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従業員満足(ES)とは 事例に学ぶ、向上施策とその効果

従業員満足(ES)とは 事例に学ぶ、向上施策とその効果

従業員満足とは、給与や待遇面だけでなく、仕事内容や職場環境、人間関係、福利厚生など総合的な面における従業員の会社に対する満足感のことです。

英語の「Employee Satisfaction」を略して「ES」と呼ぶこともあります。「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」というフレーズを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。この言葉には、従業員満足が高まれば顧客満足も高まり、企業の業績が向上するという意味がこめられています。

本稿では、従業員満足の向上施策を導入した場合の効果や、企業の導入事例について解説します。

「従業員満足(ES)」以外にも、「ARCSモデル」や「エンプロイアビリティ」など、近年話題の人事系キーワードについて詳しく知りたい場合は、163の用語を解説している「人事用語事典」をご利用ください。
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1. 従業員満足とは

従業員満足とは、従業員の会社に対する満足感のことです。給与や待遇面、仕事内容や職場環境、人間関係、福利厚生など総合的な面から測ります。

アメリカの心理学者、アブラハム・マズローの「欲求5段階説 」を聞いたことがあるでしょうか。人の欲求は5段階に分かれており、1段階目の生存的欲求が満たされて初めて2段階目の安全の欲求が生まれ、安全の欲求が満たされて初めて3段階目の社会的欲求が生まれる、といった具合に、各段階を満たされて初めてその上の欲求が生まれてくる というものです。
以下の図をご覧ください。

マズローの欲求5段階説

この5段階欲求の図において、従業員満足は1段階目の生理的欲求から3段階目の社会的欲求を満たすといえるでしょう。
つまり、従業員満足とは周囲に目を向け、他者に貢献したいという思いが生まれるための必要最低限の条件と言い換えることができるのです。「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」という言葉にはこういった背景があります。

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2.従業員満足が注目されている背景

なぜ今、従業員満足なのでしょうか。その背景にはさまざまな要因が考えられますが、主要なものとして、以下の2点が挙げられます。

少子高齢化による労働力の減少と流動化

終身雇用制度が崩れて久しい昨今、働き手からすると条件のよい職場を探して転職しやすい環境にあります。さらに少子高齢化ということも加わり、働き盛りの年齢にとって転職市場は売り手市場になっています。そのため、どの企業も優秀な人材の確保に苦労しているという現実があるのです。企業に対する満足度が高ければ、人材の流出阻止と定着率の向上、優秀な人材の確保が見込めます。

働き方改革の推進

2017年3月、政府は働き方改革の実行計画を打ち出しました。さらに、2018年4月、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案が提示されました。働き方改革は、さまざまな背景を持った人が自身の事情に応じて働きやすいように企業側が環境を整え、雇用の安定を図り、労働生産性を上げるということを主な目的としています。そのため、長時間労働の見直しや、テレワークの導入、男女問わない育児休暇制度の取得など、従業員にとって「働きやすい」と感じられるような労働環境の整備が多くの企業で求められているのです。

このような労働市場の動向に、政府の方針が加わったことから、「従業員満足」が注目されるようになったと考えられます。


3. 従業員満足の向上施策を導入する効果と課題

従業員満足の向上施策を導入するとどのような効果があるのでしょうか。また、その一方でどのような課題があるのでしょうか。順にみていきましょう。

3-1. 従業員満足の向上施策を導入する効果

従業員満足を向上させることで、次のような効果が期待できます。

優秀な人材が確保できる

企業に対する従業員の満足が上がることで、その企業への信頼感が高まり、長く働きたいという気持ちにつながります。その結果、人材の定着率が高まります。さらに、満足度が評判となり、人材の採用においてもその企業で働きたいという応募者が増え、優秀な人材が確保できる可能性が高くなります。

従業員のやる気やモチベーションが上がる

仕事内容や職場環境に満足すると、従業員のやる気やモチベーションが高まり、仕事の成果向上につながります。

会社が活性化する

従業員が現在の環境に満足を感じていると、余裕が生まれ、従業員同士の雰囲気も明るくなります。明るい雰囲気で会話が増えると、社内の人間関係が活性化され、部署を超えて協力し合う、新しいアイデアが生まれるといった相乗効果が期待できます。

企業の業績向上につながる

マズローの欲求5段階説でもご説明した通り、 現在の職場環境に満足していると、顧客に対してさらに貢献したいという気持ちが生まれてきます。そのため、従業員満足度が上がれば顧客へのサービスの質が上がる、サービスの質が上がれば業績が向上する、という好循環 が生まれます。

従業員の企業に対する満足が高まると、企業との間に信頼関係が生まれます。そのことが仕事への意欲を生み、結果として企業の業績を向上させるという好循環をつくり出します。

3-2. 従業員満足の向上施策を導入する場合の課題

一方、従業員満足度を向上させるためには次のような課題があります。

定着させるために時間とエネルギーが必要

従業員の満足度を向上させるということは、会社の風土改革をするということです。それは一朝一夕でできるものでありません。「従業員満足度を上げる」と決めて動くのであれば、必ずやり遂げるという気持ちで、経営層を巻き込んでじっくりと取り組む必要があります。


4.従業員満足の向上施策を導入した企業事例

従業員の満足度を上げるためには具体的にどんなことをすればよいのでしょうか。実際に成功した企業の事例を紹介します。

4-1. 株式会社ルミネ(施設の充実と教育制度)

