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人材育成の効率的な進め方 企業に役立つ手法,プログラム,ツール紹介

OJTの質を決めるトレーナー 人材育成に好循環を生むその育成方法とは

「新人にOJTをやっているけれど、なかなかうまく機能しない…」

そんなお悩みをお持ちではありませんか?
産労総合研究所の「2019年度 教育研修費用の実態調査」によれば、「OJT指導員教育」(いわゆるOJT)は職種別・目的別教育における実施率が42.9%と、最もメジャーな教育手法となっています[1]。一方で、株式会社スクー社のOJT研修に関する調査(2018年)によると、96.2%の企業がOJTの運用に課題を感じています[2]

多くの企業で昔から導入されているもかかわらず、うまく機能しないという声が多いのはなぜでしょうか。その要因のひとつが、トレーナーの育成不足にあります。

・OJTトレーナーは通常業務で忙しいのでOJTは後回しになりがち。
・部下指導のやり方も十分に教わっておらず、トレーナー自身もどうしたらよいのかわからない…。

このような状態のままでは、効果的なOJTは期待できません。OJTの質を左右するのはトレーナーです。良いトレーナーを育てるには、適切な教育が必要です。本稿では、OJTトレーナーについて、その育成方法とOJTの質を高めるポイントを解説します。

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1. OJTトレーナーは勝手には育たない

「新人はOJTで育てています」という企業は珍しくありません。しかし、実態はトレーナー向けの講習会をしただけで、あとは現場任せになっているケースも多いようです。そのままでは結果として教育にムラが生じてしまいます。では、OJTを機能させるにはどうすれば良いのでしょうか。リクルートワークス研究所の調査によれば、OJTがうまく機能している理由と、反対に機能していない理由はそれぞれ次の通りです。出典)リクルートワークス研究所 「人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究」 佐野 晋平・久米 功一 (2015年)<https://www.works-i.com/research/paper/discussionpaper/item/DP_0007.pdf>

OJTが機能するには、OJTの制度化、インフォーマルな取り組み、トレーナー育成、市場とのコミュニケーションの視点が欠かせないことが分かります。一方、機能していない理由をみると、その主なものは、機能している理由の裏返しです。

このことから、効果的なOJTには「制度化」や「職場全体で育てる文化の醸成」に加えて、「トレーナーの育成」が重要であることが分かります。OJTの仕組みを整えてトレーナーを適切に育成することは、新人の成長を早めるだけでなく、トレーナー自身の指導スキル、問題解決スキルを向上させる良い機会にもなり、リーダー育成、ひいては人的な企業力の底上げにつながっていきます。トレーナーにはぜひ適切な教育をしてOJTの好循環を実現させましょう。

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2. トレーナーのパフォーマンスを上げる3つのポイント

OJTトレーナーに最高のパフォーマンスを発揮してもらうためにできることは何でしょうか。そのポイントについて、これから解説します。

2-1. 要件に沿った人選を行う

新人を効率的に育てるOJTをする上でまず必要なことは、OJTに適したトレーナーを選出することです。では、その要件とは何でしょうか。「経験学習」をテーマに研究を重ねる北海道大学の松尾教授によると、「優れたOJTトレーナー」には、3つの行動特性があるとのことです[3]

①ストレッチ

新人の目標を適切なレベルに引き上げる指導
例:少し背伸びすれば届くような業務に挑戦させ、達成感を得られるようにする

②リフレクション

成功や失敗の原因は何かを本人に振りかえさせる指導
例:成功失敗の原因を本人に考えさせた上で、良い面・改善点をトレーナーがフィードバックする

③エンジョイメント

仕事に面白さややりがいを見出す指導
例:単に言葉で指導するのみならず、トレーナー自身が仕事に向かう姿勢や普段の態度から、新人を触発する

このように、トレーニー(指導相手)に「挑戦し、振り返り、楽しむ」経験を与えられる人物がトレーナーに適しています。御社のトレーナーはいかがでしょうか。「この3点を踏まえて指導をしてほしい」と伝えるのは簡単ですが、実行してもらうための具体的な働きかけとなるとなかなか難しいかもしれません。そこで、きちんと設計された研修(トレーナーズトレーニング)が必要となってきます。

