「内定者研修でいろいろやりたいけど、ハード過ぎて学生が辞退してしまうことは避けたい。」

これは、新卒採用担当者のほぼすべてに当てはまる本音だと思います。しかし、現場の社員からは「新入社員が現場に来るまでに基本的なことを身につけさせておいてほしい」と言われ、さらに内定者自身は「『使えないヤツ』だとは思われたくない。でもまだ学生なのにあまりヘビーな研修はちょっと……」なんて思っている。そんな三者三様の思いの板挟みになっている新卒採用担当者も多いのではないでしょうか。

せっかく内定者研修をやるのであれば、学生には意欲的に参加してもらい、入社を楽しみにしてもらえるようなカリキュラムにしたいと考えている方は多いと思います。

そのためには「学生が内定者研修に何を求めているのか」を知ることが不可欠です。また、新入社員の早期戦力化を目指すには、内定者研修にどのような目的を持たせるのかをきちんと定義し、そのうえで研修を設計する必要があります。

そこで今回は、まず学生が内定者研修にどのようなことを希望しているのか、アンケートをもとにした学生の本音を取り上げます。そのうえで、早期戦力化を図る内定者研修カリキュラムを設計する方法をご紹介します。ぜひこの記事を参考にあなたの会社の内定者研修の内容を見直して、採用担当者・現場・内定者の板挟みから抜け出せる満足度の高い研修を設計してください。

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内定者研修の目的

内定者の不安を払しょくし、内定辞退を防ぐ

内定者研修の一つ目の目的は、内定者の入社に対する不安を解消し、安心して入社してもらうということです。

それでは、内定者は具体的にどのようなことに不安を感じているのでしょうか。ライトワークスが2023年に実施した「内定者研修に関する調査結果」を参考に見てみましょう。

内定後に不安を感じたこと

内定者研修に関する近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

内定後に不安を感じたことでは、「仕事をできるようになるか」という回答が49.5%で最多となりました。「期待されている成果を出せるのか」も2割以上が選択しています。

上記からは、 入社後に活躍できるのか自信が持てなかった内定者が多いことが推定されます。

また、「この会社に入社を決めてよかったのか」(31.4%)という回答も2番目に多くなっており、内定後にも入社に対する迷いを感じていることがわかります。

こういった不安を感じている状態で企業側からのフォローが不十分だと、内定辞退などにつながる可能性もあります。そのため、内定者フォローの一環として研修を実施することが効果的だと考えられます。

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入社後の活躍に繋がる知識やスキルを習得させる

二つ目の目的として、入社後の新人研修や現場への配属にスムーズにつなげていくことが挙げられます。

企業に対する調査では、「内定者研修を実施した」と回答した企業の半数以上が「ビジネスパーソンとしてのマインドセット」「ビジネスマナーなど社会人基礎知識の習得」など、知識・スキルの教育を実施していたことがわかりました。

内定者研修の実施内容(複数回答)

内定者研修に関する企業への調査(2023年8~9月、株式会社ライトワークス)

このことから、多くの企業が社会人になるために必要な学びを内定者研修で実施すべきと考えていることがわかります。

また、こうした内容を内定者研修に組み込むことは、内定者が抱える「仕事をできるようになるのか」という不安を取り除くことにも繋がります。

知識・スキルの教育には、会社の組織体系や各部署がどんな業務を行っているか、どんな社員が働いているかなども含まれます。自分が入社する会社に関する知識を事前に学んでおけば、入社後もスムーズに現場へとジョインすることができるでしょう。

内定者の希望から考える内定者研修を成功させるポイント

内定者(学生)の8割以上が内定者研修の実施を希望している

株式会社マイナビの調査によると、2022年卒の学生の85.2%が入社までに内々定者フォローや内々定者研修を希望すると回答しています。その理由を見てみると、そこには学生が持つ「繋がりたい」「知りたい」「自信を持ちたい」という3つの欲求が浮かび上がってきます。