ルミネはJR東日本のグループ企業である大手デベロッパーで、アパレルを中心としたファッションビルを展開している企業です。アパレル業界は、現在人材不足という課題を抱えています。ルミネでは、優秀な人材の流出を防ぐため、ES向上をテーマに、大きく次の3つの施策を実施しました。

(1)館内の従業員設備の充実

通常顧客の目に留まらない百貨店などのバックオフィスは、簡素なつくりになっているところが多いものです。ルミネでは、従業員専用の休憩スペースを憩いの場にできるように、屋上を緑化させる、休憩室にフットマッサージ機や横になれるソファを設置する、歯磨き専用の洗面台を作るといった設備面での充実をはかりました。さらに、館内に「スタッフの声」ボックスを設置し、その声をもとにこのような設備改善をしています。自分たちの声を聞いて希望を叶えてくれた、となると、従業員にとっても「大切にしてくれている」という気持ちにつながっていきます。

(2) 教育制度の充実

通常、アパレル業界では新人教育は各ショップで行うことが多いものですが、ルミネの場合は入店前に、ルミネの理念や接客の基本的スキル、館内ルールなど、5時間ほどかけて丁寧に研修します。この研修で一通りの基本的なことが身に付くともいわれています。研修内容は顧客からの意見をもとに組み立てる独自のものという点からもこの研修を重要と考えていることがうかがえるでしょう。研修に5時間もの時間を割き、従業員の教育をほったらかしにせず企業側が責任をもって実施するという姿勢は、従業員にとってもその企業への安心感へとつながります。

(3)優秀なスタッフの表彰制度

ルミネでは2005年から、接客のロールプレイを実施、質の高い接客をしたスタッフを「ルミネスト」として認定し、表彰するという制度を導入しています。約3万3000人いるスタッフの中から、予選、店大会、決勝と3つのステージを勝ち進めた従業員に、ゴールド、シルバー、ブロンズという称号を与えま す。ルミネストがいることにより、その店舗の従業員の意識が上がり、また、ルミネストのいない店舗も、「自分の店舗からルミネストを輩出しよう」という刺激にもなります。その結果、従業員の士気が上がり、仕事へのやりがいにつながっていきます。そのやりがいが、従業員満足の向上へとつながるのです。

4-2. 福島コンピューターシステム株式会社(労働時間の削減)

福島コンピューターシステムは、福島県郡山市にあるIT企業です。IT業界と聞くと、長時間労働のイメージが強いものですが、同社は2015年から人材確保への危機感や社会情勢の変化に対応するために、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進を図りました。そのために、次のような施策を行っています。

(1)経営トップからのメッセージ発信

会社全体として労働時間の削減に取り組むということを、経営トップ自らが発信をしました。経営トップが宣言することにより、労働時間削減への取り組みが形式だけではなく、本気で実施していくとのだ、という会社の姿勢を従業員全体に理解させ、残業時間削減への意識を浸透させていくことになります。

(2) 会議運営の見直し

具体的な時間短縮の施策として、無駄な会議時間の削減ということを実施しました。事前に資料の配布をし、目を通しておく、会議時間は1時間と決めて行うなど、それまで「なんとなく」やっていたことを見直し、ルール付けをすることで具体的な時間短縮をすることができるようになりました。ただ「削減する」とスローガンを掲げるだけでなく、身近にできることから確実にやることで従業員側も会社の本気度が理解できます。さらに、実際に残業時間の短縮へとつながり、会社への信頼感が上がります。

(3)記念日としての有給休暇取得制度

有給休暇があっても会社の雰囲気的に取りづらいということはどの企業でもよくある話です。そこで、「マイアニバーサリー制度」という制度を導入し、個人で申請した日を特別休暇とし、その前後に有給休暇を追加し、連続した休暇を取れるようにしました。いつ取れるかわからない有給ではなく、「記念日」を決めることで「制度」として取得しやすい風土が作られます。

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本教材では、店舗管理者として働くにあたり、商品・サービスの品質を高め、維持する必要性と、顧客満足度(CS)との関係について学習します。また、従業員満足度向上やスタッフ育成など、顧客満足度の向上・維持の具体的な方法を身に付けます。

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5.まとめ

「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」
従業員満足とは、給与や待遇面だけでなく、仕事内容や職場環境、人間関係、福利厚生など総合的な面における従業員の会社に対する満足感のことです。

従業員満足が高まれば顧客満足も高まり、その結果、企業の業績が向上するという好循環が生まれます。
従業員満足度を向上させることで、次のような効果が期待できます。

  • 優秀な人材の確保
  • 従業員のやる気やモチベーションの向上
  • 会社の活性化
  • 企業の業績向上

ただし、従業員満足の制度を導入しても会社の風土として定着させるために時間と労力はかか ります。本格的に従業員満足に取り組むことは、人事も経営層もかなりエネルギーを必要とすることではありますが、これから先、企業が存続をし続けるためにも、従業員満足度向上の施策を考えてみてはいかがでしょうか。

<参考>
・「Employee Hapiness 社員幸福度 社員を幸せにしたら10年連続黒字になりました」桑野 隆司 クロスメディア・パブリッシング(インプレス) 2018年
・首相官邸HP働き方改革実行計画
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakikata.html
・アンリポート“「ES」向上がもたらした、その先にあるもの – 株式会社ルミネ”
https://weban.jp/contents/an_report/repo_cont/shijou/200802.html
・ルミネスト
http://www.lumine.ne.jp/luminest/index.html
・厚生労働省働き方・休み方改善ポータルサイト 福島コンピューターシステム㈱
https://work-holiday.mhlw.go.jp/detail/04264.html

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