2-2. 設計された研修プログラムを用意する

トレーナー研修では、「なぜ育成が必要なのか」といった本質的な問いから、新人育成の重要性を認識し、OJTトレーナーとしての心構えを習得できるようにします。具体的には、次の項目を盛り込むと良いでしょう。

◇「OJTとは何か」をトレーナー自身が考える

なぜ育成が必要なのか、何のためにOJTをするのかをトレーナーに問います。その際、新人のみならず「自分にとってのメリット」を考えることで、OJTを「仕方なくやるもの」ではなく「自分にとっても有意義なもの」ととらえられるよう、意識付けします。また、OJTの役割を多面的にとらえるために、「自分が部長だったら、OJTトレーナーに何を期待するか」「自分が新人だったら、OJTトレーナーはどんな人がいいか」を考えるワークショップをするのも有効です。

◇職場ぐるみで新人の育成計画を検討する

育成の目標とそこに至るステップを考えます。新人に仕事を任せ、仕事を通じて成長させていくためには、まず日常業務を洗い出し、その進め方を明確にすることが必要です。その上で、新人に「いつまでに」「何を」「どの程度」やれるようになってもらうかという道筋を決めます。その道筋に沿って育成計画を立てましょう。この育成計画はトレーナーだけで作るのではなく、上司や職場のメンバーを巻き込んで考えてもらうのがよいでしょう。計画段階から周囲を巻き込むことで、職場ぐるみで新人を育成する土壌が整います。

◇指導手順のセオリーをトレーナーが習得する

昔ながらの「仕事は見て盗むものだ」という指導は、本人の主体性を育てるには有効かも知れませんが、短期間で効率的に育てるのには適していません。人によってはやる気や責任感を損なってしまう恐れもあるため、OJTトレーナーには次の3つのステップを理解してもらう必要があります。

実演し、説明し、実行させる。どのステップも必要ですが、その中でも特に重要なのは「説明する」ことです。仕事を教えるときは、やり方だけでなく「目的」や「重要性」を伝えてもらいましょう。なぜその仕事をするのかを新人に理解してもらうことで、「この仕事をするとこんな成長ができる」「この仕事をするとこんな風に人の役に立つ」というイメージを持ってもらいやすくなります。このことは、新人の仕事に対する積極性につながり、OJTトレーナーにとっては指導のしやすい環境作りにつながります。

◇信頼関係を築くコミュニケーションスキルをトレーナーが身に付ける

入社したばかりはやる気に満ちあふれていても、コミュニケーション不足から次第にやる気を失ってしまっては、能力があっても活かせません。トレーナーには、相手との信頼関係を築くコミュニケーションスキルの習得が必要です。その代表的なものを2つ紹介します。

フィードバック

相手の仕事ぶりや成果に対して、成長を促すための意見や評価をする手法です。その目的は、本人が気付いていない良さや問題点を自覚させることで、考え方や行動を認めたり改善させたりすることにあります。気付いた時にその場で行う随時的なフィードバックと、面談などで行う定期的なフィードバックを組み合わせることで、より成長を促す効果が高まります。

 

コーチング

相手が本来持っている能力や可能性を最大限に発揮できるようサポートする手法です。「答えは相手の中にある」とは、コーチングの前提となる考え方の1つですが、多くの場合、新人は自分の中に答えがあることに気付いていません。そのため、トレーナーが適切な問いかけをし、彼らの中にある答えを引き出してあげる必要があります。

このように、「心構え」、「具体的な指導・育成方法」、「コミュニケーションの仕方」などを教えることで、トレーナーの意識・指導スキルが向上し、スムーズなOJTが期待できます。

 

2-3. OJT開始後のフォローを行う

トレーナーは通常業務に加えてOJTの指導を請け負い、さらにOJTに関するレポートや進捗管理などもこなさなければなりません。できるだけ彼らの業務負担を軽くできるよう、ITを活用して事務作業を効率化するのも一手です。具体策としては以下のようなものが挙げられます。