学生が企業に持つ「3つの欲求」

学生が企業に持つ「3つの欲求」_内定者研修

内定者や先輩社員と繋がりたい

内定者研修を通して内定者(内々定者)同士や、先輩社員や人事担当者との人間関係を深めたいという希望です。

この希望を満たすことで、入社前から共に働く仲間や企業に対して親しみをもつことができます。社内での心理的安全性も醸成することができるでしょう。

会社や仕事について知りたい

入社して働く予定の職場や、どんな仕事をすることになるのか、自分が将来どうなっているのかについて知りたいという希望です。

内定者研修で会社や仕事についての事前知識をつけておくことで、入社後のギャップを小さくし、「こんなはずでは」と感じてしまう可能性を減らすことができます。

自信を持ちたい

入社後、スムーズに仕事が始められるように社会人として必要な知識や、入社後に有利になるような資格・スキルを身につけて自信を持ちたいという前向きな希望です。

また、自分がこの会社を選んだことが正しかったか自信を持ちたい、と考える内定者もいるようです。

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7割の内定者(学生)は「内定者研修があって良かった」と感じている

実際に就職先の内定者研修に参加した内定者に「内定者研修があって良かったと感じるか」を調査した結果、約7割が「内定者研修があって良かった」と回答しています。

内定者研修があって良かったと感じるか(単一回答)

内定者研修に関する近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

「内定者研修があってよかったと感じるか」という設問に対し、「とても良かった」「やや良かった」が合わせて70.4%という結果になりました。反対に、「あまり良くなかった」「まったく良くなかった」は合わせて9.2%でした。

また、「内定者研修があったことを良かったと感じた理由」については、以下のような回答が集まっています。

内定者研修があったことを良かったと感じた理由(複数回答)

内定者研修に関する近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

「入社後の仕事についてイメージできたから」という回答が56.5%で最多となり、「社会人として必要な知識やマナーが身についたから」が42.0%、「入社後に活かせるスキルが身についたから」が34.8%となっています。

内定者研修に参加したことで、業務につながる知識を得られたことを良かったと感じている内定者が多いようです。

また、「内定者同士や先輩社員とコミュニケーションをとれたから」という回答も53.6%と過半数が選択していました。内定者研修はスキル習得という面だけではなく、入社後に共に働く仲間との関係性構築という点でも有用なようです。

企業側の目的と内定者の望むこと、双方を満たすことが内定者研修のポイント

企業側が内定者研修で目的としていることと、内定者が望んでいることには近しい部分が多いことがわかります。

学生の求めるような内定者研修を設計することが肝要になりますが、そのような研修を実現できていない企業も少なくありません。

上述のマイナビの調査では、内定者懇親会や内定者専用Webサイト、人事担当者との食事会や面談など、学生の「繋がりたい」欲求を満たす施策は多くの学生が希望し、実際に内定先の企業から受けています。

しかし、働くリアルを聞ける先輩社員との懇親会や職場見学、研修や社内報の送付など、学生の「知りたい」「自信を持ちたい」を満たす施策は、希望する学生が少なくないにもかかわらず、十分には実施されていないのが現状です。

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内定者研修で実施すべきプログラム

内定者研修では、目的に合わせて以下のようなプログラムの実施が検討されます。

内定者フォローの目的と施策_内定者研修

内定者・社員とのコミュニケーションや連帯感を高める

内定辞退や早期離職を防ぐために、共に働く仲間との関係性を深めることは大変重要です。内定者にも強く希望されているため、実施したほうが良い部分といえるでしょう。

実施する内容としては、以下のような施策が挙げられます。

  • 人事担当者との定期連絡・近況報告
  • メンター・チューターとの面談
  • 社内行事やイベントへの参加
  • 内定者同士の懇親会や交流会
  • 社員との懇親会や交流会
  • 集合研修
  • グループワーク
  • 内定者SNS
  • 内定式

会社に関する知識を習得する

入社前に自分が働く職場や仕事についての知識を身につけます。早期活躍のためにも事前に会社について把握しておくことは大変有用でしょう。また、イメージとのギャップを埋めることで早期離職の可能性を下げることにも繋がります。

実施する内容としては、以下のような施策が挙げられます。

  • インターン(社内アルバイト)
  • 社内報やPRマガジンの送付
  • 職場や工場などの現場見学

社会人としてのスキルや知識、心構えを身につける

入社後スムーズに配属先での仕事をキャッチアップできるよう、社会人として求められることを身につけるという目的です。「内定者研修」と聞くと、こういった内容をイメージする方が多いかもしれません。

