階あり、一次面接は、G30 HUSプログラムに参加できるかどうか、候補者の能力を見極めるものでした。この面接に合格すると、留学自体は可能になりますが、国費奨学金を取得できるかどうかはまだ分かりません。

一次面接に合格した人のうち、国費奨学金の応募条件を満たす人は二次面接に進みます。国費奨学金は、日本国籍を有する人以外、外国人の留学生なら、誰でも応募できます。

二次面接では、今後の学習計画、生活費の内訳、学内の教師・同級生との関係性、将来のキャリアプランや進学の予定などについて聞かれました。以下の記事は私の先輩が書いたものですが、非常に丁寧で細かくまで書かれています。よろしければ、ぜひ参考してみてください。

Thông tin và kinh nghiệm học tại đại học Osaka – Chương trình G30 (Top Global)
(大阪大学に留学した情報と経験・G30プログラム)
https://shinichi.edu.vn/tin-tuc/tin-tuc-eju/thong-tin-va-kinh-nghiem-hoc-tai-dai-hoc-osaka-chuong-trinh-g30-top-global/

―奨学金を獲得するためのハさんのコツを教えてください。例えば、書類を準備するときには、気を付けなければならないことがありますか。

そうですね。書類審査の段階で、優れた成績を持っている候補者は奨学金を獲得する確率が高いと思います。

まず、学習の成績ですね。東京大学、大阪大学、名古屋大学、九州大学などの英語で学ぶプログラムに応募する場合は、専門高校[3]の学生は一般的な高校より重視されています。

だからこそ専門高校の学生ではない人は、より優れた成績が必要とされます。例えば、CGPA[4]であれば9.2、9.3以上必要かなと思います。

二つ目は優れた外国語能力ですね。IELTSは7.0点を必要とされますが、私が見聞きした感じだと、英語のプログラムの場合、IELTSなら 7.5-8.5点以上、TOEFLなら110点以上が求められているようです。

SAT[5]は不要ですが、高いスコアを獲得していたら、申請書に記入しておくと良いでしょう。日本語能力も評価基準に入っていませんが、日本語を理解できることはプラスに働きます。

それから、社会貢献活動やボランティア活動などの経験も大切です。他の国と同じように、日本留学の奨学金に応募するとき、そのような活動における実績は重視されます。候補者の個性、ライフスキル、社会的スキルなどを測れるからですね。

参考)国費奨学金の応募条件(2022年度)
https://www.vn.emb-japan.go.jp/files/100179829.pdf

―なるほどです。勉強以外、ボランティア活動への参加も非常に大切ですね。他に、エッセイ(小論)などはありますか。

はい、ありますよ。書類を提出する時点で、大阪大学には二つのエッセイを提出するように言われました。(1) このプログラムを選んだ理由のエッセイと、(2) 自己アピールのエッセイです。

一つ目のエッセイには、プログラムの魅力的な所、プログラムへの適応能力、このプログラムが自分の将来にどう役に立つか、といった内容を書きました。

具体的には、以下のとおりです。

  • プログラムの魅力的な所:自分の能力をどのように発揮できるのか、授業の内容でどういった点で興味深いと思うのかなど
  • プログラムへの適応能力:忍耐力、タイムマネジメント、目標達成の方法など
  • 将来に役に立つ点:キャリアプランや進学の予定など

二つ目のエッセイでは、自分の長所と優れた成績について積極的にアピールしました(笑)。エッセイを書く中で、改めて自分の長所や、成績とこのプログラムとの関連性について考えることも必要です。

例えば、日本文化が好きで、現在日本文化クラブ長を務めている経験があれば、それは留学後、日本の生活にすぐ慣れることができ、日本で早く色々な友達を作れることに繋がります。

あるいは、読書が好きで、日本の文化や政治の本をたくさん読んだ経験は、関連した科目の内容を理解するのに役に立ちます。

写真)ホストファミリーとのピクニック

―へえ、すごい! ハさんはエッセイにそのようなことを書いたのですね。大変参考になりました。最後は面接ですね。面接で気を付けることはありますか。

そうですね。面接で気を付けることはまず服装ですね。きちんとした面接にふさわしい服装、白いワイシャツとスーツがおすすめです。あと、当たり前ですが、時間をきっちり守ることです。

面接でよく聞かれる質問としては、この大学、このプログラムを選んだ理由、短期的・長期的な目標、日本について持っている言語・文化の知識などがありますね。あと、グローバルな視点での、文化・経済・政治の問題に関する難しい質問が1、2問ぐらいあります。

面接でうまく答えられるように、よくある質問と答えを用意しておいて、先生か友達を相手に練習したほうが良いと思います。

最後に、技術的な問題ですが、全ての面接はオンラインで行われるので、面接の30分〜1時間前に、パソコン、Wi-Fi等の必要な設備を準備しておいたほうがいいですね。トラブルが起きないようにマイクとカメラもテストしましょう。

写真)英語ディベート世界大会に出場した日本チームとベトナムチーム

―確かに、前もって準備しておくのが非常に大事なことですね。
ハさん、貴重な経験をご共有していただき、どうもありがとうございました!

まとめ

いかがでしたか。
ハさんのお話を聞いて、奨学金獲得のコツを掴めるようになったのではないでしょうか。

ハさんのコツを再確認しましょう。

  • 応募条件として明示されていない資格や実績でも、アピールできるものであれば、申請の書類に書いたり、証明書を同封するなどするとよい
  • 学習の成績に加えて、社会貢献活動などの実績も積極的にアピールしよう
  • エッセイには具体的な例を書くと、説得力がアップする
  • 自分の長所と成績、目指しているプログラムとの関連性を考えよう
  • どんな試験でも前もって準備しておくのがすごく大切

[2] International English Language testing systemのこと。アイエルツ。ケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシル(英国文化振興会)、IDP Educationが共同運営している英語運用能力評価試験。TOEFLと並び、海外の大学に進学する場合に英語力を証明するためのグローバル・スタンダードとなっている。
[3] ベトナム国内にある各省(※行政区画)の一番優秀な生徒を集めた高校のこと。
[4] Cumulative Grade Point Averageのこと。履修した科目で取得した成績の平均値。
[5] Scholastic Assessment Testのこと。大学能力評価試験。アメリカの大学に出願する際に必要な統一試験。