社内SNSを活用し、職場ぐるみでOJTをフォロー

従来のように紙やメールで報告書を提出していては、トレーナーが突発業務に追われた場合、新人に疑問があったとしても解消までに時間がかかってしまいます。トレーナーの不在時に職場ぐるみでフォローできるように、レポートをオンライン上で共有できるようにするとよいでしょう。例えば、社内SNSを活用し、一人の新人が提出したレポートを他のトレーナーや上長が閲覧・コメントできるようにすれば、疑問の早期解消に役立ちます。タイムリーにレスポンスを得られればモチベーションの向上にもつながりますし、オンライン上でレポートの集約ができれば人材育成部門にとっても省力化のメリットがあります。

進捗管理の「見える化」で今やることを適時把握

OJTを進める上では、「いつまでに何を教えるか」「いつまでに何ができるようになっているか」を明確にしておく必要がありますが、その進捗管理をオンライン上で「見える化」することで、直感的に現時点の進捗状況を理解し、今すべきことは何かを把握することができます。これはトレーナーの進捗管理を楽にするだけでなく、人材育成部門にとっても、全体の状況を適時把握できるというメリットがあります。

例えば、統合型学習管理システムCAREERSHIP®では、入社後に習得すべきスキル目標を期間ごとに整理して画面に表示し、修得状況をチェックしていくことが可能です。

参考)CAREERSHIP®のスキル管理画面(ユーザー)

このように、OJTに関する事務作業にITを活用することで、トレーナーの負担軽減に加え、組織ぐるみのフォローが可能になり、人材育成部門にとっても全体把握を楽にできるようになります。新人教育にはOJTだけでなく集合研修やeラーニングといった研修もありますが、上記のような学習管理システム(LMS:Learning Management System)はこれらの研修に関する管理も一元化が可能です。必要に応じて検討してみると良いでしょう。

関連記事:LMS(学習管理システム)とは?専業ベンダーが基礎から選定ポイントまで徹底解説


3. まとめ

OJTを制度化してトレーナーを適切に育成することは、単に新人の成長を早めるだけでなく、トレーナー自身の指導スキル、問題解決スキルも向上させる良い機会となり、結果的に人的な企業力の底上げも期待できます。

OJTのポイントは次の通りです。

◆要件に沿った人選を行う
①ストレッチ
新人の目標を適切なレベルに引き上げる指導
②リフレクション
成功や失敗の原因は何かを本人に振りかえさせる指導
③エンジョイメント
仕事に面白さややりがいを見出す指導

◆設計された研修プログラムを用意する
□「OJTとは何か」をトレーナー自身が考える
□職場ぐるみで新人の育成計画を検討する
□指導手順のセオリーをトレーナーが習得する
・実演する
・説明する
・実行させる
□信頼関係を築くコミュニケーションスキルをトレーナーが身に付ける
・フィードバック
・コーチング

◆OJT開始後のフォローを行う
・社内SNSを活用し、職場ぐるみでOJTをフォロー
・進捗管理の「見える化」で今やることを適時把握

新人はOJTを通じて、仕事への向き合い方や業務の進め方、人との関わり方など多くのことを学びます。つまり、この経験が彼らの今後の職業人生に大きな影響を与えることは間違いありません。ぜひ適切なトレーナー教育をして、新人の早期戦力化、ひいては企業力の底上げへとつなげていきましょう。

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[1] 産労総合研究所「2019年度 教育研修費用の実態調査」<https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_1910.html>
[2] PRtimes【人事の悩みが発覚】96%の企業がOJT研修に課題を感じていると回答!【社会人向け学習動画サービス「Schoo」自社調査】<https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000069.000006391.html>

[3] SHIMADZU ぶーめらん 「経験学習」で育て上手な上司に社内の人材育成に重要な3つの要素<https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/37/07.html>

参考)
産労総合研究所 「2019年度 教育研修費用の実態調査」
https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_1910.html
リクルートワークス研究所 「人材流動性とOn the Job Trainingに関する探索的研究」 佐野 晋平・久米 功一(2015年)
https://www.works-i.com/research/paper/discussionpaper/item/DP_0007.pdf
育て上手のマネジャーの指導方法―若手社員の問題行動とOJT 北海道大学 松尾睦教授
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10180248_po_040-053.pdf?contentNo=1&alternativeNo=
Jin-Jour 第2回 OJTにおけるIT活用
https://www.rosei.jp/jinjour/article.php?entry_no=56854
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https://www.shimadzu.co.jp/boomerang/37/07.html
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