企業側だけでなく、内定者も自信を持って社会人生活をスタートしたいと考えている方が多いため、双方にメリットがある内容を設定することが重要です。

  • ビジネスマナーやビジネススキルの習得支援
  • 課題図書などの感想文・レポート提出
  • セミナーや講演会への参加
  • 資格取得・語学学習支援
  • その他にも、新聞やビジネス雑誌の購読なども内定者研修で行う施策の候補に挙げられます。

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内定者研修のスケジュール

内定者研修のスケジュールは企業によって異なりますが、10月の内定式以降に開始される場合が多くなっています。

そのため、入社前年度の10月から入社までの期間で計画的にスケジュールを設定することをおすすめします。

しかし、インターンとしての社内アルバイトなどをより早期から始めておくことで長期的な関係性構築が可能となります。内定者の希望があれば、個別に研修を始めておくことも効果的になるでしょう。

また、研修開始初期に内定者同士や社員との関係性を築けるプログラムを実施しておくことで、その後の研修内でのコミュニケーションも活発になり、内定辞退防止にもつながります。

ビジネスマナーやOfficeソフトのスキル習得はeラーニングで研修を実施することで内定者の都合のよいタイミングで学習を進めてもらうことが可能になります。

内定者研修の頻度には注意が必要

学生は内定先の企業に対して「繋がりたい」「知りたい」「自信を持ちたい」という欲求を持っている一方、希望する接触頻度はあまり多くはありません

内定先との接触頻度に関する内定者への調査では、「月1回程度がちょうど良い」とする回答が23.8%と最も支持を集めました。

内定先との接触頻度は、どれくらいがちょうど良いか(単一回答)

内定者研修に関する近年の内定者への調査(2023年8月、株式会社ライトワークス)

連絡があったほうが良いという回答では、次に2・3ヶ月に1回程度(19.9%)、月2・3回程度(17.6%)という順になっています。

一方で、「入社まで特に連絡はいらない」という回答も19.5%となりました。約8割の回答は適宜連絡があったほうが良いとのことでしたが、あまりに少ないと内定者に不安を与え、多すぎると煩雑さを感じさせてしまいます。

入社前から多くのことを知ってほしいという思いがあっても、月1回程度の実施をベースに検討すると、内定者が負担を感じにくくなるでしょう。

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内定者研修は違法になる?

「内定先の会社から入社前研修の案内が来たのですが、これって一般的ですか?その日は友達との約束があるので行きたくありません。入社前なのに研修を行うということは、この会社はブラック企業なのでしょうか?」

例年、年が明けた頃から、このような相談がインターネット上の掲示板に多数書き込まれます。入社前の研修は、法律上どのように考えられているのでしょうか。

内定者研修は違法ではないが、内容に注意が必要

「内定」の性質は「入社予定日を就労開始日とする解約権留保付きの労働契約(雇用契約)」と解釈されています。つまり、内定者には、入社予定日までの期間は、就労を開始しなければならない労働契約上の義務が発生していないということです。

内定者研修を行うこと自体は違法ではありませんが、参加を強制したり内定者が不利益となるような行為を行った場合は違法になる可能性があり、注意が必要です。

具体的には、以下のような行為です。

  • 内定者研修への参加を強制する
  • 就職活動を防止するために内定者研修を行う
  • 業務を行う、または業務に関連する研修を行っているにも関わらず、賃金を支払わない

よくあるのが、内定者研修への参加を半強制的に促すことで他の企業への就活を妨害する、いわゆる「オワハラ」です。内定辞退は労働者の権利であり、「退職の自由」として保障されているため、就職活動を終了させるよう仕向けることは違法とみなされます。

また、労働契約を取り交わしていない状態でも、業務を行うと賃金が発生します。実際に業務を行っていなくても、業務上必要な知識や技術を習得するための研修に参加させた場合、企業側に給与の支払い義務が発生するケースがあります。

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内定者研修への参加は、内定者の自由意志

労働契約上の義務が発生していない状態で、会社が内定者に研修参加を強制することはできません。また、研修への参加が“強制”でなくても、研修に出席しないことで何らかのペナルティーが科せられたり、実際のペナルティーはなくても不利益を示唆するような言い方で研修への参加を促したりするような行動は認められません。

実際に平成17年の裁判でも、大学での研究を理由に内定者研修に参加しなかった学生に対し、企業が内定を取り消したという事例がありました。正当性が争われた結果、内定取り消しは違法であり無効であるとする判決が出ています。

もっとも、内定者研修を実施すること自体は法律で禁止されているものではなく、内定者が自発的に就労開始日前に研修に参加することはまったく問題ありません。

内定者研修への参加に関するトラブルを避けるためには、研修の意義目的を事前に丁寧に説明し、内定者自らが「参加したい」と思うような内容の研修を企画することが大切です。また、日時を指定して参加を募る集合研修だけでなく、eラーニングや通信教育、書籍購読など、内定者が自分のペースで研修を受けられる仕組みを併せて提供することで、「やらされている感」を払拭し、自発的な参加を促す工夫も必要です。

内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査

近年の内定者と企業、それぞれに対して内定者研修に関するアンケート調査を実施いたしました。
その調査結果を基に、研修を通して内定者のエンゲージメントを高めるためのポイントを解説します。

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内定者研修の設計の仕方

内定者研修の位置づけと内定者のニーズが理解できたら、研修を設計していきます。「それぞれの環境において、最も効果的かつ効率的な教育を設計・開発するための方法論(『日本の人事部』人事辞典より)」としてインストラクショナルデザイン(Instructional Design)があり、近年日本でも注目されてきています。

インストラクショナルデザインに則った教材制作はADDIEプロセスと呼ばれる5つのステップで行われますが、この章ではA(Analysis: 分析)とD(Design: 設計)に相当する制作手順を説明しましょう。効果的かつ効率的な教育の設計には不可欠な要素です。

研修の目的と内容を決める

内定者フォローの目的のうち、研修は主に「会社に関する知識の習得」と「社会人としてのスキルや知識、心構えを身につける」ことを目的として行います。

つまり、企業側の狙いは新入社員の「早期戦力化」にあるということです。そのため、内定者研修の目的を定める際には、現場でどのようなスキルや知識が必要とされるのか、できるだけ早く戦力化するには彼らをどのような人材に育成すべきかを現場担当者からヒアリングしておくことが大切です。

求める人材像の具体化が重要

ヒアリングの際は、人材のイメージが「やる気があって、元気で、前向きで…」のような精神論ばかりにならないように、質問の仕方を工夫することが大切です。人材のイメージをなるべく具体的に描写させることがポイントです。

例えば、営業の現場であれば、「顧客に製品の提案ができるようになることが必要」などと具体的な要件がわかれば、そのためには製品知識や提案資料作成のためのスキルが必要だということがわかります。加えて、製品の提案のためには正しい敬語の知識や名刺交換のやり方が、海外の顧客への営業であれば外国語の習得や異文化理解なども必要かもしれません。

求める新入社員像を具体化することができたら、そこから逆算して、現場ではどういう教育ができるのか→現場で働きながらの育成をスムーズに行うために、新入社員研修ではどういう教育が必要なのか→新入社員研修をスムーズに行うために内定者教育ではどういう教育が必要なのか、とブレークダウンしていきます。

内定者研修の設計の仕方

ブレークダウンしていくと、最下層の内定者研修で身につける知識やスキルは往々にして多くなりがちです。しかし、コラムに記載したとおり、内定者はあくまでも学生であり、研修を強制することはできませんし、学業優先の立場であまりに多くの内容を習得させることは不可能です。そこで、「学生が企業に持つ3つの欲求」をベースに内容を精査し、優先順位をつけます。企業目線で内定者に教育したい知識やスキルのうち、学生のニーズや関心が高いものを優先度「高」とします。優先度の高いものは内定者研修で実施し、そうでないものは新入社員研修の序盤のカリキュラムに含めましょう。

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研修の実施要件を定める

研修の目的と内容が決まったら、個々の研修の実施要件を具体的に定めます。このときに5W1Hのフレームワークを活用すると、目標を定めやすくなります。

内定者研修の実施要件

(1)研修の対象者(Who)

研修内容と費用対効果を考慮して、「誰のための研修なのか」を定めます。切り分け方には次のようなものがあります。

・内定者全員
・特定の部署に配属予定の内定者のみ
・特定の分野の習得に不安のある内定者のみ
・特定の資格取得を目指している内定者のみ

(2)研修のテーマ(What)

2-1でブレークダウンした教育内容から、「何を教育するのか」すなわち研修のテーマを定めます。「名は体を表す」ような、わかりやすく具体的なテーマを定めましょう。テーマ設定が具体的なほうが内定者の興味関心が高まりやすく、参加意欲も向上します。

(3)研修の実施時期(When)

「いつこの研修を行うのか」、つまり研修の実施時期を定めます。決める際のポイントは以下のとおりです。

・他の研修との実施順序:他の研修と関連のある研修テーマの場合、関連するすべての研修の実施順序を決めてから実施時期をプロットする必要があります。

・内定式の前か後か:内定式後は入社の覚悟が固まり、内定辞退の発生する確率もぐっと下がると言われています。採用コストの無駄を防ぐためには、内定者研修は内定式後から本格化させることが望ましいと言えます。

・内定者の大学生活のスケジュール:内定者の負担軽減のため、卒論の締め切りや卒業旅行などと重ならないようにしましょう。

(4)研修の会場(Where)

「どこでこの研修を行うのか」、つまり研修の会場を定めます。内定者の移動の負担を考慮して場所や開始時間を決めましょう。本社や現場(店舗や工場など)の近くで研修を開催すれば、内定者の働くイメージづくりの助けになることもあります。eラーニングや通信教育の場合、研修場所は内定者が自由に決めることとなるので、移動時間や交通費のコスト削減になります。

(5)研修の目的(Why)

「なぜ、この研修を行うのか」つまり研修の目的を定めます。研修を開催することで内定者にどのような効果をもたらしたいのか、何を習得してほしいのか、といった事柄をできるだけ具体的に定めます。また、企業目線だけでなく、内定者目線での研修の目的もしっかりと定義しましょう。内定者目線の研修目的が明確であれば、研修の案内の際にそれを内定者に伝えることで彼らの参加意欲を高め、目的意識を持って研修に取り組ませることが可能となります。

(6)研修の方法(How)

「どうやってこの研修を行うのか」すなわち研修の方法を定めます。研修の方法には集合研修や合宿、eラーニングや通信教育などがあり、それぞれにメリット/デメリットがあります。研修内容や内定者の負担を考慮して、それぞれの研修に合った研修の方法を選択しましょう。

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内定者研修の実施方法とそれぞれのメリットとデメリット

研修の費用対効果を高めるために最も重要なのは、研修ごとに、その研修のWhy(目的)に最適なHow(方法)を定めることです。

例えば、研修の目的が「内定者同士の結束を強める」だったとき、その研修の方法として「通信教育による個別のレポート提出」を選択する人はいないでしょう。これは極端な例ではありますが、実際、研修を企画するときに、研修の目的をきちんと考慮せず、「研修=すべて集合研修」や「研修=すべてeラーニング」などと盲目的に選択してしまう企業も少なくありません。

研修の方法には、大きく分けて集合研修(合宿を含む)とeラーニング、そしてITを利用しない通信教育があります。研修の目的に見合った方法を定めるためには、それぞれの方法のメリット/デメリットをよく理解しておく必要があります。それでは、詳しく見ていきましょう。

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集合研修

集合研修とは、日時や場所を指定したうえで受講者を1カ所に集めて行われる研修です。学校の授業のように講師が知識を伝達する座学(講義)型学習と、講師がファシリテーター(進行役)となってワークショップ形式で行われる対話(体験)型学習という2つのスタイルがあります。

集合研修で内定者研修を実施するメリットとデメリット

受講者管理者
メリット・受講者同士の対面コミュニケーションの機会になる
・モチベーションや集中力が比較的維持しやすい
・わからなかった点をその場で講師に質問できる
・グループディスカッションなど集団ならではの学習効果を享受できる
・受講者のモチベーション管理が比較的容易
・受講者の様子(学習態度や学習意欲、性格など)を観察できる
・学習に強制力が生まれ、受講者間で学習進捗に差がつきにくい
デメリット・研修を受ける時間・場所を拘束される
・集団のペースに合わせた学習が必要なため、理解度にばらつきが出やすい
・復習は配布資料やノートに依存し、再受講はできない場合が多い
・会場の都合により、一度に教育を提供できる人数に制約がある
・講師の質によって学習効果に差が生じる
・研修の出欠や成果(テスト結果やレポート評価など)の管理が煩雑になりやすい
・研修結果の分析やデータ活用が困難
・コストが高くなりやすい(会場費、出講料、交通費/宿泊費、教材費など)

受講者にとって集合研修の一番のメリットは、対面コミュニケーションでしょう。受講者同士の親睦を深められるほか、対話型学習ではグループワークやディベートなどの能動的な学習が可能となります。内定者フォローの一つである内定者同士の連帯感を高めることにも有効といえるでしょう。

一方で、研修を受ける時間や場所を拘束されることは大きなデメリットです。会社との頻繁な接触を好まない内定者が多い中、時間や場所を拘束する集合研修は「やらされている感」を助長しがちになります。

さらに詳しく:内定者研修の頻度には注意が必要

こういったデメリットを解消するためには、オンラインでの研修実施を検討するのも一つの手段となります。ただし、オンラインだと対面コミュニケーションの良さはある程度失われてしまうことは認識しておきましょう。

管理者にとって集合研修のメリットは、受講者のモチベーション喚起が比較的容易であることに加えて、受講者同士で学習進捗に差が出にくいことが挙げられます。eラーニングや通信教育は学習進捗が受講者に大きく依存するため(それが受講者にとってはメリットなのですが)、学習の進まない受講者には管理者が何らかの働きかけを行う必要があります。しかし集合研修は特定の日時に強制的に受講を進めることができるため、受講者全員が横並びでスキルや知識を習得していくことができます。

一方で、集合研修は交通/宿泊費や人件費などのコストがかさみやすいほか、テストやレポートがアナログな場合は研修結果が分析しづらいため、知識伝達タイプの研修では費用対効果が得にくいというデメリットがあります。

eラーニング

日本イーラーニングコンソシアムによると、eラーニングは「パソコンとインターネットを中心とするIT技術を活用した教育システム」と定義されています。企業で活用されているeラーニングの基本スタイルは、LMS(Learning Management System=学習管理システム)と呼ばれるサーバー上のシステムから、教材コンテンツを配信するというものです。

eラーニングの教材コンテンツは、従来はイラストやアニメーションと原稿、そしてそれを読み上げるナレーションで構成されるのが一般的でしたが、近年はイラストと原稿だけのシンプルなものや、動画を活用したものが増えています。また、教材コンテンツを配信するだけではなく、ライブ性や双方向性を重視したeラーニングもあります。例えば、講義のライブ配信や、テレビ会議システムを使ったディスカッション、Skype英会話のような語学学習など多様化しています。

eラーニングで内定者研修を実施するメリットとデメリット

受講者管理者
メリット・時間や場所に拘束されず、自分のペースで学習できる
・多くの場合、学習の中断/再開機能が備わっているため、すきま時間を活用できる
・繰り返し学習できるため、復習しやすい
・一度に大人数の研修を実施可能
・講師の質に依存しない、均質的な教育を提供可能
・LMS(学習管理システム)を通じて受講者ごとの進捗状況やテスト結果、レポート評価などを確認できるため、管理の効率化ができる
・学習のあらゆる情報がデータとして蓄積されるため、のちに評価や分析を容易に行える
・会場費、人件費、交通費などのコストが削減できる
デメリット・受講者同士の対面コミュニケーションの機会が減る
・モチベーションや集中力に個人差が生じやすい
・不明点をその場で解決できない(電話やメール、専用サイトでの質問投稿などで解決する必要がある)
・端末がないと受講できない
・受講者のモチベーション喚起や維持が難しい
・強制力が弱いため、受講者の学習進捗に差が出やすい
・ネットワーク環境の整備が必要
・受講のための端末を用意する必要がある

受講者にとってeラーニングの一番のメリットは「いつでもどこでも受講できる」という点でしょう。端末さえあればいつでもどこでも受講できるので、内定者の場合は学業やアルバイト、サークル活動など、さまざまな予定と調整しながら研修を受けることが可能です。これは社会人に不可欠なタイムマネジメントやスケジュール管理のいい練習にもなります。

一方で、一般的なeラーニングではほかの受講者と接する機会が減ってしまうので、この点は内定者懇親会など別の企画でカバーする必要があります。

管理者にとってeラーニングのメリットは、大規模運用、情報の一元管理、データ活用といった、ITの基本といえる要素がまず挙げられます。管理コストを削減した分、内定者の個別フォローに時間を充てれば、eラーニングのデメリットである対面コミュニケーションの減少やモチベーションの維持をケアすることも可能です。

また、昔は自宅にPCのない家庭も多く、受講端末の問題が大きなデメリットとなっていましたが、今はPCの普及率も高く、ほとんどの場合スマートフォンやタブレット端末でも受講可能なため、このデメリットの度合いは大きく減少しました。

内定者研修におすすめのeラーニングコース

通信教育

広義ではeラーニングも通信教育の一種ですが、IT利用の有無によって研修管理の方法に大きな違いがあるので、ここではITを利用しない形式で行われる在宅教育を通信教育と定義します。子どもの頃に進研ゼミやZ会を、あるいは資格取得のためにユーキャンなどの通信講座を利用したことのある方も多いのではないでしょうか。

内定者研修の場合は、TOEICや簿記、基本情報技術者などの民間の資格の取得のために通信教育を利用したり、課題図書に関するレポートを提出させたりするなどの場面でこの研修方法が用いられます。

通信教育で内定者研修を実施するメリットとデメリット

受講者管理者
メリット・時間や場所を拘束されず、自分のペースで学習できる
・PCスキルがまったくなくても学習可能
・一度に大人数の研修を実施可能
・講師の質に依存しない、均質的な教育を提供可能
・会場費、人件費、交通費などのコストが削減できる(削減幅はeラーニングよりさらに大きい場合が多い)
・イニシャルコストがほとんどかからない
デメリット・受講者同士の対面コミュニケーションの機会が減る
・モチベーションや集中力に個人差が生じやすい
・不明点をその場で解決できない(電話や質問票の郵送などで解決する必要がある
・課題提出に手間がかかる(郵送)
・受講者のモチベーション喚起や維持が難しい
・強制力が弱いため、受講者の学習進捗に差が出やすい
・研修の成果(テスト結果やレポート評価など)の管理が煩雑になりやすい
・研修結果の分析やデータ活用が困難

通信教育の場合、受講者にとってのメリット/デメリットはeラーニングの場合とよく似ています。

端末やPCスキルがまったくなくても教育が受けられる点は通信教育ならではのメリットですが、今はeラーニング教材もスマートフォンやタブレット端末で受講できるものが多いため、そのメリットを感じられる学生はあまり多くありません。一方、課題の提出は郵送となりますので、その手続きが煩雑であることはデメリットと言えるでしょう。

管理者にとって通信教育の一番のメリットは低コストであることです。集合研修で必要な人件費や会場費が不要であることに加え、eラーニングでは不可欠なイニシャルコスト(初期費用)もほとんどかかりません。一方で、受講者のモチベーション喚起や学習進捗管理、テストやレポートの評価や分析などには多くの手間を要するため、管理コストは高くなりがちです。

集合研修とeラーニングのいいとこ取り!「ブレンディッドラーニング」

ブレンディッドラーニング(Blended learning)はその名のとおり「混合学習」の意味で、集合研修とeラーニングを組み合わせて運用する手法です。集合研修とeラーニングは、ともすると二者択一の研修方法と捉えられがちですが、実は両者のメリットをうまく活かして、一つの研修カリキュラムで両方の方法を採用することも可能です。最近では多くの企業でブレンディッドラーニングが取り入れられています。

ブレンディッドラーニングを行うには、一つの教育施策を分解し、目的に応じてeラーニングと集合研修に振り分けます。

ブレンディッドラーニングの例

内定者研修_ブレンディットラーニングの例
知識習得のための座学型学習や集計の必要なテスト等はeラーニングで実施し、実技演習等の対話型学習は集合研修に振り分ける。

ブレンディッドラーニングを採用することで、内定者を集合研修で拘束する時間を短くできる他、会場費などのコストも抑えることができます。また、知識習得の部分では繰り返し学習できるようになり定着度アップを図りながらも、集合研修においては実践的なトレーニングを行ったり対面コミュニケーションの機会を作ったりすることでモチベーションアップも容易です。

このように、ブレンディッドラーニングはまさに集合研修とeラーニングの「いいとこ取り」な施策なのです。

内定者研修におすすめのeラーニングコース

ライトワークスでは、内定者研修に適したeラーニングコースをご提供しています。

テーマに沿った教材が集約され、定額で1年間何度でも受講できるeラーニングコースとなっているため、「内定者研修をeラーニングで実施したいけれど、プログラムを考える時間がない」「コストとリソースが限られている中でも内定者研修のeラーニング化はできる?」などのお悩みも解決します。

フレッシャーズ「社会人基礎力」養成コース

フレッシャーズ「社会人基礎力」養成コース

本コースでは、社会人として最低限知っておきたい「一般常識」「政治・経済」「歴史」「文化」「時事問題」などについてゲーム・スタイル・ラーニングで学ぶことができます。ゲーム感覚で楽しみながら学ぶことで、知識のインプットだけではなく、日常会話に取り入れやすい形で身につけることができます。

教材一覧

  • クイズで学ぶ「一般常識」
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ビジネスパーソンなら知っておきたい「ビジネス基礎力」養成コース plus+

若手ビジネスパーソンのための「ビジネス基礎力」養成コース

本コースでは、そんな若手社会人が抱えがちな課題に合わせたeラーニングコンテンツを網羅しています。「タイムマネジメント」「チームワーク」「ビジネスマナー」「ビジネス文章」「目標管理」「品質管理」のカリキュラムから、ビジネスの基礎力をつけることを目指します。内定者/新入社員のうちに基礎を固めることで、配属後のスムーズな業務理解や将来の能力開発の土台づくりにもつながります。

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Microsoft Officeを極める!「Microsoft Office2019 Excel」スキルアップコース

Microsoft Officeを極める! 「Microsoft Office2019 Excel」スキルアップコース

本コースでは、初心者向けの基礎的な知識・操作から応用的な操作方法までを網羅的に学習することができます。

具体的にはセルの入力方法や塗りつぶし、印刷方法、大量のデータを扱う際の効率的な操作方法、データからグラフを作成する方法、関数(vlookupやrounddownなど)を使用した計算、編集がさまざまな条件でできるようになります。その他、ピボットテーブルやマクロ機能などの便利機能を使った操作も学習することができます。

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内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査

近年の内定者と企業、それぞれに対して内定者研修に関するアンケート調査を実施いたしました。
その調査結果を基に、研修を通して内定者のエンゲージメントを高めるためのポイントを解説します。

無料eBook「内定者研修の実施状況と内定者のホンネ調査」

まとめ

内定者のニーズを的確にとらえた内定者研修ならば、多くの内定者が意欲的に参加します。内定者のニーズの根底には「繋がりたい」「知りたい」「自信を持ちたい」という3つの欲求があるので、研修を企画する際には、これらの欲求を満たすようなカリキュラムを組み立てることが大切です。

現場からは「新入社員の早期戦力化」を求める声が挙がりますが、研修が会社からの一方的な押し付けとなってしまっては、内定者に不満が募りますし、内容によっては違法とみなされるケースもあります。それを避けるためには、会社が学ばせたいものの中で、内定者の欲求に合致するものから優先順位をつけて自発的に学びたくなる研修メニューをつくることが大切です。また5W1Hのフレームワークに当てはめると、研修が設計しやすくなります。

内定者研修の効果を高めるためには設計が重要

研修の効果を高めるために最も重要なのは、研修ごとに、その研修のWhy(目的)に最適なHow(方法)を定めることです。会社(管理者)目線でのWhyやHowだけではなく、内定者目線となってWhyやHowを考慮して研修を設計することが大切です。学習する側の視点でつくられた研修の5W1Hをしっかりと内定者本人に伝えることで、研修の「やらされている感」を払拭することができます。

また研修方法には、集合研修やeラーニング、通信教育などがあり、それぞれにメリットやデメリットがあります。一つの研修スタイルにこだわらず、集合研修とeラーニングを組み合わせるなど、部分的に「いいトコ取り」をして研修の幅を広げることにより、デメリットを抑えることも可能です。

ぜひこの記事を参考に、あなたの会社の内定者研修を「内定者の本音に寄り添った、内定者が自ら参加したくなる研修」にしてみてはいかがでしょうか。

<参考>
マイナビ2022年卒学生就職モニター調査 7月の活動状況(マイナビ)
・弁護士法人浅野総合法律事務所 入社前研修は違法?無給の内定者研修を拒否する方法について解説
https://roudou-bengoshi.com/saiyounaitei/388/
・東京都労働産業局 就活必携・労働法 知っておきたい法律と相談窓口
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/shiryo/zenbun%28shukatsuhikkei%29.pdf
・弁護士法人みらい総合法律事務所 内定を取り消すことができる場合とは?
https://www.mirailaw.jp/knowledge/875/
・eラーニングとは ーメリットやデメリットなど徹底解説ー
https://www.lightworks.co.jp/column/7627
・集合研修をeラーニングにする方法 動画と専用ツールで簡単リユース
https://www.lightworks.co.jp/column/7719